回生する狂気

作者:崎田航輝

 一片、二片と、夜空から舞い降りるものがある。
 それはまるで粉雪のような、白い羽根。
 直後、それらはあおられるように、虚空に消えた。とても大きな白い翼に羽ばたかれて風に流されたのだ。
 羽ばたいたのは、深夜の町に降り立ったシスター姿の死神――『因縁を喰らうネクロム』だ。
 浮遊する怪魚を引き連れたネクロムは……静かな一帯で、その顔に微笑を浮かべる。
「また一つ――ケルベロスとデウスエクスの戦いの縁に巡り会えたのね」
 死のないデウスエクスが死んだとき、何を思っていたのか。そして殺し合った両者の因縁。それを考えるとき、ネクロムは恍惚を覚えずにはいられない。
「あなたたち、彼を回収してくださらない? また、素敵なことが起こりそうですもの――」
 ネクロムの言葉に、怪魚はゆらゆらと泳ぎ回る。
 その軌跡が、魔法陣のように浮かび上がると――そこに、1人の巨躯が召喚されていた。
「ァ……ガァッ……コ、ロス……」
 それはかつて、凶悪犯罪者としてコギトエルゴスム化されていたエインヘリアル。
 地球に送り込まれ、そしてケルベロスの手によって死したはずの狂戦士であった。
 本能だけを頼りに斧を握り、獲物を探す、そのどこか獣じみた姿には……生前、曲がりなりにも感じられた戦士の様相は存在しない。
 無くなった知性の中で明滅するのは、純粋な殺意だけだった。
「スベ、テ……コロス……! ガァアアッ!!」

「死神というのは、何でも蘇らせてしまうんですね」
 糸瀬・恵(好奇心は猫をも殺す・e04085)の言葉に、ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)はそうだな、と頷いていた。
「狂った戦士であろうと何であろうとな。それが、奴らが強力な勢力であると言うことを物語っているのだろうな」
 ザイフリートは、それから改めて皆を見回す。
「今回は、エインヘリアルが死神によってサルベージされる事件が予知された。糸瀬・恵からの情報によって判明したもので――恵達ケルベロスによって倒された個体でもある」
 怪魚型死神にサルベージを命じたのは、『因縁を喰らうネクロム』。死んだデウスエクスを変異強化した上でサルベージし、戦力とするのが目的だろう。
「お前達には、このエインヘリアルと死神を撃破して欲しい」

 詳細の説明に移る、とザイフリートは続けた。
「敵は、エインヘリアルが1体と、怪魚型死神が3体の、計4体だ。場所は神奈川の市街地」
 普段は人も多い場所だが、今回は深夜なのでひとけは無い。
 戦闘中に人が現れることもないので、避難誘導などの必要性は皆無だろうとザイフリートは言った。
「現場へ赴き、出現した敵を撃破することに意識を集中して欲しい」
 到着と同時に敵が出現することになるので、純粋な戦力勝負に近くなるだろうということだった。
「エインヘリアルの能力に、何か変わったところはありますか?」
 恵の言葉に、ザイフリートは頷いて資料を繰る。
「使用武器は、斧だ。だが、半ば獣のようになった影響か、回避などが低い一方で、攻撃の威力は高いだろう」
 さらに、今回は怪魚型死神も一緒なので注意が必要だという。
「3体の死神は皆、列毒効果のある怨霊弾を飛ばす攻撃をする。ドレイン効果が付随した噛みつきも行ってくるので、戦況をつぶさに観察することが肝要だろう」
「前も厄介でしたけど、今回も大変そうですね」
「そうだな。だが逆に、一度ケルベロスが倒した相手だからこそ、勝ちの目があるとも言える」
 だからお前達ならばきっとやれるだろう、とザイフリートは結んだ。


参加者
八代・社(ヴァンガード・e00037)
糸瀬・恵(好奇心は猫をも殺す・e04085)
秋空・彼方(英勇戦記ブレイブスター・e16735)
イアニス・ユーグ(アイフラッフィー・e18749)
レーナ・ヘンリクセン(シャドウエルフの野良巫女・e20099)
ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)
ユアン・アーディヴォルフ(生粋のセレブリティニート・e34813)
キアラ・エスタリン(包み込む蒼の光・e36085)

■リプレイ

●骸
 深夜の市街地に到着したケルベロス達は――既に道の向こうに、敵影を見つけていた。
「あれか……! あれって、言うなればデウスエクスのゾンビだよな」
 視界の先にいる巨躯――エインヘリアルを見て、イアニス・ユーグ(アイフラッフィー・e18749)は興味とも興奮とも付かない声で言う。
 秋空・彼方(英勇戦記ブレイブスター・e16735)が、微かに頷く。
「知性もなく蘇らされたのだから、ある意味ではそうかも知れませんね……」
「いやー超怖いな! 俺、サルベージされたデウスエクスを見るのは初めてなんだ」
 イアニスは、やたらとテンション高く応える。
 まごう事なき深夜テンションである。
 ……が、あれが“恐怖”の存在であること自体は、否定しようのない事実。
「……現れたのが人の居ない時間で、本当に良かったですね」
 ユアン・アーディヴォルフ(生粋のセレブリティニート・e34813)が言えば、皆も頷いていた。
 被害を気にせず、本気を出して戦える。それが、ケルベロスたちにとっては唯一の助け。
 程なく、敵との距離は狭まり――互いが射程距離に侵入した。
 ガァアッ、とエインヘリアルが吼えた。
 瞬間、開戦。
 巨躯はそのまま斧を振り上げてきた。
 と、そこへ肉迫し、あえて攻撃を誘い込んだものがいた。
 八代・社(ヴァンガード・e00037)だ。真っ向から受けた斧撃は、ダメージとはならず……魔術数理『アルイーズ定理』により演繹され、魔力へと転化される。
 敵が意識する間もなく、社はその魔力を運動量へと変換、収束、加速。膨大な詠唱を、腕に刻んだ魔術回路に代行させ……戦艦用レールガンを上回る撃力を、拳に宿していた。
「早速で悪いな。くたばれ」
 同時、撃ち抜くように放たれるその拳の名こそ、『魔導発勁・終式』。
「M.I.C、総展開――終式開放ッ!!」
 光り輝く拳が初手、エインヘリアルに直撃。苛烈な威力で、巨躯を吹っ飛ばした。
 着地した社は、ちらと見る。エインヘリアルは深いダメージを受けながらも、呻きつつ立ち上がっていた。
「ま、流石に一撃では沈まないな」
「やることは同じさ」
 と、応えて如意棒をひゅるんと回すのはファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)。
「――敵を最後まで、燃やし尽くすのみだよ」
 言って如意棒を振るうと……滝のような炎が敵に降り注いでいく。
 すると前衛の死神が、中衛の盾になるように張り付くが――そこに、レーナ・ヘンリクセン(シャドウエルフの野良巫女・e20099)が手をのばした。
 そこから生まれるのは、炎をたたえたドラゴンの幻影。
「盾がおるのは、ちょっとばかり難儀しそうやけど……何とか隙を作らなね」
 言うと同時、燃ゆる幻影を発射。
 巨躯を守りに入った死神1体を巻き込み、しばし後退させると……。
「今や、頼むで」
「はい!」
 と、レーナに応えるように彼方がエインヘリアルへと肉迫していた。
 死神が守る間もなく、彼方は翻って蹴りを放つ。
 エインヘリアルはそれを喰らいつつも、深手は逃れ、彼方を振り払った。わっ、と着地する彼方。
「く、やっぱり簡単な相手じゃないな――」
「まだまだ! 最初は手数が大事なんだ」
 言ってエインヘリアルに迫るのはイアニス。雷撃を纏った刺突で巨躯に確実にダメージを与えていく。
「そうですね。今はとにかく、ダメージを」
 と、糸瀬・恵(好奇心は猫をも殺す・e04085)も敵へ飛来。戦術超鋼拳を打ち当てていた。
 そこで、エインヘリアルがまた吼える。
 こちらを獲物だと決めたかのように、睨み……一気に接近、斧を振り下ろした。
 狙いはイアニス――だが、そこへファルゼンが飛び込み、弓で攻撃を受け止めた。
「そうそう思い通りにはさせないよ」
 ほとんど同時に、中衛の死神が、こちらの後衛へ怨霊弾を放ってきていたが……ファルゼンは、その一弾をも、体をもって弾いてみせる。
 残りの二弾は、それぞれファルゼンのボクスドラゴン、フレイヤと……ユアンのテレビウム、ヴィルヘルムが身を挺して庇っていた。
「ヴィル、助かるよ。でも体力には気をつけろよ」
 鎌を投擲し、エインヘリアルを後退させながら、ユアンは言った。
 ヴィルヘルムはまだまだ平気とばかり手を挙げてみせると……画面を光らせ、ファルゼンを回復させていく。
 次いで、そこにきらきらと、煌めくものがあった。
「皆さん、すぐに回復をします……!」
 祈りを捧げる、キアラ・エスタリン(包み込む蒼の光・e36085)の力だ。
「空に舞って、光の胡蝶たち……!」
 仲間の頭上を舞うのは、キアラの翼にも似た、美しくも小さな蝶だった。『光の胡蝶』――その清廉な祈りが、仲間に降り注ぎ……見る間に傷を癒していった。

●乱撃
 その間、前衛の死神1体も、直接攻撃を狙って近づいてきていた。
 だがそこにもファルゼンが入り込んで、自ら受け止めていく。
「大したことない攻撃だな。そんなものでは傷1つ付かんぞ」
 下がりながら挑発すると、もう1体の死神も、誘われたようにファルゼンへ攻撃をしていく。
 一気に二撃を受けた形となったが――直後に、ファルゼンは意識を集中。『共呼吸』を行使して、自分を含めた前衛を癒す。
 さらに、サーヴァント達もすぐに回復行動に移り……それで、死神に喰らった浅い傷はほぼ完治した。
 ただ、死神も噛みつくたびに、常にこちらの生命力を奪ってはいる。
 ライフルを構えながら、ユアンは呟いた。
「真正面から削ろうとすれば、確かに厄介な相手ですね」
「だからこそ、死神の戦い方に付き合う必要はないな。まあ、邪魔すれば、排除はするが」
 と、素早く跳躍しているのは社。
 エインヘリアルを守る死神を、上方から蹴り落としてどかせると……そこに射線を作る。
「ありがとうございます……この一撃を確実に、当てるっ……!」
 同時、ユアンは砲口から白い閃光を放つ。それは狙い違わずエインヘリアルに直撃し、体表の一部を凍らせていった。
「このまま攻撃を、お願いします」
「了解だ! 全軍前進でいくぞ!」
 相変わらず、イアニスはテンション高めに、死神をかいくぐってエインヘリアルへと接近する。
 駆け込むと同時に、グレイブを縦横無尽。十以上もの斬撃を叩き込み、一気にエインヘリアルの傷を深く抉っていった。
『ゥ、ガ……ァアッ!』
 エインヘリアルも、それに苦悶を浮かべ始めている。
 だが、まだ倒れるには至らず――がむしゃらな動きで、斧を振り回した。
 そのターゲットとなった彼方は……反応しながらも避けきれず、一撃を喰らう。衝撃に、建物の壁まで飛ばされた。
「彼方さん……! 大丈夫ですか」
「大丈夫、です。でも、やはり力は強いな……」
 キアラが駆け寄ると、彼方は何とか立ち上がった。
 かなりのダメージに一時ふらついたが――そこに、目映いばかりの光が迸る。
 キアラの手から、溢れんばかりのオーラが生まれていた。それもまた、黄金に輝く癒しの光。キアラがその手をさしのべると、あたたかな光が彼方を包み……劇的な回復量が、体力を大幅に持ち直させていく。
「これで少しは、ましでしょう。いつでも言ってください」
「ありがとうございます」
 と、踏み出した彼方は、まっすぐ巨躯へ立ち向かう。
 元より、心の強さは負けないつもりだ。否、力の足り無さを、気力で補っていると言ってもいいだろうか。
 だからこそ退くことなど出来ず――彼方は大鎌を振るった。
 だがエインヘリアルも、それを斧で受け、何度か打ち合う形になる。その内に反撃もしようとしてくるが――そこでエインヘリアルの動きが鈍る。
「これで、ちょっとばかし、静かにしててもらおうかいな」
 と、レーナが護符をぴっ、と手に取り、御業を開放していた。
 それは大鷲のような大きなうねりになり、エインヘリアルを丸ごと鷲掴みにしていく。
 ただ、その間も死神が巨躯を守りに入ってこようとするが……。
「これを喰らっていてください」
 と、その1体を恵が稲妻突きで跳ね飛ばす。
 直後、御業の中で藻掻くエインヘリアルに、彼方が肉迫。
「暴れるだけの奴なんかに……負けるものか!」
 袈裟に大鎌を振り抜き、その巨躯の片腕を、切って落とした。

●眠り
 エインヘリアルは、悲鳴を上げて膝をつく。
 激しい流血をしながら、苦渋の表情を浮かべ……それでもまだ倒れない。
 逃げる意志も戦況を鑑みる意思もそこにはない。ただ、曖昧な意識に1つの目的が明滅しているのだ。
『コロス……スベテ……コ、ロ……ゥ、ゥ……』
「エインヘリアル……あなたは」
 キアラがぽつりと、言葉を零す。
「死に、蘇ってまで――それでもまだ、それほどまでに……殺めようとするのですか……」
 巨躯は無論、何も応えない。
 涎を垂らしながら、操られるままに、ケルベロスに敵意を向けているだけだ。
「……元が重犯罪者やし、それを差っ引いても侵略者。この末路も自業自得……ではあるんやけど」
 その様を見ながら、レーナも少し呟く。
「これを見ると、死んだ後もこき使われるのはなんか好きくない、と思うわ。死神嫌いな子の気持ちも、ちょっと分かる」
 その言葉に、ユアンが一瞬、物思うようにしつつ……頷いた。
「……憐れ、ですね」
「少なくとも、一回死んでもう一回死ぬなんてのはろくでもねえ気分だろうな」
 社が、地を蹴ってエインヘリアルに肉迫している。
 拳を煌めかせ、再び込める力は、魔導発勁だ。
「だから今度はもう、二度と醒めることのないように眠らせてやるよ」
 瞬間、社の拳が巨躯を直撃。建物に激突させ、がれきの雨を降らせる。
『ガ、アアァッ……』
 エインヘリアルは、それでも這って、片腕で斧を探し回り、拾い上げる。
 だがそこに、AC 009:『アマノタジカラ:スライドモード』でガントレットに力を蓄えた彼方が迫る。
 巨躯の攻撃をいなし、懐に入った。
『コ……ロ、ス……』
「こんなことを繰り返しても意味が無いんだって!」
 構わず振り下ろされる斧を、掠めながら避け、彼方は拳を打ち込む。蒼い光が、爆発するような衝撃を与えた。
 血を吐くエインヘリアルは、彼方を拳で薙ぎ払おうとするが――それを、ファルゼンが庇って受けきった。
「邪魔だよ」
 そして、死神が目の前に現れると――神速の拳を飛ばし、四散させた。
 同時、光の奔流が辺りを包む。
 キアラが翼を広げ、癒しの力を最大限に発揮。目もくらむほどの光量を流し込み、ファルゼンを回復させていた。
 エインヘリアルは、そのまぶしさにたたらを踏んでいる。
 そんな巨躯を、キアラは見据えた。
「この身は洗脳されていたとはいえ、エインヘリアルのために尽くしていた身……。なれば、貴方を葬って差し上げるのも私達の役目です……!」
『シ……ナ……ナ、ィ……』
 エインヘリアルは、キアラに手をのばそうとする。
 だがそれが届くはずもない。ユアンの投擲した大鎌が、もう片方の腕も断ちきった。
「もう少しで……倒せますっ」
「……お前は、死んでるんだ」
 と、小さく呼びかけるように、槍を巨躯に突き刺すのはイアニス。それは『死』について、思うところがあるかのように。
「……死んだものが、生きてて良い筈が無いんだよ」
 エインヘリアルは、それで意識を失った。
 同時に、レーナの気咬弾が、襲いかかると――文字通り、巨躯の命を食らい付くしていく。
「ゆっくり眠りや」
 どさりと音がする。レーナの言葉と共に、エインヘリアルは倒れ、物言わぬ姿になった。

●鎮魂
「さて、と。あとはあいつらだけだな」
 イアニスが顔を上げる。
 そこには、残り2体だけとなった死神が、あてもなく彷徨うように浮遊していた。ケルベロス達が再接近すると、死神の1体がギャッと鳴き声を上げ、噛みつきにかかってくるが……。
 それも、ファルゼンが真正面から受け止めている。
「お前達が守るものは、もういない」
 ファルゼンはそのまま炎で薙ぎ払うように、その1体を空中へ煽る。
 その隙に、中衛の1体にイアニスが槍での斬撃を叩き込んでいくと……そこへ、恵も稲妻突きを喰らわせた。
「あと、一撃です」
「さっさと後片付けといくか」
 同時、社も跳躍していた。高々と上がった位置から、回転して降下。その勢いのままに蹴りを打ち込み、その1体を消滅させた。
 残りは前衛の1体。狂乱するように、怨霊弾を吐き出してくる。
 それはこちらの後衛へと飛ぶが――それも、ファルゼン、フレイヤ、ヴィルヘルムがそれぞれに庇い、通させない。
 と、怨霊弾の禍々しい靄が、金色の鱗粉によって晴れていく。
 飛ぶのは、ひらひらと羽根を舞わせる小さな胡蝶だ。
「これ以上、傷つけさせませんよ」
 それはキアラが再び行使する『光の胡蝶』。前衛の体力を回復させ、同時に解毒。聖なる作用が、仲間の状態を最後まで万全に保った。
「攻撃は、お願いします……!」
「ほんなら、早めに締めようか」
 と、レーナは禁縄禁縛呪で死神を締め上げていく。
 そこを、彼方の指天殺が襲う。
 ただ、吹き飛ばされながらも、死神は僅かな体力を残し、噛みつきを狙って来た。彼方は、バックステップで何とかかわす。
「まだ、死なないか――っ」
「――それなら」
 と、ユアンが長い尾を微かに振るわせている。
 帯電した尾が、輝き始めると――ユアンはヴィルヘルムの背後から、躍り出た。
 噛みつこうと口を開けた死神の牙ごと巻き込んで、その体を尾で締め上げていく。
 ギャッと、死神は逃れようと牙に力を込めるが……。
「負けませんよ」
 それ以上の力を、ユアンは注いでいた。
 死神のせいで故郷にいられなくなった過去を、一瞬思う。そして、目の前で見た、命への冒涜も。
「これで、終わりです」
 だからこそ打ち砕くべき敵。『Verzweifelt schicksal』――ユアンの渾身の力で、死神を灰にし、消滅させた。

「終わりましたね」
 戦闘後。静かになった夜に、彼方の声が響く。
 それを機に、皆もようやっと息をついていた。
「勝てて……良かったです」
 と、少し膝をついているのはキアラである。
 その目には、安堵の涙。戦いの中では勇猛果敢な戦乙女でも、根底は内気で泣き虫なところがある、1人の少女なのだ。
「大丈夫ですか? 皆さんもお怪我はないでしょうか」
 ユアンが言ってキアラと皆を見回す。キアラは、それには頷きを返し……皆も、大きな怪我がないことを告げた。
「しかし、中々、厄介な敵だったな……エインヘリアルがあんな風にされちまうとは」
 イアニスが言うと、ユアンはそうですね、と応える。
「戦況が激化するほど、死神達には都合が良いのですね……」
 少し俯きながらも……しかし、首を振った。
「でも、まずは解決できて良かったですね。それが何よりです」
 それには皆も頷いた。
 そうして、皆は壊れた建物をヒールで修復し……帰還することとなった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年3月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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