忍び、相討つ

作者:崎田航輝

「螺旋帝の一族が、東京都心部に現れた」
 月華衆『機巧蝙蝠のお杏』が、膝をつく部下達を見回している。
 その声は冷静でもあり、張り詰めてもいた。
「一刻も早く、我らが月華衆が、その御身を保護せねばならない。お前達は江戸川区の探索を行い、どんな些細な情報でも報告せよ」
 お杏の言葉に、配下の螺旋忍軍達は、はっ、と同意を示す。
 彼らこそ、月華衆、黒鋤組。技量こそ未だ修行中の身であるものの、準備を怠らず、綿密な調査を持って事に当たることで成果を上げ続けて来た者達だ。
 武器に刻まれた月下美人の模様は、月華衆であることの誇りを象徴しているようでもある。
 散れ、という言葉と共に、黒鋤組はその場を離れ、任務に向かって行く。
 目指すは江戸川区。

 一方、黒螺旋忍軍である【黒笛】のミカドもまた、行動を開始していた。
「集まりましたね――では、指令を与えましょうか」
 木造の、寝殿のような建物の中で……ミカドの言葉に居並ぶのは、紫の狩衣ような装束に身を纏う螺旋忍軍達。
 ミカド直属の部下である彼らは、ミカドの言葉にもどこか雅に耳を傾けていた。
「江戸川区に、異変の兆し有り。速やかに彼の地に向かい――あらゆる異変を調べ、持ち帰るのです。仮に、他の忍軍の調査部隊を発見した場合は……速やかに排除し、目論見を阻止しなさい」
 その司令に、螺旋忍軍達も、同意を示し……散っていく。
 目的地は、東京、江戸川区だ。

「お集まり頂きありがとうございます」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、ケルベロス達を見回していた。
「東京都心部にて、螺旋忍軍が活発に活動を開始したことが分かりました。本日は、それに関する任務となります」
 一口に螺旋忍軍、といっても、どうやら複数の組織が入り乱れるように活動しており……忍軍同士の戦闘にまで発展する状態となっているようだ。
 それだけならばデウスエクス同士の争いで済むのだが、この戦闘により都心が破壊される危険性もあり、放置しておくことは出来ない。
「皆さんには、争いを始めるであろう螺旋忍軍達の撃破をお願い致します」

 状況の詳細を、とセリカは説明を続ける。
「場所は、東京都江戸川区。市街地の中であり、江戸川を挟んだ短い橋の近辺となります」
 ここに螺旋忍軍が現れるわけだが……。
 やってくるのは、2つの組織に属した忍軍達。
 片方は月華衆『機巧蝙蝠のお杏』の指示で動く『黒鋤組』の螺旋忍軍5体で、もう片方は黒螺旋忍軍・【黒笛】のミカドの配下となる5体の螺旋忍軍。
 両者は江戸川を挟んで向かい合う形で邂逅し……戦闘開始後、橋を中心に戦闘を繰り広げることだろう。
「総勢10体の螺旋忍軍。真正面から両者を潰そうとするのは、難しいでしょう。そこで、ふた通りの戦い方を提案します。1つは両者が疲弊するのを待ってから、戦闘に参加し両者を一度に叩く方法。もう1つは、まず片方の忍軍を撃破し、返す刀でもう片方の忍軍も殲滅する、という作戦です」
 1つ目の方法を採る場合、介入タイミングを遅らせるにしたがって、敵は疲弊していくことになる。場合によっては楽に勝てるが、両者の戦闘を放置する分、周囲の被害が大きくなる可能性が高くなる。
 2つ目の方法を採る場合は、戦闘初期から参戦するため、被害は抑えられる可能性が高くなるだろう。その分、忍軍同士が協力してこちらに対抗してこないよう、工夫は必要になる。
「2つ目の方法は、要するに最初、どちらかの忍軍の味方をするということですね。この策を取る場合は、あまり双方の消費狙いと取られる行動をしないことが肝要かも知れません」
 戦力についての情報を、とセリカは続ける。
「黒鋤組の方は、螺旋手裏剣での攻撃と分身の術での回復を行います」
 組織立っている分、不測の事態には弱いが、チームワークは強いという。
「ミカド配下の方は、シャーマンズカードでの攻撃と護殻装殻術を行使してきます」
 どちらかと言えばマイペースで個が強い者達が集まっているようだといった。
「騒ぎに関しては、まだ謎も多いようですが……まずは戦闘に集中して頂きたく思います」
 配下としての彼らが知る情報は少ないだろう。正しい情報が得られる確証も無いので、ひとまずは人命と戦闘の収束を最優先に行動して頂ければ幸いです、とセリカは言った。
「10体という多数との戦闘となりますが、上手く策を練って、臨んでみて下さい」
 皆さんの健闘をお祈りしています、とセリカは結んだ。


参加者
ギヨチネ・コルベーユ(ヤースミーン・e00772)
流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)
茶屋・真咲(アルマキナリア・e01809)
ミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)
八雲・要(英雄志望のドラゴニアン・e14465)
葛籠折・伊月(死線交錯・e20118)
鬼島・大介(最終鬼畜喧嘩屋・e22433)
真田・結城(白銀の狼・e36342)

■リプレイ

●挟撃
 現場の橋へと駆けつけるケルベロス。既に遠目に、螺旋忍軍達がにらみ合っているのが見えていた。
「しっかし、組同士での潰し合いか。やってる事は人間と変わらんな」
 鬼島・大介(最終鬼畜喧嘩屋・e22433)は面倒くさそうな表情で、煙草をくわえている。
 既にその手に火器を携えながら、茶屋・真咲(アルマキナリア・e01809)も頷いた。
「やるにしても、迷惑のかからない場所でやって欲しいものだけどね」
「そうだね。ま、何にしてもいつも通り――誰も死なせないように全力でやるだけさ」
 八雲・要(英雄志望のドラゴニアン・e14465)が言えば、皆もそれぞれに頷き――橋の前へ到達。
 丁度、螺旋忍軍の両者――黒鋤組と、ミカド配下の陰陽忍がぶつかり始めたところで……。
 その地面に大きな衝撃が走る。
 ギヨチネ・コルベーユ(ヤースミーン・e00772)が、超重量のハンマーを打ち付けていたのだ。それは光と共に紋章を展開し、黒鋤組数人の精神にも余波を与えた。
『何やつ――ッ!?』
 黒鋤組が、驚嘆して振り返る。
 その頃には、陰陽忍と共に挟撃をするように、ケルベロス達は黒鋤組の背後を取っていた。
 その陣を崩さぬよう、ギヨチネは黒鋤組を見据える。
「黒鋤組――貴方達は、ドラゴニアンの同胞を殺した、仇です。今時分、そちらと共闘させて頂きたい」
 言葉の後半は陰陽忍への呼びかけだった。
 黒鋤組は一時、見合っている。
『そんなものは知らぬ。下手人は少なくとも我等5人ではない……』
「それでも、仲間の最期の一言が黒鋤組と伝えておりました。なれば貴方達は、敵です」
 ギヨチネの言葉に、黒鋤組は一瞬、反論しかねている。
 陰陽忍の方は、それを見て何やら、興味深げにひそひそしていた。
 大介はふーっと煙を吐くと、黒鋤組の最前衛の1体に、ポールアックスで強烈な斬撃を喰らわせた。
「面倒くせぇけどな。今は手ぇ貸してやるって言ってんだよ、黒笛の」
「そうそう、どちらかが居なければ……争いの理由もなくなるのだろう?」
 真咲も言葉と同時、砲口に火を吹かせ――凄まじい連続射撃、『sucesisparo』を繰り出す。要の祝福の矢により、破剣の力も得ていた砲弾は――偏差射撃で敵前衛の1体を穿ち、体力を削り取っていった。
 すると陰陽忍達は、ほほと笑う。
『成る程。まあ、助太刀してくれるというのなら、断る理由もないの。皆、行くぞ』
 そして橋を渡り、黒鋤組に攻撃を仕掛け始めた。
 周囲を窺っていた真田・結城(白銀の狼・e36342)は、そこで皆に耳打ち。
「危険な区域には、一般人はいないようです。このまま短期戦で済むなら、被害は出さずに終われると思いますよ」
「そのようですね」
 と、こちらも辺りを確認していたミスラ・レンブラント(シャヘルの申し子・e03773)が、頷く。
「後は、作戦を恙なく進めるだけ――では――“この魂に憐れみを”」
 同時、ミスラは透き通った声を発する。
 紡ぐのは、救いを求める者、救われぬ者達へと向けた祈りの言葉。『憐れみの賛歌』――その力で、まずは味方前衛の耐性を高めていった。
 その間に、結城は剣を握る。
 未だ未熟な自分を自覚しながらも、しかし尽力する気持ちは変わらず。そのまま振り抜き、剣圧を飛ばした。
 陰陽忍の攻撃で体力が減っていたこともあり――その攻撃で黒鋤組の盾役1体が早々に力尽きた。
『くそっ、とにかく戦うしかない!』
 黒鋤組は焦りつつも、こちらへ手裏剣を投擲。
 だが――葛籠折・伊月(死線交錯・e20118)はそれを真っ向から受けながらも、倒れずに携行砲台・嘉凛を向けていた。
「そんなもので、倒れたりはしないよ」
 軍服に外套姿で構えるそれは、幼なじみ2人から名を借りた伊月の武器。
「帝国山狗団がひとり――葛籠折伊月が相手をさせてもらおう」
 瞬間、一斉砲撃。
 後衛の1体に麻痺性のダメージを与えていった。
「何にせよ、頭数が多いのは面倒やね」
 手裏剣や陰陽忍の攻撃が飛び交い始める中、流星・清和(汎用箱型決戦兵器・e00984)も焦らず、大鎚を構えている。
「まあ程々に――でも確実に行こうか!」
 同時、地を蹴ると一気に肉迫。大振りに振った鎚で敵の盾役を一撃し……強烈なダメージで吹っ飛ばし、柵に激突させた。

●闘争
 短時間のうちに戦力を削られた黒鋤組は、焦燥を見せていた。
『く……我等の組織力を以てして、不意打ちを喰うとは……』
「組織力ねえ……」
 と、真咲が言葉を零す。
「そもそも忍軍同士協力できてないのに、組織力も何もないんじゃ?」
 何、と、黒鋤組はそれに反抗する表情を見せた。
『きゃつらとは仕える先が違う、協力などせぬのは当然だ!』
 黒鋤組はそのまま、真咲に手裏剣を集中投擲する――が。
「――やらせは致しませんよ」
 そこへ、ギヨチネが滑り込むように跳び、全ての攻撃を体で受け止めた。
 凄まじい威力の手裏剣が体中に裂傷を刻むが……ギヨチネは倒れない。直後には、気合いのシャウトで体力を回復していた。
 とはいえ、ギヨチネ含む盾役がこれまでの攻撃の多くを受けてきたので、その面々の体力はかなり目減りしていたが……。
 そこに虹色の光が発破される。
 要のブレイブマイン――それがタイミング良く、前衛の減った体力を持ち直させていった。
「ったく! 皆の後ろに居るってのはやっぱり性に合わないな!」
 普段、最前線で戦う要は、少しばかり歯がゆそうに言う。
 結城は自身も回復のオーラを発しながら、応えた。
「それでも助かります。要さんの回復がなければ倒れていますから、必要ですよ」
「わかってるさ。支援はしっかりやるから――その代わり誰も倒れないでね!」
 要が返すと、伊月は呼応するように砲口を敵に向ける。
「勿論。そのために、ここから反撃だね」
 そのまま、嘉凛から炎弾を撃ち出し、2体目の敵前衛を打ち砕く。
『くっ、このままでは……回復をっ』
 3体となった黒鋤組は、慌ててまだ立っている者の回復を試みる。
 だが、陰陽忍の攻撃も同時に受けている中では、どうしても大幅な回復は望めない。
「ま、諦めるんやな。数の違いだ」
 その隙に清和が再び零距離に迫る。
 敵が攻撃に移るよりも早く、大鎚を振り上げ――痛烈な一撃。前衛最後の1体を消し飛ばし、残り2体とした。
「さて。じゃあ、ひとまずケリを付けるとすっか?」
 次いで、大介が地を蹴り接近。
 同時にオウガメタルに武器を飲み込ませ、巨大な斧剣を作り出した。『射殺す百鬼』――そのまま繰り出される無数の斬撃が、中衛の1体を切り刻み、四散させる。
 黒鋤組最後の1体には、真咲が砲身を向けていた。
「狙い打つのは疲れるんだけど……っと!」
 間合いのある相手にも関係無く、轟音と共に砲弾を発射。煙を上げ敵を貫通すると……悲鳴をも上げさせぬうちに――黒鋤組を全滅させた。
『おや、随分と楽な戦いだったの』
 と、陰陽忍達はそれを見て楚々と笑っていた。
 清和は攻撃の手を休め、戦いは終わりという空気を一瞬だけ、醸している。
「ならこのまま――最後までさくっとやらせてくれよ!」
 ――と、瞬間。
 清和は超加速し、一気に陰陽忍の隊列に侵入した。激しい駆動と共に大鎚をぶん回し、陰陽忍3体に凄まじい打撃を喰らわせていく。
 たたらを踏む陰陽忍は、すぐにこちらとの間合いを保った。
『おやおやこれは……協力というのは嘘だったのかの?』
「途中まではしたろ? 後はテメェ等ってだけさ。螺旋帝一族だったか――そっちは俺達が代わりに探してやるよ」
 大介は新しい煙草をくわえ、獰猛な笑みを浮かべる。
 成る程、と陰陽忍は頷いていた。
『騙し討ちというわけかの。卑怯なまねをする』
「卑怯……? いいえ、これは戦術です。被害を最小限に抑えつつ、早期に二つの驚異を取り除く為の、ね」
 ミスラは自身を地獄の炎で多い、輝くばかりの光を纏いながら見据えた。
「私達の使命は平和を乱す者を許さず――人々の安寧を維持し――それを乱すものから護り抜く事です」
 同時、1体に肉迫し、槍型兵器での神速の突き。
「故に、それを仇す貴方達も―――例外ではない」
 その衝撃で1体を吹っ飛ばし……体力を大幅に減らしていく。

●苦戦
 陰陽忍達は、反撃に移ってきた。
 後衛の2体は毒攻撃を、中衛の3体は傷を刻む攻撃を――数を活かすように、こちらの前衛に向けて行使した。
 するとこちらの前衛全員が凄まじい猛毒に蝕まれる。
「みんな、今回復するから待っててくれ!」
 と、それには要が、地獄の翼を羽ばたかせていた。『灯せ希望の灯!陽炎の翼!』――その能力が体力を癒し、毒もある程度、治癒させていく。
 無論、体力もまだまだ回復しきらないが――。
「廻、頼むよ!」
 要の言葉に、ボクスドラゴンの八雲・廻も碧色の光を煌めかせ、属性インストール。特に削られていたギヨチネを癒す。
 ギヨチネ自身もシャウトし、結城は気力溜め。大介も魔人降臨を行使することで、それぞれ何とか、体力を持ち直していた。
「皆、大丈夫ですか?」
「あァ、何とかな。ただ、毒が中々厄介かもな」
 結城に、大介は応える。
 事実、毒はまだ前衛の面々を深く蝕んでいた。
 だが、敵を減らすことも先決だ。伊月は身の丈近い鉄塊剣・撫祐に炎を纏わせ、ひと息に陰陽忍の前に踏み込む。
 そのまま熱気をたなびかせ、重い斬撃。中衛の1体を両断し、敵の残りを4体とした。
「く……」
 と、伊月は間合いを取り直したところでふらつく。
 体を激しく動かせたことで毒が体内に巡り、大きなダメージをもたらしていたのだ。
『ほほ。辛そうだの。勝負などもう諦めたらどうかの』
 敵の言葉に……伊月は武器を支えにして、立つ。
「……悪いけど。罪の無い人々が死ぬのは見過ごしておけないんだ」
「その通り。君達を逃す真似なんて、しないよ」
 真咲が応えるように火器を構える。直後、目にも留まらぬ連続射撃を繰り出した。
 周囲が砲口から閃く光と煙に包まれると――全弾に穿たれた中衛の1体が、物言わぬ姿となっていた。
「ええ。勝負を決したと思うのは、少々早計ですよ」
 と――ギヨチネも疾駆し、中衛の残り1体へ迫る。
 繰り出すのは鍛え抜かれた体から放たれる、降魔の拳。そのまま、敵の体力を自らのものにすると同時に……その1体の息の根をも止めていた。
 残りは2体。
 その1体へ、疾駆した清和が、ハンマーで縦横に殴打を加えていくが……。ふと、清和は前衛の面々に視線を走らせる。
「みんな、平気か」
 その言葉に、前衛はそれぞれ言葉を返すも――体力のほとんどを傷の蓄積と毒に持って行かれて、膝をついていた。
「何とか耐えていますが――苦しいかも知れないですね」
 応えるミスラは、再びインフェルノファクターを使う事で回復している。だがその間にも毒は回り、回復分を打ち消すに余りあった。
 その瞬間に、2体の陰陽忍が符を取り出す。
 式神を行使し……2体ともが斬撃攻撃。こちらの前衛へ猛攻をしてきた。
「く――すみ……ま……せ……」
 最後まで仲間を気遣うような言葉と共に、結城が倒れる。
 さらにこちらの前衛、その全員が、気絶し、戦闘不能に陥った。

●矜持
「みんな!」
 要が、慌ててヒールをかけようとする――が、直前でその手をとめた。戦闘中にその行為は手数の無駄でしかない。
「すまない、俺がもう少し回復をしていれば……」
「何言ってんだい。キミのせいじゃないやね」
 清和は動じず――というより、あくまで敵の方へ意識を集中しつつ要へ言った。
 実際、出来る範囲での回復行動は行っていたと言えるだろう。あるいは、敵の毒や攻撃に対抗する手段そのものが不足していたとも言えるかも知れない。
 陰陽忍は余裕の態度で、愉快げに笑みを浮かべていた。
『ほほ、其方こそ、相手の組織力を馬鹿にできた口かの――?』
「……どうかな。勝負は、終わるまで分からないよ」
 真咲は怯まずに、まっすぐに陰陽忍を見ていた。
 しっかと、砲身をその手に構えながら。
「そっちこそ、残りはたったの2体。余裕を見せるなら――勝ちが決まってからにしたほうがいいよ!」
 同時、苛烈な砲撃を真正面からあてていく。
 陰陽忍はそれらのダメージと麻痺に苦悶を浮かべていた。当然、彼ら自身も回復行動で体力を保つが――。
「実際、頭数は少ないのはお互い様やね!」
 清和は豪速で突っ込み、ハンマーで痛烈な殴打を加えていく。
 即座に、敵は符を掲げ、今度は要と真咲に毒攻撃を喰らわせたが――。
「もう、やられないよ――あんた達を倒さずに、帰れるかっ!」
 要が気力を振り絞り、目映い炎を生み出す。その地獄の翼の羽ばたきが、今度は毒の全てを洗い流し、傷の全てを燃やし尽くした。
 その間に、廻がボクスブレスを吹きかけ、敵にたたらを踏ませると――。
 真咲が轟音を上げて、連続射撃。
 力の塊に体中を貫かれた陰陽忍の1体が、千々に散っていった。
『おのれ――我は負けはせぬ――』
 陰陽忍は再度、符に力を集中する。
 そこへ清和が攻撃を仕掛けるが――それを見切っていた陰陽忍はひらりと躱し、氷の刃を現出。清和を吹っ飛ばして、さらに連続攻撃を試みようとした。
 が――その符を、真咲の砲撃が焼き尽くす。
「そろそろ、終わりだよ」
『くッ――』
「誰も死なせやしないって言った。だから、その通りにしてみせるよ!」
 そこへ、要が全力のドラゴンブレス。
 跡形もなく、陰陽忍を焼き尽くした。

 戦闘後、気絶していた皆は、無事に目を覚ました。
「平気かい?」
 要が介抱すると、皆はそれぞれに肯定を返す。それから戦闘時の状況などを聞いた。
「そうですか……ありがとうございました」
 ギヨチネは要達に言う。
「何にしても、倒せたのは皆の力だからね……よかったよ」
 真咲は言いながら、周囲に目を向ける。被害は大きくはないが、橋の辺りはやはり多少傷ついていた。
「あの辺りだけヒールして、帰ろうか」
 皆は頷き、修復作業を始めた。
「しかし、螺旋帝一族か……どんな連中なんだろうな。話が通じるなら一度そのツラ拝んで見たいモンだが」
 途中、大介は誰にともなく言う。
 それには応えるものはない。敵の正体、目的……まだまだ、分からない事が多すぎた。
 修復範囲は広くはなく、景観はすぐに綺麗な状態を取り戻す。
「それでは……帰りましょうか」
 そして、結城の言葉を機に――皆は帰還した。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 8/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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