選ばれた殺戮者

作者:崎田航輝

 とある地下駐車場を、1人の青年が歩いていた。
 仕事終わりの会社員だ。既に時間もかなり遅いのだが、その顔はどこか生き生きとしている。
「契約を取るまでにこれほどの時間がかかるとは。全く、エリートサラリーマンも楽じゃないな」
 そう呟く口ぶりに滲むのは、自尊心にも似たもの。
 青年が務めているのは大企業でもあり、務めていることがそのままステータスになりうる。だからこそ、疲労感どころか、充実感ばかりが浮かんでいるのだった。
 と、その無人の駐車場の中、青年が自分の車に向かっていた時。
「ん、男は頭のいいエリートが一番なの」
 そこに、褐色の肌の女性が現れた。
 服装の薄さに目を引かれるが、それよりも、それが人間ではないことに、青年は驚く。
 たなびく炎、翼のような黒い影。
 それは、シャイターン・赤のリチウだった。
「何だ、君……」
「早速エインヘリアルにしてあげるね」
 リチウは言うが早いか、手を伸ばし、青年を燃やし尽くしてしまった。
 すると、炎の中から、身長3メートルの巨躯が現れる。
 青年だったものが生まれ変わった、エインヘリアルであった。
 白の直剣。頑強な鎧、頭を覆う兜。その姿は、正統派の騎士と言った風情だ。
「うん。やっぱり、エインヘリアルは騎士が似合うの」
 リチウは満足げに頷くと、街の方を指差した。
「さぁ、選ばれた騎士として、その力を示すんだよ」
「選ばれた……俺は、選ばれたのか!」
 エインヘリアルは、勇壮な自分の姿を見下ろすと剣を握り締める。そうして、グラビティ・チェインを得るために、街へと走り去っていった。

「有力なシャイターンが動き出したみたいなんです」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は、集まったケルベロス達に説明を始めていた。
「本日は、それによって起きている、エインヘリアルの事件について伝えさせていただきますね」
 有力なシャイターンとは、赤のリチウなる個体だ。
 リチウも含めた『炎彩使い』なるシャイターン達は、並行して似たような事件を起こしているらしい。
 彼女らは皆、生命の泉の力を操り、その炎で燃やし尽くした男性を、その場でエインヘリアルにする事ができるようだ。
「エインヘリアルとなった者は、グラビティ・チェインが枯渇している状態みたいです。なので、それを人間から奪おうと、暴れだそうとしているということらしいですね」
 エインヘリアルは、既に町中に入ろうとしている状態だ。
「今回は、急ぎ現場に向かい、そのエインヘリアルの撃破をお願いします」

 状況の詳細を、とイマジネイターは続ける。
「敵は、エインヘリアル1体。出現場所は、長野県の市街地です」
 夜ではあるが、町中であるために、人通りも多い一帯だ。
 エインヘリアルはここに現れ、暴虐の限りを尽くそうとしている。
 幸いまだ被害者は出ていないので、急行して人々との間に割って入れば、そのまま戦闘に持ち込むことで被害を押さえることが出来るだろう。
「エインヘリアルも、戦闘になればまずはこちらを排除しようとするはずです」
 そのまま撃破すれば、被害はゼロで済むはずだと言った。
 ではエインヘリアルについての詳細を、とイマジネイターは続ける。
「殺戮をすることには、全く疑問を持っていないようですね。自分が優れた人間であり、勇者に選ばれたのだから当然だ、という考えですらあるみたいです」
 武器は剣を1本装備している。
「ゾディアックソードと同等のものと考えていいでしょう。それぞれの能力を使いこなしてくるはずです」
 頑強な体力を持っているので、削りきれるように尽力してください、と言った。
「色々な事件が動き出しているようです。まずは目の前の敵を倒せるように、頑張ってきてくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
デジル・スカイフリート(欲望の解放者・e01203)
クラム・クロウチ(幻想は響かない・e03458)
八上・真介(夜光・e09128)
レギンヒルド・カスマティシア(輝盾の極光騎・e24821)
楠木・ここのか(幻想案内人・e24925)
巻島・菫(サキュバスの螺旋忍者・e35873)
土門・キッス(爆乳天女・e36524)
ルコ・スィチールク(雪原を駆る雌狼・e37238)

■リプレイ

●接敵
 街へ入ったケルベロス達は、現場へと疾駆していた。
 建物を縫うように進めば、遠目に1体の巨躯の姿が見えてきている。
 巻島・菫(サキュバスの螺旋忍者・e35873)はそれを視界に収め、一層速度を上げていた。
「いましたね……!」
「本当にいた……嘘でしょ!?」
 未だ半信半疑というように声を上げたのは、レギンヒルド・カスマティシア(輝盾の極光騎・e24821)。
「シャイターンなんかの選定がまともに成功してるなんて……ありえないわっ!!」
 心からの叫びだった。失敗例ばかり見てきた身としては、それが目の前にいることが信じられないのだ。
「敵の勢力か、または死者の泉に関して進展があった……ってことかしら」
 デジル・スカイフリート(欲望の解放者・e01203)は少し考えるように呟く。
 真相は分からない。が、だからこそまずは、目の前の敵に意識を集中するように。マントを脱いだデジルの武装は、黒の全身スーツ。
「ドラゴニックスーツ、依頼では初お披露目ね。……んー、やっぱり全身包まれるこの感じ、とってもいいわね♪」
 そのまま、敵への距離を一気に詰めていった。
「それじゃみんな、行くわよ♪」

 道を歩く巨躯、エインヘリアルは、ちょうど道端に人影を見つけたところだった。
「選ばれた勇者の第一歩だな! 感謝して、死ね!」
 そしてそのまま剣を振り上げ、虐殺を始めようとする。
 と、その時だった。
「選ばれた、か。……馬鹿馬鹿しい」
 まるで影のように、眼前に現れた者がいた。
 微かに視線を上げる、八上・真介(夜光・e09128)。
「行うことが殺戮ならば、余計にな」
 瞬間、真介は前動作のない状態から戦槍・銀影を振るい、『日陰草』。その強烈な斬撃で巨躯の胸部を抉った。
 たたらを踏んだエインヘリアルは、一度傷を押さえて、睨み返す。
「何だ、君……? 何が馬鹿馬鹿しいって? 俺が選ばれたことなら、これほど最高なことはないだろ」
「そうか。ならば一先ず『おめでとう』と祝っておこうか」
 すると、その後背から冷たい声音が響いた。
 それはルコ・スィチールク(雪原を駆る雌狼・e37238)。黒曜石の柄を構えると、氷の刀身を冷たい地獄で覆い、ひと息に距離を詰めた。
「そして再びおめでとう。貴様は我々の標的として選ばれた」
 直後、振り返った巨躯に、苛烈な袈裟の斬撃を浴びせる。
 エインヘリアルが微かに血を散らせた所で、ケルベロス達皆が駆けつけ、包囲するように位置取っていた。
 クラム・クロウチ(幻想は響かない・e03458)は、周囲の人々へ呼びかけている。
「俺達はケルベロスだ。こいつは俺達で処理すッから、さッさと逃げておけ」
 その言葉に人々も、素早く退避をしていく。
 エインヘリアルは目を細めていた。
「そうか……君達がケルベロスか」
「その通りです。悪いですけど、お掃除の時間ですよ!」
 応えながら手を伸ばすのは菫。そこから氷の螺旋を飛ばし、冷気で巨体を後退させる。
 連続して、デジルは炎を湛えた幻竜を撃ち出し、業火で包み込んでいた。
「ええ、殺戮をさせない為に。ここで倒させて貰うわよ」
「ちっ……」
 エインヘリアルはダメージに顔を顰めつつも、応戦を始めようとする。
 だがそこへ、クラムの砲撃が命中。
 足止めを喰らったところに、レギンヒルドも旋回するように飛来。低い軌道から蹴りを打ち当て、巨躯の鎧にひびを生んでいた。
 エインヘリアルも剣を振り上げる。が、その腕に、強烈な裂傷が奔った。
「まだ、こちらの番は終わりじゃないですよ」
 それはどこか楚々とした動作で、鋭い斬撃を放つ楠木・ここのか(幻想案内人・e24925)。
 一歩下がった敵へ、純白のトゥシューズをくるりと回転させ、舞うかのように近づく。そのままここのかは、回転力を乗せて刃を振るい、連撃を喰らわせていた。
 エインヘリアルは微かに唸り、間合いを取ろうとする。
 と、そこで土門・キッス(爆乳天女・e36524)が、周囲を見回していた。
 その様相は、心ここにあらず。目的もあくまで、巨躯の男ではなかったのだ。
「リチウちゃん……友達になりたいな……」
 呟きつつ、そこに目当てがいないと見ると、キッスはゴミでも見るような目を巨躯に向けた。
「……一応お前に訊くけど、リチウちゃんはどこに行ったの?」
「リチウ? ……ああ、俺を選定してくれた方か。とっくに姿を消したようだが」
 エインヘリアルは思い出すように笑みを浮かべる。
「しかし、あの方のお陰で俺は勇者となったんだからな、もっと感謝を──」
「余計な事は答えなくていいから」
 キッスは、あくまでもエインヘリアルには冷たく。洗脳電波を発射すると、意識を焼き切らんばかりの衝撃を与えていた。

●剣戟
 エインヘリアルは煙を上げて、数歩下がっていた。
 だが、その顔にはまだ余裕が含まれている。肩をすくめるように、笑ってみせていた。
「まったく、選ばれた勇者に対して非道い扱いじゃないか」
「傲慢な物言いだな」
 真介はそれに、静かに言葉を返す。
「少しくらい、前の自分を思い返してみるといい。お前の言う勇者──今まで積み重ねたものを全部捨てて、それでも得る価値のあるものか」
「そうですね。人より優れて、満足もしていて……充実とは無縁の私には、羨ましい限りの人生だったと思えますが」
 そう言葉を継ぐのはここのかだ。
 ちっぽけな一般人の自分が嫌で、誰かに尊敬されたい。ここのかは、そんな思いを胸の中に抱えている。だから、選定に喜ぶ巨躯の姿に共感が出来なかった。
「それが、侵略者たるデウスエクスの勇者となっても良いのですか、貴方は……?」
「勿論さ」
 エインヘリアルは応えて、鼻を鳴らす。
「それに俺は過去を捨てたわけじゃない。過去があったから、優れていたからこそ選ばれたんだ」
「それで、優れてれば、なにやってもいいって思い込んでるんですか」
 菫はどこか呆れるように首を振っていた。
「ちょっとばかしおつむよくても、こんなに歪んでちゃあダメダメですね」
「……言ってくれるな」
 エインヘリアルは俄に怒り、剣を構えた。
「こうして戦士になった以上、殺しも正しい行動さ。殺したいから殺す、それが許されるのが今の俺だ」
「欲望丸出しって感じね。それは嫌いじゃあないけど」
 と、デジルは地を蹴り、巨体に肉迫していた。
「それなら、私達は“護る”って欲望で対抗するだけ。そして後は──どっちが勝るかって話よ」
 瞬間、跳び上がり、巨躯の顎に痛烈な蹴り上げを喰らわせる。
 のけぞったエインヘリアルに、真介は稲妻を伴う刺突。巨躯が腹から血を流したところへ、ここのかは頭部へ縦一閃の斬撃を加え、菫も眩い星のオーラを撃ち当てていた。
 エインヘリアルは呻きつつも剣撃を繰り出す。
 が、その一撃は防御態勢を取っていたここのかが、受けてみせる。衝撃の余波で純白のロマンティックチュチュを裂かれながらも、ここのかは倒れず、微動だにしなかった。
 すると、キッスがそこへ、癒しの幻影を纏わせ治療。ここのかのテレビウムも応援動画を流して回復を進めると、レギンヒルドも電気ショックを伴うヒールを重ね、ここのかの体力を持ち直させた。
「それにしても、勇者というには自慢話ばかりで品がないわよね」
 レギンヒルドはまじまじと巨躯を見る。
 元々選定がヴァルキュリアの権能だという認識もあってか、未だシャイターンの選定基準には懐疑的なのだった。
 エインヘリアルは反抗するように剣を振り上げる。
「自分の能力を誇って何が悪い?」
「見合ッた能力もあるなら、ある程度の自尊心は一向に構わねェと思うんだが」
 と、クラムは間合いを取った位置から声を返す。
 その言葉はただ静かに、眼光は鋭く。
「……それが殺しに向かうなら、看過できるわけもねェ。クエレ」
 瞬間、ボクスドラゴンのクエレが飛来。巨体に暗属性のブレスを浴びせていった。
「く……」
 エインヘリアルがふらつくと、その横ではキッスが、ふと思いついたように声を上げていた。
「そうだ。もしかしてリチウちゃんは、帰ったフリをして、どこかでキッスを見てるの?」
「いや、いないと言ったろう。いい加減に……」
 エインヘリアルは呆れ顔で剣を振り上げる。
 だがその一撃を、踏み込んだルコが、体に纏うオウガメタルで弾くように逸らせていた。
「余所見をしている場合か?」
 ルコはそのまま踏み込み、氷の斧を振り上げる。
「ち……!」
「遅いな」
 再度剣を振るおうとするエインヘリアルだが、ルコはその剣閃が走る前に一撃。氷の斧で脳天を打ち、巨体を転倒させていた。

●闘争
 エインヘリアルは、ふらつきながら起き上がる。
 その表情には苦痛と怒りが滲んでいた。
「何故だ……エリートの俺がこんな目に……」
「エリートって言うけど。そもそもあなたは、自分一人が成果を上げてバリバリ仕事してるとか思い込んで、自分に酔いしれてるタイプでしょう」
 菫は言い聞かせるように言葉を返す。
「エリートさんが自分の仕事に集中できるのは、庶務や経理のみなさんといった縁の下の力持ちが居るからなのに。それがわからない坊やじゃあ、所詮はスタンドプレーですよ」
「……だとしても、俺がエリートで、選ばれたのは事実だ」
 エインヘリアルが唸るように言うと、真介はそれに口を開いた。
「だから、その結果が今の、死に向かうお前の姿なんだろう」
 エインヘリアルに多くのものを奪われた。自身も嘗て、選定されかけた。真介はだからこそ、目の前の存在に、心がざわつく。
「どんな強大な力も、地位も。俺にはケルベロスの力でさえ──幸福な過去を代償にして得る価値はない」
 真介は槍を抜き打つと、目にも留まらぬ刺突で巨躯の肩を貫いた。
 血を零しながら、エインヘリアルも剣を握り締める。
「俺は今のほうが幸福さ……君らが死んでくれればな!」
「……そうかよ。結局は、シャイターンに選ばれるような人間だッた、ッてことだろうな」
 クラムは敵の叫びに一瞬だけ目を伏せると、暗色のオーラを固めて、蹴りで撃ち出した。
「気の毒と言えば気の毒だけどな。ここで、始末させてもらうぜ」
 オーラはそのまま、胸元に直撃。
 エインヘリアルが宙に煽られると、デジルは、デウスエクスの魂の残滓を一時的に放出し、『オルタストライクアナザー』を行使していた。
「──魂の残滓、刹那の精霊を作り上げなさい」
 瞬間、敵の背後で疑似ビハインドに形成されたそれは、苛烈な斬撃で背を裂いていく。
 レギンヒルドはふんふんと頷いていた。
「性格も悪いし。そもそも私達に負けそうだし。やっぱりヴァルキュリア以外が選定するとダメみたいね」
「ふざけるな……!」
 エインヘリアルは反撃に、氷波を前衛に放つ。
 だが直後には、レギンヒルドの治癒の雨、そしてキッスのオーロラ光によりダメージと氷が消滅していた。
 キッスはその間も不定の方向に呼びかけている。
「リチウちゃん……もし見てたら、聞いて。私は土門・キッス。11歳。あなたと同じ……普通の女の子。女の子は誰でも幸せになる権利があるの。リチウちゃん、同性のキッスから見ても可愛いわ。小顔で、美肌で、髪キレーで、スタイル抜群で……こんなに可愛いあなただから、こっちに来たら何だってできる。あなたと、友達になりたい!」
「ええい、うるさい……!」
 エインヘリアルは隙を見て再度氷波を放とうとする。
 だが、その腹部に衝撃。ルコがグラビティを篭めた氷の刃で、刺し貫いていたのだ。
「騒々しいのはどちらだろうな」
「がっ……」
 膝をつく巨躯を、ルコは冷たい視線で見た。
「狩られる獲物になった気分を、伺っておこうか」
「……俺は獲物なんかじゃない。俺は、優れた人間なんだ……」
「ええ、そうでしょう。きっと優れている」
 ここのかは目を伏せて声を零す。いらない自分に比べれば、とでも言うように、微かに胸に痛みを覚えて。
 そして視線を上げた。
「だから、努力してきた人の魂が弄ばれるのは耐えられない。貴方が優れた人物であるからこそ、止めてみせます。それが私達――ケルベロスの役目ですから」
 ここのかは肉迫して、神速の斬撃。巨体の胸部を深々と斬り裂いた。

●決着
 悲鳴を上げ、血潮を散らすエインヘリアル。
 それでも力を振り絞るように、がむしゃらに剣を振るってくる。が、レギンヒルドは剣撃の間を縫うように飛翔。背を突いて巨躯の鎧を粉砕した。
「このまま最後までいっちゃいましょう」
「ああ」
 ルコは応えるように、頭上から斬撃。敵の兜も破壊している。
 そこに、ここのかも無数の斬撃。防御を失った巨体に傷を刻んでいた。
「もう、観念してはどうですか」
「勇者が……負けるか……!」
 エインヘリアルはあくまで尊大に、自己回復。
 するとそこに、菫が皿を取り出していた。
「なら、その天狗みたいに伸びきった鼻っ面を、このお皿で叩き折ってあげますよ!」
 瞬間、『皿投げスペシャル☆』。放られた皿が顔面を打ち、魔的防護も砕いていく。
 地に手をついた巨躯は、浅い息を漏らした。
「嘘だ……俺が、こんな……」
「貴方は殺戮を肯定した。ならば、こうなる事も覚悟しておくべきだったわね」
 デジルが言うと、真介も槍の矛先を向ける。
「……『選ばれた』こと自体には、お前に罪はない。だがその後の意思や行動はお前の罪だ。──後悔しながら朽ち果てろ」
 瞬間、雷光の刺突で巨体の胸部を貫通。血を吐いたエインヘリアルに、デジルも蹴りを叩き込み、体力を刈り取った。
「俺は……勇──」
「壊すことも、殺すことも……いいもんじャねェよ。それに早く、気づけばな」
 クラムは小さく言って、『Secular Stagnation』を歌い上げる。
 後悔と絶望の歌、それに引き裂かれるようにエインヘリアルは散っていった。

「それじゃ、ヒールしておきましょうか」
 戦闘後。レギンヒルドの言葉に、皆はそれぞれ周りの修復を始めていた。
「クエレも手伝ッてくれや」
 クラムはクエレとともに、割れた地面をヒール。戦闘跡を消していく。
 ルコは崩れそうな瓦礫を、氷で補強。後は我関せずとばかり立ち去っていた。
 菫はその近辺も含めて広くヒールし、綺麗な景観を取り戻した。
「これで修復は完璧ですね」
「……ケルベロスとしてのお仕事はこれで終わりですけれど」
 と、ここのかは敵が散った跡に、祈りを捧げていた。
 せめて安らかに眠れるように、と。
「シャイターンに、選定……すごく嫌な感じがする。警戒、しないとな」
 真介の言葉に皆はまた、頷く。
 それから、デジルは歩き出した。
「じゃ、ひとまずは私達も帰りましょう」
 それを機に、皆は三々五々、帰還。
 キッスは最後に、そこにラブレターを置いている。
「親愛なるリチウちゃんへ……。拾ってくれるかわからないけど……」
 それきりキッスも踵を返し、平和となった夜の街へ、消えていった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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