薔薇園の聖騎士

作者:崎田航輝

 森を抜けると、一面のバラだった。
「わぁ、凄い、ここなら本当に出てくるかも……」
 と、好奇心をあらわにそこを見回すのは一人の少年。とある噂を聞いて、ここに探検しに来たのだった。
「薔薇園で強者を待つ騎士……かぁ。見られるのかな」
 とある貴族が、配下の騎士のつわものぶりを誇示するために、バラ園において力比べをさせていた。そこで無類の強さを誇った騎士は、いつしか幽霊になり、未だに戦う相手を欲している……そんな噂。
 何の証拠のない噂ではあるのだが、それは少年の好奇心には関係無い。
「騎士かぁ、カッコイイのかな……」
 芳香の濃い、バラの中を少年は進む。勿論、幽霊が現れることはなかった――が。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 少年の背後に突如、一人の魔女が現れた。
 手に持った鍵で、少年の心臓をひと突きする――第五の魔女・アウゲイアス。
 少年は意識を失い、地面に倒れ込んだ。
 すると奪われた『興味』から――ひとりの人影が出現する。
 バラの園に片膝をつくその影は……美しい銀甲冑を付けた、騎士。
 その手には、欧風のリーチの長い剣をたずさえている。
 甲冑の下の顔は、うかがえない。だが、それは確かに、戦いに飢えた騎士の姿のようでもあった。

「お集まり頂きありがとうございます」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)はケルベロスを見回していた。
「今回は、ドリームイーターの出現が予知されました。第五の魔女・アウゲイアスによる、人の『興味』を奪うタイプのもののようで――北方のとある森にて、少年の興味から生まれるようですね」
 放置しておけば、ドリームイーターは人間を襲ってしまうことだろう。
 それを未然に防ぎ、少年を助けることが必要だ。
「皆さんには、このドリームイーターの撃破をお願い致します」

 それでは詳細の説明を、とセリカは続ける。
「敵は、騎士の姿をしたドリームイーターが、1体。体躯も皆さんとほぼ変わらない、人型の相手ですね」
 現場は、一面のバラ畑だという。
 といっても自然の植生のようで、森の奥にある。
 ただ戦闘場所はバラ以外の木々はなく、戦闘に難儀することは無さそうだと言った。
「現場の付近で少々の噂話をすれば、ドリームイーターをおびき出せるはずです。戦いを求める相手と言うことで、そういった方面の呼びかけをしてもいいかも知れません」
 一度敵が出現すれば、あとは戦うだけだ。
「ドリームイーターを倒せば、少年も目を覚ますことが出来るので心配はないでしょう」
 敵の能力は、剣撃による近単服破り攻撃、剣圧を飛ばす遠列氷攻撃、連続の斬撃による近単ジグザグ攻撃の3つだといった。
「かなりの技量を誇る相手らしいので、気をつけて、作戦に臨んで下さいね」
 それでは皆さんの健闘をお祈りしています、とセリカは結んだ。


参加者
マルティナ・ブラチフォード(凛乎たる金剛石・e00462)
ジョージ・スティーヴンス(偽歓の杯・e01183)
ソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)
シェナ・ユークリッド(ダンボール箱の中・e01867)
ベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)
ラズ・ルビス(祈り夢見た・e02565)
真木・梔子(勿忘蜘蛛・e05497)
神寅・闇號虎(天覇絶葬・e09010)

■リプレイ

●楽園
 森に入ったケルベロス達は、木々を抜け、バラ園へとたどり着いていた。
「ここが現場のようですね。早速、準備を始めましょうか」
 と、歩んでいくのはラズ・ルビス(祈り夢見た・e02565)。
 冷静に仕事へ向かう仕草は、表情の乏しさも相まって一種事務的だが……一面に広がる赤白のバラの楽園には、しっかと目を奪われており、花を踏まないように丁寧に歩んでいた。
「薔薇か……思い出すな、一昨年のクリスマスを」
 マルティナ・ブラチフォード(凛乎たる金剛石・e00462)は、一瞬物思うように眺めているが……。
「しかし、今回は甘い雰囲気とは程遠いようだが」
 すぐに目的の方へ視線をやる。
 そこに、意識を失っている少年が横たわっていた。一応少年の無事を確認した皆は……頷き合い、そこから距離を取った場所に陣を取る。
 そこで――敵を誘き出す策を始めることにした。
 バラの芳香漂う中で、最初に口を開いたのは真木・梔子(勿忘蜘蛛・e05497)だ。
「この美しい薔薇園でけったいな噂が出てるみたいで。出所逸話は定かではありませんが――」
 と、鉄塊剣に手をかけつつも、貴族とバラ園の幽霊騎士について語り出す。
 ひとしきり聞いて、ラズはなるほどと頷いて見せた。
「薔薇園に騎士、というのも不思議な噂に思えましたが……貴族の配下自慢の舞台ということならば、納得できますね」
「それにしても、薔薇の庭園に騎士の決闘とは、文字通り大した貴族趣味だぜ」
 ジョージ・スティーヴンス(偽歓の杯・e01183)はどこか気怠げに、しかし周囲に視線は走らせつつ、言葉を続ける。
 シェナ・ユークリッド(ダンボール箱の中・e01867)も、辺りを眺めつつ朗らかな声を出した。
「バラの中に佇む騎士さん、だなんて、本当にいらっしゃればすごく絵になりそうですね」
「確かに様になりそうだな。それに、強い奴なんだろう?」
 ソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)が聞くように言うと……さわさわと、風が吹く。
 何か気配が近づいたように、花の香りが広がっていた。
 皆で視線を交わしつつも……神寅・闇號虎(天覇絶葬・e09010)は、話を続けることにする。
「聖騎士と名乗るからには、剣の腕は相当なものなのだろう」
「幽霊になってでも戦いたいなんてのは、軍縮の時代には実に不似合いな気もするがね」
 近づく気配に、ジョージは警戒を欠かさぬまま、言葉を継ぐ。
 ラズも追随するように頷いた。
「実際、騎士自身はどういう理由で戦ったのでしょうね。忠誠か、名誉や富か……あるいは、戦いそのもののためか。……その想いを知るためにも、一度、手合せしてみたいものですね」
「ああ。私もそのような騎士が実在するのなら、剣を交えてみたいものだ」
 マルティナも相槌を打ちつつ、四方に注意を払う。
 ソロは誘き出すように、自信満々に煽る口調を作った。
「まあ、実際に居たとして、本当に強いのか怪しいものだけどな」
 すると、視界の端で、一瞬の光が煌めく。
 それは、薄明かりに反射した剣だ。
「死して尚、無敗を誇る兵と在らば――」
 と、ベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)がそちらに向く。
「同じく、一度限りの死闘にて、剣を交えたく存じます」
 そのベルノルトの言葉の先――。
 すたりと、バラの間に膝をつく者がいた。
 銀甲冑の騎士――ドリームイーター。ゆっくりと立ち上がると、その手に長剣を携える。
「……来たか」
 闇號虎も剣を構え、相対した。
 ジョージも息をつき、敵に向く。
「早々に出てきてくれるとはな。……俺らみたいな戦うしか無い存在とは、相性が良いと思われるのかもな。……やれやれ」
 そして自身もまた、ひゅるんと回した大振りのナイフを握った。

●決闘
 ケルベロスと睨み合った騎士は……姿勢を低く剣を構えると、すぐに接近してきた。
 そして、まずは小手調べとばかり、剣で軽く横薙ぎ。
 正面にいたジョージは、それを避けず、むしろ自ら傷を受けるようにまっすぐ踏み込んだ。
 頬から軽く血を散らせながら、零距離に迫る。
「騎士道精神なんて言ってはいても――騎士なんてのは結局は兵隊、人を斬るのが仕事さ」
 そのまま、騎士が次の攻撃を狙うのを、視線で追った。
「……そういう点では、実にお努め熱心だな」
 言いながらも、それより早くナイフを振るい……甲冑を裂くような傷を与える。
 騎士は一歩後退。こちらの力量に驚いたか、微かに兜の中で吐息を漏らすが……再び、疾駆してきた。
「如何であれ。芳しくも美しい薔薇園に、鉄と錆の薫りは相応しくありません故」
 と――その眼前に、ベルノルトが立つ。
 すらりと抜いた刀は、既に雷鳴のような光を纏っている。
「無粋な騎士には、ご退散頂きましょう」
 直後、騎士が腕を上げる一瞬の間隙に、神速の刺突を喰らわせた。
 騎士の手元が斜めに払われたところへ、シェナがふわりと飛んでいる。
「うふふ。確かに、せっかく綺麗に咲いてるバラさんを散らしちゃったら残念ですね?」
「それなら、荒らされる前に守ってしまえばいいのだ。行くぞ!」
 そう応えるのはソロ。シェナに息を合わせるように、こちらも高く跳躍し、一気に距離を詰めている。
 シェナが滑空するように、騎士に飛び蹴り。その勢いで、隙が出来たところに――ソロもちょうど飛び込んで、体を翻しながら回し蹴りを叩き込んだ。
 騎士は、バラ園から放り出されるように、木に激突する。
 それでも、上手く着地して、再びバラ園に走り込んでくるが……。
 それを、闇號虎が迎え撃つ。
「どちらの剣の腕が上か、競い合ってみるか」
 闇號虎の言葉に――騎士は、受けて立つというように、剣を振りかぶって肉迫してきた。
 闇號虎はその一撃を、こちらも剣で受け止める。
 だが騎士も、二撃三撃と打ち込んできた。
「ほう、噂とは宛にならんと思ったが、こいつは……!」
 全てをいなしながらも、闇號虎はその威力に、微かに目を見開く。
 が、闇號虎も受けるばかりではない。
 剣線と剣線の間を縫うように――下方から炎を伴った払い上げ。熱波を伴った一撃で、騎士にたたらを踏ませた。
「少々お待ち下さい。負傷の方はすぐに対処させて頂きます」
 と、闇號虎の負ったダメージには、ラズがロッドを掲げている。
 瞬間、目映いばかりの雷光が弾けると――それが癒しの閃光となり、闇號虎を包んでいった。
「私も、支援させて貰おう」
 言ってレイピア状の剣を掲げるのはマルティナだ。
 それを素早く操ると、一瞬の間に守護星座の魔法陣が出来上がり、発光。闇號虎を含む前衛を回復防護していく。
「エイドは攻撃をお願いしますね」
 と、そのラズの声に呼応して駆け出すのは、救急箱型のミミック、エイドだ。騎士に接近すると、足元を噛みついて確実にダメージを与えていく。
 騎士はすぐに飛び退き、体勢を直すが――。
「実力はあるようですが。噂をすれば簡単に出てくるあたり、思慮は無いのでしょうかね」
 梔子があえて挑発するような言葉を使うと、そちらに向く。
 そのまま梔子へと接近しようとするが――梔子は待ち伏せるように、拳にグラビティを集中していた。
 放つのは、凄まじい波動。
 それが増幅された重力波となって炸裂し、騎士を後方へ吹き飛ばしていく。

●剣戟
 一度地に倒れた騎士だったが――まだ弱った様子は見せず、すぐに立ち、走り込んで来た。
 その間、バラの花弁が少々散り、舞っていくが……。
「あらあら、ちょっとだけバラが荒れちゃいますね」
 それを見るシェナは、言葉とは裏腹に慌てる様子はない。柔和な笑みに、何かそれ以外のものも含ませつつ――ブラックスライムを展開。
「でも、舞い散るバラの花びらをバックに戦うのも、ベストショットかもしれませんね」
 直後、舞う花弁ごと、騎士をスライムに閉じ込め、全身に痛打を与えた。
 騎士は微かに動きを鈍らせつつも……何とか拘束から逃れ、剣を握り直す。
 それは、むしろ一層好戦的になった様子でもあったが――。
「それならば、受けて立つまでだ。望み通りな!」
 言葉と共に、ソロが正面から疾駆していた。
 鎌で正面から鍔迫り合うその姿は、凛として、強気。
 騎士が横から薙いでくれば、跳躍して交わし――縦の攻撃は鎌で受ける。
 距離を詰めてくれば宙返りして間合いを保ち、その内に隙を突いて、強烈な斬撃を喰らわせた。
「成る程、確かに中々使い手のようではあるな。気をつけろ」
「分かった、ありがとう。――だが、こちらも剣の心得はある」
 と、ソロに応えて敵に向くのは、マルティナだった。
 繰り出された騎士の刺突を、角度をずらした突きでいなし、切り結ぶ。それは軍の訓練と自己流で身に着けた、伝統と実用性を混在させた剣術だ。
「来るならば、来い」
 マルティナの言葉に、騎士も引いては突きを繰り返した。
 銀甲冑と、白軍服の麗人は一時、つかず離れずを繰り返す。そして最後はマルティナの突きが騎士の胸を打ち、甲冑にひびを入れた。
 騎士も怯まず、力を溜めてから、広域に剣圧を飛ばした。
 強力な冷気を伴う衝撃が、強風のように前衛を襲う。
 ベルノルトはそれを正面から受けながら……ただただこちらを斬ろうとする騎士の姿に、呟く。
「強き者を求める心――。何が貴方を衝き動かすのでしょう。命の遣り取りか、或いは血の薫りか……」
 騎士は無論、応えない。返答の代わりに剣圧を強めるばかりだ。
 ジョージは肩をすくめ、暴圧の中を敵に一歩一歩近づく。
「何にせよ、人の行動を阻害する技がお好みとは、大した騎士道精神だな」
 そしてそのまま、距離を詰め――ナイフを振り上げる。
「……ま、それはお互い様だが」
 振り下ろされた一撃は、鎧の隙間を縫って命中。亀裂から血潮を散らせた。
 騎士が堪らず間合いを取ると……そこで空間を光が包む。
 ラズの展開する、巨大な雷壁だ。それは天まで昇るような勢いをもって仲間を覆い――嘗めるように傷を消滅させてゆく。
「これでほぼ、治癒できたでしょうか。万全、とは行かぬようですが――」
「なら、これで仕上げさせてもらいます」
 と、ラズに応えるように、梔子もその手から光を生んでいた。
 発散させるのは煌めく銀粒子。
 それが癒しの風のように皆を取り巻いていくと……前衛の浅い傷を完治させていった。
 騎士の方へは、エイドが駆け込んで、メスや注射器をばらまいて追い立てている。
 それには距離を取って対処する騎士だが……すかさず、闇號虎が追い縋った。
「確かにお前は、厄介な敵だ。しかし、勝ちは俺達のモノだ」
 握りしめるのはその拳。騎士の剣さえも、その腕力で逸らし――。
「負けられないという強い気持ち、そして強くなりたいという気持ちがあるからだ!」
 同時、強烈な一打を打ち込んだ。
 地に叩き付けられ、転げる騎士。それでもゆらりと起き上がってくるが――。
 そこへベルノルトが迫る。
 その刀捌きは、冷静に、冷淡に――騎士の全身を切り刻み、片腕を切り落とした。

●静寂
 騎士は肩を押さえ、静かに息を上げている。
 それでも、一切の戦意を失ってはいないようだが……。
「こうして剣を交えてみても、僕はやはり――」
 反して、ベルノルトは小さく言葉を零す。力とは裏腹に、争いを嫌うその性格が、微かに表に出るように。
「――唯、虚しい。戦いに、愉しみなど」
 しかし、だからこそ終わらせるというように。ベルノルトは騎士に再度肉迫し――『解血刃』。斬撃で騎士を縫い止めた。
 同時、シェナはその手に光を灯す。
「このまま、たたみかけてしまいましょうか」
「いいだろう。code-F……解放!」
 応えるソロは、『code-F』により魔力を集中。青白く発光した羽を形成し、騎士へ突撃する。
 同時、シェナの『水灰色の記憶』で、周囲に、淡い水色に染まりかけた白い羽根が散っていく。
 2人による蒼い光の乱舞は、騎士を取り巻き、体力を奪った。
 それでも騎士は、片手で剣を振るってくるが――。
 その一撃を、ジョージが『押え込む』。それは文字通り、自らの体で攻撃を受け押さえ込む技。
「お前さんの攻撃はそんなものか」
 まるで破滅と虚無へ誘う何かに惹かれるように――ジョージは刃を食い込ませ、自らの傷を深める。だがそれで倒れはせず、反撃のナイフで騎士を吹っ飛ばす。
 騎士は転げながらも、再び体勢を直し、攻撃を試みるが……。
「させませんよ」
 と、ラズが投擲したメスがそれを弾き飛ばす。『名薬一擲』……麻酔薬の塗られたメスは、同時に騎士の体へも襲い……その行動を奪った。
 騎士はそれでもよたりと歩いてくるが――梔子は『先祖返り 土蜘蛛』を行使。背中から現した蜘蛛の脚でその体を打ち付ける。
 宙へ煽られた騎士へ、マルティナは手をのばしていた。
「薔薇は白も赤も美しい。それを、血で汚させるわけにはいかないな。そろそろ、終わりだ」
 グラビティによる爆撃で、騎士の意識を刈り取ると――。
 闇號虎が高く跳んだ。
「聖騎士、貴様を喰らい俺は強くなる。花鳥風月!!」
 それは自然への祈りと共に、縦横無尽の攻撃を繰り出す技だ。
 騎士はその全てを受け……斬られ、裂かれ、四散した。
「薔薇の中で眠れ」
 着地した闇號虎の声だけが、静かに響く。

「終わったな」
 戦闘後。ソロの言葉に皆は頷き、息をついていた。
 そしてすぐに、少年の安全を確認した。
 少年は無事に目を覚まし、事情を聞いて皆に礼を言った。それから、危ないことは控えると約束して、森から帰っていった。
 さて、とシェナは見回す。
「少しだけ荒れてしまいましたし、ヒールしましょうか」
「そうですね。出来るだけ、直しておきたいです」
 ラズも応え、丁寧に、バラ園を修復し始めた。
 被害は少なかった事もあり、景観はすぐに元通りになった。
 マルティナは、それらを眺め、微笑む。
「やはり薔薇はこうして眺めて愛でるもの。力比べの舞台になど、無粋の極みだ。……同じ貴族として、そのような真似は少し恥ずかしいぞ」
 そして、騎士の散った跡に、語りかけるように言っていた。
 ジョージはそれをぼんやりと見つつも、バラ園を眺める。
 数多の傷を負った。だが未だ自分は健常だ。それに一瞬だけ、ジョージは乾いた笑いを零す。
(「幽霊、か。実在するとして……そうまでして生きて、この世で何をしたいんだかな」)
 そんな思いと共に、虚無感を引きずって。
 一方、梔子はバラの間に、騎士の剣を見つけた。
「銘などは無い……ようですね。薔薇の棘、深緋幽刀、Rosen Duft――名は、追々考えるのもいいでしょうね」
 言って、剣を収める。
 ベルノルトはバラを一輪、摘んでいた。ひときわ美しいものを、手土産に。
「薔薇園の香り……少しでも感じ取ってもらえたら」
 そう呟くのは、此処にいない誰かへ。
 其々の時間を過ごした戦士達は――そうして誰からともなく、帰還していった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。