星を纏う鳥

作者:崎田航輝

 夜の丘は、天球からの星灯りで照らされている。
 夏にあって涼やかな風が吹くそこは、静かで美しく、自然の祝福を受けたかのような場所だった。
 そこへ、1人の少年が歩いてきていた。
「この丘にいるんだよね。星を纏う鳥が」
 それは聞いた噂の話。なんでも、この星空の如く、きらきらと輝く鳥がいるのだという話だ。
「少し大きくて、でもとってもキレイだっていう話だけど」
 どんなものか見てみたい、その好奇心で少年はやってきたのだった。
 花鳥風月という言葉があるが、風景とも相まって、それを象徴するような美しさだという。
 だが、強すぎる輝きは黒い影を生む。
「星を纏う鳥は、人間を見つけるとその生命を奪う。命の輝きを自分の光に取り込むから……だっけ」
 理屈はわからないが、危険という噂だとは知っている。それを押しても、少年はそれを見てみたかったのだ。
 しかし、そこに煌めく鳥の姿は見えなかった。
 代わりに、1人の魔女が出現したからだ。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 手に持った鍵で、少年の心臓をひと突きする――第五の魔女・アウゲイアスだ。
 少年は意識を失い、地面に倒れ込んだ。
 すると奪われた『興味』から、星の如き光を纏う鳥が出現した。
 雫をこぼすように、光の軌跡を描きながら、鳥は羽ばたき始める。
 そして、星空に紛れるように、どこかへと飛んでいった。

「強い光が命を奪う。噂にしても、皮肉なお話ね」
 ニーナ・トゥリナーツァチ(追憶の死神・e01156)の静かな言葉に、イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は頷いた。
「見た目には綺麗、という話ですが、それでも危険ならば対処しなければなりませんね」
 それから改めて皆を見回す。
「今回はニーナ・トゥリナーツァチさんの情報により、ドリームイーターの出現が予知されました。第五の魔女・アウゲイアスによるもので――夜の丘にて、少年の興味から生まれるようですね」
 放置しておけば、ドリームイーターは人間を襲ってしまうことだろう。
 それを未然に防ぎ、少年を助けることが必要だ。
「皆さんには、このドリームイーターの撃破をお願い致します」

 それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「敵は、光を纏う鳥の姿をしたドリームイーターが、1体。場所は丘になります」
 星のよく見える丘で、当日も星空が広がっている状態だという。
 丘の傾斜は緩やかで、戦闘の障害物となるようなものはない。
「敵を誘き出すことはできるのかしら」
 ニーナが言うと、イマジネイターははいと頷いた。
「このドリームイーターは、自分を噂するものや信じるものに引き寄せられる性質があります」
 なので、星を纏う鳥の噂話などをすれば有効だろうと言った。
 では敵の戦闘力について説明を、とイマジネイターは続ける。
「光を降らせる遠単パラライズ攻撃、光で惑わせる遠列催眠攻撃、星屑を集めて体当りしてくる近単武器封じ攻撃の3つです」
 各能力に気をつけておいて下さい、とイマジネイターは言った。
 ニーナは小さく口を開く。
「生命の輝きとは言うけれど。それを灯させておくわけにはいかない、ということね」
「ええ。是非、頑張ってきてくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
ミズーリ・エンドウィーク(ソフィアノイズ・e00360)
巫・縁(魂の亡失者・e01047)
ニーナ・トゥリナーツァチ(追憶の死神・e01156)
上野・零(リスタートハート・e05125)
クオン・ライアート(緋の巨獣・e24469)
ウルリャフト・ダクリュオン(蒼薔薇のタナトス・e37130)
ルーニア・リステリアス(微睡はいつまでも・e37648)
塚原・あかね(魂喰・e37813)

■リプレイ

●丘へ
 星明りが照らす夜の丘へ、ケルベロス達はやってきていた。
(「……暴走してから、初めての依頼になるのかな……」)
 皆とともに丘を歩きつつ、上野・零(リスタートハート・e05125)はふと思う。未だ地獄の扱いは本調子とは行かず、目にも焔はない。ほの暗い瞳で、眩い星を見上げていた。
 皆は丘の中腹辺りで止まる。そこが戦闘場所に定めた位置だ。
 塚原・あかね(魂喰・e37813)は横を向いた。
「ルーニアさん、夜だけど大丈夫ですか? 眠たいのでは」
「うむ、夜であり私であるならば、眠たいのはもはや道理だな」
 そう応えるのは、枕を手にするルーニア・リステリアス(微睡はいつまでも・e37648)。
 ただ、目をしばたたかせつつも言った。
「だが眠るのは敵を倒してからだな」
「じゃあ、準備を始めましょ」
 静かに言って、歩くのはニーナ・トゥリナーツァチ(追憶の死神・e01156)。皆から間合いを取った位置で、潜むように待機していた。
 ミズーリ・エンドウィーク(ソフィアノイズ・e00360)は少し離れた位置に、少年の姿を見つけて、それを安全な位置まで運んでから戻ってきた。
「よし、これで後は誘き出すだけだな!」
 ミズーリの言葉に皆も頷く。
 それから始めるのは、敵を誘い出す、噂話だ。
「……最近、綺麗に輝く、星纏う鳥がいるそうですね……」
 最初に口を開いたのは零。ぼんやりとした表情のまま言葉を続ける。
「……何とも不思議な鳥だが……」
「ふむ、そのようなものがいれば見てみたいものだな」
 巫・縁(魂の亡失者・e01047)も興味を持つ素振りで頷いてみせる。
 それに、ルーニアも言葉を継いだ。
「星空の如く、きらきらと輝く鳥って話だったか………確かに心くすぐられるフレーズだな」
「景色も見晴らしも最高。こんなトコに夜にも輝く鳥がいるなら、実際、ロマンチックだしなー」
 ミズーリも星を眺めるようにして続ける。
 すると、星空の間に何か光がきらめいたように見えた。
 それはおそらく、星ではない光。皆は視線を合わせると、一度頷いてから噂を続けることにする。
「鳳凰ってヤツとはまた違うのかな?」
 ミズーリが首を傾げるように言うと、縁は空を見たまま応えた。
「命に関する鳥という点では共通しているな」
「光の一つ一つが命の煌めきなら……それはとっても綺麗だろうね」
 ウルリャフト・ダクリュオン(蒼薔薇のタナトス・e37130)がそれに、そっと言葉を返していた。
 少し物思うような言葉に、クオン・ライアート(緋の巨獣・e24469)は、臨戦態勢をとりつつ、口を開く。
「実際に見てみれば、その辺りのことも分かるだろう。いれば、の話だが」
「いるかいないかで考えるのなら、私はいる方を信じよう。その方がロマンチックだからな」
 縁は言ってから、気づいたように続ける。
「何だ、似合わないとでも言うのか?」
「誤解だ。そこまでは言っていないとも」
 クオンは苦笑しつつ、しかしすぐに目を細め、オウガメタルを流動させている。
 視線の先、空の向こうから、光を纏ったものが羽ばたいてくるのが見えていたのだ。
「来ましたね」
 あかねも戦闘態勢を取る。
 ウルリャフトはそこへ視線をやりながら言った。
「やっぱりあの命の輝きは、偽物なのかな。死神の出番も、ないくらいに」
 ふと、自分の過去を思って零れた言葉でもあった。
「それとも、興味から生まれたドリームイーターにも魂はあるのかな?」
「被造とはいえ、デウスエクスなりの命のある存在ではあろう」
 言った縁は向かってくる光の鳥、ドリームイーターを、表情の窺えない仮面で見据えた。
「それを倒すのが私達の仕事ということだな」

●迎撃
 現れた光の鳥は、鷹のような大きさを持ち、星屑の煌めきを纏う姿をしていた。
「こうして見ると、確かに神秘的ですね」
 敵との距離が詰まる短い間隙に、あかねが言うと、ルーニアは頷く。
「少年が興味をもつのも分かるというものだな」
 だがルーニアは、同時に煌々としたオーラを生み、自身の耐性を高めてもいた。
「だからこそ、その興味を失わせるわけにはいかないな」
 それには皆も頷き、戦闘の間合いへ。
「……さぁ、折角だ、力入れていくとしよう、もず?」
 零が言うと、シルクハットの上に乗る百舌鳥が、応えるように尾を動かす。
 そのタイミングで、光の鳥もこちらめがけて、滑空を始めたのだった。
 だが、その鳥の頭上に、突如現れる影がある。
「空を飛べるからと、制空権を得られる訳じゃない事を教えてあげるわ」
 それは、『陽炎に揺らぐ死神の舞踏会』の力で瞬時に移動していた、ニーナだ。
 同時、振り下ろされた死神の鎌が、光を断ち切るかのような、慈悲のない斬撃を繰り出す。
「これで殺し合いの幕開けとしましょう」
 その一撃を受けた光の鳥は、墜落するように地に不時着していた。
「いい攻撃だな」
 呟いた縁は、攻性植物を広く展開し、黄金の光を発現している。それを前衛に注ぐと、体をうっすらとした光で覆うように、グラビティへの耐性を与えていた。
「ひとまず、攻撃は頼むぞ」
「了解だ」
 縁に応えたのはクオン。流動させていたオウガメタルを拳へ集約すると、鋭利な拳を形作っている。そのまま、真正面から光の鳥へ疾駆した。
「戦いの時間だ。我が鉄拳を受けてみろ!」
 その威容、拳の威力、まるで巨獣の如し。飛ぼうとする光の鳥を捕らえ、豪速の拳で吹っ飛ばした。
 ただ、光の鳥も、まだ体力に余裕はあるように、飛ばされた衝撃を活かして空へ間合いを取る。
 そこから攻撃を狙っているようだった、が、そこへ、別のグラビティの力が収束していた。
 零の手元から放たれる、爆縮された力だ。瞬間、宙にいた鳥は、局所的な爆破によって再び地面への着陸を余儀なくされていた。
「……皆さん、攻撃が来そうです」
 しかし、零が言った通り、光の鳥はそのまま攻勢に入っている。
 勢いのまま、自身の体に星屑を集めると、体当たりを試みていたのだ。
 それも視認出来ぬほどの速度ではあった。が、標的となったニーナに攻撃が到達する前に、光が弾けて鳥の体が止まった。
 ミズーリが盾となって、衝撃を庇い受けていたのだった。
「悪いけど、通さないぞ!」
 そのまま光の鳥の動きを抑えこんだミズーリは、ナイフをピック代わりにするように、ギターを爪弾いた。
 ノリのいい演奏をBGMに、ナイフに音楽の力を込めるようにしたミズーリは、同時に一閃。鳥の生命力を奪う斬撃を喰らわせた。
 鳥が宙へと後退する間に、ウルリャフトは癒やしのグラビティを集中している。
(「なんだろうか、この気持ち」)
 それを煌めくオーラへと変えながら、ウルリャフトはふと思う。戦闘は初めてじゃない筈なのに、なんだか心がフワフワして落ち着かない気分だ。
(「私も、光に魅入られているのかな」)
 あるいは向こうがこちらの命に魅入られているか。それもわからないが、偽物といって捨てるには、鳥の光が美しいのは事実だった。
 ウルリャフトはそれに負けない程の美しい光を放ち、ミズーリを癒やす。
 その間に鳥に接近しているのは、あかねだ。
「そう簡単には、躱すことはできませんよ」
 宙へ退避しようとした鳥へ、あかねは跳躍。
 蝶柄の和装をたなびかせ、剣を振り抜いてその勢いで軌道を変えると、体を翻して回し蹴り。
 苛烈な一撃で、光の鳥を大きく空へ吹っ飛ばした。

●命
 光の鳥は、空へ煽られつつも、すぐに体勢を直していた。そして光を一層誇示するかのように飛び回っている。
 零は短い時間、それを見上げた。
(「……命の輝き……あの力が手に入ったら、少しはみんなの役に立つのかな?」)
 と、ふと薄い感情で思ってもいた。
 クオンも、武器を構えながらも、言葉を零す。
「光を、星を纏う鳥、か。良いファンタジーだ」
「そうだな。まあ、どれだけキレイな光でも、人様に迷惑掛けるのはダメだけどなー」
 ミズーリが言うと、クオンは頷いた。
「ああ、その通りだ。幻想は幻想らしく、一夜の幻として儚く消えて貰おうか!」
 それを機にクオンは疾駆。皆も一気に攻勢へ入る。
 光の鳥も、クオン達の言葉にまるで反抗するように、速度を上げて迫ってくる。
 だが、再び、そこへニーナが距離を詰めていた。
「何に感情を動かしているの。幻想と言われたこと? それとも自らの行いを否定されたこと?」
 ニーナはオウガメタルを死神の形へと変遷させながら問う。
 光の鳥はただ攻撃を狙うばかりだ。が、ニーナも答えを欲したわけではない。どちらにしろ、命を奪うことを許すつもりがないのは変わらないからだ。
「それに、その身に纏う輝きが命の其れというのなら……死神は其れを刈り獲らないと、駄目、でしょう?」
 教えを与えるように、象られた死神の斬撃が鳥を地面へ落とす。
「ニーナ殿、追撃は任せろ!」
 そこへ、クオンが攻性植物を放ち、体を捕らえていた。
「巫殿、頼むぞ」
「ああ、分かった」
 次いで、クオンに応えた縁が、斬機神刀『牙龍天誓』に炎を宿らせ、一閃。
「貴様は鳥は鳥でも焼き鳥になるのだよ!」
 瞬間、熱気たなびく斬撃が、鳥の翼の一端を焼け散らせた。
 光の鳥も反撃に催眠の光を放射してくる。
 だが、こちらにはそれを防ぐだけの耐性がついている。ダメージについても、ウルリャフトが素早く治癒のオーラを零へ飛ばし、回復していた。
「回復の助力、頼めるかな」
「もちろんだ。少し待っていてくれ」
 さらに、ルーニアもウルリャフトに応え、湧き上がるエネルギーを治癒力に転換。クオンに与えて傷を一気に消し去り、体力を万全な状態へ保っていた。
「攻撃は任せるぞ」
「ええ、ルーニアさん」
 言って、剣を手に敵へ踏み込むのはあかねだ。連撃を狙う鳥が、光を生み出そうとするところへ、袈裟に刀を振るい、阻止。
 鳥が体勢を崩したところへ、更に距離を詰めて縦横に斬撃を放ち、傷を抉りこんだ。
 動きを鈍らせた鳥へ、ミズーリはギターソロを奏でる。
 飛び退る光の鳥、だが、ミズーリも黄昏色の3枚翼をはためかせて高度を上げ、一帯にその悲劇的な音色、『骸花心中奇譚』を響かせていた。
「それ以上暴れ回ってもらっちゃ困るからな」
 その音色に浸透するようなダメージを受けた光る鳥。
 それでも体を再び瞬かせ、光の塊を生み出していた。が、零がそこへ肉迫。光を相殺するように、ゼロ距離から蹴撃を放っていた。
「……取りあえずその力……私にくれない?」
 光を貫いて放たれた一撃は、鳥の胴体に直撃。鳥は一時光を失ったように、墜落した。

●決着
 ゆらゆらと宙に浮上する光の鳥は、明らかに弱った様子を見せている。
 ただ、あくまで光を消し去りはせず、むしろそれを強めてみせた。
 が、そこへニーナが呪術の力で移動してきている。
「どれだけ光り輝こうとしても。その全てを刈り取るだけよ」
 瞬間、大鎌で光を裂きながら斬撃を加える。
 そこへ、ルーニアが手を伸ばしていた。
「そうだな。そろそろ、本当に星となって消えてもらうとしよう」
 同時、噴出させたマグマで、空高くに打ち上げた。
 それを仰ぎながら、ウルリャフトは自身を光の粒子へ変遷させる。
「私も、攻撃に移らせてもらうよ」
「……じゃあ、私もついでに撃ち込ませてもらいます」
 そう言葉を継いだのは零。
 ウルリャフトが光の塊になって鳥に突撃したタイミングで、零も『攻勢魔法”人参の洗礼”』を行使。召喚した人参を豪速で飛ばし、衝撃を重ねて鳥を吹っ飛ばした。
 鳥は空を旋回し、滑空をしてくる。だが、地を蹴ったあかねが、迎え撃つように飛び蹴りで応戦した。
「続けて攻撃を、お願いします」
「ああ、少し早いが、光の鳥もココで見納めにしようか。線香花火みたいなモンと思えば、それなりに風流だろ」
 そう言葉を零したミズーリは、高度を落とした鳥の翼をナイフで断ち切る。
「アマツ、御見舞いしてやれ」
 次いで、縁に応えて、オルトロスのアマツが疾駆。刃で敵の体中に傷を刻む。
 地に転がった鳥へ、縁は『百華龍嵐』。
「天へと沈め、光の鳥よ!」
 瞬間、牙龍天誓を振り下ろし、返す刀で上向きの斬撃を与え、鳥を天高くへ上げた。
 そこへ、クオンが『蹂躙・緋の巨獣』を行使していた。
「我が突撃、避けられると思うなよ! 我は“緋の巨獣”なり──!」
 全身に緋色のオーラを纏うと、クオンはそのまま、巨獣の剛烈さをもって突撃。星の輝きを蹂躙するが如く、光の鳥の命を貫いた。
 敵の倒れた丘には、巨獣の如き咆哮が鳴り響いていた。

 戦闘後。
 光の鳥は、消えゆく光の欠片のようなものを残していた。それは魂の如き輝き。
「星の燐光の様に綺麗ね。でも、ほんのり赤いのは少し残念──次は……私の前に現れない様に、ね」
 ニーナはそれを口に含んで、飲み込んでいる。鳥自体も、うっすらと消え去っていった。
「じゃあ、ヒールするか」
 その後、ミズーリの言葉に皆は頷き、傷ついた箇所を修復した。
 縁は目覚めた少年を介抱している。
「無事のようだな」
 少年に怪我などがないことを確認して縁は言う。事情を知った少年は、何度もケルベロス達に礼を言って、そのうちに帰っていった。
 ウルリャフトは空を見上げる。
「天体観測とか、できそう……」
「星がよく見える丘というだけのことはありますね。暫し、星空を愉しむとしましょうか」
 あかねも言うと、皆も一息つきがてら、それぞれに星空を仰ぎ始めていた。
「……」
 零は無表情に、ぼーっと空を眺めている。本調子でない分、戦闘後はこっそり息が上がっていたが、ようやく落ち着いてきていた。
 ミズーリは満天の星空を見て一つ頷いている。
「うん、やっぱり地上よりも、空の星の方があたしは好きかな、なんて!」
「そうだね、本当に、星が綺麗」
 ウルリャフトも、あらゆる角度に広がる星を眺めていた。それからふと呟く。
「この地球の人々と、星の光はどっちが多いのかな……?」
 この星空は、街の中で見上げるそれとは比べられない程だ。人が多い程、星の光が遠のく気がして、それを少し惜しいと思っていた。
 縁も一度だけ、空を見上げている。
「……おや。何か光った鳥のようなものが見えたが、気のせいか」
 眺める夜空には、今は星空しか見えない。
 もし本当にその存在がいたなら、それはそれでいい土産話になったろうな、とだけ縁は思い、視線を下げる。それから、丘を歩き出した。
「じゃあ、帰るとするか」
 そのうちに、ルーニアが言うとクオンも頷いた。
「そうだな。作戦も成功に終わって、重畳だった」
 それを機に、皆も三々五々帰還を始める。
 平和の戻った丘は、静かで安らか。星空の光を蓄えるように、いつまでも美しく照り輝いていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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