水の鯨、月の明かり

作者:崎田航輝

 月明かりが海面に映り込むような、波の静かな夜。
 海に程近い浜で1人、水平線を眺めている少年がいた。
「水の鯨……ここで見られるんだよね」
 独り言を言いつつ、期待するように海を見つめる。
 それは耳に挟んだ噂に興味を惹かれたからだった。
「海から出てきて、ゆっくりと空に浮かぶ鯨……体が水で出来ているみたいで、月明かりが透けて見えるくらい綺麗……なんだよね」
 それをこの目で見てみたい。
 そんな一心が、表情に有り有りと浮かんでいた。
「でも、……見たら体に取り込まれて死んじゃうって話なんだよね……。海に願い事をする人間が、同時に海を汚してもいることに怒った、海の精みたいなものなんだっけ……」
 ちょっとだけ震える少年は、しかし、決意固く首を振る。
 海に願い事をすると出てくるらしいという話なので、その姿を見たいという願い事を口にしてみたりした。
 当然、それで水の鯨が出てくる事など無かったが……。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 不意に、少年の背後に影が現れた。
 手に持った鍵で、少年の心臓をひと突きする――第五の魔女・アウゲイアスだ。
 少年は意識を失い、浜に倒れ込んだ。
 すると奪われた『興味』から――大きな姿が出現する。
 月明かりすら透けて通すような、澄んだ体。夜空を巨体で悠々と泳ぐ、雄大さ。
 鯨の姿をしたそれは……ゆっくりとひれを動かし、空に漂っていた。

「空飛ぶ鯨だなんて、少し、幻想的な光景ですね」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はそう言って、集まったケルベロス達を見回していた。
「今回は、ドリームイーターの出現が予知されたことを伝えさせて頂きます。第五の魔女・アウゲイアスによる、人の『興味』を奪うタイプのもののようで――海辺にて、少年の興味から生まれるようです」
 放置しておけば、ドリームイーターは人間を襲ってしまうことだろう。
 それを未然に防ぎ、少年を助けることが必要だ。
「皆さんには、このドリームイーターの撃破をお願い致します」

 それでは詳細の説明を、とイマジネイターは続ける。
「敵は、鯨の姿をしたドリームイーターが、1体。場所は海辺です」
 辺りに人の姿はなく、静かな浜辺といった様相だという。
 戦闘の邪魔になるようなものはないので、その辺りの心配は要らないだろうと言った。
「その辺りで誘き寄せるための行動を取れば、ドリームイーターは現れてくれるはずです」
 誘き寄せには噂話をするだけでも良いが、願い事を言うことで引き寄せられる傾向もあるので、万全を期する場合は何かを海に願うといいでしょうと言った。
「ドリームイーターを倒せば、少年も目を覚ますことが出来るので心配はないでしょう」
 敵の能力は、自身の体に沈ませて水圧を集中させる近単武器封じ攻撃、体から透明な小判鮫の群を放つ遠単パラライズ攻撃、変形させたひれで打ち付ける近単プレッシャー攻撃の3つだ。
「見た目には、綺麗なものだと思いますが……人を襲う敵ですから。是非、撃破を成功させて来てくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
ティアン・バ(絞首の手・e00040)
八柳・蜂(械蜂・e00563)
白羽・佐楡葉(紅棘シャーデンフロイデ・e00912)
真上・雪彦(狼貪の刃・e07031)
伽羅楽・信倖(巌鷲の蒼鬼・e19015)
ヴェルトゥ・エマイユ(星綴・e21569)
ミュルミューレ・ミール(カンパネラ・e24517)
皇・晴(猩々緋の華・e36083)

■リプレイ

●策戦
 夜の海辺に、ケルベロス達はやってきていた。
「然し、この手の事件は中々収まらないな」
 浜を歩きながら、ヴェルトゥ・エマイユ(星綴・e21569)は言葉を零す。
「夢喰の標的になるほど、人の興味への探究心は底が知れないということなのだろうが……」
「そうだな」
 と、応えて呟くのはティアン・バ(絞首の手・e00040)。足を止めて、月明かりに煌めく海を眺める。
「だが、水でできたような、すきとおった鯨、というのは綺麗そうだ。みるの、たのしみ」
 ティアンの言葉に、ヴェルトゥも否定はしない。
(「まあ、俺も……見てみたいと思ったという点では同じか」)
 そうして皆で海に向かい立ち止まる。
 静かな波音の中、真上・雪彦(狼貪の刃・e07031)は皆を一度見回した。
「じゃあ、始めっか」
「はいっ、お話とおねがいごとですねっ。ミュルはおねがいごとしますです!」
 ミュルミューレ・ミール(カンパネラ・e24517)は、ふんわりとした笑みで応える。
 それは敵を誘き出すための策のことだ。
「願い事、か」
 伽羅楽・信倖(巌鷲の蒼鬼・e19015)は少し物思うように呟いた。
 願いが無いわけではない、でも、緩く首を振る。
(「……死んだ友に会いたいなど、どの口が言えたものか」)
 零れるのは自嘲的な笑い。
 それから寂しげに空を見上げ……噂話を口にしていた。
「水のように透ける鯨……月明かりに照らされる姿はさぞ美しいことだろう。暫し、眺めてみたいものだがな」
「海の精……などとも呼ばれているみたいだが。今日みたいな静かな月夜の海なら、もしかしたら現れてくれるかな」
 ヴェルトゥも、声を継ぐ。
 すると、僅かに水面が揺れたように、波立ち始めた。
 八柳・蜂(械蜂・e00563)はそれを見つつも皆に視線をやる。
「皆さんがどんな願い事をするのか、少々気になりますね……」
「私は、神社仏閣以外で願掛けなど滅多にしないのですが……強いて念じるなら、ということで願いました」
 と、海に向かって手を合わせていたのは白羽・佐楡葉(紅棘シャーデンフロイデ・e00912)。
 その願いは『この手の噂を信じて、深夜にひとり人気のない場所に出掛けるような人が少しは減って欲しい』というものだった。
 蜂が願ったのは、迷った結果、興味を奪われた少年と同じく『あなたが観たい』だ。
「では、僕も願い事の1つでもしてみようかな」
 皇・晴(猩々緋の華・e36083)は言いつつ、男装の麗人らしい、どこか優雅な仕草で、海に想いをかける。
 その願いは、『誰かを護れるくらいに強くなりたい』。
「――心からの願いとなると、僕にはやはり、これかな」
 そう小さく呟いてもいた。
 ミュルミューレも目を閉じつつ、願う。
(「……いつか、みなみなさまに平和のうたが届きますよう。平和をねがう声が、いのりが、みなさまと笑顔を結び付けるように」)
「――そのために、ミュルも出来る事をせいいっぱいがんばるの」
 最後は少し口に出して、決意をしてもいた。
 海は一層、波音を強めている。
 それを注視しつつも、ヴェルトゥは話を続けた。
「ここから鯨が出てくるなら、幻想的な噂通りの光景だな」
「神々しさから願い事が叶うという話も……強ち嘘とも言い切れんかもしれんな」
 信倖も言うと……次に、海面が、形を取るようにせり上がった。
 それを見遣りながら、ティアンは願いについて考えている。
 望みは、いくらかあった。
 その上で、海に願うならば……。
「……かえしては、くれないだろうか」
 それは、朧気な心の中で想う、大切なもののこと。
(「心配かけない位、戦う背に並んでゆける位、つよくなりたいことも。果たしたい復讐のことも。自分でどうにかするから」)
 ゆらゆらと揺れる海に、そっと手をのばす。それは茫洋とした自分の心の中に触れているようでもあった。
「多分、海でなくしたんだ。ティアンの、大切な、未だ思い出せない、彼の――」
 瞬間、全てを遮るような水音。
 その直後、巨大な水の鯨が海から出でて――悠々と、空に浮かび上がっていた。

●迎撃
 鯨は、雨のような雫を降らせつつ、飛んでいた。水の体に月光が乱反射し、体に光を宿しているようでもある。
 ミュルミューレは少し感嘆するように眺めていた。
「月夜におよぐおすがた……なんと神々しいのでしょう」
「ええ。星空を泳ぐ透明な姿……ちょっと海月っぽくて、ときめきますね」
 蜂も見上げ、言葉を零す。
 元々海月やペンギンなど海の生き物が好きな蜂は、観察するような視線でもあった。
「それでいて、大きさとつぶらなお目目は、鯨そのものという感じで、どこか可愛らしくもありますね」
「確かに、こうして見るとロマンは感じられるかも知れませんね」
 佐楡葉は同意する声を出す。
 だが同時に、大鎚を砲撃形態にして狙いを定めてもいた。
「ですが、人の命を奪うなら、話は別です。水で出来たその体……一滴残らず蒸発するまで、じっくり料理させて頂きましょうか」
 瞬間、煙を上げて砲弾を発射。
 水分を弾き飛ばし、気化させ……鯨の体積を幾らか減らしてみせた。
 ヴェルトゥはそれを見上げつつ、逃さぬように海側に回り込む。
「体は水でも攻撃は通じるようだな」
「うむ。ならばやることはひとつだ。迅速に行くとしよう」
 それに信倖が応え……翼を広げる。
 角や尾もあらわにしたその姿は、勇壮。長手甲を外して、地獄化した龍の腕さえも表に見せ――飛んで鯨へ向かった。
 ティアンは、紙兵をばらまいて、霊力を仲間へ施している。
「ひとまず、攻撃は任せる。ティアンは補助をしておく」
「それなら、僕も皆の力にならせてもらうよ」
 と、同時にグラビティを集中しているのは晴。
 行使する力は――『其れは己が為ではなく』。周囲に深緋の華を咲かせると、花弁の花嵐にして舞い散らせた。その力が、前衛の能力を飛躍的に高めていくと――。
 信倖は空中で、高まった力と共に……槍に蒼い炎を纏わせ、刺突。鯨の巨体を微かにくねらせた。
 ヴェルトゥも跳躍して鋭い蹴りを見舞い……強い衝撃で水分を大量に宙に散らせる。
 鯨も、信倖を飲み込まんと突進してくるが……。
 そこに、素早く晴が滑り込んでいた。晴は鯨の体内で圧力を受けるが――すぐに体内から泳ぎ出て、ダメージを抑える。
「ちょっと待ってろ。今、治してやるよ」
 すると、雪彦が手元に月光の如き目映いオーラを生み出していた。
「ウィッチドクターとしちゃあ初仕事だが――刀を振るわねえ戦いってのも万全にこなしてみせるぜ」
 独りごちるように言いながらも――光を晴へ。
 その治癒光が晴の傷を回復させると……鯨へは蜂が跳んでいた。
「大きな鯨さん。星空が透けてとても綺麗なのに結構えげつない攻撃するなんて、ちょっと、怖いです」
 蜂は鯨の顔を見て言うと――その水面も蹴って頭上へ。
「……なんて、嘘ですけどね」
 と、そのまま斧で強烈な縦一閃を喰らわせた。
「連撃を、お願いします」
「わかりましたっ」
 蜂に応えて、光の翼で飛翔するのはミュルミューレ。
「クジラさま、すみませんが、こうげきは受けませんよっ」
 揺れる鯨を避けるように、光の軌跡を残しながら、回り込むように旋回。
 その勢いのままにキックを叩き込み――水を弾けさせながら、鯨を打ち落とした。

●連撃
 一度地面に落ちかけた鯨は、洪水のような水量を降らせつつも――体勢を直して、再び浮き上がる。
「なんだか、ひとまわり小さくなったようだが。まだ体力はあるようだ」
 ティアンは観察するように眺めつつ、間合いを取っている。
 同時に、さらに紙兵をばらまくことで、後衛の魔的な防備を高めてもいた。
 ティアンの言葉通り、鯨は体積を減らしつつも、未だ悠々と空を飛んでいる。
 それを見上げ、佐楡葉は口を開く。
「いいでしょう。最期のそのときまで悠々としていられるか、試してあげます。――行きましょう」
「ああ。同時に攻めるとしよう」
 呼応して疾駆するのはヴェルトゥ。
 鯨が高空に上がる前に――跳躍。ひと息に水の体まで零距離に迫る。
 同時、佐楡葉も高々と跳び上がって、同高度にまで上がっていた。
 挟撃を仕掛けるように、2人は両側から攻撃。ヴェルトゥは星の燦めくような、光の尾を引きながらの飛び蹴りを打ち当て――。
 佐楡葉もまた、光を纏った踵落としを直撃させ、再び鯨を落下させた。
 だが、鯨もすぐに高度を戻し……水で出来た小判鮫を無数、飛ばしてきた。
 標的は雪彦……だが、小判鮫の群が、その途中で弾けるように消えていく。
 蜂が前面に立ちはだかり、その全てを地獄化した左腕で受け止めていたのだった。
「……大丈夫ですか」
「悪ィな。そっちこそ平気かよ」
 雪彦が言葉を返すと、蜂は頷く。
「ええ。鮫はちょっと苦手ですが――」
 蜂は言いながらも、次々に飛んでくる鮫を避けずに受ける。
 それは自分以外のものが傷つくのを恐れているからでもあった。そして最後までそれを体現するように――紫の炎を腕から閃かせて、全ての鮫を振り切った。
 瞬間、雪彦は煌々とした治癒の力を生み出し、それを蜂に飛ばした。
 体を覆ったそれが、蜂の傷を消し去っていくと――蜂は鯨へ『蜂毒』を行使。
 自らの血と地獄で作り出した毒針を投擲し、鯨の体内に溶け込ませ、蝕んだ。
 ただ、蜂自身にもまた、麻痺は僅かに残っていたが……。
「――心配要らないよ。僕に任せてくれ」
 そこで晴が、赤紫に輝く翼を広げている。
 そこから、オーロラの如き光を展開、広く注ぐことで――蜂の麻痺を癒していった。
「モリオンも、よろしく頼むな」
 と、そのヴェルトゥの声に呼応して、ボクスドラゴンのモリオンも、黒水晶が煌めく治癒の光をインストール。蜂の状態を万全に保っていく。
「それじゃあ、悪いけれど攻撃は任せたよ」
 晴がそんなふうに言うと――皆は再び攻勢へ。
 空へ飛び出すのはミュルミューレと信倖だ。
「クジラさんに、いっきにたたみかけるのですよっ」
「ああ。まず私が行こう。そのあとで、頼めるか」
 それに頷きを返すミュルミューレを確認すると……信倖は風を掃き、鯨の上方を取る。
 そして槍をひゅるんと回転させ――眩しい程の雷光をそこに宿した。
 そのまま神速の突きを繰り出し、鯨の体全体を感電させるように電撃で包むと――。
「よし、今だ」
「少し、いたいかもしれませんが……失礼しますっ」
 直後、ミュルミューレがメジャーバトン型のエクスカリバールを振るう。
 それが、まるで打楽器を奏でるように大音を上げて直撃。
 水面に波紋を生ませると、蓄積した雷、毒、その全てを増幅させ――鯨を地へと叩き付けた。

●海
 四方に水を散らした鯨は……体積を失い、鮫程度まで小さくなっていた。
 それでも、どこか超然とした様子は変わらず、また空へ上昇を始めるが……。
 そこへ、斧を握る蜂が駆け込んでいる。
「逃がしはしませんよ」
 言葉と同時、跳躍して鯨の横合いを取り――業火を纏った一閃を喰らわせた。
 次いで、信倖は真正面から鯨へ迫っている。
「躱せるものならば躱してみるがいい――」
 接近と共に、槍での刺突。さらに間断を置かず、連撃の突きを与えた。
 敵の眼前で一歩も引かぬその動きは、勇敢且つ、豪快。そのまま刺突の雨――天槍『荒梅雨』で大ダメージを刻んでいく。
 鯨も、信倖を狙ってひれでの一撃を繰り出すが……。
 そこに、晴のシャーマンズゴーストが飛来して、衝撃を庇い受けた。
「よくやったね。回復は僕がさせてもらうよ」
 直後には、晴が手をのばし、銀の粒子を展開。シャーマンズゴーストを含む前衛を癒し、知覚をも高めていった。
 雪彦も気力を錬成し、シャーマンズゴーストを治療している。
「傷に関してはこれで心配ねェだろ」
 雪彦の言葉に頷いた晴は……シャーマンズゴーストに炎を生み出させ、鯨を攻撃させていた。
 同時、ヴェルトゥは『Stardust platycodon』――桔梗の咲き誇る鎖を、鯨の体中に巡らせ、その動きを止める。
 鯨は初めて苦しげに、鳴き声を上げるが――。
「悪いが。人の作り出した幻想は、幻想のままで終わらせよう」
 永遠に美しく咲く花は無い、とでも言うように。桔梗がかき消えると共に、鯨を麻痺で蝕んだ。
「イス、準備は良いですか」
 と、ミュルミューレはピッコロで『Sternstunde』を演奏している。
 それに合わせて、真っ白なエゾモモンガのファミリア、イスが舞うと……星の如き光が降り注ぐ。
「ミュル達の想い、クジラさまに届きますように!」
 言葉と共に、鯨は光に貫かれ、さらに動きを鈍らせた。
 同時、ティアンの斬撃と、佐楡葉の放った幻龍が、鯨の半身を散らせる。
 それでも鯨はまだ、攻撃を試みてきていたが……。
「それなら、これでおわりだ」
 と――ティアンは、濁った黝色の地獄の炎を溢れさせる。その『業火の海』が、鯨を炎で包むと……。
 佐楡葉は零距離から『Bloody Mess』。
「――灼熱の薔薇、宿した月影よりも眩しいかも知れませんね」
 放たれた魔力弾は、苛烈に過ぎる熱量を生み……鯨を燃やし尽くし、消滅させた。

 佐楡葉は、雨の跡のような、微かな鯨の痕跡を見下ろす。
「鯨が陸に揚がって来れば、その運命は決まっていたでしょう――また元通り、誰かの夢にお還りなさい」
 そして段々と、その痕跡まで無くなり……静かな海が戻っていた。
「終わったね。皆、お疲れさま、怪我はないかい?」
 晴が見回すと、皆は頷き、息をつく。
 そのうちに、ティアンは周囲にヒールをかけ始めた。
「海辺を汚して帰ることも、ないだろうから」
 それに皆も続き、荒れた地面を修復した。景観も元通りになり、もはや敵がいた跡形はなかった。
「斯くして悪夢は露と消え、という始末ですね」
 佐楡葉は呟く。
「そもそも、海洋汚染に動物たちが怒ってるなんて、それこそ人間的な見方ですし――噂は、自然への畏敬が鏡写しのようになった結果じゃないんですかね」
「そうかも、な」
 ティアンは少し頷きつつも、海を眺めた。
 思うところはあっても、海は見るのも泳ぐのも好きだった。
(「この海もまた、つながっているだろうか。――とおく故郷の海と」)
 少し、そう思いながら。
 それから皆は、解散して帰路へつく。
 ヴェルトゥは夜の浜辺を歩きながら、帰った。
「……本当に海の精とやらが居るとしたら。この広い海の様に穏やかな者であって欲しいな」
 静寂の海に、そんなことを呟きつつ。
 一方、蜂はしばらく、鯨が消えた場所を見下ろしていた。
「泡みたいに消えてしまう、夢みたいな光景も――この目に記憶にしっかりと焼き付けたら、きっと夢じゃなくなります、よね」
 視界にあるのは、浜と海。
 蜂はそこに一度、幻想的な姿を重ねて思い描き……。
 それきり踵を返して、去っていった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年6月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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