双刀の頂

作者:崎田航輝

 柳の茂る森の中で、素振りをしている剣道家がいた。
 手には木刀を持っているのだが、それは一振りではない。右手に通常の長さのものをもち、左手には脇差サイズの物をもつ、二刀流である。
「……かの剣豪も二刀流であったという。極めれば、絶対にこちらのほうが強いはずだ」
 そう独りごちて、修行を続ける。
 一刀よりも二刀のほうが強い。それは単純な考えだが、しかしその分真理であると確信を抱いて、この剣道家はそれを修めようとしているのだった。
 だが、二刀となればその分扱いも難しい。ふと柳の葉を切り落とそうと試みるも、元の練度の低さも相まって、木刀ですら思い通りの剣閃が走らなかった。
 と、そこに突如、背後から現れた者がいた。
「お前の最高の『武術』、見せてみな!」
 そう言って近づく、ドリームイーター・幻武極だった。
 すると剣道家の体が操られたように動き、二刀を幻武極に打ち込んでいく。
 しばらくすると、幻武極は頷いた。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
 そうして、言葉とともに、剣道家を鍵で貫いた。
 剣道家は、柳の葉の間に倒れ込む。するとその横に、1体のドリームイーターが生まれた。
 それは、右手に太刀、左手に脇差しを持つ二刀流。
 鋭く重い日本刀といった武器だったが、ドリームイーターはそれをいとも軽く振り抜き、柳の葉だけを綺麗に削ぎ落とす。
 洗練された二刀流、それはまさに剣道家が理想とする剣士の姿であった。
 幻武極はそれを確認すると、外の方向を指す。
「お前の武術を見せ付けてきなよ」
 ドリームイーターは、言われるがまま、森を歩いて出ていった。

「集まって頂いて、ありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は、ケルベロス達に説明を始めていた。
「本日は、ドリームイーターが出現したことを伝えさせていただきますね」
 最近現れたらしい、幻武極というドリームイーターの仕業のようで、自分に欠損している『武術』を奪ってモザイクを晴らそうと起こした事件のようだという。
 今回の武術家の武術ではモザイクは晴れないようだが、代わりに武術家ドリームイーターを生み出して暴れさせようとしている、ということらしい。
 このドリームイーターが人里に降りてしまえば、相応の被害も出てしまうだろう。
「その前に、この武術家ドリームイーターの撃破をお願いします」

 それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「今回の敵は、ドリームイーターが1体。場所は京都にある山林です」
 柳の葉が茂る、静かな場所だという。
 一般人などの被害を心配する必要もないので、戦闘に集中できる環境でしょうと言った。
「皆さんはこの山中へ赴いて頂き、人里に降りようとしているドリームイーターを見つけ次第、戦闘に入って下さい」
 このドリームイーターは、自らの武道の真髄を見せ付けたいと考えているようだ。なので、戦闘を挑めばすぐに応じてくるだろう。
 撃破が出来れば、剣道家の男性も目をさますので心配はない、と言った。
「このドリームイーターは、被害にあった剣道家さんが理想としていた二刀流の剣術を使いこなすらしいです。中々の強敵ではあるようですね」
 能力的には、両手装備の日本刀のグラビティに似た力を行使してくるだろうという。
 各能力に気をつけておいてくださいね、と言った。
「いわば剣の達人……ですが、倒せない相手ではないはずなので、是非気を引き締めて、頑張ってきてくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
夜刀神・罪剱(星視の葬送者・e02878)
緋色・結衣(運命に背きし虚無の牙・e12652)
立花・吹雪(一姫刀閃・e13677)
夜殻・睡(氷葬・e14891)
尾神・秋津彦(迅狼・e18742)
レピーダ・アタラクニフタ(窮鼠舌を噛む・e24744)
ルカ・フルミネ(レプリカントの刀剣士・e29392)
王・美子(首無し・e37906)

■リプレイ

●接敵
 山へ入ったケルベロス達は、柳が茂る一帯にやってきていた。
 そこは既に敵との接触予定地点でもある。皆は警戒しつつ、敵影を探し始めていた。
「はー、折角の森林浴だってのに。ったく、汗かきたくねェなあ……」
 王・美子(首無し・e37906)は見回しながら、少々気だるそうだ。
 それを見て、立花・吹雪(一姫刀閃・e13677)は少し微笑んでみせる。
「山中は討伐に集中できる環境、とも言えますから。作戦成功の暁には森林浴を楽しむのもいいかも知れませんね」
 それから吹雪は、真剣な表情になった。
「ただ、剣道家が信念を持って取り組んでいた二刀流、その夢から生み出された夢食いですから。かなりの強敵かもしれません」
「腕前によっては厄介な相手となるでしょうな」
 尾神・秋津彦(迅狼・e18742)も応えながら、油断なく視線を走らせていた。
「二刀流なー」
 と、夜殻・睡(氷葬・e14891)は無表情気味に、愛刀の雨燕を握っている。
「鞘を片手に持ったりはするけど二刀はやったこと無いな。どんな感じなんだろ」
「対峙すればすぐに、わかるさ。幻がどれ程の剣術を使えるのか」
 緋色・結衣(運命に背きし虚無の牙・e12652)は言って、木々の間を見やっている。その様子はただ静かに、仕事の時間を待っているかのようでもあった。
 そして、程なく。
「見つけた」
 少し離れた位置で捜索を行っていた睡が、皆に声を投げる。
 その方向から、山を降りるように、人影が近づいてきていた。
 二刀を腰に佩いた、剣道家のドリームイーターだ。
「キュッキュリーン☆ そこまでです! 剣道家さんの理想の姿を悪用なんてさせませんよ!」
 すると、レピーダ・アタラクニフタ(窮鼠舌を噛む・e24744)は素早く飛行し、そこに立ちはだかる。
 皆もドリームイーターを取り囲む位置に移動していた。
 気づいたドリームイーターは、警戒するように見回す。
『何者だ?』
「ケルベロス。そして、剣士であります」
 応えた秋津彦は、大業物・葵崩之太刀を抜いて、面前に向いた。
「小生の流派は一刀流の系譜にて、かの燕返しの剣士とも源流にて繋がりがあるとも言えます。その二刀に巌流島の勝者を意識するものがあるなら、勝負すべし!」
『ほう、面白い。だが言葉通り、巌流島の再来ならば、勝つのは二刀の剣士であるぞ!』
 ドリームイーターも、好戦的に二刀を抜いてみせた。
 すると、レピーダは傘型の、というよりも傘そのものの武器・カサドボルグを構える。
「それなら、レピちゃんは二傘流でお相手しましょう☆」
『二傘流? 寡聞にして知らぬが……どんな武術があろうと、二刀流が最強だ!』
 ドリームイーターは自信もあらわに、構えを取る。
 ルカ・フルミネ(レプリカントの刀剣士・e29392)は成る程、と頷いていた。
「腕に自信アリって感じだね」
 そうして、自身も得物の槍を握りしめた。
「そんじゃその自信が本物か、見せてちょーだいよ!」
 同時、ドリームイーターへ接近する。
 ドリームイーターもかなりの素早さを見せ、一度飛び退く。だが、そこに別方向から迫る影があった。
「……正直言って、お前自身には興味はないが──」
 冷静な言葉とともに、敏捷性を活かして頭上へ跳んでいる、夜刀神・罪剱(星視の葬送者・e02878)だ。
「……でも強いなら相手してやるよ。俺の技量とどっちが優れているか、比べてみるか」
 瞬間、敵の背後に着地すると、鋭い蹴りで足払いした。
 連続して、吹雪も関節に蹴撃を加えることで、機動力を奪っていく。
 バランスを崩しつつも、ドリームイーターはレピーダに斬りかかろうとする。が、その一撃は美子が銃身で受け止めていた。
「そうそう思い通りにはさせねェよ」
 美子は直後に光の盾を顕現。守りを固めると同時に、自身の傷を回復した。
「やはり、無駄に動かれても鬱陶しいな」
 口を開く結衣は、ドリームイーターへ肉迫。魔剣レーヴァテイン・エクセリオに鋭利なグラビティを纏わせていた。
「先ずはその足を、確実に止めさせてもらおうか」
 瞬間、狙いすました剣撃、『久遠<届かない明日>』で斬り払った。
 それは時の流れを断ち斬り、断続的に相手の時を停止させる技。多重に時間を切られたドリームイーターは、確かにその動きを鈍らせた。

●剣戟
 一度間合いを取ったドリームイーターは、僅かに顔色を変えたようにしていた。
『成る程、言うだけの実力はあるのだな!』
 すると、喜色を浮かべるように、二刀を握りしめる。
『ならば、こちらも全霊の二刀流を見せてやろう!』
「やっと本気ってわけ? 面白そうだね」
 ルカがそれに笑みを返す。と、吹雪も、凛々しい面持ちで頷いていた。
「洗練された二刀流の冴えがどれほどのものか──私も刀剣士として興味はありますね」
「うん、折角だから私も、ちょっとお勉強させてもらおうかなー?」
『いいだろう、だが剣を受ける時は死ぬ時だぞ!』
 ルカのあっけらかんとした言葉に、ドリームイーターは声を上げて走り込んできた。
 が、ルカはオウガメタルを流動。敵に先んじて、剛烈な拳の一撃を打ち込んでいた。
「こっちも剣だけで戦うとは言ってないからね! 異種格闘技ってやつ!?」
『ぬぅ……!』
 たたらを踏んだドリームイーターは、再度距離を取ろうと素早く下がる。
 だが、睡が追い縋って雨燕を掲げていた。
「速い、けど。追いつけなくはない」
 ドリームイーターは、鈍った動きで睡を振り切れない。横一閃、睡の熱を奪う斬撃を喰らい、衝撃で止まった。
 すると、ドリームイーターは正面を切って攻めてくる。
 繰り出される斬撃を、しかし秋津彦が切り結ぶように受け止めていた。
「小生の尾神一刀流は対二刀の心得も備えた剣。修練により培った術理を、披露してくれましょう」
 鍔迫り合いから、秋津彦は力の流れを汲み取って、一瞬の隙に敵の太刀を弾く。
 瞬間、その懐へ雷光を纏う刺突を打ち込んだ。
「お次を頼みますぞ!」
「わかりました! ドカンといっちゃいますよー☆」
 応えるレピーダは、翼を輝かせると、自身もまた光の粒子に変遷。輝く塊と化して、猛烈な体当たりを命中させた。
 その間に、美子が治癒のグラビティを集中している。
 それは光の障壁のように形成され、秋津彦が剣戟の余波で受けていた傷を回復させていた。
「大丈夫か?」
「うむ、助かりましたぞ」
 美子に秋津彦が応えると、結衣もまた、蛇腹剣グレイプニル・ゼロの地獄を強めていた。
「守りも、固めておくか」
 すると、その地獄の炎が魔法陣を描くように広がり、前衛の防御力を高めていく。結衣は静かに敵を見た。
「これで鋭いだけの剣も、意味を成さないだろう」
『言ってくれる……!』
 ドリームイーターは憤慨するように斬り込んでくる。だが、吹雪も同時に、そこへ踏み込んでいた。
「遅いです。視認できるならば、斬ることも難しくはありません──!」
 瞬間、吹雪は低い姿勢から撫で上げるような、優美な剣撃。
 ドリームイーターは体勢を崩され、数歩下がる。それでも再び刀を振り上げるが、その刃が直後に弾かれた。
 罪剱が直剣・十返りの刻を突き出し、剣撃を阻止していたのだ。
「……それで終わりじゃないだろ。その剣術、もっと見せてみろ」
 ドリームイーターは罪剱の言葉のままに二刀を振るってくる。
 が、罪剱は一歩下がることで掠めるに留めると、翻弄するように体をずらし、再び視界外へ。そのまま素早く背を取って、縦横に斬撃を刻んでいった。

●力
 血を滴らせながら、ドリームイーターは呻いていた。
『何故だ、最強のはずの二刀流で、苦戦するとは……』
「流派だか武術だか知らねーけどサ。一本だろうが二本だろうが勝ちゃ良いんだよ。その気持ちの違いじゃねーの」
 美子はどこか興味薄に言ってみせる。
 するとドリームイーターは声を荒げた。
『勝つためだからこその、二刀流であろう』
「二刀だから勝てると思っているなら、それこそ間違っているな」
 結衣は、それに静かに声を返す。
「剣はただ目の前にあるものを斬るだけのものではなく。二刀流はただ両手に武器を持てばいいというものでもない。──尤も、その力に意味を持たないドリームイーターには理解できよう筈もないか」
『……よく分からぬことを。我は最強の剣術を得た、それこそが意味だ!』
 ドリームイーターは刀を手に、駆けてくる。
 だが、結衣が剣を振るうと、飛んだ斬撃が炸裂。爆破の衝撃で敵は逆に後退した。
 そこに吹雪が追いすがるように疾駆。刀にグラビティを篭め、掲げた。
「その力で人を襲うことが意味だというのなら。それこそ、私達は負けられません」
 同時、豪速で振り下ろす。苛烈な剣撃は、敵が防御のために突き出した脇差しを弾き飛ばし、胸部を斬り裂いていった。
 睡は、ふと落ちた脇差しを拾ってみる。
 が、両手に刀を持つ感覚はやはり落ち着かない。
「んん。やっぱり二刀流は苦手だな」
 それから、脇差しを遠くへ放り投げると、一刀へ花弁の如き雪を纏わせる。
「……此の華は香らず。只、白く舞い散るのみ」
 繰り出すのは、『不香花』。逆袈裟に斬り上げると、敵を足元から凍結させ、いっそう動きを鈍らせた。
 ドリームイーターは、それでも懐から新たな小太刀を取り出してくる。だが、放たれた斬撃を、レピーダは傘でいなしていた。
「剣術勝負とは参りませんが、傘の扱いなら負けませんよ!」
 間を置かず、傘に雷撃を込めて一撃。翼の加速も乗せた刺突で、ドリームイーターの腹部を貫いた。
 血を迸らせつつも、ドリームイーターは薙ぎ払いで前衛を攻撃してくる。だが、それによる負傷も、美子の拡散したオウガ粒子が即座に治癒していった。
「ま、回復はこんなモンだろ。攻撃は任せた」
「無論です。隙を見逃す小生ではありませんぞ!」
 応える秋津彦は、敵の攻撃後の一瞬の間隙に、距離を詰めている。そのまま、太刀の長さを感じさせぬ剣閃の嵐で、深い傷を刻んでいった。
『ぬぅ、我の剣の方が鋭いのだ……!』
 ドリームイーターはやりかえそうとばかり、上段から刀を振り下ろそうとする。
 が、刃ではなく、上がった手元の方を、罪剱が蹴りで止めていた。
「……剣が鋭いなら技で対処するだけだ」
 罪剱はあくまで静かに、そしてどこか飄々と、体を翻す。刹那、開いた懐へ連続で蹴りを打ち込み、ドリームイーターをふらつかせる。
 ルカはばちり、と指先から雷光を生み出していた。
「雷切ってのもあるらしいけど、貴方はどうかな?」
『……最強の剣術なれば、無論斬る!』
「そう。じゃあ遠慮なく。……シビれろっ!」
 ルカは構えた敵へ、『兵装・陣雷』。弾けるほどに眩い雷撃を飛ばす。
 ドリームイーターは剣先で雷を受け、耐え抜こうとする。だが激しい雷撃は全身にまで奔り、小爆破。ドリームイーターを倒れ込ませた。

●決着
 這うように起き上がるドリームイーター。その顔は悔しげに歪んでいた。
『おのれ、二刀流が、負けるわけが……』
「だから、刀二本持ってりゃいいと思ってるのが違うってンだろ」
 美子は返すように言う。
「大体、男なら素手でこいってンだ。私は女らしく丸腰相手でも武器を使うけどな」
『そんな卑怯な──』
「殺られる前に殺れってオーダーだからな」
 美子は敵の声を遮って、『Dry fire』。接近して銃床で顔面を殴りつけた。
「真っ当な武人であれば斬り結ぶのも楽しそうだがな。どこまで行っても、素人の理想から生まれた幻だ。ならば倒すだけ、というのは正しいだろう?」
 結衣も言いながら、横合いから肉迫。時を斬る剣撃で、再び敵の速度を奪った。
 同時、睡も踏み込んで、冷気を伴う斬撃。刻んだ傷を凍らせている。
「そろそろ、苦しそうだな」
『まだだっ……!』
 ドリームイーターは反抗するように二刀を振り回す。しかし、その刃を、ルカの日本刀が左右に払っていた。
「私も剣にはちと覚えがあって、ねっ!」
 そのまま刃を縦に走らせ、敵の体を広く斬り裂く。
 血を吐いたドリームイーターは、何とか構えを戻そうとする。だが秋津彦が刃で刃を抑え、それを許さない。
「二刀流への必勝法は、その構えを崩す事。いきますぞ──この一太刀、霊峰より吹きし膺懲の風なり!」
 瞬間、秋津彦は尾神一刀流『筑波颪』。真空の霊力を纏った絶速の一刀で、敵の手元とともに、太刀をも両断した。
 そこへ吹雪も接近し、『雷華』。
「これが今の私の全身全霊の一刀です。男性を蝕む悪夢を、この一閃で切り裂く!」
 それは雷を斬魔刀【絶花】に纏わせた、熾烈な斬撃。花の如く輝く雷に、ドリームイーターは吹き飛ばされ、木に叩き付けられた。
 レピーダは同時に、『閃光にして刃たる者』を行使していた。
「これで、悪夢はキュキュッと覚めちゃってください!」
 それは翼の輝きをカサドボルグに集約、極大の光刃を形成する技だ。
 誰かが光あれと望む姿、それを現実に現したように、自身も光そのものとなって、レピーダは苛烈な剣撃を繰り出す。
 意識を飛ばされたドリームイーターへ、罪剱は『零刻弔』。
「……まあ、悪く思うな。安らかに眠れ」
 その力により敵の時が止まると、刹那。罪剱は刃でその命を斬り裂いた。
「――貴方の葬送に花は無く、貴方の墓石に名は不要」
 静かに語られた罪剱の声を最後に、ドリームイーターは四散、消滅した。

 戦闘後、皆は剣道家の男性の元へ赴いた。
 男性は無事に目を覚ましており、皆から事情を聞くと礼を言っていた。
 ただ、男性は不甲斐なさげでもあった。
「二刀の修行はまだ早かったということでしょうか……」
「強さを追い求めるのは悪い事じゃねーけどよ」
 と、そこへ美子は声をかけていた。
「自分の膂力に見合った得物を選ぶのもまた強さってな。その辺考えてみてもいいんじゃねーの」
 男性はそうですね、と頷き、考えるように自身の木刀を眺めていた。
「それでも二刀の稽古を望むなら。小生がお付き合いいたしますぞ」
 秋津彦はそう言ってみせる。すると男性は、決心したように二刀流の稽古を望んだ。
「そもそも二刀といっても、その理合は一刀と変わらず――」
 と、秋津彦の指導で打ち合いが始まると、睡は戦闘場所の周囲の片付けをし始めた。
「またド派手に暴れたなぁ。……いや、俺らもだけど」
 睡は見回す。実際、木々や葉もそれなりに斬り裂かれている。
「ヒールだけは、しておきましょうか」
 吹雪が言うと、皆も頷き、修復作業を進めた。
 そのうちに戦闘の痕跡もなくなり、美観は取り戻されていく。
「──小生もまだまだ修行中の身。いずれ貴殿の剣が成就したら手合わせしましょう」
 稽古も一段落し、秋津彦が男性を見送る。
 すると結衣も、歩き出した。
「では、帰ろうか」
 それを機に、皆も山を降りる方向へ。
 平和の戻った空の下、そうして三々五々、それぞれの帰る場所へと去っていった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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