猛る赤鬼

作者:崎田航輝

 別に、確信があったわけではない。
 ふとした予感。何となく夢で見たこと。ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)が、肝試しスポットになって久しい廃墟を訪れたのはそんな理由だった。
「それがまさか本当にあるとはな。ワイルドスペース」
 腰に手を当て、眺めるその風景。それはモザイクに覆われた一帯の姿だった。
「で、放っておくわけにはいかねえな」
 ぶらりとやってきただけの身、勿論ムギはたった1人。だが躊躇することもなく、すたすたとそこへ入り込んだ。
 内部は奇怪な粘液が広がっている。切り貼りされたような風景なのも、情報に違わなかった。
 ならば、敵もいるかもしれない──ムギのその予感は、当たった。
「──ちっ、このワイルドスペースを発見するやつがいるとは。お前、この姿に因縁のある者なのか?」
 言葉とともに、目の前に現れたドリームイーターがいた。
 それは剛暴な印象を抱かせる、角と翼を持った男。全身に走る朱は、地獄か血か。恐ろしいまでの風貌、だが、ムギにはそれに覚えがあった。
「俺の姿かよ。最近夢で見ると思ったら……虫の知らせってのはあるもんだな」
 そう、それはまるで、感情を抑えられず暴走したムギの姿そのもの。
「──悪いが、秘密を漏らされるわけにはいかないんでな。お前、俺の手で死んで貰うぜ?」
 そのドリームイーター・ワイルドハントが言った言葉に、ムギはふっと笑いを零す。
「やっぱりかよ。まあ、いいぜ、来いよ」
 そうして、そのまま戦闘の構えを取った。
「その筋肉が張りぼてじゃないかどうかだけでも、確かめてやるよ」

「集まっていただいて、ありがとうございます。本日は、ワイルドハントに関する事件です」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は、集まったケルベロス達を、見回していた。
 その言葉には切迫したものも含まれている。
「ムギ・マキシマムさんが調査を行っていたのですが、とある廃墟で襲撃を受けたみたいなんです」
 ワイルドハントは廃墟一帯をモザイクで覆って、内部で何かの作戦を行っていたようだ。
 そこへ踏み込んだムギへ、攻撃を仕掛けたということらしい。
「こちらも、フォローの用意はしてあります。今からならば素早く救援に向かえるので、急ぎ現場へ向かい、ムギさんに加勢して敵を撃破して下さい」

 作戦詳細を、とイマジネイターは続ける。
「敵は、ドリームイーター1体。現場は廃墟です」
 モザイクに覆われ、奇妙な空間となっている場所だが、戦闘に支障はないという。
 特に戦闘を邪魔してくるものもいないということで、急行して即、戦闘を行ってくださいと言った。
「ムギさんは戦闘に入っています。こちらもすぐに到着できるはずですが、場合によっては敵に先手を取られている可能性もあります」
 短時間でも、一対一で敵と相対する時間は出来てしまうかもしれない。そういった戦況を加味しつつ、加勢後の立ち回りを考えておくといいでしょう、と言った。
 それでは敵の能力を、とイマジネイターは続ける。
「ムギさんが暴走をしたような姿をしているようですが、別人であり能力も異なるようです。この敵は、格闘を重視した戦い方をするようです」
 能力としては、拳による近単服破り攻撃、踏み込んで蹴りを放つ遠単パラライズ攻撃、格闘攻撃の乱打による遠列足止め攻撃の3つ。
 各能力に気をつけてください、と言った。
「ワイルドハントについてはまだまだ予断を許さない状況だと思います。まずは撃破優先で、急行して下さい」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
二羽・葵(地球人もどきの降魔拳士・e00282)
ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)
ファルケ・ファイアストン(黒妖犬・e02079)
新条・あかり(点灯夫・e04291)
風音・和奈(哀しみの欠如・e13744)
エルム・ユークリッド(夜に融ける炎・e14095)
サフィール・アルフライラ(千夜の伽星・e15381)
天喰・雨生(雨渡り・e36450)

■リプレイ

●救援
 全てが混ざり合うような、奇怪な空間。
 ケルベロス達は、廃墟のワイルドスペースへと突入してきていた。
「一体、どういう仕組みになっているんだろうね」
 天喰・雨生(雨渡り・e36450)は視線を走らせながら、言葉を零す。
 建物や地面が混濁した光景は不気味な様相だ。だが雨生は、それよりも仲間の影を探す。
「興味はある、けど。兎にも角にも今はムギを助けないとね」
「そうだね」
 と、頷くのはエルム・ユークリッド(夜に融ける炎・e14095)。翼で高度を上げつつ、戦場を探して目を凝らしていた。
「ムギさんは筋肉だから何となく大丈夫そうな気がするけれど。でも相手も筋肉だし、急いだほうが良いかな」
「何にしても、ムギさんのパワーなら大きな音が響くはずだし、注意して、合流しよう」
 風音・和奈(哀しみの欠如・e13744)が言えば、皆は音も意識して、現場を探索した。
 そこで丁度、衝撃音のようなものが遠くから聞こえるのがわかった。
「あれは戦闘音、だろうねぇ」
 断続的に響くそれに、ファルケ・ファイアストン(黒妖犬・e02079)は口を開く。同時に駆け出すと、皆もそれに続いた。
 続けて、戦闘に伴う声も聞こえてくる。それで正確な位置も特定し、皆で急行した。
 遠目に見えてくるのは、対峙する2つの影。
「いましたね。もう少しだけ、耐えていて下さいっ……!」
 二羽・葵(地球人もどきの降魔拳士・e00282)はそれを視界に収めながら、一層速度を上げる。そこで戦う、仲間を助けるために。

「……まさか暴走した自分の姿と戦う日がくるとはな」
 歪む空間の中、ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)はワイルドハントと向かい合っていた。
 それは、自分の中に押さえ込んでいた負の感情が怒りとなって現れた姿だ。
 肉体だけでなく角や翼も大きくなり、悪魔の側面が強く出ているかのような、凶暴な容姿をしている。
「自分の姿ながらなんて醜悪な姿だ。情けない、だけじゃなくて度し難いぜ」
「醜悪とは言うじゃねえか。その姿にお前は、殺されるんだぜ!」
 ワイルドハントは、気にするでもなく、ムギを殴りつけていた。
 重いダメージ、だがムギは裂帛の叫びで、傷を吹き飛ばす。
「うるせぇ……死ぬのはお前だくそったれがぁあああ!!」
 そのまま感情的に、拳を放った。
 その一撃は敵の顔面に当たる、が、敵も同時に拳を突き出しており、ムギに命中していた。
 ワイルドハントの攻撃力が高い分、体力を削り取られたのはムギの方だ。
「ちっ……」
 膝をつくムギ。そこへワイルドハントは、追撃の為の蹴りの動きを取った。
 当たれば一気に形成は傾く、筈だったが。
 その衝撃は、ムギに届かなかった。金属音とともに、ムギの前に影が立つ。
「やらせませんよ」
 それは、駆けつけた葵。割って入るように、長大な斧剣で攻撃を防御していたのだ。
 そのまま葵は、ワイルドハントに剣撃。たたらを踏んだ敵へ、雨生も高下駄を鳴らし跳躍。牽制代わりの飛び蹴りを打ち当てていた。
 その間に、ムギへ駆け寄るのは、サフィール・アルフライラ(千夜の伽星・e15381)だ。
「ムギさん、大丈夫か?」
「お前ら……来てくれたのか」
 皆の姿を、ムギは暫し見回す。
 和奈は『OgreMetalAssistArmor』。オウガメタルのクウにオウガ粒子を集中散布させ、回復とともにムギに耐性を与えていた。
「ムギさんなら簡単にはやられないと思っていたけれど、無事でよかったよ」
「僕も、手伝うよ」
 サフィールに続けて、エルムは『炎翼の一片』。地獄の翼から癒しの炎を与え、ムギの浅い傷を、完治させていた。
「助かったぜ。もう平気だ」
 ムギが立ち上がると、サフィールは頷いた。
「良く堪えてくれた。さて、ここからは反撃開始と行こうか! ……ムギさんは殴らないからな?」
 そんな風に言いつつ見るのは、ムギの姿をした敵だ。
 和奈もそちらへ向き直る。
「うん。叩きのめすのは、そこの偽者だよ」
「──偽物呼ばわりか。その偽物に負けても、知らねえぜ?」
「僕達は、負けるつもりはないよ」
 笑うワイルドハントへ声を返すのは、新条・あかり(点灯夫・e04291)。
 無表情に、しかし思いは強く。その敵を見据える。
「僕たちは海賊だからね。遣られっ放しは性に合わないんだ。ムギさんを殴った借り──返させてもらうから」
 瞬間、あかりは魔法陣を描き、煌めく魔力で前衛の防護態勢を整える。
 ワイルドハントも攻撃を狙ってきていたが、そこへは既に、ファルケが銃口を向けていた。
「遅いよ。銃相手にするなら、もっと素早くしなきゃねぇ」
 瞬間、地獄を纏った銃口からマズルフラッシュを閃かせる。
 弾丸は正面からワイルドハントへ命中。胸部から血を噴出させた。

●力と力
 ワイルドハントは、歪んだ地面に血を落としつつ、数歩後退していた。
 ただその表情と体力にはまだ余裕も窺える。体勢を悠々と直しながら、体の赤色を血のように流動させていた。
 あかりはムギに似たその顔を、少し見つめている。
「あなた、どこで、その姿を知ったの? ムギさん以外は知らない姿のはずなのに」
「敵にわざわざそんなことを話すと思うか」
 ワイルドハントの答えはにべもない。
 葵はそれにふと口を開く。
「……でも、デウスエクスがわざわざ真似るってことは、私たちの姿や力から何か得るものがあるってことですよね?」
「あるいは、僕たちケルベロスの暴走の力が、あなたが必死に隠す謎の鍵になるとか──」
 あかりは相手の表情を窺いながら、言葉を選ぶ。
 だがワイルドハントは首を振るばかりだった。同時に地を蹴って接近してくる。
「謎より、自分の命を心配しろよ」
「言われずとも。戦いは全力でやる」
 声を返すように辰槌を構えるのはサフィールだ。
「その容姿、正直遣り辛さがないとは言わないが──大事な仲間の窮地に手を拱くなら、それこそ海賊の名折れ。嗚呼、遣られた分はしっかり報復するとしよう!」
 瞬間、大音を上げて砲撃。敵の足元を爆破させる。
「俺も、その姿を眺めていたくないんでね。全力で行かせてもらうぜ」
 間を置かずに踏み込むのはムギ。
 地獄化した炎を右腕に溜め込み、煌々と滾らせている。
「さあ、一秒でも早く俺の前から消え失せろ!」
 同時、繰り出すのは『筋肉弾丸』。弾丸の如く放たれた拳は、ワイルドハントの腹に直撃。吹っ飛ばすように、浮かぶ建物に激突させた。
 ワイルドハントは地に落ちながらも、すぐに体勢を戻し拳を放つ。
 が、標的となった葵は、防御態勢を取り衝撃を軽減。余波で服の裾が破けて一瞬だけ眉根を寄せるが、即座に回し蹴りで反撃して間合いを取っていた。
 直後には、あかりが魔法杖・タケミカヅチから癒しの雷光を閃かせ、葵の回復と前衛の防護を兼ねる。
 次いで、エルムも翼から炎のひとかけらを投射し、葵の体力を万全に保っていった。
「これでひとまずは、安心かな」
「じゃあ私は攻撃に移らせてもらうよ」
 エルムに応えるように敵へ駆け込むのは和奈だ。
「クウ君、行くよ!」
 言葉とともにクウを流動させると、鋭い拳を形作る。ワイルドハントも防御をしようとするが、その前に踏み込み一撃。敵の腕を軋ませ、ふらつかせる。
 そこへファルケが高く跳躍。風になびく愛用の帽子を押さえながら、身軽に建物を蹴り上がり、頭上を取った。
「さて、君の弱点は何かな」
「弱点だと? ねえさ」
 ワイルドハントは見上げて防御しようとする。だが、ファルケはそれを縫うように宙で体を翻し、脳天に踵落としを加えた。
「それならそれで、ひたすら傷を与えていくだけさ」
「がっ……!」
 衝撃に、一瞬目眩を覚えるワイルドハント。拳を振り回すが、接近する雨生もまた、小回りの利く身体と速度でそれを翻弄。
「やっぱり、真似られたのは見た目だけなのかな」
 その内に後背を取って、腕に降魔の力を込める。
 敵は怒りの表情で振り返るが、その頃には雨生が、フードをたなびかせながら打撃。多段にダメージを与えて、敵を転倒させた。

●意志
 ワイルドハントは、口から血を零しつつ、起き上がる。
「……ちっ……お前らなんて、俺が本気を出せば……!」
 ゆらりと立つその顔は、先刻とは違い、憎悪に歪んでいた。
 ムギはそれを見つめて言う。
「一つだけ感謝するよ。お前のおかげで、俺は改めてこんな姿にはなりたくないと強く思う事が出来た」
「はっ……自分の顔なんだろ」
「だからだよ。俺は俺のままでいる。そして改めて言おう、お前を倒すと」
 同時、肉迫したムギは、ワイルドハントの首元を掴み、剛烈な拳を顎に叩き込んだ。
 再び転倒するワイルドハンド。だが憤怒の表情で、すぐに立ち上がる。
「なら、こっちも皆殺しにするだけだ。お前らが言う偽物に、殺されろ……!」
「姿を真似ておいてそれか。本当に、悪趣味にもほどがあるね」
 和奈は愛用のダブルガトリングガンを向け、一度首を振る。
 それから敵を見据えた。
「そもそも、簡単にやられる私達じゃないから。そっちこそ──私達の仲間に手を出したんだ。覚悟はできているんだろうね?」
 同時、砲口に火を吹かせ、無数の弾丸を敵の全身に撃ち込んでいく。
 呻きを上げるワイルドハントに、サフィールは『晶霊の幻想詩』を行使していた。
「ああ、見た目が似ていようが、容赦はしないぞ! 千の夜の盟友達よ、四大の精よ。時は満ちれり、大いなる饗宴を此処に──!」
 それは四大精霊を一同に喚起し、力を開放する魔術。岩槍、水流、風刃、華炎、4つの力の奔流は敵に襲いかかり、衝撃の嵐を与えた。
 鮮血を散らせながらも、ワイルドハントも打撃の乱打で前衛へ反撃をしてくる。
 が、そこには薄く光る雨が降り注いできていた。
「ちょっと待ってて。すぐに回復するから」
 それは、あかりが皆の頭上に昇らせていた治癒のグラビティ。清浄な雨滴となって落ちてきたそれは、ダメージを洗い流すように消していく。
 エルムも、オーロラの如き煌めきを発し前衛の回復を進めていた。
「ロウジーも、手伝って……くれてるね」
 エルムが目を向けると、ウイングキャットのロウジーも、黒い毛並みを揺らして羽ばたき。皆の体力を持ち直させていた。
 ファルケはリボルバーを握り直す。
「それじゃ反撃といこうか」
「そうだね。これに、耐えられるかな」
 応えつつ、雨生は左半身に刻まれた梵字の魔術回路を、一層赤黒く輝かせる。
 そのまま行使するのは『第壱帖丗肆之節・塵核』。掌底を撃ち込むと、魔の波動と敵の水気を同調。波動を通してそれを急速吸収することで炙るように水分を奪っていく。
 ファルケが炎弾を連射し、敵の腹部を蜂の巣にしていくと、葵もそこへ距離を詰めていた。
「く──」
「逃しませんよっ!」
 間合いを取ろうとするワイルドハントへ、葵は追いすがるようにさらに接近。波紋状のエネルギーを、拳を通して敵の体内に打ち込んだ。
 そのエネルギーは波打つように内外から衝撃を与え、ワイルドハントの全身に波及。体中の傷を抉りこむように、深化させていた。

●決着
 ワイルドハントは血だまりに倒れている。ふらりと起き上がるその顔は、信じ難いとでも言いたげだった。
「何故俺が、人間などに……」
「確かにあなたは強いだろう。だが、私達には仲間がいる」
 サフィールが声を返すと、あかりが頷いた。
「うん。それに──サフィさんに葵さん、ムギさんも。“掠奪と殲滅”を旗印に掲げる海賊としてはやっぱり、大事なものを奪われっぱなしではいられないからね」
「そうですよ。海賊が盗られっぱなしじゃキャプテンに怒られちゃいますからねっ!」
 葵も笑んで見せると、ムギは一瞬だけ、目を伏せていた。
「仲間か。そうか、そうだよな………俺はもう1人じゃないんだ」
 それから拳を握り突き出す。
「この筋肉は誰かを傷付ける為じゃない、誰かを護る為に鍛え上げた筋肉だ! だから、お前なんかに負けるわけがねえんだよ」
「下らねえことを……皆殺しにしてやる!」
 ワイルドハントは歯噛みして、突撃してくる。サフィールはその体を蹴り上げ、自身も跳んだ。
「最後まで不愉快だな。星の様に堕ちると良い!」
 同時、宙で回転して蹴り落とし、地に叩きつける。
 倒れ込んだワイルドハントに、あかりは『夜の小鳥』を放つ。それが夢想に誘うように体力を奪っていくと、葵は力いっぱいの回し蹴りでワイルドハントの肋をへし折った。
 血を吐きながらも、敵は拳を放つ。が、ムギは正面からそれを蹴りで払った。
「喰らうかよ。俺の筋肉を──舐めるなぁああ!!」
 間を置かず、逆の足で前蹴りし、ワイルドハントを突き飛ばす。
 その最中にも、和奈はガトリングで偏差射撃するように炎弾を連射し、全弾を撃ち当てている。それから地に転がったワイルドハントを見下ろした。
「勝負も見えてきたね?」
「く……」
 ワイルドハントはそれでも、這うように起き上がり、戦意を見せる。
 雨生はそこに口を開く。
「最後に聞いておこうか。あんたらは一体、どこからここへ来た。元は何か、別のところにでもいたのか」
 ただ、ワイルドハントはあくまで首を振った。
「……答えは、同じさ……」
「そう。僕はその辺あまり興味ないし、いいけど。知り合いの危地を救うだけだし」
 と、そこへ接近するのはエルム。あくまで冷静に、稲妻を纏わせた槍で胸部を貫く。
 ファルケはそこに、地獄を纏った弾丸を連発。意識を奪い取っていった。
「そろそろ、終わりだねぇ」
「うん、これで、お仕舞い。その姿返してもらうよ──夢は夢に還れ」
 同時、懐へ入った雨生は、背丈ほどもある筆の形をした如意棒で一撃。刺突とともにワイルドハントの体を千々に四散させた。

「皆さん、お疲れ様ですっ」
 戦闘後。葵の言葉に皆は頷き、息をつく。
 あかりはムギに、プロテインを差し入れていた。
「はい。……やっぱり、ホンモノの筋肉の方が格好良いと思う、よ」
「ああ、ありがとうな」
 笑ったムギは皆にも向き直った。
「みんな、助けに来てくれてありがとうな。来てくれて本当に凄く嬉しかったし、助かった。だから、ありがとう」
「うん。とにかく無事で良かったね」
 エルムは、ロウジーがムギの足元をスリスリとしているのを見つつ、言っていた。
 皆は再度頷き、それから見回す。
「何か、情報になるものがあればいいんだけどね」
 和奈は言って、あたりを調べ始めていた。だが、少しの間巡っても、有力な手がかりになりそうなものは見つからない。
「ここが何なのかは分からずじまいか」
 同じく周囲を探っていた雨生も、戻ってきて言う。その内に、まずは帰還優先ということで、現場から帰ることとなった。
 皆はモザイクの外へ。不明なことは多い、が、戦果と自分達の命を持ち帰ることが出来た事実を胸に、ひとまず勝利の帰還を果たした。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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