眠たい谷と首無し騎士

作者:崎田航輝

 都会の喧噪から離れた自然の中に、一人の少年が歩いてきていた。
 そこは広く谷のようになっている一帯で、近くの村も人口は多くない。ほんの少し寂しい雰囲気も漂う、野原のような場所だった。
「首無し騎士……かぁ、そんなもの、本当にいるのかな?」
 少年は言いつつ、見回す。
 元々は、アメリカの辺りの伝承が発祥だという。
 日本に出てくる幽霊の類ではなさそうだが……この辺りの地形が、民話の中に出てくる場所と似ているためか、ここでもそれが見られる、という噂を最近聞いたのだった。
 噂では、ここに出た首無し騎士は、人を見つけると襲ってくるという話だが……。
「とりあえず、写真の準備を……」
 少年はスマートフォンでの撮影の準備をする。
 ひとまずシャッターチャンスは逃すまいと、画面越しに周囲を観察するが……。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
 怪異を見つける前に、一人の魔女が、そこに現れた。
 手に持った鍵で少年の心臓をひと突きする――第五の魔女・アウゲイアス。
 少年は意識を失い、地面に倒れ込んだ。
 すると奪われた『興味』から――威圧感と幽妙さを兼ねた、背の高い影が出現した。
 ……黒馬に跨った、甲冑を着込んだ首無し騎士。
 馬は前足を上げ、大きくいなないた。するとそれに乗っている騎士は、手綱を握り……馬を走らせる。
 黒馬と幽霊騎士は、どこかを目指し――つむじ風のように走り去った。

「幽霊……実際に目の前にしたらどのような気持ちになるのでしょうね」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は集まったケルベロスたちに、そんなことを言った。
 それから改めて見回す。
「今回は、ドリームイーターの出現が予知されました。第五の魔女・アウゲイアスによる、人の『興味』を奪うタイプのもののようで――中部地方のとある谷にて、少年の興味から生まれるようですね」
 走り去ったドリームイーターは、人を襲うだろう。
 それを未然に防ぎ、少年を助けることが必要だ。
「皆さんには、このドリームイーターの撃破をお願い致します」

 それでは詳細の説明を、とセリカは続ける。
「敵は、馬に跨った騎士の姿をしたドリームイーターが、1体。場所は、谷間の野原です」
 平坦で戦闘には向いているが、多少霧は立っている一帯だという。
 ただ、他の一般人の姿はないので避難誘導などを行う必要は無い。戦闘のことだけを考えればいいだろうと言った。
 ケルベロスが現場に着いた時点で、ドリームイーターはすでにいないが……現場で誘き寄せることは出来るという。噂話をすることや……また、騎乗できるサーヴァントを連れている者などがいれば、走行しながら呼びかけることでも誘き出せるだろうと言った。
「一度誘き寄せれば、あとは戦うだけです」
 ドリームイーターを倒せば、少年も目を覚ますことが出来るので心配はないだろうと言った。
 敵の能力は、槍を振るう遠単麻痺攻撃、黒馬のいななきを響かせる遠単催眠攻撃、体当たりをする近単武器封じ攻撃の3つ。
「不気味な敵ではありますが……これを放置しておけば、人々に被害が及んでしまいます。それを防ぐためにも、是非とも撃破を成功させて来てくださいね」
 そう言ってセリカは頭を下げた。


参加者
翡翠寺・ロビン(駒鳥・e00814)
叢雲・宗嗣(夢謳う比翼・e01722)
エンデ・シェーネヴェルト(フェイタルブルー・e02668)
御子神・宵一(御先稲荷・e02829)
神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)
未野・メリノ(めぇめぇめぇ・e07445)
コール・タール(極彩色の黒・e10649)
比良坂・陸也(化け狸・e28489)

■リプレイ

●眠りの谷へ
 薄霧の立つ窪地へ、ケルベロス達はやってきていた。
「この辺りでよさそうですね」
 眠気を誘うような、寂しい土地。
 その一角で、立ち止まって見回すのは神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)。静かな風景だったが、どこか不気味な風も感じられる。
「そうです、ね」
 と、 それに未野・メリノ(めぇめぇめぇ・e07445)は頷く。
 視線は、ミミックのバイくんと、鈴のボクスドラゴンのリュガが暇を持て余すようにじゃれている方へ向いている。
(「今回はいつもより心強いです、ね」)
 既知の仲の者も多く、メリノは少し柔らかな表情となっていた。
 だがいつも通り、危険もある戦いだとも分かっている。自分の手をぎゅっと握った。
「油断せずに、始めましょう、か」
 それに皆は頷く。
 最初に口を開いたのは――比良坂・陸也(化け狸・e28489)だった。
「で、首なし騎士って噂だったか」
 それは、怪異を呼び寄せる為の噂話。霧に視線をやりつつ、陸也は続ける。
「しかし日本なら、首なしライダーじゃねーのか? これ」
「外国の伝承が見られるって噂らしいからな。元々、色々ねじ曲がってる部分はあるんじゃねーの」
 と、応えるのはエンデ・シェーネヴェルト(フェイタルブルー・e02668)。まだ周囲に変化がないのを眺めつつ、さらに言う。
「元の噂はよくわからねーけど。首なし騎士なら、スリーピーホロウとか。あと、デュラハン……死霊騎士だっけ、それとかか?」
「デュラハンはヨーロッパの、それも元はただの妖精だったか」
 コール・タール(極彩色の黒・e10649)も、言葉を継いだ。
「アメリカの伝承が元の噂らしいから、それならスリーピー・ホロウの方だろう」
「わたしも少し調べてみましたけど……元の噂がそれなら、妖精ではなく亡霊さんみたいです」
 鈴も、掘り下げるように言う。と、周囲に一瞬、黒い影が通ったような気配がする。
 翡翠寺・ロビン(駒鳥・e00814)はそれに気付きつつも、薄い表情のままに、微かに感心するような声を出した。
「似たような話って、世界各地にあるのね」
「アメリカのものでは、残虐さ故に処刑された、首切り大好きな騎士さんの亡霊で……死人の木の中から現れ、首を奪い去っていくとか」
 鈴がそう言うと……御子神・宵一(御先稲荷・e02829)が頷いた。
「ただ、広まるきっかけになった古い短編小説は、田舎の笑い話、という感じなんですよね。逆に、近年メディア化されたものの中に容赦なくホラーなものがあったりして……何だか不思議な感じです」
「そっちの方が少し、気になるわ……見てみたい、かも……」
 と――ロビンが言ったところで、規則的な、地を叩く音が聞こえた。
 それは馬の蹄の音。
 引き寄せるように、メリノは噂を立てる。
「こんな雰囲気なら、その亡霊……出てきてもおかしくないです、ね」
「確かにおあつらえ向きだね」
 と、叢雲・宗嗣(夢謳う比翼・e01722)は刀を構えている。
「微睡みの窪、か……。実際、ここは――彼の亡霊が現れるに相応しい」
 その宗嗣の言葉と同時。
 影が実体を持ったように、黒馬に乗った甲冑の騎士が出現。槍を手に、豪速で駆けてきた。

●開戦
 首のないその騎士は、獰猛に疾駆してくる。それはまさしく猛る亡霊。
「来たな」
 と、コールは全く怯みを見せず、一直線に距離を詰めている。
 走りながら、武装のブレードを収納、今はまだ待機状態にして――跳躍した。ちょうど、幽霊騎士の胸の高さに飛び上がると、宙で回転。正面から強烈な蹴りを打ち当てた。
 騎士の速度が微かに落ちる。無論、騎士はそれで前進を止めないが――そこに、宗嗣も接近していた。
「悪いけど――人のユメは、奪わせないよ」
 構える刀には、赤々とした炎が纏わり付く。宗嗣の地獄であるオニヤンマ――それが刀だけでなく全身をも取り巻いていくと……零距離に迫った宗嗣は、苛烈な刺突を喰らわせた。
 速度を相殺された騎士は、バランスを取るように止まり……頭部のない体で、ケルベロス達を睥睨する。
 皆も間合いを取り、幽霊騎士に対峙した。
「噂が本当なら、この騎士さんは首狩り大好きなんですよね……」
 鈴は見上げるようにして、呟く。
「前にダモクレスと戦ったとき、不意打ちのために陸也さんを羽の中に隠したら、翼を引き千切られることになってしまいましたけど……流石に首は切られたくないですね」
 少しばかり苦い記憶を呼び起こす。
 すると陸也は首を振る。
「流石にそこまでやらせねーさ。今回は被害を考える必要も無し、悪条件もない。目の前の敵を潰せばいいだけだしな」
 勿論、と、陸也は続ける。
「油断はしねーけどな。ただ、今回は奇をてらうより――正面からゴリ押しだ。正道で、押しつぶすぜ」
「ええ、そうです、ね。恐れずに、真っ向から、立ち向かいましょう、ね」
 と、応えるように、メリノがグラビティチェインを圧縮、指先大の重力の塊を形作る。
 踊るようなステップで、それを飛ばす――『魔女の一撃』。命中と同時、痛烈な衝撃を与えると、バイくんも騎士に飛びつき、エクトプラズムで斬撃を喰らわせていた。
 騎士はメリノに体を向けるが……その動きが止まる。
「来るなら、こちらに」
 と、宵一が向ける斬霊刀・若宮の切っ先から――グラビティチェインが放出され、騎士の魂に入り込んでいたのだ。
 その力こそ『狐媚の珠・改』。妖狐が人を魅了するように……それは騎士を惹きつけ、誘導する。騎士はそのまま槍を投擲、宵一にダメージを与えるが……。
「ちょっと待ってろ!」
 と、陸也がすぐにオーラを輝かせて体力を回復。
 同時、鈴もリュガを飛び立たせる。
「リューちゃんも、お願いっ!」
 リュガは小さく鳴き声を発すると――青白く美しい光を注ぎ、宵一の体力を持ち直させていった。
 その間、鈴自身は天鈴弓の弦を引き、巨大な矢を撃ち出す。それを騎士の側部に直撃させ――仲間から引き離していた。
「それにしても、本当に首がない、のね。あれじゃ、レギナガルナでも刈りようがない……困る……」
 ロビンは、騎士へ近づきつつも、呟いている。
 隣に肩を並べているエンデを少し見遣った。
「ねえ、あれ、死角ってどこだとおもう……?」
「さーな。そもそも物を見て判断してんだかどうか」
 エンデは、印象的なコーンフラワーブルーの瞳を、どこか興味薄に細めているばかりだ。
 ロビンも、ひとまず視線を落とし――まずは狙いを“足”に絞る。
 そしてレギナガルナ――その鋭い大鎌を大振りに投擲。黒馬の胴体を深々と切り裂いていく。
「とりあえずは、足を奪うのが定石だものね」
「動きを鈍らせるのが重要ってのは、まあ同意だな」
 エンデも、追随するように同じ箇所を狙っていた。
 一種気怠げな声から――走り込むその動作に一切の無駄はなく。低い軌道の跳躍から放たれた高速の蹴撃が、黒馬と同時に騎士にまで衝撃波を喰らわせた。

●剣戟
 多重のダメージに、黒馬と騎士はたたらを踏んでいる。
 だが、黒馬は悲鳴を上げるでもなく、微かな息を漏らすだけで体勢を直した。まだ余力があることの証左でもあったが……。
「これならば、どうですか」
 そこに、妖しい焔が灯る。宵一が御業に生み出させている炎だ。
 それは、どこか狐火の様に揺れ動くと――そのうちに騎士に飛来し、業火となってその体を燃え上がらせていく。
 黒馬は、それには苦しげな声を漏らすが――騎士が手綱を操ると、その声は強いいななきに変わる。それは霧の中を伝う衝撃波のように、こちらを襲ってきた。
 狙いは後衛の鈴、だが……それは途中で遮られる。
「やらせはしません、よ」
 と、メリノが両者の間に入り込み、衝撃波を代わりに受けていたのだった。
「メリノちゃん……! ありがとうですっ……!」
 鈴は即座に、その後背から、エネルギーの矢を番え――メリノの肩越しに発射。いななきを続けている黒馬の鼻っ柱に突き刺さるようなダメージを与える。
「大丈夫ですかっ?」
「平気です、よ。油断はしてません、から……!」
 メリノは鈴に応えながら、既に癒しのオーラを生み出している。
 金色めいた目映い治癒光が弾けると――メリノは自己回復。リュガも回復補助に入り、メリノの体力を持ち直させていった。
「じゃ、俺はこっちに移らせてもらうかね」
 陸也は攻勢に入るように、その手に煌々と炎を滾らせていた。
「それ以上鳴けないように――してやるよ!」
 そのまま、炎弾のように撃ち出すと……渦巻く炎は狙い違わず黒馬へ飛来。鳴き声を発しようとしていたその口元を燃え上がらせる。
 騎士は馬を操り、間合いを取っていくが――そこへ、ロビンが距離を詰めている。
 同時に疾駆していたエンデは、そこで走る方向を変えた。
「挟み撃ちにした方がいいかもな」
「そう、ね」
 と、2人は敵を追い詰める様に動く。
 騎士も機敏に動くが――ロビンは追い縋っていった。
「……敵の視線の動きって、やっぱりおおきい、のね。首がないっていうだけで、ちょっと戦いづらいわ」
 独りごちるように言うロビン。しかし掲げられた鎌は、吸い込まれるように騎士に振り下ろされていく。
「……べつに、負けないけど」
 そのまま鋭利な刃は、袈裟に一閃。騎士に深い傷を与える。
 反対側から、エンデも跳躍して鎌で払い上げ――ちょうど鏡写しのような斬撃で騎士を背から襲った。
 逃れるように黒馬は高々と飛び上がる。それは現実の馬にはあり得ぬような動きで、尋常の存在でないことを誇示するようでもあった。
「夢の存在だからこそ、とでも言いたいのかな」
 宗嗣が暫し見上げると、コールも、口を開いた。
「単なる夢なら良かったが。それが危険な存在になるなら、何であろうと見逃せない」
 コールは無論、それを夢見た少年に罪科があるとは思っていない。
 それは宗嗣にしても同じ。
「未知に興味を抱くのは人の性。それを奪うのが、頂けないな」
「ああ。そんな敵ならば、殺す。ケルベロスとして、な」
 応えたコールは、離れた位置に着地した騎士に、肉迫する。
 宗嗣も疾駆し、接近。炎を纏った刀で、縦横無尽に斬撃を繰り出し――騎士の全身に無数の傷を刻んでいく。
 コールは、ガントレットから、収納していた大型のブレードを出していた。
「――ブチ抜けェ!」
 星辰の力を宿した、巨大なブレード――それに双子座のオーラを纏わせた一撃、『伝承武具・双星器/突拳』を叩き込み……騎士の体を抉り、黒馬ごと大きく吹っ飛ばした。

●決着
 黒馬は横倒れになり、騎士は地へ投げ出される。
 だが、騎士は亡霊が如く宙へと浮かび上がり……黒馬も吸い込まれるように騎士の元へ戻っていた。そのまま、一層暴力的に、突進してくる。
「あくまでこちらを害するつもりみたいだね」
 と、そこへ宗嗣が素早く踏み込み――赤い閃光を迸らせ、刀を振り抜く。すれ違うように斬撃を与えると――そのまま返す刀で、後背から神速の刺突を喰らわせた。
「……噂話は、噂話だからいいのです、よ」
 メリノは言葉を継ぐように、とん、と軽い跳躍で接近する。騎士は槍を振りかざすが――メリノはそのまま、舞うような流れる動きで斬撃を躱す。
「勝手に出歩いて、人を襲ってしまう前に。噂話に戻してさしあげます。そして――心を返してもらいます、よ」
 メリノの言葉と同時、バイくんが横合いから騎士に噛みつくと――メリノもその場で跳び上がり、くるりと回転。飛び蹴りを喰らわせ、騎士をふらつかせる。
 騎士は後退すると、惑わすように周囲を円上に走る……が。
「腕や足の動きに注意すれば……んん、もう、予測は立てられる、かな」
 ロビンが軌道を読むように、肉迫。レギナガルナによる無慈悲な斬撃――『無垢なる冷酷』で胸部を深く切り裂いた。
 バランスを崩す騎士に、コールはブラックスライムを差し向け――裂かれた胸部を鋭利な一撃で穿っていく。
「何か、狙ってるな――体当たりか」
「それならもう一度、喰らってみますか」
 コールの言葉に呼応するように、宵一は再び、狐媚の珠・改を行使。放射したグラビティチェインを騎士の魂に注ぐと、誘引するように攻撃の目を自身に引きつける。
 騎士は導かれるように宵一に突撃。一時、宵一の体力を大幅に削りとるが――。
 そこへ、陸也が気力溜めを行使。
「おらっ! あとは頼むぞ!」
 弾けんばかりの光を放つオーラの塊をぶん投げ、宵一の体力を最後まで万全に保つと……。
 鈴とエンデが騎士へ、接近する。
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。貫かせてもらいます!」
 鈴は飛び立つと同時、眩い光を放つ狼のエネルギー体を身に宿し、自身を光の矢へと化す。奥義『天星狼牙』――その一撃が、光の奔流のように貫通、黒馬を四散させると……。
 エンデが、両のガントレットに隠された鋭い仕込み爪で、挟撃を仕掛けている。
 黒と青のグラデーションを持つ、猫の尾のようなエンデの髪が、一瞬たなびく。
「――さようなら、美しい世界にお別れを」
 それが、敵に与える唯一の餞の言葉。『Auf Nimmerwiedersehen.』――鋭く残酷な一撃が、幽霊騎士を貫き、砕いた。

 戦闘を終えたケルベロス達は、少年を見つけ、保護した。
 鈴は、気を失っている少年に膝枕し……光り輝くオーラで、暖かく包み込んでいく。すると少年は程なく目を開けた。
「あ、目、覚めましたか?」
「ここは……」
「大丈夫。わたし達はケルベロスです。デウスエクスは倒しましたから、安心してください」
 鈴は、そう優しく微笑みかけた。
 事情を知った少年は、ありがとうございます、と皆に頭を下げた。
「襲って来るって噂されてるものをわざわざ見に行くなんて何考えてんだか……楽しみを優先すんのも良いけど、まず身の安全が確保出来ねーなら止めとけよ」
 と、エンデが少々釘を刺すと、少年は俯いて、ごめんなさい、と謝った。
 そこに、陸也が『悪戯かお菓子か』の力でお菓子を生み出し……少年にあげる。
「ま、ひとまず無事で良かったってことでいいだろ。これでも食べろよ」
 すると少年は少し顔を明るくして、飴やクッキーに手をのばしているのだった。
「この辺りも少し、ヒールしておこうか」
 と、一段落付くと、宗嗣の言葉に皆も頷き……荒れた箇所を修復していく。
 メリノは途中、物思うように口を開く。
「パッチワークの魔女達については、まだまだ分からない事だらけです、ね」
「そうですね。まだ事件を、起こすのかも知れませんね」
 鈴が応えると、メリノは頷きつつも、言った。
「そうなっても。奪われたままには、させません」
 少しの決意の滲んだ声と共に……場の修復は終わった。
 そこはもう、亡霊も何もいない、平和で静かなただの窪地。
 ケルベロス達はそこを離れ、少年を送ると……自身達も帰還していった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年4月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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