夕刻、カラスの鳴き声響く、放課後の教室。
数人の生徒達が残って話をしているその空間に、ふらりとその存在は現れた。
「ねぇ、あなた達、怪談話は好きかしら?」
音もなく近づいたその人影。それは、ホラーメイカーだ。
不気味な存在感に、生徒達は驚き、思わず頷いてしまう。
それを見て、ホラーメイカーは満足げに話し始めた。
「それは、静かな夜に現れる異形の話よ。“時計台の怪異”──そんな名前で語られているの」
ホラーメイカーは、窓の外にある建物を見る。
それは、ここから少し離れた旧校舎の建物。その一部が時計台になっているのだが、そこに化け物が現れる、という。
「化け物、って?」
「人間の死体よ」
ホラーメイカーはそう答えた。
「あの時計台は当時、生徒達が忍び込んで遊ぶスポットになっていたのだけれど。高さのある建物でもあったからかしら、中で転落事故が起きて、複数人が死んでしまったの」
事故が原因となり、時計台も旧校舎も閉じられた。
だが不思議なのはここからだ。
「その日から、夜12時になると時計台に動く死体が現れるようになったの。時計台の針は12時で止まっているけれど──生徒達が死んた時に針が止まり、建物の中だけその時間で止まっているから、なんて言われているわ」
死体は人間を見つけると襲う。それは命とともに時間を奪うためなのだ、という。
生徒達は、少し寒気を感じるように、その話を聞いていた。
「結構、怖いね。でもそれってさ、作り話じゃ……」
と、そう生徒達が向き直って問い返した時。すでにそこにホラーメイカーはいなかった。
「……旧校舎か。動く死体なんて、嘘だよね……?」
半信半疑で話す生徒達。しかし彼らは、興味を惹かれたように旧校舎を眺めていた。
「集まって頂いてありがとうございます」
イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達に説明を始めていた。
「本日は、屍隷兵の事件について伝えさせていただきます。ドラグナー・ホラーメイカーによるもので、中高生を標的にした事件です」
屍隷兵を学校に潜伏させた上で、中高生に怪談に興味を持たせて……その屍隷兵の居場所に自分からやってくるように仕向けている、という事件のようだ。
怪談は作り話なのだが、これが広まってしまえば、被害が拡大していく恐れもある。
早急に解決する必要があるだろう。
「怪談話を聞いた生徒さんたちが、現場に現れないように対策しつつ……この屍隷兵の撃破をお願いします」
それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「今回の敵は、屍隷兵が3体。場所は長崎県にある学校、その旧校舎の時計台になります」
かなり昔に閉鎖されたという、木造の建物だ。
時計台は旧校舎の一部であり、校舎内からつながっている。
この内部に、ホラーメイカーは怪談通りの屍隷兵を仕込んであるという状態のようだ。
「ホラーメイカーが広めた怪談話は、この時計台に蠢く死体がいる、というものみたいですね」
死体は人間を見つけると襲ってくる、という話だ。
怪談自体は無論、嘘である。だがそこには屍隷兵がいる。もし、興味を持って一般の生徒などがやってきてしまえば、生きて帰ることは出来ないだろう。
「ここへ赴いて、屍隷兵を倒して頂く必要があります」
時計台は、細く高さのある区画になっている。入ればすぐにでも屍隷兵が出て来るだろうということで、注意して踏み込む必要があるだろうといった。
「屍隷兵の能力について説明を。体を軟体化させて攻撃してきます。1体が攻性植物相当の能力を使い、2体がブラックスライム相当の能力を使うでしょう」
各能力に気をつけておいて下さい、と言った。
「人々が被害に遭う前に……是非、撃破をお願いしますね」
イマジネイターはそう言って頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393) |
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423) |
銀山・大輔(青牛おじさん・e14342) |
岡崎・真幸(悔恨・e30330) |
言葉・彩色(妖シキ言ノ刃・e32430) |
伽藍堂・いなせ(不機嫌な騎士・e35000) |
天喰・雨生(雨渡り・e36450) |
ロザリア・シャルクハフト(涅の羽・e36943) |
●潜入
夜の旧校舎へとやってきたケルベロス達。
その木造の古い建物に入ると、ロザリア・シャルクハフト(涅の羽・e36943)はまず、扉にキープアウトテープを巡らせて封鎖していた。
「これでここから入ってくるものはいなくなるかな」
「念のために、これも置いておけば完璧だね」
と、内部を進んで、立看板を置くのは水守・蒼月(四ツ辻ノ黒猫・e00393)。
そこには『立入禁止:建物の老朽化に伴い大変崩れやすくなっている為』と書かれている。これを道を塞ぐように設置することで、人払いを万全にしていた。
それから皆は灯りで照らしつつ、時計台を目指して歩き始めたのだった。
時刻は既に12時前。内部は静かだ。
「人払いはうまくいっているみたいだな」
岡崎・真幸(悔恨・e30330)は外の方向を確認するように眺めていた。場合によっては、今頃生徒達が侵入していた可能性もあるのだ。
「そう考えると、怪談って面白いよね~。ありもしないお話で皆で騒げるんだもん」
蒼月はマイペースに言ってから、真っ直ぐ前を見る。
「ま、今回はちょっと本気で命危なそうなんだけどね」
「そうだなぁ」
と、ゆっくり頷くのは銀山・大輔(青牛おじさん・e14342)だ。
「動く死体、ってどう考えてもデウスエクスの仕業だぁよ」
「それでも、深く考えず興味本位でやってくる人はいる。いけ好かないやり口だね」
天喰・雨生(雨渡り・e36450)は、言葉を続ける。その声音には僅かにだけ、憤りに似たものも滲んでいた。
「蠢く死体なんて言葉も、あながち嘘でもないとこ、趣味が悪くて最低な噂だよ」
「ホラーメイカーだかなんだか知らねェが、裏でこそこそせずに出てくりゃあ殴るんだがな」
伽藍堂・いなせ(不機嫌な騎士・e35000)は頭を掻きながら、舌打ち混じりに言葉を零す。
それに、イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)も考えるように首を傾げていた。
「屍隷兵が猛威を振るっているのは、何か起こる兆候なのでしょうかね……?」
「……どうだかな。ま、クッソ面倒臭ェが、今は屍隷兵だ。掃いて捨てるほどいる下っ端だろうが、つまり八つ当たりにゃあ事欠かねェってことだろ? さっさと行こうぜ」
いなせは拳を打ち鳴らして歩を進める。
「さっさとってのは同意だ。こんなもの放置していたくはない」
真幸も、機嫌の悪い声を零す。オカルトを汚すような敵の行為には、思うところがあるのだった。
それから、前へ視線を向ける。
そこにちょうど、時計台への扉があった。
「ここが怪異の発端……否、創られた怪談の仕掛け場所、というわけだ」
言葉・彩色(妖シキ言ノ刃・e32430)は白い狐面に手を添え、その隙間からくすりと、妖しい笑みを見せている。
「そういうことだね」
蒼月は言いつつ、扉に近づいた。
「よし、びっくりドッキリターイム! 蹴破ろう……だめ?」
「俺も時計台丸ごと燃やしたいところだが。普通に入るぞ」
真幸がそんな風に応えると、皆は頷く。そして扉を開けて、潜入した。
先頭はロザリアといなせ。背の高い区画内、特に上方を警戒して灯りを巡らせる、と。
「皆、下がって」
ロザリアが皆を止める。
直後、頭上から落下してくる影があった。
どさりどさり、と高所から着地したのは、蠢く屍骸。3体の屍隷兵だった。
「わぁ、予想通りだったね」
蒼月が慌てもせず間合いを取ると、彩色もくつくつと、笑いを零してみせる。
「──ではでは、御耳と御目々を同時に拝借。今宵を彩るは怪異譚。どうか、最期の時までお楽しみ頂けますよう」
その言葉を合図に、皆は屍隷兵を包囲した。
イリスは、鎌を突きつける。
「銀天剣、イリス・フルーリア―――参ります!」
瞬間、鎌で中衛の1体を穿ち、それを鈎にするように体を引きつけ、強烈な蹴りを入れた。
同時に、真幸は『Victorious Paean』。オウガメタルで鋭い刺突を喰らわせていた。
『ォオッ……!』
その1体は真幸へ反撃を狙ってくる。が、いなせとロザリアが魔力の篭った蹴りを当てると、怒りでロザリアに標的を変え、蔓状の腕で突いてきた。
前衛2体もイリスや真幸を狙って軟体状の腕を飛ばしてくるが、それはいなせが庇う。
直後には蒼月が花のオーラを展開。雨生も霊力を宿した紙兵を撒くことで、前衛を治癒・防護していた。
「攻撃は頼むよ」
「もちろんだぁよ!」
雨生に応えたのは大輔。中衛の屍隷兵へ走り込むと、刀に雷を纏わせ、輝く刺突を撃ち込む。
動きの鈍ったその1体に、彩色はそっと手を伸ばしていた。
「今よりこの場を彩るは、火車と呼ばれる火猫の御話――」
どこか飄々と語られる言葉とともに、生まれるのは炎の御業。
それが燃え上がる塊となると、屍隷兵に突撃。痛烈な衝撃とともに全身を炎上させた。
●作戦
屍隷兵は轟くような声を上げ、苦悶する。
だが、それでは倒れず、煙を上げつつも体勢を直していた。
前衛の2体は健常状態で、今にも攻撃せんと機会を窺っている。
「やっぱり、まずは数を減らさないと話にならないな」
真幸がナイフを手に言うと、雨生は頷いて、グラビティを集中していた。
「そうだね。そのためにまずは、牽制させてもらう」
すると、雨生の左半身に刻まれた梵字の魔術回路が赤黒く輝く。同時、雨生はフード付きローブを靡かせながら、巨大光弾を発射。前衛2体を後退させた。
「あとは、任せるから」
「ああ、わかった。おいビタ、次の仕事だ」
雨生に応えたいなせは、黒のアメリカンショートヘアのウイングキャット、ビタとともにその2体に立ちはだかる。
「僕達も、行くよ。アルマ」
さらに、ロザリアもビハインドのアルマとともに加わり、盾役で敵前衛を包囲する形を取った。
その2体は当然、いなせ達、そして前衛をも蹴散らそうと広範囲に腕を振るってくる。
だが自身の受ける衝撃に加え、攻撃役に飛ぶ分のダメージをも、いなせとロザリアは庇ってみせた。
衝撃の嵐の中で、ロザリアの笑みは消えない。誰も倒れさせず、皆が無事に帰る為に。仲間と、アルマの為に。多少の痛手を被ることは厭うつもりもなかったのだ。
「この痛み、倍返しにしてあげよう」
直後、ロザリアはアルマが金縛りにした1体へ、大鎌・Kaliの斬撃。体力を奪い取った。
「ちょっとじっとしてろよ」
同時に、いなせも『erste hilfe』による素早い応急処置と、ビタの翼で前衛を治療。
蒼月も花嵐の如きオーラを生成。立ち上る光とともに、皆の体力を持ち直させていた。
「これでとりあえず、回復は大丈夫かな」
「ああ、本当に助かった」
蒼月に、そして盾役の仲間へ言った真幸は、中衛の屍隷兵へ疾駆していた。
前衛の個体にも視線を走らせつつ、真幸は感情を高ぶらせる。
屍隷兵には同情もトラウマもある、が、それとは別件の、強い怒りがあった。
「何でお前らの武器は触手と粘液系なんだよ……!」
真幸は触手も粘液も苦手で、自身の武装にも出来ない程だ。端的に言ってブチギレ。怒りのままに、中衛の腕を猛烈な斬撃で斬り落とした。
『ウ、ォ……!』
屍隷兵は呻きつつも、急ぎ自己回復をする。
だが、そこへ間を置かず、彩色が朗々と語りだしていた。
「ではでは、御耳と御目々を同時に拝借。今よりこの場を彩るは、血に飢え狂う堕ちた英雄の御話――」
それは実在した怪異譚『血錆』。過去相対したエインへリアルを『怪異譚』とし、具現化する外法だ。
形を持って現れたかつての英雄は、黒く錆びた真紅の刃で一閃。屍隷兵の胸部を斬り裂いた。
「連撃で、いくだぁよ!」
そこへ、大輔も大槌を握りしめ、豪速で接近している。
直後には、大振りの一撃。凄まじい膂力からの殴打で、屍隷兵を壁に叩きつけた。
「あとはお願いするだ」
「了解です!」
応えてグラビティを集中するのは、イリス。
「時空歪めし光、汝此れ避くるに能わず!」
そのまま繰り出すのは、『漆』の魔弾・歪光。
手を翳し、魔法陣を掌から展開。超高速の光弾がそこから飛来し、屍隷兵を跡形もなく四散させた。
●怪異
屍隷兵は残り2体。前衛だけとなっていた。
大輔はそれを眺め、口を開く。
「油断しないで頑張るだ。……まだ2体いると思うと、面倒な気もするけどなぁ」
「何にせよ、さっさと退治しないとな」
真幸が再び攻めの構えを取ると、雨生は小さく頷いた。
「そうだね。怪談ですらない──こんなもの、見ていて気分のいいものでもないからね」
元々雨生は怪談を信じる質ではなく、興味の方向が向いているわけではない。
が、屍隷兵となった者を目の前にすればこそ、それを利用したやり方にはやはり、気に入らないものがあった。
彩色は、ゆるりと頷く。
「都市伝説は『本当にあるか分からない』から面白いんだよ。これじゃやらせ確定、不良が罠にはめるのと何も変わらない。これはもうホラーじゃなくて、テラーだよ」
けれど、と、それから屍隷兵に向いた。
「ここにいる以上は、キミ達にも『物語(いろ)』がある。──仮にも怪談として生まれたならば、教えてくれないか? それを、キミの『存在(ことば)』で」
知能の欠けた屍隷兵は、それをどう受け取ったか。
出来ることは、唯一の使命と理解している行動だけ。あるいはそれが存在証明とでもいうように、屍隷兵はただまっすぐに、こちらを襲ってきた。
雨生は、背丈ほどもある筆の形をした如意棒で、1体を打ち据える。
真幸も続けて『Victorious Paean』を行使。賛歌で屍隷兵を内部から破壊していった。
唸りを上げながらも、その1体は腕を伸ばしてくるが、その直前に頭上から迫る影がある。
「そう簡単には、攻撃させません!」
高々と飛翔し、体を翻しているイリスだ。豪速で降下すると、そのまま風のような飛び蹴り。その屍隷兵を吹っ飛ばす。
もう1体の方は、腕を大口のように広げ、イリスを飲み込まんとしてくる。だがそれも、ロザリアが庇い、受けきっていた。
微かに血を零すロザリアを、アルマは心配するような素振りで覗き込む。
「僕は平気さ。仲間と、そしてアルマ、キミが無事ならば」
それだけ言うとロザリアは、鎌に煌々とした炎を宿し、屍隷兵の肉を断っていく。
ロザリアの傷には、蒼月が素早く治癒のオーラを施している。
「回復はこっちに任せてね、っと」
蒼月がグラビティを篭めると、そのオーラは青く輝くような煌めきを見せ、傷を拭い去るように、体力を大幅に癒やしていた。
「チビも頼むぞ」
さらに、真幸の声に応じてボクスドラゴンのチビも、光を注いでロザリアを万全にしていた。
この間にもう1体の屍隷兵が攻撃を狙ってきている。が、そこに突如、冷気が舞い降りていた。
「今よりこの場を彩るは、吹雪呼ぶ雪女郎の御話――」
それは彩色の語りによる力。
冷気が猛烈な吹雪となって2体もろとも後退させると、いなせも手をまっすぐに伸ばしていた。
「これでも喰らっとけよ」
瞬間、噛み付くような獰猛なオーラを放ち、屍隷兵の腹を食い破る。
派手に転げたその1体は一気に瀕死に追い込まれる。それでも、蠢く死体の如く、這いつくばってきた。
『……ウ、ォ……』
「──ああぁうるせェ!」
と、そこで大輔が、いい加減にしろとばかり、キレた。
「テメェら、死体の癖にしつけぇんだよォォ!! ドタマ、カチ割ってやるぞゴルァア!!」
穏やかな空気から一点、アウトローな眼光を湛え、フラストレーションを爆発させるとともにハンマーで猛烈な殴打を加えた。
その攻撃、『自棄連撃』によって、その屍隷兵も散り散りに打ち砕かれていった。
●決着
時計台に蠢く屍骸。それも最早1体だけとなっていた。
屍隷兵は、それでもただの獣の如く、獰猛に攻め込んでくる。だが伸ばされたその腕を、真幸はすんでで躱していた。
「悪いが、そうそうやられねぇよ」
真幸はそのまま間合いを詰め、連続の剣閃で胸部、腹部を斬り裂いていく。
ふらつく屍隷兵へ、彩色は暴走する殺戮機械を召喚していた。
「今よりこの場を彩るは、反乱する機械の御話――」
言葉に呼応して、機械は屍隷兵の片腕を引きちぎっていく。
「じゃあ、僕もせっかくだから」
と、同時、蒼月は敵の背後に巨影を生み出していた。
それは幻術『狂猫』。無邪気な声と、弧を描いた目を見せたそれは、爪と牙で裂くように屍隷兵の腹に穴を開けていく。
苦悶のうちに倒れ込む屍隷兵。
それでも起き上がり、残る腕を針のように伸ばしてくる。が、その一撃を光る剣閃が弾く。
イリスの具現化したマインドソードだ。
「光の剣……こういうのもいいですね!」
普段佩いている刀とは違った感覚に、イリスは張り切りながら、さらに連撃。屍隷兵を床に転がせた。
「このまま畳み掛けて行きましょう!」
「ああ、わかったよ。最後まで抜かりなく、ね」
応えたロザリアは、『簒奪するは命の華』。アルマが金縛りにした屍隷兵に、血の華を咲かすが如く十字の斬撃を喰らわせ、動きを封じ込めた。
「おらァァ! 早くくたばれェエエ!」
大輔はそこに走り込み、ハンマーでかち上げるように吹っ飛ばす。
「ま、腹いせにゃあ充分だったな」
いなせは床を蹴って飛び、宙返りして蹴り落とし。
床に叩き付けられた屍隷兵に、雨生はからん、と高下駄を鳴らして歩み寄った。
「今度こそおやすみ。佳き夢を」
瞬間、行使したのは『第壱帖丗肆之節・塵核』。
それは一族に伝わる術「雨呪」の一つ。掌底により魔の波動を撃ち込むと、その波動が屍隷兵の水気に結びつき、急速吸収。
屍隷兵は内部から炙られるように、そのまま朽ちていった。
「終わったね~」
戦闘後。蒼月の言葉に皆は息をついていた。
「これにて化け物はケルベロスに倒されてしまいました~、めでたしめでたし? って感じかな」
「少なくともここで犠牲者が出ることはなさそうですし、一件落着ですね!」
蒼月に、イリスも明るく言っていた。
真幸は敵の残骸を見下ろしている。
「屍隷兵を操る奴らが死体に何か埋め込んでいる、なんて話もあったが、手がかりはなかったな」
「ま、ここにいるやつを掃除できただけでも充分だろ」
いなせはそんな風に応えていた。
「……」
雨生は暫し、静かに見下ろしている。それは屍隷兵を悼んでいるのだった。
それから顔を上げ、見回した。
「じゃあ、壊れたところは直してから帰ろうか」
「おいらも手伝うだぁよ」
大輔も言って、壊れた箇所の修理、そして瓦礫運びも行った。
ロザリアも各所にヒール。そうして皆で、古びただけの静かな風景を取り戻した。
「こんなものかな」
ロザリアが言うと皆も頷き、外へ。校舎を背にそれぞれの帰る場所へと、帰還していった。
彩色は狐面を手に添え、一度だけ校舎を振り返る。
「今宵を彩った物語『時計台の怪異』……これにて、閉幕」
それきり、彩色もまた、夜に姿を消した。
作者:崎田航輝 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年9月18日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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