もこもふクリエイター

作者:崎田航輝

「貴方たちに、使命を与えます」
 薄暗闇の中、ミス・バタフライは、配下の螺旋忍軍2体を見下ろしていた。
「この街に、ぬいぐるみ作家として生活するものがいるようです。一点もののぬいぐるみで、どれも可愛いのだそうですよ」
 それを聞く配下の両名は、従順な様子で頷いている。
 1体は道化師、もう1体は動物使いといった風貌の螺旋忍軍だ。
 ミス・バタフライはその2体に続ける。
「そこで、そのぬいぐるみ作家の女性に接触し、仕事内容を確認・習得。そのあとで、殺害しなさい」
「了解しました、ミス・バタフライ。一見、意味の無いこの事件も――巡り巡って、地球の支配権を大きく揺るがす事になるのでしょう」
 2体は静かに言うと、その場から下がる。
 そして音もなく去っていった。

「こちらの螺旋忍軍は相変わらずだな」
 椿木・旭矢(雷の手指・e22146)が言うと、イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)も頷いていた。
「ええ。一つ一つ、しっかりと解決していきたいところですね」
 それから、改めてケルベロスを見回していた。
「集まっていただいて、ありがとうございます。今回の事件は、椿木・旭矢さんの情報で判明した、ミス・バタフライによるものです」
 以前より続く、珍しい職業を持つ一般人を狙った事件だ。
 今回はぬいぐるみ作家の女性を狙ったものになるという。
「その女性の元に螺旋忍軍が現れて……仕事内容を習得したあとに、殺してしまうという目的があるようです」
 これを阻止せねば、女性が殺されてしまうだけでなく、巡り巡ってケルベロスにとって不利な状況までもが発生する可能性が高い。
「皆さんには、この螺旋忍軍の撃破を、お願いします」

 作戦詳細を、とイマジネイターは続ける。
「敵は、螺旋忍軍2体です。場所は、青森県内にあるぬいぐるみ専門店になります」
 ここの店主が、ぬいぐるみ作家でもある女性だ。
 そこへ赴き、この女性を警護して、現れた螺旋忍軍と戦うのが目的である。
 なお、事前に女性を退避させてしまうと、敵が別の対象を選ぶことになってしまい……結果的に被害を防げない。
「そこで、事件の3日前からこの店主さんに接触して頂いて……ぬいぐるみ作家の仕事を教えて貰ってください」
 見習いに見える程度の技術を習得出来れば、螺旋忍軍の狙いを自分達に変えさせることができ、安全に戦えるだろうと言った。
「つまりは、ぬいぐるみを作る仕事というわけか」
 旭矢が言うと、イマジネイターは頷く。
「ええ。猫さんや犬さんなどの動物モチーフの物を始めとしたぬいぐるみです。一点ものでどれも二つと無いのが特徴ですね」
 基本の裁縫の技術から、どんなぬいぐるみにするかというデザイン、実作までが仕事となる。
「どのぬいぐるみも、ふかふかな感じの、愛らしくて可愛いデザインが主なようなので、そのあたりを意識してみるといいかもしれません」
 敵の標的になることに成功したら、外に誘い出すなどして、有利な状況で戦闘を始める事が出来るはずだと言った。
「螺旋忍軍は、道化師風の個体が手裏剣、動物使いの個体がエアシューズを装備しています」
 囮作戦が上手くいけば先手が取れるはずなので、頑張ってみて下さいと言った。
 旭矢は頷いて口を開く。
「何にせよ、人の命を狙うというのなら、こちらも受けて立つだけだ」
「ええ、可愛いぬいぐるみも作りつつ……是非、撃破を成功させてきてくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
巽・朷夜(紅蓮の騎士・e19228)
椿木・旭矢(雷の手指・e22146)
ミスル・トゥ(本体は攻性植物・e34587)
フィオナ・リースフェルト(弟大好きブラコンお姉さん・e35917)
塚原・あかね(魂喰・e37813)
王・美子(首無し・e37906)
影守・吾連(影護・e38006)

■リプレイ

●入門
 青森県のぬいぐるみ専門店。
 その近くまで、ケルベロス達はやってきていた。
「それじゃあ、私はひとまず離れていますね」
 と、そこで立ち止まるのはミスル・トゥ(本体は攻性植物・e34587)。まずは戦闘箇所の確認なども兼ねて、皆と別行動を取ることになっていたのだった。
「わかりました。よろしくお願いしますね。それではまた後で」
 フィオナ・リースフェルト(弟大好きブラコンお姉さん・e35917)がそれを見送ると、ミスルは頷いて離れていく。
 皆は改めて、ぬいぐるみ専門店を訪ねた。
「たのもー。ぬいぐるみ作家とやらがいるのはここでいいのか?」
 そう言って入った王・美子(首無し・e37906)を先頭に、皆は店主の女性と接触。早速事情の説明をした。
 デウスエクスに狙われているところから状況を話していくと、女性はすぐに協力すると応える。
 そして皆は、数日に渡るぬいぐるみ制作の修業に入ることとなった。

 女性の案内した工房は、多数のぬいぐるみや、裁縫道具、生地などの材料が並んでいる場所だった。
 皆はそこで早速、教わりながら実作を始めていた。
「吾連はどんなぬいぐるみにするんだ?」
 卓についた椿木・旭矢(雷の手指・e22146)は、横を眺めて言う。
「俺は、フクロウを作ろうかと思っているよ」
 応えるのは影守・吾連(影護・e38006)。既に材料と型紙の調達をしていた。
 それは濃いめの色のボア生地。ふわふわとした感触の強いそれを縫い、綿を入れていくと、愛嬌のある形が出来ていく。
 その一つ一つの工程に、吾連は丁寧に、願いを込めている。
(「手に取った人の心を和ませるような子になればいいな……」)
「すごく、いいものができそうだな」
 それを見て、旭矢も言っていた。
 旭矢自身は、題材が定まらないのでとりあえず作り始めてみていた。
 基礎は学んできたこともあり、手際は良いのだが、最後まで悩んでいた。
(「あんたはパンダになりたいか、クマが良いのか」)
 そう胸の中で問うていく。すると、だんだんとむちむちしたシルエットになってきたそれに、頷いた。
「……よし、俺があんたを立派なパンダにしてやる。任せておけ」
 そうして、それを可愛らしいパンダにするため針を動かしていくのだった。
「お二人ともお上手ですね」
 と、言うのはイッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)。
 こちらは猫を作る計画だ。刺繍は慣れている分、型紙と材料を定めるのに時間をかけていた。
「師匠、毛並みの再現にふわふわレーヨン生地はどうでしょうか?」
「手触りもいいし、合っていると思いますよ」
 女性が応えると、イッパイアッテナは目を輝かせてそれで形作っていく。
 元々ドワーフとして技術には貪欲。どんどん技を吸収するように作業を進めていた。
 塚原・あかね(魂喰・e37813)も、見本の猫のぬいぐるみを見つつ、縫い始めていた。
「しかし、商品のぬいぐるみはどれも愛らしいですね」
 作家の作品群にテンションを上げながら、自身が作るのもまた、猫だ。
 それは茜色をベースにしたデザイン。丸みのある可愛らしいものだが、単に猫というだけでなく、更に別のモチーフも組み込むために、他の部品も作っている。
「うまくいくかは、わかりませんが」
「完成が、楽しみな気がするね」
 そちらに興味を示しつつも、自分も制作を進めるのは巽・朷夜(紅蓮の騎士・e19228)。
 実作経験を活かしつつも、各工程を丁寧に確認しながら作るそれは、犬の形。
 だけでなく、ふかふかの生地に、軽い綿をたくさん入れたそれは、皆の中では一番の大きさだった。
「とりあえずは、こんな感じかな」
「なんだかとっても可愛いですね」
 言ってそれを眺めるのはフィオナ。
 フィオナ自身も、生地の裁縫に取り掛かっている。女性は感心したようにそれを見た。
「お裁縫、上手ですね」
「ありがとうございます。一応、メイドなので。それに、お姉ちゃんとしての嗜みでもありますから」
 フィオナは自身の弟のことを思うように、笑みを浮かべる。
「ちょうどぬいぐるみを作る技術を身につけたいと思っていましたし。なので、頑張りますよ」
 言って、生地を縫い合わせる。それは、ウサギのデザインだ。
「あ、そちらもウサギのモチーフなんですね?」
「まァな。しっかし、何でウサギと云えばピンクなのかねェ」
 フィオナに応えるのは美子。言葉通りピンクの生地からウサギを形作っている。
 こちらは見よう見まねと言った感じで、溢れる綿をぐりぐりと詰め込んでいた。
「あーもう綿出てくんなって……」
「綿は、ある程度分量を決めてから入れると……」
「ハイハイ、わかりましたよ作家先生」
 女性にも適当に応えつつ、縫い合わせる美子だった。
「目玉つけンのも面倒クセェな……片目ついてりゃ充分じゃねェか?」
 言いつつとりあえず形にしたのは、少々いびつだったが、デザインはなかなか可愛らしいものだった。
 皆は引き続き作業を進め、初日は、ひとまず1つを作って終わることとなった。
 2日目以降、皆は更に試作を進めていく。

●完成
 修行3日目。この日、それぞれの作品が、一応の完成を見るまでになっていた。
 工房内に並んだそれらの作品を、店主の女性が眺めていく。
「これはとても可愛らしく出来ましたね」
 と、手に取るのは旭矢のパンダのぬいぐるみ。
「そう言ってもらえるなら嬉しいな。贈り物なんだ」
 応える旭矢のその作品は、角度によって表情が変わって見えるパンダだ。
 生き生きとしていて、どこか芸達者な印象を与える。プレゼントとして、込めた心が形になったような一品だった。
「このフクロウも、いいよな」
「そうかい? ありがとう」
 旭矢に言って、笑むのは吾連。
 吾連のフクロウは、丸みのある、よりふわふわなぬいぐるみに仕上がっていた。吾連はそれを大切に手に取る。
「親戚のお姉さんが持っていたフクロウのフェルトマスコットが印象的で、それを思い出して作ったんだ」
 大切な子がくれたお守りだ、と話す彼女の優しい表情を、吾連は思い起こす。
「俺もあんな風に人を幸せにできるものを作りたいって、そう思うんだ」
「このぬいぐるみも、見ていると幸せな気分になってきますよ」
 女性はそんなふうに感想を述べていた。
 イッパイアッテナの猫も、ほぼ完成に近づいていた。綿の調節を繰り返した結果、おすわりのような可愛いポーズを取る可愛い猫となっていた。
「愛らしくて、ずっと見ていたくなりますね」
「ご教授のおかげです。猫なら、こちらも良く出来ていますね」
 女性に応えつつ、イッパイアッテナはあかねの作品を眺めていた。
 それは猫と悪魔をモチーフに取ったぬいぐるみだ。ふかふかな体に角、尻尾、翼をつけて、チャーミングな印象の猫悪魔に仕上がっていた。
「これも凄いですね」
 と、そのあかねが見るのは朷夜の作品。
 それは犬のデザインなのだが、初期段階と変わらずやはり大きい。
「ありがとう。少しは可愛らしく出来たかな」
 朷夜も撫でてみせるそれは、抱きまくらになるような、普通の数倍の大きさのぬいぐるみだった。ただ綿も軽めでふわふわに仕上がり、魅力的な一品となっている。
 美子はピンク色のウサギを完成させつつあった。
「耳の位置がちげーけど、まあ良いや……。……あ、首取れた」
 卓にぬいぐるみを置いた瞬間、その首の部分がぽーんと取れていた。が、首をすげ直すと、見た目には初日よりも、可愛らしくふんわりとしたものになっていた。
「これはこれで、可愛いかも……?」
 フィオナはそれを見つつ、そんな風に零していた。
 そのフィオナのウサギのぬいぐるみは、完成していた。ベーシック寄りのデザインの、非常に丁寧に仕上げられた、中くらいのサイズのものだ。
 勿論綿はふんだんに使い、ふかふかの感触を実現している。
「色々と、勉強になりました。これでシャルくんのぬいぐるみを作ることが出来るかも……」
 フィオナは呟き、イメージをふくらませる。今回の技術を活かして作る、愛する弟そっくりのぬいぐるみの想像図であった。
 皆の作った成果は、デザインも多様で、そのどれもが無二の作品だ。
「このまま最後まで頑張って、螺旋忍軍の企みを、しっかり食い止めていかないとね」
 吾連が言えば、皆は改めて頷く。
 そうして最終日まで、修行は続いていった。

●作戦
 そして、作戦最終日。
 来る戦闘に備え、ミスルは野外の戦闘予定場所に潜んでいた。いつ敵がやってきてもいいように、準備は既に万全だ。
「さて、そろそろですね」
 そうしてミスルが呟いたのと同時。店の方向から、ケルベロス達と螺旋忍軍が歩いてきた。

 短時間遡り、店内。
「隠れて下さい。大丈夫、あなたとあなたの作品と店を守り抜きます」
 敵が訪ねてくる直前に、イッパイアッテナは女性を店の奥に隠す。
 そして、店に螺旋忍軍が現れると、ケルベロスだけでそれに対応していた。
 螺旋忍軍は、問題なく皆をぬいぐるみ作家と認識。弟子入りを申し出る。そうして幾分かの仕事をした後、皆は動物観察の名目でこの2体を外に連れ出したのだった。
「自分の目でしっかり見て、動物の特徴を捉えようね。これも修行の一環だよ」
 吾連の言葉に疑うこともなく、螺旋忍軍は野外の一角に誘導された。
 その場所こそ、定めておいた戦場である。
「動物の姿が無いようだが……」
 螺旋忍軍はやっと怪しむ素振りを見せるが、その頃にはもう、物陰からミスルが跳び出していた。
「動物はいない。ここは戦う場所なのだからな」
 瞬間、ミスルは攻性植物・ミスルトゥのつるを伸ばし、道化師を捕縛。強烈な力で締め上げていた。
「ぐ……っ!?」
 道化師が驚愕していると、イッパイアッテナは大地の力を込めて強力な打撃を加える。
 次いで、吾連は収納していた翼を出し、飛翔。上空から大槌を構え、煙を上げて砲撃を直撃させていた。
 旭矢は直剣から魚座の光を発現。仲間を加護の力で覆い、耐性を与えている。
「悪いが、あんた達の思惑通りにはさせない」
「……ケルベロスか……!」
 螺旋忍軍はようやっと気づいたようにこちらを睨む。
「おのれ、我らの使命の邪魔をしおって……」
「使命、か。スパイラルウォーも終わったというのに、ミス・バタフライは案の定そんなこと知らんとばかりだな」
 ミスルが言うと、美子も退屈そうに頷いた。
「ぬいぐるみ作家の技術を盗んで世界が如何なるのかね」
「貴様らの感知するところではない……っ」
 道化師が言うと、美子は地を蹴った。
「そうかい、ま、知る必要もねーけどな」
 そのまま、敵の顔に蹴撃を叩き込んだ。
 道化師もようやく手裏剣を手に反撃を試みる。が、そこへあかねが疾駆。
「遅いですよ」
 言うが早いか、蝶柄の装束を靡かせて、腰に佩いた刀を抜刀。腕を斬り落とした。
 悲鳴を上げた道化師を、フィオナの放った御業が拘束する。
「今です、攻撃をお願いします」
「うん、ありがとう」
 応えた朷夜は、静かな動作で道化師に肉迫。跳躍からの踵落としを打ち込んだ。
 地に叩きつけられた道化師はその衝撃に耐えられず、四散するように消滅していった。

●決着
 螺旋忍軍は、動物使い1体のみとなっていた。
「……ええい、貴様らなどひとりでも殲滅してくれる……!」
 怯んでいた動物使いだが、それでもすぐに、こちらに走り込んでくる。
 だがそこを、ミスルが枝葉を伸ばして捕らえていた。
「やってみればいい。出来るものならな」
 そのまま強い力で引き寄せ、動物使いの腹部に重い打撃を加える。
 同時、吾連も空から滑空して勢いをつけていた。
「よし、このまま畳み掛けてしまおうか」
「ええ、私も、支援します……!」
 言ったフィオナは、手元に炎を称える幻竜を生み出している。
 直後、吾連が重力を加えた縦回転の回し蹴りを喰らわせると、フィオナも幻竜を解き放ち、動物使いを炎で包んだ。
 呻きながらも、動物使いもまた炎を生み出し、旭矢に蹴り込んでこようとする。
 が、それをイッパイアッテナが庇っていた。
「好きにはさせませんよ。あの女性を利用し命を狙おうとしたお前達には」
 言うと、脚装・常立による炎の蹴撃で反撃。同時、ミミックである相箱のザラキも、エクトプラズムで裁縫道具を形作り、動物使いを攻撃していた。
「イッパイアッテナ、助かった。すぐに回復するから待っていろ」
 直後には、旭矢が『傲慢過保護な癒し手』。
 全身から立ち上らせた、過剰なまでのグラビティを癒やしの力として放出。イッパイアッテナに包帯のように絡ませ、その傷を回復していた。
 この間にも、美子が敵へグラビティの爆破攻撃を撃ち込んでいる。
 たたらを踏む動物使いに美子は視線をやった。
「ったく、アンタらぬいぐるみってツラじゃねェだろ。私もだけどよ」
「……面はどうでもいいだろう。ぬいぐるみは万人を癒やすのだ」
 動物使いが言ってのけると、朷夜は刀を構えた。
「万人を癒やすぬいぐるみだからこそ、それを作る人も、ぬいぐるみも守り抜くよ」
 そして、踏み込む。ビハインドのねねが金縛りにかけると同時、朷夜は縦横に剣撃を与えていった。
 血を流してふらつく動物使いに、あかねも一息に接近している。
「勝負ありです」
 瞬間、刀で動物使いを貫き、ガントレットでその心臓を鷲掴みにした。
 それを握りつぶすと、降魔の力で魂を喰らいつくし、跡形も残さなかった。

「終わったな。皆、お疲れ」
 戦闘後。旭矢の言葉に皆も息をついていた。
 吾連は周囲を見回す。
「じゃあ、必要なところは直して戻ろうか」
 それを機に、皆は周囲にヒールをかけ、店の中へ。
 改めて女性の無事を確認し、数日に渡る作戦を完了したのだった。
「危険もある中、修行をさせていただいてありがとうございました」
 あかねは、女性に礼を言う。
 イッパイアッテナも、数日の経験を想起するように口を開いた。
「この経験は忘れません」
「これからも素敵なぬいぐるみを作ってください」
 朷夜も続けると、女性も頭を下げて、守ってもらったことへの礼、そしてこれからも一層ぬいぐるみを作っていくことを皆へ伝えた。
 皆は改めて、自分たちの作ったぬいぐるみを眺める。
 朷夜は自分の作品をもふもふしつつ、無表情の中にほんの少し柔らかな雰囲気を滲ませていた。
「どの子も可愛いね」
「ま、これも一応形になってるってことでいいだろ」
 美子は、未だ首が不安定なウサギのぬいぐるみを手に取って言っていた。
「教えてもらった技術で、活かせることもありそうです。本当にありがとうございました」
 フィオナは楽しみが出来たという表情で、改めて女性に頭を下げる。
「じゃあ、帰りましょうか」
 そしてミスルの言葉を合図に、皆は女性に見送られ、外へ。
 平和となった空の下、三々五々、それぞれの帰る場所へと帰還していった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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