唄う海辺のセイレーン

作者:崎田航輝

 静かな海辺に、一人の少年がやってきていた。
 深い蒼の海が見渡せる場所であり、岩礁にはさざ波が打ち寄せている。そこに……少年は、木組みの古びた小さい船を押し出そうとしている。
「コレで本当に会えるのかな……? 海の魔物に」
 呟くのは、又聞きした噂だ。
「海から出てきて、綺麗な声で歌う魔物……セイレーンか。信じられないけどなあ」
 それは、元々神話にあるような存在の話だった。
 歌声で人を魅了した挙げ句に、殺してしまうという……美しくも残酷な怪物。
 この海でそれが目撃した人がいるという、根も葉もないような噂だが……少年は興味を持ったのだ。
「一応録音機器も持ったし、と」
 歌声だけでも収めようと、少年は道具を確認するが……。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 少年が何を発見するよりも早く、一人の魔女が、そこに現れた。
 手に持った鍵で少年の心臓をひと突きする――第五の魔女・アウゲイアス。
 少年は意識を失い、浜辺にそのまま倒れた。
 すると奪われた『興味』から――女性の姿をしたものが出現する。
 大きな翼を持ち、足先は鳥類のように羽毛に覆われ、鋭い爪を持つ――海の魔物。
 それは歌を唄いながら、海に消えていく。
 その声だけがいつまでも残っているようだった。

「歌う怪物、か……面妖だが、聞いてみたくはあるな」
 ディークス・カフェイン(月影宿す白狼・e01544)の言葉に、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は頷きを返す。
「そうですね。どのような歌声なのでしょうか――」
 と、セリカはそれから改めて、集まったケルベロス達を見回していた。
「というわけで、今回は、ディークス・カフェインさんの情報により、ドリームイーターの出現が予知されました。第五の魔女・アウゲイアスによる、人の『興味』を奪うタイプのもののようで――三陸の浜辺にて、少年の興味から生まれるようですね」
 海に消えたドリームイーターは、このままでは人を襲いつづけることだろう。
 それを未然に防ぎ、少年を助けることが必要だ。
「皆さんには、このドリームイーターの撃破をお願い致します」

 それでは詳細の説明を、とセリカは続ける。
「敵は、女性の姿をしたドリームイーターが、1体。神話に言うセイレーンの見た目をしているようです。場所は、海のすぐ近くの浜辺です」
 周囲に人はおらず、避難などをする必要は無い。障害物などもないので、戦闘に集中できる環境だろうとセリカは言った。
 ケルベロスが現場に着いた時点で、ドリームイーターはすでにいないが……現場で誘き寄せることは出来るという。
「どうすれば、誘き出すことができる?」
「その場で噂話をすることや……また、少年が岩礁で見つけることになっていた古い木船があるので、そこで海上に出れば、比較的誘き出しやすいかも知れません」
 ディークスに応え、セリカは説明した。
 海上で誘き寄せるにしても浅瀬で済むので、すぐに浜に戻れるし戦闘に影響はないだろうということだ。
「一度誘き寄せれば、あとは戦うだけです」
 ドリームイーターを倒せば、少年も目を覚ますことが出来るので心配はない。
 敵の能力は、歌で行動を奪う遠単麻痺攻撃、魅惑する歌声を放つ遠単催眠攻撃、相手を喰らおうとする近単武器封じ攻撃の3つ。
「海辺の怪異。会いに行くのも、一興か」
 ディークスが言えば、セリカも頷いた。
「ただ、お気をつけて。安全な海を取り戻せるように……皆さんの健闘をお祈りしています」


参加者
蛇荷・カイリ(あの星に届くまで・e00608)
ディークス・カフェイン(月影宿す白狼・e01544)
翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525)
リサ・ギャラッハ(悪魔は月を夢見て微睡む・e18759)
ウェイン・デッカード(鋼鉄殲機・e22756)
フィオナ・オブライエン(アガートラーム・e27935)
篠村・鈴音(緋色の刃・e28705)
峰雪・六花(チェインドクレイン・e33170)

■リプレイ

●響く歌
 月夜の海辺に、ケルベロス達はやってきていた。
 静かな波音だけが鳴る中……篠村・鈴音(緋色の刃・e28705)は作戦のために岩礁から運んだ小船を、波に浮かべていた。
「これで大丈夫でしょう。あとは、お願いしますね」
「分かりました。お任せください」
 と、頷きを返すのは、翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525)。その船に乗り込み、海に視線をやっていた。
 その後ろから、フィオナ・オブライエン(アガートラーム・e27935)も船に入っている。
「じゃあ、リサさんも」
「ありがとうございます」
 と、リサ・ギャラッハ(悪魔は月を夢見て微睡む・e18759)も、手を貸すフィオナの助けを借りつつ船に乗った。
 行うのは、敵の誘き寄せ――そのために3人は頷き合い、浅瀬に出た。
 待機組の1人として、ディークス・カフェイン(月影宿す白狼・e01544)は、船を見送る。誘き寄せ組が浅瀬を移動している間、夜の海を眺め――怪異の伝承のことを思った。
「さて……思わず惹かれる歌声、か」
 ぽつりと零れる声。そこには幾ばくかの興味が滲む。
「魅入られれば身を滅ぼすのは、こちらか――あるいは敵か。両方の歌声が楽しみだが……っと、こちらの興味が尽きないのも良くないか」
 と、そこで怪異を生んだ原因を思い、ふと苦笑を漏らしていた。
 船は浅瀬に出た後、波間で止まっている。
 噂話も兼ねて、フィオナが少し口を開いていた。
「海から現れるなんて、人魚姫みたいだね」
「ええ。セイレーンですから、人魚とは少し違うのでしょうが――」
 リサは応えつつも少し、目を伏せる。人魚という言葉に、何か感じ入るものがあるように。
 少し首を振って……リサはヴァイオリンを取り出し、奏で始めた。
 するとそれに合わせ、フィオナも朗々と歌声を上げた。
 曲はローレライ――豊かな響きと旋律を持ちながらも、月夜に穏やかに響く、ゆったりとした歌だった。
「綺麗な、歌です……」
 ふと峰雪・六花(チェインドクレイン・e33170)が呟く。
 すぐに戦闘に入れるよう、船の近くの水面の上に浮遊しながら……六花は、ふわりと穏やかな笑みを浮かべていた。
「こういう、機会ですが……聞くことが出来て、よかったです……」
「ええ」
 と風音も目を閉じ、耳を傾ける。音楽が好きな風音には、フィオナの歌声もまた聴いていて愉しいものだ。
 同時に、敵のそれにも興味はある。そのために、フィオナと交代し、自分も歌い始めた。
 曲は同じだが、低音傾向の、しっとりとした歌声だ。そばに寄りそう家族――ボクスドラゴンのシャティレは、好きな風音の歌を聴けて心地良さげであった。
「波が、高くなってきたようだね」
 と――浜で、歌を聴いていたウェイン・デッカード(鋼鉄殲機・e22756)が、小さく言って、浅瀬の向こうに目を向ける。
 蛇荷・カイリ(あの星に届くまで・e00608)も、頷いた。
「もうそろそろ、って感じかしらね?」
 呟きつつ……カイリも言葉を止めて、自分も静かに鼻歌を歌い始める。
 歌は得意ではないと自覚するカイリだが……その歌声は、風音の歌やリサのヴァイオリン、今もフィオナの歌が波間に残響しているかのような不思議な響きとも混ざっていき……。
 それらが、誰のものでもない細く高い歌声を、呼び寄せた。
 直後、海の中から現れたのは、女性型ドリームイーターの――セイレーンだった。
 セイレーンは、小船を見つけるなり、そこに飛び上がってくる……が。
「歌で誘う怪物――だが、今宵誘われたのは怪物の方だった、と云う訳だ」
 言葉と同時、そこに闇トカゲのようなオーラが食らい付く。
 白菊ノ魂宴を被り、表情を窺わせなくなったディークスが、浜から放った一撃だ。
「まんまと誘き出されたわね! 連撃で行くわよっ!」
 ほぼ同時、砂地を蹴って、カイリも肉迫。宙で回転し、木刀で痛烈な一撃を喰らわせた。
 セイレーンは声を高らかに、敵意を滲ませるが――その間に誘き寄せ組は海辺へ急いでいる。
 そこへ目を向けるセイレーンだが……ふわりと浮き上がる六花が割って入り、弓で切り裂くような射撃を与えていた。
「やらせません……から」
「ええ。ここで海に沈んでもらいますよ……!」
 鈴音は斬霊刀・緋焔を魔煤で造り変えた長大な黒剣を掲げている。
 隻眼の剣士の記憶から習得したその剣撃、『灼刃』でセイレーンを一閃し、高度を落とさせると……。
 ウェインが疾駆し、浅瀬を蹴上がっていた。
「歌で惑わすセイレーン……歌をかき消す竪琴はないけれど。拳で、足で、音を裂くことは出来るはずだ」
 零距離に迫ったウェインは、思い切り拳を引く。
「鋼鉄殲鬼が、真っ向から相手をさせて貰うよ」
 瞬間、強烈な拳の一撃が、セイレーンの腹部を直撃した。

●夜戦
 連撃を受けたセイレーンは……煽られるように海面すれすれまで落ち込んでいた。
 が、ぎりぎりで高度を保つと、すぐに海辺まで飛んでくる。
 その間に、戦闘態勢を整えていたフィオナが、グラビティを集中していた。
 直後、虹色の光と共にブレイブマインを発破し、前衛の力を飛躍的に高める。
「リサさん、お願いっ!」
「わかりました。行きますよっ――」
 同時、リサが、飛来してきたセイレーンを迎え撃つ体勢を取る。高まった力で、跳躍すると――足元に炎の力を宿し、熱気をたなびかせて蹴りを打ち込む。
 炎を受けて呻くセイレーンは、しかしその声のまま、指向性の歌を形作る。
 狙いはウェイン……だが、そこに六花が羽ばたき、衝撃を庇った。
 六花はそのまま蹴り上げるような反撃も与えつつ、敵を見据える。
「とても綺麗な歌、ですけど……歌はきっと、誰かのために歌うもので……誘い込んで、沈めるためのものでは……ないと、思います」
「そうですね。それが美しい歌だとしても。人々の命を奪うものであれば――止めなければなりませんね」
 風音は言葉を継ぎ、手をのばす。放たれたブラックスライムは、セイレーンの全身を包んで衝撃を与えていた。
「王様、回復を!」
 敵が後退したところで、フィオナはウイングキャットのキアラに声をかける。王様と呼ばれる事に自身はどう思っているのか――白猫のキアラは、マントと王冠を付けた格好のままに、羽ばたいて癒しの光を与える。
 同時、リサのテレビウムであるフィオナも画面を発光させ、六花の傷を癒した。
 敵は、またにわかに歌を歌い始めたが――。
「セイレーンは、歌を聞いて生き残れば、消えるらしいけれど」
 と、それにウェインが口を開く。
「この調子では――歌を止めるには、そもそも君を消さなければいけないらしいね」
 それなら、と、ウェインはその手にグラビティを収束。光を集めるように、長大なレーザー光を撃ち当てた。
 僅かに口元を石化させられたセイレーンは、それでも声を出そうとするが……そこへ、鈴音が再び走り込んでいる。
「それ以上歌わせませんよ!」
 セイレーンは宙に逃げようとするが、鈴音はそれよりも早く跳び、頭上を取った。
「はあっ!!」
 同時、緋焔を振るい、真下方向へ雷鳴の如き刺突を繰り出した。
 一度地に落ちたセイレーンに、カイリとディークスが肉迫。
「ディーくん、行くよ!」
「ああ」
 応えるディークスの前面に出たカイリは、『武御怒槌』。自身の肉体を霊子分解し、創生の雷を呼び起こす。
「我が身模するは神の雷ッ! 白光にッ、飲み込まれろぉぉぉぉぉッ!」
 放たれた一刀は光の塊となって、苛烈なダメージを刻む。声を上げ吹っ飛ぶセイレーンに、ディークスは槍を向けていた。
「美しい歌声が悲鳴に変わる瞬間は、悪く無いな」
 仮面の下の表情は見えないが、悲鳴を聞く声色はやや楽しげでもある。
「ドリームイーターにどれ程の自我があるかは知らないが……もっと、聞かせてもらおうか」
 所詮は夢喰い、慈悲は要らぬとばかり――ディークスは槍に稲妻を纏わせると、セイレーンの翼を貫いた。

●剣戟
 羽を散らし、浅瀬へと墜落するセイレーン。ゆらりと起き上がりながらも、顔には苦悶に似た物も浮かべ始めていた。
 だが、口元からはまたにわかに声が発され、メロディとなる。
「あくまでも、歌を歌い続けますか。それならば――シャティレ」
 風音が言うと、シャティレがセイレーンに飛来。至近からブレスを喰らわせ、セイレーンの負傷の度合いを一気に増していく。
 同時、風音も肉迫し、光を纏った突きを打ち込んだ。
 胸元を穿たれたセイレーン。それでも歌を止めないでいると――。
「確かに、人を惹きつける歌ではあるのかも知れませんね」
 鈴音が刀を掲げ、砂浜を蹴っている。
「だとしても――歌は、傷つける為の手段に使うべきではないですよ!」
 そのまま、ひと息に距離を詰めた。
 下がろうとするセイレーンへ、縦横無尽に刃を走らせ――翼をさらに切り裂き、体の傷をも抉っていった。
「そうね。何であれ、歌が悪いことに使われるなら、それはやっぱり許せないわ!」
 カイリも横合いから敵へ迫り、木刀を振り抜く。その斬撃が体内に侵食し、内部から霊体を切り裂いていくと……。
 逆方向から、挟み撃つようにディークスが一足で踏み込んだ。
「それでも歌うというのなら、構わないさ。全てを、悲鳴に変えるだけだ」
 他者へ破滅を齎す者が、自ら身を滅ぼして行く様――ディークスは仮面の下で、それに笑みを浮かべる。同時、神速の拳を打ち出し、胴部に重い一打を叩き込んだ。
 セイレーンは宙に飛ばされつつも……魅惑するような声を放ち、音波にして飛ばしてくる。
 狙いはフィオナ――だが、滑り込むようにリサが立ちはだかり、衝撃を受け止めていた。
「リサさん、今回復するね!」
 フィオナは直後に治癒の霧を濃縮し、リサに纏わせる。それがリサの体内へ吸い込まれていくと、受けた傷が即座に薄まっていく。
「ありがとうございます!」
 リサはフィオナへと笑みかけながらも、敵へブラックスライムを飛ばす。それが鋭利な刃物のようになって、セイレーンに突き刺さっていった。
 悲鳴を上げつつ、敵は掠れ声で歌を続けようとする。
「それが君の運命か……使命なのだろうね」
 ウェインはその眼前に迫り、自身の腕部を駆動させて凶器と化していた。
 行動原理に縛られる様は、あるいはロボットである自分と似ている――そんなふうに、ウェインは相手に対し近しい物も感じる。
 しかし相容れられない相手と断じて、殲滅しなければならない。
 一瞬だけ物思いながらも、ウェインはためらわず、その拳をまっすぐに突き出した。
「許しは乞わない――懺悔の時間だ」
 腕部の回転と衝撃に巻き込まれたように、セイレーンは数メートル飛ばされ、きりもみするように地面に衝突する。
 それでも、傷ついた翼を動かして上空へ逃げるが――六花が既にその頭上へ羽ばたいていた。
「ごめんなさい……でも、海の安全のためにも、ここで、止め……ます」
 掌底のような一撃でセイレーンを真下に飛ばすと……そこに、六花のテレビウム、スノーノイズが駆けている。
「スノーノイズ、お願い……しますね」
 六花の声に呼応して――スノーノイズはセイレーンを迎撃するように、その鋭利な凶器で苛烈な斬撃を叩き込んでいた。

●鎮魂
 セイレーンは波打ち際に倒れ込んでいた。
 だが……ふらりと起き上がると、再び歌い出す。声は最早、血と狂気に染まっているが、メロディはあくまで魅せるようなものだった。
「ならば、いいでしょう――このような性分ではないのですが、どちらがより心を魅了できるか……勝負と参りましょうか」
 と、そこで風音が目をつむる。
 歌い上げるのは、穏やかで、しかし儚げな旋律。『木霊の独唱曲』――数多の生命の思いをのせたその歌声は、敵の歌をかき消し、その心にまで衝撃を与えた。
 呻くセイレーンは、こちらを喰らおうと、接近を試みるが……その足元に突如霜が広がる。
「力を……貸して、ください。例えば、其れは広がる霜。天へと捧ぐ豊穣の贄――」
 それは、六花の氷騎魔術、『千変万化・百舌鳥』。
 目を閉じ、地面に武器を突き立てた六花の周囲から、霜が拡散。それは無数の氷槍へ成長し、セイレーンを貫いていく。
 さらに、その至近で光が閃く。ウェインが全身の魔力を暴走させ、その身を鋭利な光の粒子と化していたのだ。
「これ以上、攻撃はさせないよ。勿論、歌も」
 ウェインはそのまま突撃し、切り刻む。『獅子の礫刑』――その力で、セイレーンは翼を断たれ、深い傷を刻まれる。
 それでも敵は、歌のための声を出す……が、それはディークスの放った光線、『蛇眼煌』によってまたも悲鳴へ変えられた。
「確かに良い声だったが……魅せられた先の破滅より、楽しむ歌が聞きたい所だ」
「そう、歌は人の力になるもの――!」
 同時、カイリが再び武御怒槌を行使。爆ぜる雷撃を手に、波状攻撃を仕掛ける。
「それを利用する輩は……塵となりて海に散れぇッ!」
 煙を上げて、敵は地に叩き付けられる。
 間断を置かず、鈴音が踏み込み、剣を地面に突き刺すと――それを軸に鋭い蹴りを放ち、敵を打ち上げた。
「もうそろそろ――終わりですよっ!」
 その鈴音の声に応じるように、リサとフィオナが跳ぶ。セイレーンは抵抗するように牙を剥くが……。
「――ここから先は、一歩も通さない」
「――何が相手だって、押し通る!」
 リサが金の光を、フィオナが銀の光を刀身に纏わせる。
『光を纏いて――』
 それはエリンの神話に登場する、神をも殺す光の剣。
「――斬り裂けっ!」
「――貫け!」
 リサの『solas orga』と、フィオナの『Solas airgid』は、重なった声とほぼ同時に放たれ――セイレーンを裂き、貫き、打ち砕いた。

「勝て、ました……ね。お疲れさま……です」
 戦闘後。六花の言葉に、皆は頷いていた。
 それから、少年を見つけて、無事に目を覚ましたことを確認すると……少年を見送って、海辺をヒール。
 それを済ませ、ようやっと息をついていた。
「伝承のセイレーンはどのような思いで歌い、人を魅了していたのでしょうか。少し気になるところですね……」
 静かな海辺で、風音は敵が散った跡を少し見下ろす。
「案外、寂しさもあったのでしょうか……」
「今度生まれてくる事があるなら、ちゃんとした形で出会えると信じたいです」
 リサは言うと、祈りを上げる。そして鎮魂歌を弾き……その魂を弔っていた。
 それが終わる頃に、カイリがよし、と頷く。
「私は鎮魂ってわけじゃないけど……『恋の歌』を歌わせてもらおうかしら」
 そして、通りの良い声で、恋の歌を歌い上げていった。
「こうして眺めると……やっぱり海はいいですねえ」
 歌が響く中、鈴音も海を眺めている。
 怪異の消えた平和な海。月夜の中、そこには静かな波だけが立っていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年5月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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