食の道にて

作者:崎田航輝

 食を求める人々はいつだって闊達だ。
 増してそこが美味の並ぶ場所なら、訪れる者の熱量も一入。良い香りを漂わす店先には、この日も長蛇の列が出来ていた。
 そこはとある中華街の一角に伸びる道。人気の中華饅頭も多い中、パンダの顔を模したその店の可愛らしい饅頭は、特に多くの来客を生んでいる。
 無論、中華そばに小籠包と、他にも人を集める店は枚挙に暇なく。食を楽しむ人々が一帯で賑わいを成していた。
 けれど、そんな只中へ歩み寄る巨躯の姿が一人。
「こいつはいい。戦い放題じゃねぇか」
 それは快闊に笑い、青龍刀にも似た曲刀を握りしめる罪人、エインヘリアル。
「行くぜ、どいつからでもかかってこい!」
 楽しげに言うが早いか、人波に踏み込んで刃を振るい──目につく人々を容赦なく切り裂き始めていた。
 悲鳴が響き、血潮が散ってゆく。罪人はその最中にも、愉快げな様相を見せながら──静寂が訪れるまで凶行を続けていった。

「エインヘリアルの出現が予知されました」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へ説明を始めていた。
 現場は中華の店が並ぶ道。人で賑わうその只中に、敵は踏み込んでくるようだ。
 ウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399)は話を聞いて頷く。
「白昼堂々の凶行か。警戒はしていたが、本当に現れるとはな」
「ええ。ただ、こうしてウリルさんのお陰で察知できたからこそ、対処することも出来ます」
 確実に撃破し、平和を守りましょうとイマジネイターは言った。
 現れる敵は、アスガルドで重罪を犯した犯罪者。コギトエルゴスム化の刑罰から解き放たれて送り込まれるという、その新たな一人だろう。
「敵は道を真っ直ぐに歩んで現れるでしょう」
 無論、一帯には人々が無数に居るが……今回は警察や消防が避難を行ってくれる。こちらが到着する頃には、人々は皆逃げ終わっていることだろう。
「俺達は、戦いに集中すればいいんだな」
「はい。それによって迅速な撃破も可能でしょう」
 周りの店々にも被害を出さずに終われるはずですから、とイマジネイターは続ける。
「無事勝利できた暁には、皆さんも食べ歩きなどしていっては如何でしょうか?」
 人気の饅頭だけでなく、小籠包や中華そば等……幾つもの店が並び、中華の味を存分に楽しめるはずだ。
 ウリルは頷く。
「そのためにも、敵は斃さないとな」
「皆さんならばきっと勝利できますから。是非、頑張ってくださいね」
 イマジネイターはそう言葉を結んだ。


参加者
水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)
ジョーイ・ガーシュイン(初対面以上知人未満の間柄・e00706)
奏真・一十(無風徒行・e03433)
カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)
塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)
ウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399)
リュシエンヌ・ウルヴェーラ(陽だまり・e61400)
ディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)

■リプレイ

●剣戟
 朱色の門を遠く望む、一本道。
 食の街に伸びるそこは既に避難を終えて無人状態だった。
 故に視界を遮るものもなく──ウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399)は、早くも遠くに巨躯の影を発見している。
「これだけ見晴らしがいいと、エインヘリアルが現れてもすぐに判るな」
 言葉に違わず、碧色の瞳で見据えるそれは──曲刀を握って歩む咎人の姿。
「美味いもんに魅かれるのは解るがな。野良エインヘリアルの違法投棄と再利用で嫌がらせかますのは、やめてくれねぇかなぁ……」
 肩を竦めるのは水無月・鬼人(重力の鬼・e00414)。ゆるりと零しながらも、既に手は佩いた刀の柄に触れていた。
「ま、とりあえずやることは、やるか」
「そうだな。早々に退場願おう──楽しみも待っているからね」
 ウリルが言えば、隣でこくりと頷くのが妻のリュシエンヌ・ウルヴェーラ(陽だまり・e61400)。
 ウリルの横に居並んで、既に準備は万端。
「ぱんだまんのお店に被害が出る前に、やっつけちゃうのよ!」
 やる気十分、リボンの可憐なラウンドトゥで地を踏み、くるりと回転すると──深緑の鎖を踊らせて仲間へ護りの加護を与えていた。
 同時にウリルが手を伸ばし、闇色の雷撃を放射。罪人へ強烈な衝撃を見舞っている。
 罪人はそこで初めて此方に気づき刃を構えた。
 が、その頃には鬼人が疾駆。無名の刀に鋭い疾風を巻き込み、無限の斬撃が舞うかのような一刀で膚を刻んでいく。
 鬼人が誘導するよう、道の中央に飛び退くと──罪人は痛みに顰めた顔のまま、一歩踏み出していた。
「……いきなり、やってくれるじゃねえか?」
 それから見回し、得心したように言う。
「戦えそうな気配を感じてきたのに誰もいねえから不思議だったんだ。お前らの仕業か?」
「それが重要かい?」
 と、煙草の火を消して返すのは塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)。仄かに興味薄な視線を向けながら、それでもすたりと距離を詰める。
「どっちにしろ、戦いならアタシ達が付き合ってやるさ。それとも、アンタの『戦う』っていうのは戦う術のない人たちを後ろから切る事かい?」
「……言ってくれるな。面白え!」
 罪人は好戦的に笑むと、刀を振り被った。
 が、その刃先が途中で止まる。
 ジョーイ・ガーシュイン(初対面以上知人未満の間柄・e00706)が冥刀を突き出し攻撃を阻んでいた。
「個人的にはサシでやり合いてェとこだが……そういうわけなんでな。悪ィが集団で片付けさせてもらうぜ!」
 そのまま刀を押し戻すと、己の一刀へ冷気を湛えて。
(「ここんとこ囮だの連携だのクッソ面倒くせェことやってたからな」)
 真っ向からの純戦に、逆に新鮮味すら覚えながら。故にこそ手加減無く──振り抜く刃で零下の斬撃を与える。
 唸る罪人も反撃を試みた、が。
「させませんよ」
 澄んだ声音と共に、穹より風が舞い降りる。
 ふわりと翼で風を泳ぎ、逆光を浴びるカルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)。手をのべると不可視の魔剣を形成して。
「──穿て」
 刹那、その刃で突き降ろす。『閃穿魔剣』──鋭い一閃が罪人の腕を貫き、その力を著しく削いでいた。
 よろめく巨体はそれでも剣圧を放つ、が。
 翔子が花香りの漂う鎖で加護を広げ、腕に巻き付く匣竜シロにも治癒の属性を注がせると──リュシエンヌも翼猫のムスターシュに爽風を扇がせ皆を治癒する。
「ならばサキミも……と」
 そこで奏真・一十(無風徒行・e03433)が匣竜へ視線を遣れば──サキミは鳴き声も視線も返さず、無愛想なままに水色の光を顕現。盾役を癒やし戦線を万全とした。
「次は反撃だな」
「では、行かせてもらうとしようかねぇ」
 応えて機械槌を構えるのはディミック・イルヴァ(グランドロンのブラックウィザード・e85736)。
 回路に光を奔らせると、槌の柄を砲口へ変形。脚部を地に固定し罪人を狙っていた。
 敵に劣らぬ体躯なら、照準は仰角に邪魔されず真っ直ぐに巨体の中枢を捉えられる。刹那、空気の爆縮する音と共に砲撃。巨大な爆炎で罪人の躰を穿っていった。
「さて、頼むよ」
「ああ」
 血を吐く罪人が体勢を直す暇も無く、応えた一十が地を踏み『震幹驀地』。衝撃波を収束させ、巨体の足元から炸裂させた。

●決着
 倒れ込んだ罪人は、浅い息を繰り返しながら──未だ喜色を見せていた。
「幸運だぜ、こんなに愉しい戦いが出来るなんてよ……」
「戦闘狂、か」
 一十は言って軽く目を伏せる。
「ああいった罪人エインヘリアルも、キリがないな」
「アスガルドって治安悪いんでしょうかね?」
 カルナも小首を傾げながら、すぐに戦いの姿勢を取り直していた。
「まぁ、何が来ても倒しちゃうことに変わりはないですけど」
「そうだな」
 一十も頷いて微かに膝を落とす。
 次には両脚を覆う義骸装甲に蒼の獄炎を揺蕩わせて。
「焦土地帯や大阪城では王子や王女、騎士や兵士が日々奮闘しているようであるが……まあ、君には関係無さそうだ」
 ならば討つのみ、と。焔の流線を描きながら跳躍し、鮮烈な飛び蹴りを叩き込んだ。
 ふらつく巨躯へ、鬼人もよそ見させぬように刃と言葉を振り下ろす。
「どうだ。実際、今の情勢に思うところの一つもないのか?」
「……俺は戦えりゃ、いいのさ」
 罪人は刀で応えるのみ。
 だが、その挙動が静止した。ディミックが鉱石魔法『俤偲ぶ蛍石』──蛍石より幽かな幻を顕現していたからだ。
 不純物の多いその石は、光に影を交えるよう過去の想念を呼び起こす。すると罪人が惑ったその一瞬に、カルナはファミリアの白梟を解き放ち──。
「ネレイド、今がベストタイミングですよ」
 翔び立たせると共に翼を縦横に奔らせて、無数の斬閃を加えていった。
 血煙を噴きながらも、罪人は剣を振り回す。だがそれに動きを制されようが、下がるジョーイではなかった。
「この程度で止まると思ってんのか……よォ!!」
 高々と刃を掲げ、赤々とオーラを滾らせるその姿はまさに鬼神の如く。放つのは『鬼神の一太刀』──裂帛の振り下ろしで罪人の脳天を直撃した。
 巨躯が膝をつく、その隙にリュシエンヌが魔法の花弁を落とし傷を塞ぐ。同時に翔子も二本一対の杖を交差させ、眩いまでの雷光を顕現させて。
「これで、大丈夫だろ」
 ばちりと明滅する光量で痛みを吹き飛ばすと、体力を保ち力も齎した。
 翔子はそのまま白衣を翻して魔力を発射。巨躯の体内で圧力を炸裂させてゆく。
「このまま皆も、攻撃に移りな」
「ああ」
 応えるウリルは漆黒の刃で冥闇を奔らせ、斬撃を重ねた。
 罪人が抗おうと手を伸ばしても──。
「隙を与えるつもりもないよ」
 支えてくれる心強い味方がいる。だから、負ける気はしないのだと。
 間を作らず『Aurore』──広げた闇に潜む虚無を、罪人の魂にまで引き伸ばし侵食する。
 苦悶する罪人は、藻掻きながらも刀を振り上げる、が。
「ビリビリさせるのはルルだって得意なの!」
 リュシエンヌが『Coin leger』──光の粒子を注がせて巨体の動きを止めた。
 そこへディミックが立ち昇らせたエネルギーを凝縮。魔力球にして巨体を潰していく。
「最後は任せるよ」
「了解、と」
 鬼人は一つ呼吸を置いて神速の一刀。
 極限まで無駄を削ぐ剣筋で、視えても躱すことを許さずに。『無拍子』の斬撃で罪人を両断した。

●食の街
 明るい賑わいに、食欲を唆る香りが漂う。
 番犬達は事後処理の後、人々を呼び戻していた。今では多くの人が街を行き交っている。
「さて」
 と、ジョーイはそんな景色を確認すると歩み出していた。
「人混みとか苦手なんでな。なんか適当に買って食ったらそのまま帰るわ」
 じゃあな、と。
 背中越しに右手振って皆と別れると──静かな通りへ。
 肉饅頭の店舗を見つけると、そこで豚まんを買ってみた。
「へェ、なるほどな」
 仄かな湯気を上げるそれを一口食べると、ジョーイは頷く。
 たっぷりの豚肉に、干し椎茸と干し貝柱の芳しさが加わった本場の味だ。オイスターソースが旨味を増し、空腹でもあった分確かな美味を感じた。
「じゃ、帰るか」
 そうして満足すると後は早く──ジョーイは真っ直ぐ帰路へついていく。

 鬼人はカリンの木で出てきたロザリオに手を当て、祈る。
 無事戦いが終われたことを、婚約者の顔を心にしかと浮かべながら。
「……よし」
 それが済むと道を歩き出した。
 番犬とは気づかれぬよう、人波に紛れて。涼しい春風に、戦いの熱をクールダウンさせながら店々を眺めていく。
 そうして中華饅に舌鼓を打ちつつ、餡とクルミが美味な月餅があればお土産にして。
「飲み物も一緒がいいか」
 茶葉の店を見つけると中国茶も購入。
 更に小物やグッズの店で鮮やかな花飾りと、小さなパンダのぬいぐるみも買った。
「こんなもんかね」
 後は買い食いしつつ、美味しいものがあればそれも買って帰ろうと。鬼人は杏仁豆腐や小籠包のある店へと歩んでいった。

 人通りの絶えない中華街だが、中でも長い行列がある。
 一十はその発生源である店の前にいた。
「パンダまん……なるほど」
 ひときわ人気だということで、一十も早速列へ。サキミも匂いに惹かれたように、その傍らに続いていた。
 その内に店にたどり着くと──初めて品がよく見える。
 可愛らしいパンダの顔をかたどった中華饅頭だ。ずらりと並んで蒸されている様子が何とも和やかで、興味を惹かれた。
「中身は餡子と……肉まんもあるのか」
 とりあえず餡子のものをお土産に、サキミのものと合わせて二つ。それから肉まんの方も今食べる用に買った。
 それを広場のベンチで頂くと、熱々でもちもち。玉ねぎと筍が小気味好い食感だ。
 サキミもパンダさんを買ってくれたことには満足。美味しげにはむはむとつまんでいた。
「では、行こうか」
 食べ終わると、お土産を手に帰路へ。穏やかな風の中を歩んでいく。

 カルナはパンダまんを買う所。
 大きな蒸籠で湯気を上げるそれに視線を巡らせていた。
「色々種類はあるみたいですね」
 とりあえず白黒の色合いのものを購入し、食べることにする。
「さて、パンダの饅頭、中身は何でしょう。……まさか、パンダ……!?」
 はっとしつつ、どこから齧るか少々悩んで耳の辺りをぱくり。
 すると滑らかな甘味が広がった。
「あ、これチョコだ。甘くて美味しい──」
 んー、と幸せそうに瞳を細める。
 それからまた、食べ歩き。
 肉まんをはふはふと食べ、濃厚な旨味を体験。小籠包も外せないと購入し、熱々の皮から溢れる肉汁を味わい、エビやフカヒレの風味を堪能。身も心もほっかほかになった。
「季節は暖かくなってきましたが……まだまだ温かいものは良いですね」
 その後は休憩がてらに杏仁ソフトクリームを一つ買い、実食。ミルクの風味と芳しい杏仁の香りに大満足だ。
「後はお土産ですね」
 店々に目移りしつつ、時に寄り道しながら。最後にゴマ団子を買って、カルナは街を後にしていった。

 翔子も中華街を散策中。
「せっかくだし、どこか寄って行こうかね」
 と、敢えて脇道へ。小さな中華料理屋に入っていた。
「やってる?」
 威勢のいい声が返ると、翔子は席について。小籠包と冷製の中華クラゲがあると、それを頼む。
「あとビールね」
 注文した品がやってくると、早速軽く喉を潤してからクラゲを口へ。こりっとした食感に、ごま油が香って……豆板醤が良い旨味と辛味を加えていた。
 それから小籠包も食べると……。
「え、シロ。アンタも食べたいのかい?」
 腕のシロがしゅるりと首を伸ばし肯定。
「いいけど……熱いの苦手じゃなかったっけ」
 翔子は言いつつ、レンゲを差し出す。
 するとシロは早速かぷりと食べて──びくりと羽を硬直。
「あ……。ほれ、水でも飲みなよ……」
 と、舌をひりひりさせている竜に、翔子はコップを傾けてあげていた。
「さて、後はウチへのお土産だ」
 店を出た翔子は、中華饅頭の店へ。幾つかを買って、持ち帰ってゆく。

「さあ、お楽しみタイムだね」
「ええ! 待ち遠しかったの!」
 歩み出すウリルに、リュシエンヌも華やぐ表情で軽やかな足取り。楽しみにしていた時間を、存分に味わうつもりだった。
 まずは、ウリルお勧めのパンダまんの店へ。
 まん丸パンダのそれをウリルが買ってあげると──リュシエンヌは瞳をきらきら輝かす。
「可愛すぎるの……!」
「良かった」
 嬉しそうな妻にウリルは笑み。パンダ好きの彼女に、見せてあげたいと思っていたのだ。
 実際、食べてしまうのはもったいないくらいだけど。
「じゃあ、どうぞ」
「うん……!」
 リュシエンヌはどこから食べようか悩みつつ、お尻からかぷり。
「ルルは尻から行く派か。どう?」
「……美味しい!」
 もっちりした皮とほくほくした餡。温かで芳ばしく、作りたては一入だ。
 そんな顔を見て、ウリルも連れてくる事ができて良かったと心から感じた。それからスマホを出して。
「記念に、パンダまんとルルとムスターシュのスリーショットを撮ってあげるよ」
 するとリュシエンヌはパンダまんをあむっとしたまま、翼猫をだっこしてピース。
 撮った一枚を、ウリルは見せてみる。
「なかなかいいんじゃないか?」
「ふふ、最高のすりーしょっとです!」
 そう妻が笑むと、ウリルも肉まんを買って頬張ることにする。
「うん、ジューシーで美味い」
「うりるさん、ぱんだまんも食べて?」
「おや、一口くれるの?」
 妻のおすそ分けに、ウリルはかぷり。成程と人気の理由の一端を理解した。
「へえ、可愛いいばかりじゃなく、味もいいね」
「でしょ?」
 ウリルは頷きつつも……少し食べたら腹に火が付いた気分。
「折角だ。ラーメンと餃子も食ってから帰ろうかな」
「うん! ルルも餃子食べたい♪」
 と、勿論リュシエンヌも喜んで同道して。
「今度はうりるさんと餃子とルルとムスターシュで……4ショット撮ろうね?」
「いいね。行こう」
 ウリルも応えて料理店へ歩き出す。それから暫し、食の時間は続いていった。

 ディミックは早々に、飲茶の店に入っていた。
 というのも、外を出歩くと目立ってしまうと危惧したためだ。
「ここなら平気そうだねぇ」
 見回す店内は朱色を貴重にして美しく、天井の高さに余裕もあり、最奥の席で静か。
 ゆっくりできそうだと、早速小籠包や咸水角を頼んだ。
「ふむ。美味だ」
 小籠包は数多の味わいを含んだスープが濃厚で、揚げ餅餃子の咸水角は米粉の食感と五目餡が深い旨味だ。
 ただ、ディミックは茶の種類の多さに惹かれてもいる。
「香りが強く……食が進むねぇ」
 優しい風味の白茶、色濃く芳しい青茶、どれも美味だ。
「海を越えたところにある大きな国は、こことは食文化が大きく異なっているんだねぇ」
 日本が特殊だとも聞くが、既に自分は馴染んできているのだろう。文化の違いに驚き、楽しみながら……食を味わっていった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月26日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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