放課後の教室。数人の生徒達がだけが残るそこに、その存在は現れた。
「ねぇ、あなた達、怪談話は好きかしら?」
音もなく近づいたその人影に、生徒達は驚く。
そうして、思わず頷いてしまう。
それを見て、その人影──ホラーメイカーは満足げに話し始めた。
「この学校の敷地にある旧校舎。そこに現れる“黒魔術の死骸”の話よ」
旧校舎はかなり昔に閉鎖され、今は入れなくなっている。
これはそこに出る化け物の話だという。
「過去に、旧校舎が現役だった頃、そこで他の生徒に恨みを持った生徒が、黒魔術を実行したの。それは他人を呪い殺すと同時に、自分にも呪いが降りかかるものだったの」
結果として、黒魔術を使った生徒は、呪いをかけた生徒とともに死んでしまった。
曰く、それが原因で旧校舎は閉鎖され、人が立ち入らなくなったという。
が、今でも、黒魔術の実行された図書室に入ると、蠢く死骸が出てくるという。
「それこそが、死んだ生徒達そのものなのよ。いつまでも死骸として蠢く……そういう呪いだったというわけ」
生徒達は、少し寒気を感じるように、その話を聞いていた。
だがどこか、半信半疑でもあった。
「中々、怖いけど。でも、作り話じゃ……」
と、そう生徒達が向き直って問い返した時。
すでにそこにホラーメイカーはいなかった。
「……まあ、どうせ、嘘だろうけど。黒魔術とか、動く死体とか、ねえ……」
そんなふうに話す生徒達。
だが、旧校舎に入ったことのあるものもいなく、微かに興味と冒険心をくすぐられたようではあった。
「集まって頂いてありがとうございます」
イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達に説明を始めていた。
「本日は、屍隷兵の事件について伝えさせていただきます。ドラグナー・ホラーメイカーによるもので、中高生を標的にした事件です」
屍隷兵を学校に潜伏させた上で、中高生に怪談に興味を持たせて……その屍隷兵の居場所に自分からやってくるように仕向けている、という事件のようだ。
怪談は作り話なのだが、これが広まってしまえば、被害が拡大していく恐れもある。
早急に解決する必要があるだろう。
「怪談話を聞いた生徒さんたちが、現場に現れないように対策しつつ……この屍隷兵の撃破をお願いします」
それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「今回の敵は、屍隷兵が3体。場所は長野県にある学校、その旧校舎となります」
かなり昔に閉鎖されたという、古い木造の建物である。
この内部に、ホラーメイカーは怪談通りの屍隷兵を仕込んであるという状態のようだ。
「ホラーメイカーが広めた怪談話は、この建物の図書室に蠢く死骸がいる、というものみたいですね」
怪談自体は嘘なのだが、そこには屍隷兵がいる。もし、興味を持って一般の生徒などがやってきてしまえば、生きて帰ることは出来ないだろう。
「ここへ赴いて、屍隷兵を倒して頂く必要があります」
旧校舎自体は、木造の大きくない建物だ。
屍隷兵がいるのはその図書室。入ればすぐにでも屍隷兵が出て来るだろうということで、注意して踏み込む必要があるだろうといった。
「屍隷兵の能力について説明を。1体がファミリアロッド相当の能力を持ち、2体がブラックスライム相当の攻撃をしてくるでしょう」
各能力に気をつけておいて下さい、と言った。
「一般の方々が被害に遭う前に……是非、撃破をお願いしますね」
イマジネイターはそう言って頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
花道・リリ(合成の誤謬・e00200) |
白羽・佐楡葉(紅棘シャーデンフロイデ・e00912) |
アルケミア・シェロウ(トリックギャング・e02488) |
天野・司(たぶんおそらくきっとプリン味・e11511) |
カジミェシュ・タルノフスキー(機巧之翼・e17834) |
マティアス・エルンスト(レプリフォース第二代団長・e18301) |
エドワウ・ユールルウェン(夢路の此方・e22765) |
ダンサー・ニコラウス(クラップミー・e32678) |
●潜入
放課後の学校。旧校舎の前で、ケルベロス達は人払いを始めたところだった。
「さっそく、いたかも」
と、そこでダンサー・ニコラウス(クラップミー・e32678)が、外の方向に目を留める。
そこに生徒達が数人、興味を惹かれたように旧校舎へ向かってくるのが見えていた。
皆は頷き合い、生徒に近づく。
「悪いけど、ちょっといいか!」
天野・司(たぶんおそらくきっとプリン味・e11511)は手を合わせて軽い調子で声をかけた。
「旧校舎でデウスエクスが出たんだ。戦いに巻き込むわけにはいかないから、今日の所は帰ってくれ!」
生徒達は、『デウスエクス?』と、驚いた顔を見せた。
「僕たちが聞いたのは、怪談だったけど。黒魔術がどうっていう……」
「その怪談は作り話だ」
そう声を返すのは、マティアス・エルンスト(レプリフォース第二代団長・e18301)。
「デウスエクスに見つかる前に、ここから遠くへ逃げろ……!」
「そういうわけ。だからこの先は君たちには手に余るよ。わたしたちに任せな」
アルケミア・シェロウ(トリックギャング・e02488)も、言葉を継ぐ。
生徒達は、流石に危険を理解したか、頷いて立ち去っていった。
「むこうのかたがたにも、いっておきましょうね」
エドワウ・ユールルウェン(夢路の此方・e22765)は、その様子を窺っていた別の生徒達の姿も見つけて、事情を説明した。
ダンサーも同行し、危険を伝えていく。
「好奇心は猫だってころがすかも」
「そういうわけだから。無駄死にしたくなかったらとっとと帰んなさい」
花道・リリ(合成の誤謬・e00200)がぴしゃりと言うと、生徒達はそれにも怖がるように逃げていった。
実際、リリの言葉はかなりつっけんどんなものだった。が、それは若者への接し方がわからないからでもある。
「……こういうの、得意じゃあないのよね」
「何にせよ、生徒が逃げてくれたのならよかった」
カジミェシュ・タルノフスキー(機巧之翼・e17834)は言って見回す。
それに白羽・佐楡葉(紅棘シャーデンフロイデ・e00912)は頷き、旧校舎へ視線を戻した。
「では、一足早い彼岸参りと行きましょうか」
皆はそれから、旧校舎に入った。
建物自体が大きくないこともあり、現場までの道に人がいないことはすぐに見て取れた。
佐楡葉はそれから殺界を形成し、外から生徒が入らないよう、キープアウトテープで道を封鎖した。
皆はその後、改めて図書室の前まで進む。
「歩きにくい場所ね」
朽ちた床に、リリは相変わらずつんと言葉を零す。
ただ、学校へ殆どいかなかった経験からか、旧校舎内を眺める視線は興味深げだった。
佐楡葉も少し視線を巡らす。
「こんな場所に敵を設置して、人を誘き寄せて。随分と迂遠な真似をする手合いも現れたものですね」
「人の心を巧妙に操る作戦だと思う」
そう言うのはマティアスだ。
「ちょうど冒険や勇者に憧れる頃の子供達だからな。俺も一般人だったなら、そんな怪談を聞かされたら怖いと同時に見に行ってみたくなるな……」
マティアスは人の心を持ってまだ2年にも満たない。だからこそ、子供の冒険心には共感するところがあるのだった。
司も、頷く。
「知らないもの、不思議なものにワクワクできるのは幸せな事だよ。……だから、それにつけ込むような真似はさせられないな」
「ああ、犠牲は絶対に出さない」
マティアスの言葉に皆も頷き、扉の前へ。
「ストーカー、おねがい、ね」
ダンサーは、カメラを手に背後に立っていたシャーマンズゴースト、ストーカーを前に出して、先に入らせた。
すると、床の軋む音とともに、異形が現れる。
ロッドを持った屍隷兵と、腕をヘドロ状にした屍隷兵、計3体の敵影だ。
「怪談の幕開けといきたいんだろうけど──お生憎サマ、ホラーメイカーの作り上げた演目はここまで」
と、アルケミアは一度好戦的な表情を浮かべると、狐面をその顔に付けた。
「さ、わたしたちの舞台の幕を開けよう――!」
●開戦
屍隷兵は、低い轟きのような声を上げながら、こちらに攻撃の意思を示し始めていた。
だが、その前に初手、エドワウが手を伸ばしている。
「みんなを、まもってね」
その言葉で現れるのは、UFO型ドローン。おもちゃのようなそれは、皆の周りを飛び回り、星の軌跡を煌めかせ、前衛の守りを固めていった。
「これで、準備はばんたんです」
「じゃあ、攻撃は俺がいかせてもらう」
言って、気合を入れたのは司だ。
そのまま力を込めると、胸元の地獄が光り輝く。同時、司は床を蹴って屍隷兵に肉迫した。
狙いは、ロッドを持つ個体。脚装・殲刻にグラビティを集中した司は、宙返りをして一撃。痛烈な蹴り落としを叩き込んだ。
「次、頼む!」
「了解。戦闘モード、起動確認──作戦行動に入る」
マティアスは、静かに応えて機械剣・Schwertに地獄の炎を纏わせる。瞬間、高速で疾駆し、僅かに斜め方向へ突き進んだ。
「攻撃軌道……計算完了」
そこへ燃え盛る剣を振るうと、ちょうど、たたらを踏んだ屍隷兵がその動線に入り込み、マティアスの剣撃が直撃する形になった。
ただれた皮膚を燃やしながら、屍隷兵は転倒する。が、それでもすぐに立ち上がると、ロッドから炎を放ち、こちらの前衛を衝撃で包んできた。
多重に燃える炎は、苦痛を運ぶ。
だが、エドワウがそこで口を開いた。
「メル、かいふくをたのむよ」
するとそれに呼応して、テディベア型ぬいぐるみのボクスドラゴン、メルがぽむっと飛び出した。メルは司にきらりと光を注ぎ、体力を癒やす。
「ストーカーもヒールをがんばって」
さらに、そのダンサーの言葉を受けて、ストーカーも祈りを捧げてリリを回復。
カジミェシュも紙兵の霊力を使い、前衛の体力を持ち直させた。
この間にリリは、ひらひらと飛ぶ蒼い胡蝶を指先に留めている。それは茫洋と輝く、濃密なオーラの塊だ。
「ジャマーってのは本当に鬱陶しくて嫌い」
そして指先をすっと前に伸ばす。
「だからさっさと倒れて」
刹那、蝶は羽ばたくように飛ぶ。蒼い燐光とともに高速で進むそれは、屍隷兵の胸部を貫いた。
衝撃で吹っ飛びながら倒れる屍隷兵。だが、まだ体力は残しているようで、藻掻きながらも絶命はしていない。
この間に前衛の2体も、リリとエドワウに向けて、腕を伸ばして攻撃してきた。
しかし、その二撃は途中で阻まれる。
一方をストーカーが、もう一方をマティアスが盾となり防いでいたのだ。
「防御機構、正常作動──攻撃を、頼む」
「了解っと」
マティアスに声を返して、駆け出したのはアルケミアだ。2体をかいくぐり、接近するのはロッドの屍隷兵。
「速攻で片づけるよ」
「ん、わかったかも」
アルケミアの言葉にダンサーも応え、追随して距離を詰めていた。
屍隷兵も、ロッドを振るおうとした。だが、アルケミアが蹴り上げる速度が勝り、屍隷兵は宙に煽られる。
そこへ、ふわりと跳躍したダンサーが、飛び蹴り。屍隷兵を床に叩き付けた。
呻くように這いつくばる屍隷兵。それを、佐楡葉が見下ろした。
「黒魔術で出来た死骸、という設定でしたか。多少は丈夫なようですね」
言いながら、佐楡葉は膨大な魔力による弾丸を生み出している。
「今後、同じ事件で遭遇した時の為のサンプルとして、どこまでもつか、じっくり確認させて頂きます。とはいえ――このBloody Messの熱に耐えられるとは思いませんが」
瞬間、魔力弾は至近距離で放たれた。
命中と同時、肉片が散る。その能力、『Bloody Mess』の名の通り、屍隷兵は苛烈に過ぎる熱量に耐えられず、ばらばらに四散した。
●連撃
屍隷兵は残り2体となっていた。
その2体は怯むでもなく、青黒い皮膚の顔で、攻撃の機会を窺っているばかりだ。
「仲間が死んでも我関せずって感じだね」
アルケミアがふと口を開くと、司も応える。
「知性が、ほぼ残っていないんだろうな」
司は一度目を伏せていた。しかしすぐに、抜け目なく敵の様子を観察する。
「何にせよ、デウスエクスならば数が減っても、知性がなくても、危険には違いない」
「ええ。ですから還るべきものは還るべき場所へ、誘ってあげましょう」
言葉と同時、佐楡葉はまっすぐに駆け、屍隷兵への距離を詰めていた。
屍隷兵は唸りながら腕部を振り上げてくるが、佐楡葉は蹴り上げて、その腕を弾く。
そのまま、返す刀で体を翻し、勢いをつけた蹴りを顔面に叩き込んだ。
吹っ飛んで、顔から床に落ちる屍隷兵。だが、呻きを上げながらも起き上がり、再度腕を飛ばしてくる。
と、その腕が、突如焼け落ちるように朽ちていく。
「やられる前にやるだけ。さっさとくたばりなさい」
それは、リリの放つ青色のエネルギー、『癇癪玉のカムクァット』によるもの。
感情の発露とともに放射状に散った陽の如き熱量は、屍隷兵の体内から蝕むように衝撃を与え、腕をちぎり落としていたのだった。
屍隷兵は腕を押さえて大きくふらつく。
そこへ、マティアスが疾駆していた。
「連撃モード移行、攻撃フェイズ実行」
そのまま相手に行動を許さず、素早い飛び蹴りで、屍隷兵を壁に打ち当てる。
着地したマティアスは、間断を作らずにそのまま最接近。屍隷兵が正面を向いた所で上方へ跳躍。敵が攻撃態勢を作る暇もなく、踏み抜くような蹴り落としを与えた。
グゥ、と、低い悲鳴を上げる屍隷兵は、しかしまだ、倒れない。這うように間合いを取ると、司に狙いを絞って捕縛しようとしてきた。
だが、そこにも素早くストーカーが滑り込んでいる。
それと時を同じく、エドワウもグラビティを集中していた。
「かんたんには、やらせません、から」
言葉とともに、眩い光を発現。それを魔法盾にしてストーカーへ飛ばしている。すると、その盾が敵の腕の動きを阻み、ストーカーへのダメージを大幅に抑えていた。
カジミェシュも、再び霊力で前衛を万全に保つ。ミミックのボハテルにも攻撃を命じ、エクトプラズムで屍隷兵をストーカーから引き剥がしていた。
後退した屍隷兵。司がそこへ、『決意の暁光』を繰り出した。
「これ以上、やらせるか。俺の決意、見せてやる」
それは決意と覚悟によって、地獄を赫灼たる閃光に変化する力。
爆轟の如き光の力で殴りつけられた屍隷兵は、派手に吹っ飛ぶ。
ダンサーは光の剣を手に、そこに追い縋っていた。
「ケミア、いっしょに倒すかも」
「オーケイ、じゃ、開幕と行こうか」
応えたアルケミアは『劇場開幕』。ワイヤーによる舞台をそこに作り出していた。
「――さぁ、ご覧あれ。全てはわたしの《イト》のままに」
アルケミアの手繰るそれは、《意図》した《糸》。手を動かせば、斬撃の嵐が意のままに襲い、2体の屍隷兵を切り刻んでいく。
同時、ダンサーは光の軌跡を作りながら、煌めく剣撃を叩き込む。
2つの衝撃に耐え切れず、猛攻を受けた1体が千々に散っていった。
●決着
『グ、ゥ……』
室内に、屍隷兵の篭った声が響く。その数も、残り1体となっていた。
この屍隷兵も既に幾分かのダメージを受け、動きを鈍らせている。だが、浅い知性でそれを鑑みる意思はないのか、ひたすらに攻めてきた。
そこに、アルケミアが立ちはだかる。
「悪いけれど。この戦力差じゃあ、もう負ける理由もないかな」
瞬間、脚部に刺すような蹴りを打ち入れ、屍隷兵を転倒させた。
その背中の上に着地するかのように、無表情のままのダンサーが踏みつけ攻撃。
「ストーカーも、攻撃して」
ダンサーが言葉とともに飛び退くと、ストーカーも鋭い爪撃を与えていた。
わななくような声を上げた屍隷兵は、軟体化させた腕部で前衛を広く薙ぎ払ってくる。
だが、そのダメージを、雨のように降る星の光が癒していた。
「からだのなかの、ちからを……ここに──」
それは、エドワウの発現した『天河は囁く惑いの青銀杯』。
頭上に現れる、天の川を模ったエネルギー流体は、天より落ちる星の漣を生む。それがきらりきらりと光ると、前衛の傷が癒え、同時に力も高まっていた。
この間に、リリはいっそう強力なオーラを手元に作り出している。
屍隷兵はそれを防ごうと再び腕を伸ばしてくる。が、リリはそこへオーラを放っていた。
蒼色の光の塊は、空中で開く花のような形を取り、屍隷兵の腹部に風穴を開けていく。
「こんなものでいいでしょう。後は頼むわ」
リリが言うと、佐楡葉が、ふらついている敵へライフルを向けた。
「では、凍って頂きましょうか」
瞬間、放たれた白い光の奔流が、屍隷兵の体を凍結させていく。
そこへ迫るのは、脚装に地獄の炎を滾らせた、司だ。
「すまないが。人々の命を救うために、倒させてもらう」
微かに静かな声で言った司は、炎を靡かせた一撃で、屍隷兵を蹴り上げた。
そのタイミングで、マティアスは周囲の水蒸気をコアに集積し、急冷。極低温の力を集中し、狙いを定めている。
「プログラム構築完了。出力最大……特殊コマンド、実行。──凍てつけ」
そのまま、激しい凍結のブラスターが放たれる。
屍隷兵を直撃したその力、『Befehl”Schneesturm”』は、全身を包み込むと同時に凄まじい衝撃を与える。屍隷兵は体力を根こそぎ持っていかれるとともに、氷片となって砕け散っていった。
戦闘後。
司は散った屍隷兵の破片を見下ろしていた。
「……屍隷兵の技術がある限り、こいつの素材になる犠牲は止められない」
その内に、その破片も空気に溶けるように消えていっている。その様も、司はしばし見つめていた。
「少しでも早く終わらせないとな」
「……ああ」
静かに応えたマティアスは、周囲を見回す。
「では、場の修復だけでもしておこうか」
「ヒールはおれが、やります」
エドワウは言って、壊れた箇所をヒール。戦闘の痕跡を綺麗に直していた。
リリも散らばった本を片付けた。そして一通り済んだ所で、見回す。
「これで大体元通りね」
確認するように言うと、すぐに外へ歩きだした。それに、うっかり本を読みふけっていたエドワウも気づいて、図書室を出た。
佐楡葉は貼っていたテープを剥がし、人払いも解いている。それを機に皆も、旧校舎を出た。
ダンサーは一度、旧校舎を振り返る。
「夏もおわる。だから怖い話も、もうおしまい」
「そうだね。それでも近づくなら……ちょっと驚かしてやろうかな」
アルケミアは、人払いを解いたことで現れた生徒の影を見つけて、狐面の姿のまま、近づいていっていた。
佐楡葉は皆を見回す。
「では、暗くなる前に帰りましょうか。本物の怪異に出くわす前に、ね」
その言葉に、皆は三々五々、帰還していく。
日の落ちる校舎に、もはや危機はなく。古い時代の空気だけを漂わせるその建物を背に、ケルベロス達は現場を去っていった。
作者:崎田航輝 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年9月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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