夜の肝試し

作者:崎田航輝

 夜の山林を、1人の少年が歩いていた。
 くねる道は不気味であり、明かりがないことも手伝って先は闇一色だ。
「そろそろ出てこないかなぁ、肝試しの幽霊……」
 少年はそんな中、つぶやきながら道を進む。
 意識にあるのは、ある噂のことだった。
「ここで肝試ししていると、本当に幽霊が出てくる、って話だけど……」
 よくある怪談のたぐいではある。だがもし本当にいるのなら、という好奇心が生まれ、少年は夜に1人で立ち入っていたのだ。
 元々、肝試しのスポットとしてもある程度知られているので、迷うほどではない。が、同時にそういう場所として認識される程度には、不気味な風景だった。
「なんだか本当に怖くなってきたな……幽霊に出会ったら、呪い殺されちゃうんだっけ……」
 少年は辺りを見回し、少し震えていた。
 もっとも、少年は幽霊に出会うことはなかった。
 その背後に、別の存在が現れていたからだ。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 手に持った鍵で、少年の心臓をひと突きする――第五の魔女・アウゲイアス。
 少年は意識を失い、地面に倒れ込んだ。
 すると奪われた『興味』から――白装束の亡霊のような影が出現する。
 ひょろろ、と人魂を周囲に漂わせるそれは、ふよふよと何処かへ飛んでいく。そのうちに、山林に消えていなくなった。

「肝試し、ですか。もうそのような季節なのですね」
 レクト・ジゼル(色糸結び・e21023)の言葉に、ええ、とイマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は少し興味深げに頷いていた。
「怖がらせたり怖がるのを楽しんだり。少し面白そうな文化ですね」
 それから改めて皆を見回す。
「というわけで、今回はレクト・ジゼルさんの情報により、ドリームイーターの出現が予知されました。第五の魔女・アウゲイアスによる、人の『興味』を奪うタイプのもののようで――山林にて、少年の興味から生まれるようです」
 放置しておけば、ドリームイーターは人間を襲ってしまうことだろう。
 それを未然に防ぎ、少年を助けることが必要だ。
「皆さんには、このドリームイーターの撃破をお願い致します」

 それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「敵は、幽霊の姿をしたドリームイーターが、1体。場所は山林です」
 肝試しスポットして時々使われることもある場所のようで、不気味な山道が特徴的だ。
 道はくねっているが、戦闘に不利になるような環境ではないといった。
「誘き出すことは、できるんでしょうか?」
 レクトが言うと、イマジネイターははいと頷いた。
「このドリームイーターは自身を信じたり噂するものに引き寄せられる性質があります。なので、幽霊や怪談話をすると出会える確率は高まるでしょう」
 肝試しによって出て来るという噂でもあるので、山道を肝試し的に歩きながらであれば、より出会いやすいかも知れません、とも言った。
「少年については、敵を倒せば目を覚ますので心配はありません」
 敵の能力について説明を、とイマジネイターは続ける。
「攻撃法は、霊力による近単トラウマ攻撃、呪いによる遠列催眠攻撃、憑依による遠単パラライズ攻撃の3つです」
 それぞれに気をつけておいて下さい、と言った。
 レクトは頷いてから口を開く。
「本当の危険区域にするわけにも行きませんから。平和を戻しに、行きましょうか」
「ええ、それなりに不気味な場所ではあると思いますが……是非、頑張ってきてくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
稲垣・晴香(伝説の後継者・e00734)
ニーナ・トゥリナーツァチ(追憶の死神・e01156)
トエル・レッドシャトー(茨の器・e01524)
霖道・悠(黒猫狂詩曲・e03089)
筐・恭志郎(白鞘・e19690)
レクト・ジゼル(色糸結び・e21023)
フローライト・シュミット(光乏しき蛍石・e24978)
皆守・信吾(激つ丹・e29021)

■リプレイ

●肝試し
 夜の山へ、ケルベロス達はやってきていた。
「これで、封鎖はできましたかね」
 不気味な山道、その入口で、筐・恭志郎(白鞘・e19690)は確認するように見回している。
 キープアウトテープを貼り、外の道との境目を閉じていたのだった。
 レクト・ジゼル(色糸結び・e21023)は頷きを返す。
「ええ。これで一般の人について心配はいらないですね」
 レクトも殺界を形成し、一帯へ人の介入がない環境を作っている。
「それじゃ、仕事を始めましょう」
 言うが早いか、とんとんと木の上へと上っていくのはニーナ・トゥリナーツァチ(追憶の死神・e01156)。そのまま木々の上を伝うように歩きだしていた。
 それを機に、皆は二手へ。
 分かれるのは囮班と奇襲班。奇襲班が後方から警戒をしながら、囮班が前方にて肝試しを始めるという作戦だった。

 囮班はまさに肝試しというように、探検するように山道を進んでいた。
「稲垣さんのような凄いプロレスラーさんと、一緒に肝試しする事になるとは思いませんでした。前に試合観戦もしていたので……」
「あら、そう言ってもらえると、嬉しいわね」
 恭志郎に応えて微笑むのは稲垣・晴香(伝説の後継者・e00734)。恭志郎の言葉通り、メディアの露出も多い有名女子プロレスラーである。
 晴香は木々を眺める。
「それにしても、幽霊、か。『異次元からの侵略』とどっちが『超常現象』なのかしらね。死神みたいな存在もあるし、私達には身近にも思えるけど」
 考える素振りを作って、続けた。
「サルベージされる前の漂っている状態が幽霊なのかしらね?」
「デウスエクスの類ならまだいいですけど……本物の幽霊はもっと、恐ろしいような……!」
 ホラーの苦手な恭志郎は、作戦というより本気で怯えつつ、提灯で辺りを照らしている。
「この辺なんていかにも出そうっていうか……」
「この周辺に幽霊は……出る……」
 すると、フローライト・シュミット(光乏しき蛍石・e24978)が無表情に言っていた。
 紫葉牡丹型攻性植物の葉っさんで顔を下から照らし、不気味な空気を作っている。
「ひぃ!?」
 恭志郎がびくりとしていると、フローライトは続けた。
「聞いた話だと……昔……この近くにある廃墟に住んでいた人が……非業の最期を遂げたらしい……。それをまだ自覚できず……彷徨っているとか……」
「あはは……そんなまさか」
 笑って誤魔化す恭志郎。だが、今度は皆守・信吾(激つ丹・e29021)が、ぱちりと懐中電灯で顔を下から照らした。
「話はそれで終わらないぜ」
「うわぁ!?」
 またそれに驚く恭志郎に、信吾は続きを話しだす。

「肝試し、は、順調にいってる、みてェ、かね」
 後方の警戒班。
 霖道・悠(黒猫狂詩曲・e03089)は目立たぬように気を配りつつ、囮班とその周囲を窺っていた。
「幽霊は、まだ、出ない、ようだケド」
「幽霊……ね」
 レクトは傍らのビハインド、イードに視線をやりつつ、呟く。
 それから、囮班に視線を戻していた。
「否定はしませんが、怖いものでしょうか? ……いや、既に怖がってますね」
 すぐに言い直す。恭志郎達の声はずっと聞こえていたのだった。
「しかし、夏場はこういう事件が増えそうですよね」
 そう口を開くのはトエル・レッドシャトー(茨の器・e01524)だ。歩みつつ、続ける。
「……ケルベロスにも夏休み欲しいですね」
「敵の出現は、ひっきりなしですからね。でもまずは、少年の夏休みを守ってあげましょう」
 レクトが言うと、皆は再び静かに進む。
 ニーナは木々の上を伝いながら、闇の一部になったかのように山道沿いを歩んでいた。
「空っぽで、虚ろな。伽藍堂の匂いがするわ」
 吹き抜ける風に、ニーナは呟いた。
 それは、人の気配に誘われた異形の気配だ。

 囮班も、気配は感じていた。
 それでも誘き寄せを不十分と見て、信吾は怪談を続けている。
「幽霊は彷徨うだけにとどまらず、連れ去る人間をいつでも探してるんだ」
 それは、恐怖を煽るような口調だ。
「地元じゃ有名な話らしい。山道に入った者は皆、幽霊に目をつけられる」
 すると、ばさりと木々の間から音がした。
 信吾はそれに気づきつつも、まずは話を繋ぐ。
「だから、振り返るといつの間にか背後に立ってるらしいぜ」
「背後……み、みたくないけど」
 恭志郎は、作戦を遂行する気持ちと恐怖に挟まれつつ、恐る恐る振り返った。
 その瞬間。
 木々を縫うように白装束の影が出現し、こちらへと飛来してきた。

●対峙
「出たああぁぁ!? あ、悪霊退散っ!!」
 恭志郎は叫んで、紙兵をばら撒きながら飛び退る。
 信吾もまた、悲鳴を上げて後ずさりしていた。
 信吾自身、半ば本気で怖がってもいたのだが、同時にその影がドリームイーターだとは既に理解している。
 だからこそ、悲鳴は合図代わりでもあった。
 次の刹那、ドリームイーターの背中に煙を上げて砲撃が命中した。
「さて。では、犠牲者が出ないうちに倒してしまいましょうか」
 言って、駆けてくるレクトの攻撃だ。
 奇襲班は、ドリームイーターの出現と同時に、こちらへ駆け込んでいたのだった。
「イードも、行きますよ」
 レクトの言葉に、イードも金縛りを行使する。
 動きを止められたドリームイーターへ、トエルが攻性植物・Rosalesを伸ばし、縛り上げた。
「しっかりと物理攻撃は効くようですね」
 敵を前にしたトエルの口調は、普段に比べ、どこか鋭い。
 視線も強く、そこには戦うことへの執着に似たものも感じられた。
「ならば、やることはひとつです」
 瞬間、トエルは茨の棘で相手の体を固定して、振り回すように地面に叩きつけていた。
 この間に、悠はロッドで地面をこつりと、ひと叩き。直後、まばゆく立ち上がった光で雷壁を形成、前衛を防護している。
「ン、奇襲は、うまくいった、感じ、かね」
「ああ、ありがとうな」
 信吾も、応えながらケルベロスチェインを繰っている。
 光の軌跡を描いて構成されるのは魔法陣。それが前衛を覆うように煌めき、防御の加護を与えていった。
『怨メシ、ヤ……』
 ドリームイーターは、細い声を上げながら、浮遊。再度こちらへ向かってこようとしていた。
 が、間を置いて、そこに奇襲する影。
「その言葉には、本当の矛先は存在しないのね」
 小さく言いながら、座標転移呪術『陽炎に揺らぐ死神の舞踏会』で現れたニーナだ。
 死神の大鎌をドリームイーターの内側に突き立てながら、その顔を見る。
「彷徨える亡霊……作り出された伽藍洞。……あるべき場所へ還さないと、ね。現世での現界は荷が重すぎるわ」
 一瞬だけ目を閉じたニーナは、そのままドリームイーターを切り払って地に衝突させた。
 再び敵が静止した隙に、フローライトは青い刀身を持つ剣を掲げる。
 そこから拡散させた星々の光を仲間へと注ぎ、後衛の面々の耐性を強めていた。
「これで……戦闘準備も……整った……」
「ええ、そうね。後は正面からぶつかるだけ」
 応えた晴香は、マントを脱ぎ、愛用の真っ赤なリングコスチュームだけの姿になっている。
 それから、敵へ目をやった。
「本当なら、本物の幽霊に私のプロレスが通じるか確かめてみたかったんだけど」
 言いながらも地を蹴って接近する。
 ドリームイーターも霊力を飛ばしてきたが、それは、恭志郎が庇った。
「ノア、回復頼む、な」
 直後には、悠のボクスドラゴン、ノアールが闇属性の光を注ぎ、恭志郎を回復している。
 晴香は2人に礼を言いつつも、跳ぶ。
「とにかくこれも貴重な実戦経験。その感触確かめさせてもらうわ!」
 瞬間、ひねりをくわえたドロップキックが命中。ドリームイーターを吹っ飛ばし、木に叩きつけた。

●応酬
「実体があるなら、こんなところね」
 キック後の体勢からすぐに立ち上がった晴香は、敵へ言ってみせる。ドリームイーターは木にめり込んで呻いていた。
「思いっきり幽霊を蹴り飛ばすなんて、流石稲垣さん……」
 恭志郎は、敵に攻撃が当たるのを見て、心が落ち着いてきているようだった。
 フローライトは変わらぬ無表情ながら、微妙な感じで口を開く。
「でも……物理が効く幽霊って……幽霊としてどうなんだろう……?」
「結局は仮初めのものということでしょう」
 言葉を継ぐトエルは、微かに目を細めて白装束を見据えた。
「戦うことすらできないから、幽霊は怖いんですよ? 殴って倒せる幽霊なんてお呼びじゃないですよ」
『呪ッテ、ヤ、ル……』
 ドリームイーターは反抗するかの如く、再び浮遊を始める。
 が、そこへちりん、と不意に鈴の音が鳴った。
「幽霊に、とって、こいつはどう、感じる、のかね」
 それは悠の『影猫の調べ』。その音が反響すると、現れるのは、黒い影の大群。
 にゃあみゃあと、幾重に鳴きながら進行するのは百猫夜行。それに取り巻かれるように、ドリームイーターは足止めを喰らっていた。
 そこへ、恭志郎が疾駆し、踏み込む。
 瞬間、淡い光を纏う斬霊刀を抜刀。神速の斬撃を縦横に奔らせ、ドリームイーターの温度を奪うように、体表を凍結させていた。
「とにかく、攻撃が効くならなんとかなりますね……!」
「ええ。幽霊に攻撃しているというと、除霊してるみたいでもありますけどね」
 レクトはそんな言葉を返しつつ、跳躍して接近している。
「実際の除霊ではない、ですが。黄泉の国には、送ってあげますよ」
 そのまま、宙で体を返すように、飛び蹴りを加えていた。
 イードもポルターガイストを駆使し、周囲の枝葉を針のように飛ばして、ドリームイーターの体を穿っていく。
 ドリームイーターは後退しつつも、呪いを発現。前衛を黒々とした波動で襲ってくる。
 が、即座にフローライトが剣に力を集中。
 流星の如き光を煌めかせ、皆の意識を明瞭に保った。
「……回復出来る呪いなら……なんとかなる……」
「ええ、最早、呪いともいえませんね」
 トエルも自身の地獄を体に巡らせ、回復と同時に破剣の力を得ていた。
 ドリームイーターは連撃を狙って接近してきたが、晴香はあえてその体を引き寄せる。
「足技の次は、これよ!」
 同時、腕を突き出し、痛烈な掌打。ドリームイーターを縦回転させながら、宙へ飛ばした。
 ドリームイーターは重いダメージに、一度間合いを取ろうと樹上へ。
 だがその天頂に、闇色のマントを靡かせるニーナが立っていた。
「怨む。呪う。貴方の中に感情はあるの」
『……ゥ』
 ドリームイーターは困惑するかのごとく呻くだけ。
 そう、と、ニーナは小さく呟く。それきり、黒色の砲弾を放ち、下方へと撃ち落とした。
 あがくように、ドリームイーターは地面すれすれで旋回する。
「悪いが」
 と、そこへ、信吾が手を伸ばしていた。
「好きにはさせないぜ。こっちも、命のかかった勝負なんでな」
 同時、爆縮されたグラビティの力が、相手の胸元へ集中。
 一気に破裂するように、巨大な爆発を起こし、ドリームイーターの全身に痛打を与えた。

●夏の幽霊
 ドリームイーターは一度倒れ込んでいた。だが、白装束を擦り切れさせながらも、ゆらゆらと浮かび上がる。
 フローライトは右肩に移動して盾代わりになっていた葉っさんを撫でつつ、呟く。
「幽霊の割に……中々体力はある……」
「ええ。ですが、もうすぐです」
 レクトは冷静に応え、手をまっすぐに突き出す。そこから魔弾を発射し、ドリームイーターの腹部を貫いた。
 次いで、踏み込むのは恭志郎。刀を掲げ、一息に肉迫している。
「このまま、一気に畳み掛けましょう……!」
「そー、だね。じゃ、俺もついでに」
 言って、挟撃するように跳躍するのは悠。
 そのまま悠が脚部に炎を宿らせ、踵落としを喰らわせると、恭志郎は『刹華』。
 淡い光の斬撃を横一閃に叩き込み、風の霊力でドリームイーターの体を蝕んでいった。
 フローライトもそこへ、一直線の軌道を取り飛び蹴りを打ち当てる。
 ドリームイーターは反撃に憑依を試みるが、信吾が身を挺してそれを庇い受けていた。
 直後には、体の自由を奪う敵の力を、悠の指示を受けたノアールが属性の力を浸透させ、治癒している。
「助かったぜ。じゃ、このまま最後までいくか」
 信吾は言葉とともに、即座に反撃。地を蹴って回し蹴りを命中させ、ドリームイーターを再び地に落とす。
 トエルはそこで、自分の髪をごく少量切り、それを媒介に時間法則を捻じ曲げる茨を召喚していた。
「そろそろ、終わりですよ」
 その力は、『白銀の茨の厄災』。茨はドリームイーターの体を伝い、締め上げ、傷を抉り込んでいく。
 ドリームイーターは抵抗しようと拘束を逃れるが、そこへ、ニーナが鎌を投擲していた。
「貴方の魂は私が貰ってあげる。だから悔いなく最後を飾りなさい」
 切り裂かれ、叫声をあげるドリームイーター。
 その左後方から、晴香が敵の全身を抱え上げていた。
「もう、観念することね、これで名実ともに、フィニッシュよ!」
 放つのは大技、『必殺!正調式バックドロップ』。
 体を大きく反り上げ、脳天から一撃。叩き落とされたドリームイーターは、衝撃で四散した。

 欠片のようなドリームイーターの残滓は、徐々に消滅していっていた。
「造り出された伽藍洞……とっても、悲しい味。それでも、私は貴方を導いてあげるわ」
 それを見下ろして、ニーナはそっと呟いていた。
 幽霊の跡形もなくなると、皆は少年の元へ赴き、介抱する。
「無事でよかったわ」
 晴香が抱き起こすと、そのリングコスチュームは目に毒だったか、少年は多少もじもじとしていた。
「肝試しも、1人でやるのは危険ですから。次は大人とね?」
 ただ、レクトがそう言うと、少年は真剣に頷き、ごめんなさい、と言っていた。
 少年が帰っていくと、恭志郎は周囲のヒールをし、キープアウトテープも除去する。
「これで、仕事は完了ですね」
「せっかくの肝試しスポットなんだし、記念撮影していこうぜ」
 と、最後に信吾が写真を撮ろうと提案した。
「じゃー、ちょっと、邪魔する、よ」
 同意した数人が並ぶ中、悠も参加。
 そして林を背景に、信吾のセットしたインスタントカメラで撮影した。
「変なものが写らないといいですが」
 レクトの言葉に、皆で写真を確認する。
 が、当然ぱっと見で変な所はなかった。
「では、帰還しましょうか」
 トエルが言うと皆も頷き、山道を出る方向へ。
 と、ふと写真を再確認していたフローライトが呟く。
「……ん……? なんだか……写ってる人数が多い気が……気のせいかな……?」
「? 今、向こうで何かが見えなかった? こうふわふわと」
 今度は晴香が言った。
 だが、それらを確認しても、何もいない。
「……。とにかく、早く帰りましょうか!」
 恭志郎はそそくさと帰路へ。皆もそれに続いた。
 山道は平和になり、敵も消えた。けれど、夜の山はいつまでも不気味に、闇を湛えていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年7月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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