さわさわと、風に葉が揺れている。
兵庫県西部。古くは播磨国とも呼ばれた地域の一部に属する、とある林で……ひとりの少年が辺りを見回していた。
「出るとしたら、この辺なのかな……?」
視界に映るのは、人の気配のない一帯である。
薄暗闇の中、幽玄とも不気味とも取れる空間――だからこそ、噂話の種にもなるのかも知れなかった。
「昔の呪術師の幽霊……だなんて、そんな馬鹿なことないよね」
少年はそう言いながらも、好奇心に満ち満ちている。
少年が聞いた噂……人を呪ったが為に、挙げ句に追放され、失意と憎悪に死んでいった呪術師の幽霊――それに、夜にここに来れば会えるという噂。
呪術師はこの世を恨みながら死んでいったという話で、人間を見つけると、その命を奪おうとしてくるという。
さらには、それは幽霊などではなく、呪術師自身がその力で蘇った姿なのだ……などという、そんな与太話だ。
「まあ、気になったら確かめてみないとね」
噂好きらしく、少年は幽霊の登場を待った。
当然、待てどそれが現れることは無かった――が。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『興味』にとても興味があります」
背後にひとりの人影があらわれた。
第五の魔女・アウゲイアス。
アウゲイアスは、手に持った鍵で少年の心臓をひと突きする。少年は意識を失い倒れた。
すると、奪われた『興味』から……その横に、狩衣を来た長髪の男が出現した。
男は、その手に人の形をした和紙札を携えて……ぶつぶつと、呪を口ずさんでいる。その顔は、生けるものへの憎悪に歪んでいた。
「お集まり頂き、ありがとうございます」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は集まったケルベロスたちに、説明を始めていた。
「本日は、ドリームイーターの出現が予知されたことを、お知らせ致します。人の『興味』を奪うタイプのドリームーター――第五の魔女・アウゲイアスの仕業でしょう」
場所は兵庫県西部の林だという。
そこで出現するドリームイーターは、野に放たれ、遠からず人を襲い事件を起こすだろう。
それを、未然に防ぎ、少年を助けることが必要だ。
「皆さんには、このドリームイーターの撃破をお願い致します」
それでは詳細の説明を、とセリカは続ける。
「敵は、ドリームイーターが1体。場所は、林の中となります」
時間帯は夜で薄暗い。
ただ、他の一般人の姿は全く無いので、避難誘導などを行う必要は無いだろう。
ケルベロスが林に着いた時点で、ドリームイーターは既に姿を消してしまっているだろう。だが、このドリームイーターは自分の噂をするものや、その噂を元に接触を試みようとしているものに引き寄せられる性質があるという。
それを利用すれば、誘き寄せることは可能だとセリカは言った。
「噂の中身に、和装の人の前には現れやすい、というものがありますので、その辺りを意識してみても接触が容易になるかも知れません」
誘き寄せたあとは、襲ってくるドリームイーターを倒すだけだ。
「このドリームイーターを倒せば、少年も無事に目を覚ますことが出来るでしょう。全力で、うち倒してくださいね」
ドリームイーターは狩衣を来た人の姿をしていて、和紙札を利用して戦ってくると言う。
「札を飛ばして拘束してくる遠単麻痺攻撃、式神を使役する近単武器封じ攻撃、呪句によりトラウマを喚起する近距離攻撃の3つを使用します」
それぞれに気をつけておくと良いでしょう、と言った。
「それでは、皆様の健闘をお祈りしています」
参加者 | |
---|---|
御籠・菊狸(水鏡・e00402) |
哭神・百舌鳥(薄墨の暗夜・e03638) |
ノーザンライト・ゴーストセイン(ヤンデレ魔女・e05320) |
祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083) |
ミハイル・アストルフォーン(えきぞちっくウェアルーラー・e17485) |
ティティス・オリヴィエ(蜜毒のアムリタ・e32987) |
月岡・ユア(月歌葬・e33389) |
寺井・聖星樹(爛漫カーネリアン・e34840) |
●邂逅
薄暗闇の林を、ケルベロス達は歩いていた。
「しかし、冬が去ったとはいえ、まだ寒くない?」
と、ノーザンライト・ゴーストセイン(ヤンデレ魔女・e05320)が横を見る。
視線の先には、浴衣姿の御籠・菊狸(水鏡・e00402)。確かに、風に裾が靡いていたが……。
「だいじょーぶだぞ。僕は元気だからなー!」
菊狸は笑顔で朗らかな声を返している。
ならいいけども、と言うノーザンライト自身は……普段通り、魔女のいでたちだ。
持つのは電池式のランタンで、それには我ながら雰囲気ないな、とちょっとため息をついたりする。
浴衣には、ティティス・オリヴィエ(蜜毒のアムリタ・e32987)も羨望の眼差しだ。
「日本独自の衣装は、いいよね。和服が似合う人って素敵だし……僕も憧れるよ」
澄んだアイオライトの瞳をきらきらと煌めかせ、感嘆交じりに言う。
「いつか、着てみたいな……着方は、わからないけれど」
「浴衣ならすぐに教えられるぞー!」
菊狸が誇らしげに応えていると……。
程なく、木々の間に、気を失っている少年を発見。
保護した後、皆は離れたところに移動することにした。
「この辺りでよさそうだね」
月岡・ユア(月歌葬・e33389)が、辺りをランプで照らしつつ言うと……皆は一度、立ち止まった。
菊狸が見回す。
「で、このへんに出るのかー? 呪いの何とかが」
「呪術師だね。ボクもその噂聞いたことあるよー」
寺井・聖星樹(爛漫カーネリアン・e34840)が噂話を広げつつ、スマートフォンを取り出してかざす。
「陰陽師の幽霊も、写真に撮れるのかな?」
「呪いはイミわからんけど、陰陽師って聞くときょーみあるなー!」
菊狸も、そこは少々本心で口にする。殴って殺すタイプなので、呪いは専門外だが……術士としては気になった。
「陰陽師って、お寺とか、もっと雰囲気ある場所に出るものと思うんだけど……いや。この暗さこそ、陰の気を好む呪術師らしいのか」
ノーザンライトも呟く。
すると、葉がさわさわと揺れ始めた。
「何だか、その呪術師とやらが今にも出てきそうな雰囲気だね?」
それを注視しながら、ミハイル・アストルフォーン(えきぞちっくウェアルーラー・e17485)も口を開く。
哭神・百舌鳥(薄墨の暗夜・e03638)も頷き、言葉を繋いだ。
「陰陽師で呪術師なら……式神を使ったりとかするのかな……? それとも自分の血を使って呪うタイプ……?」
「……式神、血……どちらにしても、興味深い」
祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)はそれこそ、心から声を滲ませた。
「……呪術を扱う霊戦など久しいからな、早く出るといい」
その手には藁人形、釘、鎚。
呪術を扱う家系として、たとえ敵が夢の造物であっても……切に邂逅を望んでいる。
百舌鳥も、呪符を軽く握った。
「もし出てきたら……オレの管狐と戦わせてみたいな……!」
「……ワタシは、祟りたい。……祟る。祟る祟祟祟祟――」
と、イミナの怨念が最高潮に達した時だ。
林の影から……狩衣の男が飛来した。
木々の間から浮遊するこの男こそ、呪術師――ドリームイーターだ。
「お出まし、か」
ミハイルは、ケミカルライトのスティックを地面にばらまく。
光源が広がる中、イミナも呪術師を見据え……呪い交じる鬨の声を上げた。
「……忌まわしく、呪わしく、恨みに怨念募る戦いをしようか」
●交戦
呪術師はそれに応えるかのように、和紙札を掲げている。
が、それより早く、ノーザンライトが魔力槍、シャイネン・メテオールに目映い雷鳴を宿らせていた。
「東の魔術師と戦えるとは面白い。まずは……お手並み拝見といくぞな」
同時、光る槍で神速の、刺突。衝撃に呪術師はばさばさっ、と林の間へ煽られる。
だが、それでも宙で体勢を直し……浮遊するように戻ってくる。
それを見上げ、ミハイルが槍を構えていた。
「人を呪わば穴二つ。まさしく人の身を外れた外道ってところか。こいつもある意味、鬼と言えなくもないのかな」
小さく言うと、地を蹴る。ひと息に呪術師へ肉迫した。
「まぁ――偽りとは言え、魔術師の先達者。たっぷり学ばせてもらいますかね?」
呪術師は避けようとするが……ミハイルは木を蹴って方向転換。横合いから痛烈な突きを与えた。
呪術師は、呻きながらも……恨みの形相で和紙札を大量に投擲。輪状に展開させ、イミナを締め上げた。菊狸が慌てて呼びかける。
「イミナー平気かー!?」
「……平気だ。こんなものでは、足りないくらいだ」
と、イミナは微かに愉快げな息を吐いていた。
瞬間、砂利の下から現れた多量の紙が、敵の和紙札を切り裂いていく。イミナが予め撒いておいた、霊力の篭もった紙兵である。
「ニオー! 回復頼むよ」
ミハイルがボクスドラゴンに声を投げると……ニオーはすぐに反応してイミナへ属性インストール。裂傷を治癒していった。
「……感謝する」
イミナはそう口にした後、ビハインドの蝕影鬼を敵へ差し向けた。
「……蝕影鬼、愉しい祭りだ、共に祟るぞ」
声と同時、蝕影鬼は鬼火のようにゆらりと呪術師へ飛来。強固な金縛りにかけていく。
そこへ、菊狸が接近。勢いをつけて飛び蹴りを噛ますと――吹っ飛ばされるように、呪術師は地面に激突した。
起き上がる呪術師は……血で汚れる顔を憎悪に歪め、咆吼を上げた。
『恨……ム……殺……ス――!』
「思ってたんだけど、恨みってなーに?」
と、聖星樹が近づいて首をかしげている。敵とは真逆のかわいらしい笑顔である。
「ボクたちが助けてあげよっか」
『許……ス……マジ――』
が、呪術師は、声には碌な反応を返さず、札を手に攻撃を試みてくる。
「わっと。うーん、やっぱり話が通じないのかな。まあとりあえず……っと」
それをすんでで避けると、聖星樹はすぐに、稲妻突き。
直撃を受けた呪術師は――再び宙に浮かび上がり、憎悪の雄叫びを上げた。
「……人の興味によって蘇った呪術師、か。まるで悪夢の化身だね」
ティティスは、歪む呪術師の顔を見上げて、呟いた。
「本当に、怨念が人をあんな姿に変えるとしたら……醜くもあり哀れでもあるね……」
――憎しみを棄てられない自分もまた、あの様に醜いのだろう、と心で少し、思いながら。
「ふふっ、ボクはむしろ、呪術師ってだけあってイイ顔してると思うけどね~♪」
逆に笑んでみせるのは、ユアだ。
ユアはそのまま青々とした光を生み、飛ばしている。それが巨大な御業となり、呪術師の全身を覆った。
『ガ……ァッ』
「キミみたいな殺る気に満ちた敵って大好きだな。きっと楽しい愉しい殺り合いをしてくれるから!」
睨む呪術師にも怯まず、ユアは手を握る。すると御業がその体を締め上げ、ばき、ばきと異音を上げていった。
ティティスがそこへ大鎚を向ける。
「何にせよ、あれは浄化しなきゃね」
「そうだね……実際に何かの恨みを果たしてしまう前に……」
同時、百舌鳥も手をすらりと伸ばしている。
淡く、灰色に発光したそれは魔法の光線。
呪術師が拘束から逃れ浮遊したところに、ティティスが射撃を撃ち当てると……後退したところに、百舌鳥が光を発射。
「外さないよ……」
瞬間、貫くように命中させ、呪術師の体の一部を石化させていく。
●呪
体力を削られてきた呪術師は、顔に苦悶を交ぜ始めていた。
苦し紛れに札を放ろうとするが――それが、ぱっ、ぱっ、と燃え尽きていく。
「おっと、させないよー」
それは、走りながらつぶさに蹴りを打ち込んでいく聖星樹の攻撃だ。炎を宿した足技は、そのまま呪術師の体にも直撃し、一時その全身を火で包む。
「……あたしも炎をお見舞いしたいところだけどな」
ノーザンライトは、小さく呟いている。周囲が林であることを鑑みて、強力な炎を投射する火炎魔法を放つのが微かにためらわれたのだった。
それでもノーザンライトは、手元に魔法光を集中させる。
「ま、これでも戦える。魔女術(ウィッチクラフト)と陰陽術のぶつけ合い。楽しませて」
同時、光は吸い寄せられるように呪術師に飛翔。
呪術師が投じていた札を貫くと、足元へ命中。鈍化の魔力で包み、その動きを鈍くしていった。
「今、攻撃いけるよ」
「なら、聴かせてあげようか――飾ってあげる、君の命灯」
と、ノーザンライトに応えて、刺すような美しさの声が響く。
それはユアの『死創曲』だ。
「赤き月が見守るその刹那、死に満ちるキミの命灯よ――」
ユアが歌声を紡ぐと、背後に赤い月の幻影が姿を現す。
死の力を持った魔の歌と共に――それが溶けるように光の刃になると、次々と呪術師に突き刺さっていった。
『呪……テ……ル……全、テ――』
呪術師は血を流しながら、しかしまだ倒れない。憎悪を消さず、ひたすらに怨嗟を続けている。
「よっぽど強い恨みがあるのかな……それも噂の中の事だけなんだろうけど……」
百舌鳥が呟くと、ティティスも何とは無しに頷く。
「祝福も呪いも似たようなものだ。強い想いはどんな形でも残り続けるものなんだろうな」
言いながらも、ティティスは呪術師に肉迫している。
一歩踏み込むごとに、白銀の髪が揺れる。神秘的で性差を感じさせない、その儚い容姿が敵影へ跳ぶと……まるで一片の雪が闇に降るよう。
「――ただ、どんなに強い怨念を持っていても死者は蘇らない。蘇るとしたら、それはもう別のナニカなんだろう」
だからこそ、討つ、と――加える蹴りは重く、呪術師を地に転がせる。
そこへ菊狸が背丈ほどもある大斧を構え、駆け込む。
「よし! 一斉攻撃行くぞ!」
「勿論……援護するよ……!」
百舌鳥も応えるように追従する。
菊狸が縦一閃、呪術師の狩衣ごと、皮膚を切り裂いていくと……百舌鳥はしゃん、と錫杖を鳴らし、反対側へ弧を描くように跳躍。敵の背から、強烈な殴打を与えた。
呪術師は、呻いて距離を取り……呪句を詠み始める。狙いは、菊狸だ。
「うおっ、何だか嫌な気分だぞ……」
頭を押さえる菊狸。それは衝撃と共に、精神から蝕む攻撃――だが。
その直後、菊狸を妖しくも清廉な光が包む。
「呪いが魔術なら、こちらも呪い直すことでそれを癒す……ってね」
それはミハイルが生み出していた、まるで満月にも似た光球。その癒しの力が、菊狸を蝕む呪いを消し去り――体力も治癒させていった。
「ありがとなー」
「無問題だよぷりてぃガール」
ミハイルが軽く返している最中、さらなる攻撃を狙う呪術師へは――イミナがひたりひたりと接近し、狩衣を掴んでいる。
『ォ……ッ』
「……愉しいな、気分が高揚する」
イミナはそのまま、逃れる呪術師を引きずるように近づかせ……。
「……もっと沢山呪い合おう、祟ろう。……狂うように、残留思念となっても、塵芥となってもだ」
呪句を悲鳴に塗り替えるように……腹部に重い蹴りを叩き込んだ。
●決着
土煙を上げて転げる呪術師。
血を吐きながらも起き上がり、式神を行使。鵺を召喚して襲わせてくるが……。
「式神合戦なら、応じてあげる」
と、ノーザンライトが御業を解き放ち――鵺を握り潰し、呪術師の片腕を引きちぎる。
呪術師は、それでも懲りず式神を召喚。怪鳥を複数羽、飛ばしてきた。
それを、触れるだけで凍らせていくのは聖星樹。四散させながら、呪術師にも刺突を喰らわせていく。
「このまま、攻撃させずにたたみかけるよー」
「わかったぞ! もう一度全軍前進だ!」
菊狸は応え、高々と跳躍。回転下降しながら、踵落としを叩き込んだ。
そこを、ユアの禁縄禁縛呪が縛り上げる。
「そろそろ、限界が近づいてきたかな?」
『……ァアッ!』
呪術師は体力を大幅に削られながらも……残りの札を撒き、四足獣の軍団を形成する。
と――その周囲で、薄く光る管狐が舞っていた。
「数で来るなら……幻影術……水籠……!」
それは百舌鳥の『鈴鳴:水籠』。
呪符で作られた結界の中で――首に、鈴付きの色違いの組紐をつけた管狐が、5匹。凛、凛と鈴を鳴らすと、敵の式神が水の檻に閉じ込められ、消失していく。
狼狽える呪術師を、ミハイルが業炎の蹴りで吹っ飛ばす。
「消える事の無い呪い。死が近づいているのを、感じているかい」
『……死……ナ、ヌ……呪……ウ――』
呪術師は体を引きずりながらも、向かってくるしかない。
イミナがその体に、呪力を込めた杭を打ち込んだ。
「……ならば最後まで祟り合おう。弔うように、祟る。祟る。祟る祟る祟る」
何度も杭を打ち続ける、祟『贄穿ちの弔杭』。
その痛みに、叫びを上げる呪術師は――満身創痍で這いつくばる。
そこへノーザンライトが、『極光剣』を閃かせた。
「所詮は夢の残滓……興味は失せた」
オーロラの剣で斬撃を加えると、虹の光が呪術師を飲み込んでいく。
同時、ティティスが『儚華輝星』を行使し――夜空から煌めく流星を降り注がせていた。
「死んだら星になるって言うでしょう? だから怨念も呪いも何もかも――全て星のように流してしまおうか」
呪術師は声を上げる間もなく、星々に飲み込まれ――千々に消えていった。
「……。……無事か」
少年が目覚めると――光のない赤い瞳で見つめる、暗澹としたイミナの顔があった。
「ファーー幽霊が出たァァ!」
「落ち着きなよ少年。彼女は幽霊じゃないよ?」
ミハイルがなだめると、え? と少年は見回した。
戦闘後の林である。静かな中、そこにはケルベロスと少年だけだ。
それに少年は安堵。無事と知って、皆に礼を言った。
ティティスは少年を立たせる。
「こういう場所も、危険だし。興味を持つのはいい事だけど、取り返しのつかない事になる事もあるから……気をつけてね」
「……」
「君がいなくなれば悲しむ人もいるよ?」
それに少年は、うん、と言った。
「あんまりウワサにふりまわされるんじゃないぞ」
菊狸が肩をポンと叩くと、少年はそれにも強く頷く。
「歩ける……? 送るよ……」
百舌鳥が先導すると、少年はありがとう、とついていく。
「じゃあ、片付けてボク達も帰ろうか」
聖星樹の言葉を機に……周囲をヒールしつつ、皆も帰還することとなった。
ノーザンライトも息をついて歩き始める。
「そもそも幽霊なんているわけがない。プラズマか死神の仕業……」
と、一瞬立ち止まる。
「あれ、林の奥に人魂ぽいものが見えた気が……。……さっさと、帰ろうぞな」
言いつつ、そそくさと歩いて行った。
途中、ユアは一度振り返り、敵が朽ちた跡を見据えていた。
「生ける者への憎悪、か~。こんな噂、立てた本人が一番憎悪の塊だったり、してね」
死を映し、死に干渉し、数々の死を見てきた己のことを思う。
仮に呪術師の幽霊がいたとしたら……それは一体どんな姿なのだろう?
「『もしも』の存在、少し興味がある……なーんてね……」
呟きは夜の中に。
それきり、ユアは前を向いて、歩き出した。
作者:崎田航輝 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年4月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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