宵に瞬く宝石

作者:崎田航輝

 仰ぐ星空は昏く、眩く。
 澄んだ夜はどこまでも藍色が深くて、同時に星明かりを遮らない。
 無限の高さを持つ宝石箱を覗き込む気持ちで、ロナ・レグニス(微睡む宝石姫・e00513)はそっと天を見つめていた。
「おほしさま、きれい……」
 瞳に映る星辰はただ美しく、清廉な煌きを抱いている。
 ──なのに、どうして……?
 芝に覆われた星下の丘。その明媚な眺めと裏腹に、胸騒ぎが抑えきれなくてロナは自身の手をきゅっと握った。
 星に誘われて歩いてきたのに、此処で何か全く別のものと出遭う予感がする。
 その感覚を自分は知っている気がするのに、思い出せなくて。
 何かが起こる感覚だけはあるのに、その正体が判らない。
 もしかしたら、自分の失った記憶に関係のあることなのかも知れない。夜より深い黒髪を風に揺らし、そんな思いに至った──その時だった。
「……嗚呼、唖々」
 嘆くような、けれど嗤うような。耳朶に残る声音が聞こえてロナは振り返る。
 そこに、一人の人影が立っていた。
 流れる金糸の髪が美しい、精悍なる男。こつりと歩み寄る仕草すら端正で、それでいて何かが大きく歪んでいる。
 ──デウスエクス。
 それが敵たる存在だとはすぐに判った。尤も、それだけではない感覚を得てロナは心に困惑も覚えていたけれど。
「お前も、斬るべき存在なのだろう」
 狂気に塗れた声に、ロナがはっとする、その頃には──男は刃を握り締めてロナへと踏み込んできていた。

「ロナ・レグニスさんがデウスエクスに襲撃されることが判りました」
 星夜のヘリポート。
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達へと状況を説明していた。
「予知された出来事はまだ起こっていません。ただ、時間の猶予も残されていません」
 ロナは既に現場にいることが判っている。
 その上でこちらから連絡は繋がらず、敵出現を防ぐことが出来ない。そのため敵と一対一で戦いが始まってしまうところまでは覆すことは出来ないという。
「それでも今から急行し、戦いに加勢することは可能です」
 合流するまでに時間の遅れは生まれてしまうだろう。それでも戦いを五分に持ち込むことは充分に可能だと言った。
「現場は自然の中にある丘です」
 芝に覆われ小高くなった、美しい景色の広がる場所だという。
 周囲にひとけは無く、一般人への被害については心配は要らないだろうと言った。
「敵はエインヘリアルである事が判っています」
 その詳細な目的など、敵については判らないこともある。だが放っておけばロナの命が危険なことは事実。
「だからこそ猶予はありません。ヘリオンで到着後、急ぎ戦闘に入って下さい」
 周囲は静寂で、ロナを発見すること自体は難しくないはずだ。
「ロナさんを救うために──さあ、行きましょう」


参加者
ロナ・レグニス(微睡む宝石姫・e00513)
捩木・朱砂(医食同源・e00839)
シャーリィン・ウィスタリア(千夜のアルジャンナ・e02576)
片白・芙蓉(兎晴らし・e02798)
ゼノア・クロイツェル(死噛ミノ尻尾・e04597)
サイファ・クロード(零・e06460)
イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)
海原・リオ(鬼銃士・e61652)

■リプレイ

●刃
 脳裏に浮かんだのは、焔に灼ける森の景色だった。
 赤々と朽ちていく故郷。そして目の前で殺されてゆく、大切な人の姿。
 記憶の濁流が溢れる感覚に──ロナ・レグニス(微睡む宝石姫・e00513)は微かにふらついて俯く。
 胸が締め付けられて苦しくて、それでも零れる声音には確信が滲んでいた。
「……みんな、おもいだした」
 震える唇で呟く。
(「わたしはチヒロ……チヒロ・ミードナット」)
 ──エルフの娘シェーラ、そして“彼”との間に生まれた禁忌の子だ、と。
 薔薇尖晶石の双眸を前に向けて、眼前のエインヘリアル──ラーシュ・ミードナットの姿を映した。
「そのきれいなけんで、なんにんころしてきたの……おとうさん」
「お父さん? 嗚呼、お前は何を言っている」
 ゆらりと歩む美貌の男は、しかしただ昏い狂笑を零す。握る剣は美しく、同時に鋭い殺意の光をも宿していた。
「私には子など……いない。愛する存在さえいないのだから」
 何処か嘲るように、そして怨嗟を交えるように。
「居たのは裏切り者。愛さえ偽る者──。在るのは全て、斬るべき者だけだ」
 云いながら、眩い煌きを帯びた斬撃を放つ。
 ロナは痛みに声を零しながら、それでも星明かりを凝集して自身を包んだ。けれど傷が癒えきるよりも早く、ラーシュは踏み寄り刃を振り抜いてゆく。
「お前は……嘗て斬った誰かに似ている、だから斬らねばならない」
「おとうさん……わたし、が、わからない、の……」
 ロナは下がりながら、自己を癒やすしかない。
 波立つ心と記憶に、今も感情が揺らいで冷静ではいられなく。あの時と同じなのだと、思いながら。
「おかあさん、は、きっと……」
 それでも言葉を伝えようと、ロナは声を振り絞る。
 けれどラーシュはただ首を振った。そうしてロナを追い詰め、剣を振り上げ最後の一刀としようとする。
 だがその刃は、何者をも捕らえない。
「そんなに壊したいなら……ねえ、わたくしとも遊んで下さいまし」
 声と共に、宵の娘が舞い降りる。
 ふわりと宙より翻ったシャーリィン・ウィスタリア(千夜のアルジャンナ・e02576)。月光の軌跡を描くよう、光の刃を奔らせラーシュの剣を弾き返した。
「きらきら瞬く、きれいな子。貴方が誰であって、その光を奪うことは、認めないわ」
「そういうこと。だからちょっとお邪魔しますよー」
 と、ひらりと着地するのはサイファ・クロード(零・e06460)。手を払う動作で風を撫ぜると、その空気の粘土を急激に高めている。
 『聖杯(ソコナシヌマ) 』──その重さに覆われたラーシュは動きを劇的に淀ませた。
 同時、そのラーシュの視界に緋色に燿く蝶が横切ってゆく。
 それは光翼で羽ばたくイズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)が舞わせた、『緋蝶』。
 幻想的に翅を踊らす蝶は一時的に意識を縫い止める。その一瞬に、イズナはロナを引き寄せるように敵から遠ざけた。
「ロナ大丈夫?」
「みん、な……きてくれたの? ……、ゼノ、も」
 ロナが皆を見やると、歩み寄るゼノア・クロイツェル(死噛ミノ尻尾・e04597)は静かに頷き、そっと指でその頬に触れた。
「無事、とはいかないか。怪我をしている」
「よし。すぐに治すから、ジッとしててくれ」
 と、手元で銃型のガジェットをくるりと廻すのは、海原・リオ(鬼銃士・e61652)。
 魔力を装填して内部で圧縮することにより、生み出すのは治癒の光弾。放ったその輝きを着弾させ、ロナの負傷を癒やしていく。
 捩木・朱砂(医食同源・e00839)も手元に濃密な光を収束。優しく撫でるようにロナの傷を塞いでいった。
「全く、手ひどくやってくれるな。つかロナ、お前さんも夜に一人でほっつき歩くんじゃねぇっての」
「……ごめ、ん」
「ま、でもこれで安心よ。事案と聞いてスッ飛んできたんだからね!」
 ロナへ明朗な声音を返すのは耳をぴこりと揺らす片白・芙蓉(兎晴らし・e02798)。霊力を立ち昇らせると、燿く靄へ昇華して施しロナを癒やしきる。
 ロナは皆を見回し、ありがと、と小さく呟いていた。精一杯に、心を保つように。
「同じケルベロスの仲間として、危険を見過ごすわけには行かないからな」
 と、リオが答えて敵へと向き直れば──ああ、と頷く朱砂もラーシュへ視線を注ぐ。
「ウチの看板娘に用があるなら、事務所を通して貰わねえとなあ」
「そうね、夜中の女子に声かけなんて見上げた根性だこと……」
 それに、と。
 歩み出る芙蓉は、ロナを見つめてから周囲を見回して、瞳を細める。
「アンタ、一人のロナに手を出したのね。……まだ幼気な子に傷を付けるということは、それを庇護する大人のプライドに傷を付けた、ということよ」
 だから、と続く声音は俄に、しかし確かに怒りを滲ませていた。
「──お前、許さないから。そうでしょう?」
「……そうか。お前達も、死にたいらしい」
 ラーシュはただ、不気味な程に澄み渡った瞳で応える。そうして次には剣を掲げて奔り込もうとした、が。
「……させないさ」
 闇色が声音と共に駆ける。地を蹴ったゼノアが、横合いへ疾駆。袖口から鎖状のエネルギーを飛ばしていた。
 それは『蛇噛みの鎖』──瞬間の内にラーシュを捕らえると、傷口から深い毒を送り込みながら、縛り上げた躰を地へと叩きつけてゆく。

●血
 ロナを守るよう布陣しながら、朱砂は下がったラーシュへ声を投げる。
「さてエインヘリアル、あんたの用向きも少しは聞こうか?」
 それは時間稼ぎの意味もあったろう。
 だがラーシュは嗤うように言うばかりだった。
「私は斬るべき者を、斬る。それだけだよ」
「……、おとうさん、は、きっと、むかしはちがったの。でも……」
 と、細く呟いたのはロナだ。『金髪の王子さま』なのだと母に聞いた、嘗てのその人を頭に描くように。
「いまの、おとうさんは……」
「ロナ、もしかして記憶が……?」
 イズナがはっとして瞳を向けると、ロナは目を閉じて小さく頷く。今も惑う心を自覚しながら、それでもぽつりぽつりと言葉を落として。
 ロナはその敵をただの敵と見られない。それだけは理解して、そっか、とサイファは自身の拳を握る。
「分かった。なら、ロナが考えを纏める時間を作るから。……簡単に割り切れるもんじゃないってのも分かってるよ」
 それでも、それが今の自分に出来ること。だから迷わず真っ直ぐに奔った。
「あんま長くはもたないだろうけど ダイジョーブ、任せとけ!」
「そうね。皆で絶対に守ってあげる」
 芙蓉も安心させるよう、笑みを作って見せる。
「その代わり、したいこと、伝えたいこと。教えてくれる?」
 三倍にして叶えてあげてよ、と。自信に満ちた声音を聞かせ、また戦いへと踏み込んでいった。
 イズナもまたほわりと笑みかける。
「わたしたちが守るから。いっぱい考えたら良いんじゃないかな。したいことがあれば、応援するから──がんばって」
「……お前さん、良い友人を持ったよなあ」
 朱砂の言葉にロナは微かに俯いた。
 今も戸惑いは消えてない、ただ、もし出来るのならば、と。
「おとうさんの、こころを、もっと……しりたい。それに、はなし、だって」
「ならまずは、少し落ち着いてもらわないとな」
 応えたリオはガジェットを攻撃形態に駆動させ、焔の塊を内部に巡らせていた。そのまま薄く光る蒸気と共に駆け出して、ラーシュへ距離を詰めていく。
 ラーシュは剣を構え、薙ぎ払おうとした、が。既に横合いを取っていたサイファが拳で一撃。光を棚引かす打突で体勢を崩させる。
 そこへ、高く飛翔していたイズナが滑空。星が墜ちるかの如き、眩い蹴撃を叩き込んで剣を弾き下ろした。
 同時にリオが奔らせるのは『闇断ち紫炎』。噴出させた焔が、細く燿く斬閃となってラーシュの膚を深々と切り裂いていく。
 ラーシュは反撃に煌きを伴った風を巻き起こした。が、その眩さへ朱砂が治癒の雨滴を降らせれば──。
「完璧に癒してあげるわーっ! お前たち!」
 芙蓉が仔兎のエネルギー体を顕現。『うさぎ派遣サービス』──その数匹に傷を食ませることで皆の苦痛を拭い去る。
 芙蓉のテレビウムの帝釈天・梓紗、そしてシャーリィンの匣竜のネフェライラも治癒に廻れば皆の体力に憂いはなかった。
 ただ、刃に迷いを滲ますロナに対し、ラーシュの殺意は未だ濁りなく。振り被った剣でロナを両断しようと踏み込んでくる。
 が、尾を揺らしてそこへ滑り込んだゼノアが、躰を旋転させて脚で剣を弾き返すと──そのまま至近から焔を放ち押し返していた。
 回転して着地すると、静かにラーシュへ声を投げる。
「……正気か。眼の前が見えているのか? 自分の娘が、分からんか」
「娘など、私には……いや」
 たたらを踏むラーシュは呟き、瞳に昏い色を浮かべた。
「同じ事だ。斬るべき者の、忘れ形見があっても、斬るだけ。全て、壊す」
「……貴方、少し似ているわ。狂気を溶かしたような、表情も声色もね」
 シャーリィンは己が内に想起された顔に、目を伏せる。
 ロナから聞いた始めから、思ってはいたのだ。ラーシュのその表情が、その男と重なるところがあるのだと。
(「わたくしを散々穢して、お父さまを唆して壊した、あの男に……!」)
 なればこそ、シャーリィンは望月の瞳を開けて忌血を流す。
 ロナに笑顔で居て欲しいから。
 優しくて儚い光のような、その綺麗な心を守ってあげたいから。
 こんなことは烏滸がましいけれど、友達で──妹みたいな存在だと思っているから。
「たいせつにするのよ。壊れたり穢れていいはずが、ない」
 故にシャーリィンは容赦なく、『夜籠りの蜜血』によって呪いを注いだ。精神を、肉体を侵され蝕まれたラーシュは声を上げ、苦悶するよう倒れ込む。

●星
「何故だ、私は……」
 苦渋の声音を零すラーシュ、その姿をゼノアは見下ろしていた。
「……憤怒と激情が心地よいか? それ以外を捨て去ったことがお前の敗因だ」
「私は、抱くべき怒りを抱いているに過ぎない──」
 ラーシュは尚抵抗するように、声を含んで立ち上がる。
 ロナはそれに一歩だけ、後ずさった。サイファはそれを目にして──ラーシュへ視線を向ける。狂っているのだという、その男の顔を。
「なあ……狂ったままでいいのか? 本当にそれでいいのかよ」
「……」
「アンタ、マジで何しにきたんだよ。訳わかんないまま倒されましたってラストじゃ切なすぎるよ」
 だから、目の前の子をちゃんと見なよ、と。
 差し向けると、ロナは少しだけ唇を結んでから声を紡いだ。
「おかあさん、は……おとうさんの、いのちを、まもろうとして……」
 母の姿を思いながら、心にある言葉を伝える。
 ラーシュは何を思ったろうか、僅かにだけ動きを止めてから──しかし剣を握り直した。
「何も変わりはしない。私にとっての愛はあの時偽りになった、それだけだ」
 言うとただ敵意だけを向けるように奔る。
 そうかい、とサイファは呟いた。
「なら斃すだけだ」
 番犬であり、それが役割だから、手心を加えるつもりはないのだと。正面から鮮やかな煌きを伴った蹴撃を叩き込む。
 呻くラーシュは、後退しながらも自己を癒やし狂気を高めた。が、シャーリィンが宙を泳ぎ──爪を立てた鋭い斬撃。ラーシュの力ごと膚を裂いていく。
 よろけた躰へ、朱砂は『痺刺針』。グラビティを錬成した針で内部までを突き通し、その動きを抑制していた。
 足掻くラーシュが焔を放ってきても──。
「おっと、通さないさ」
 朱砂自身が素早く前面へいでて衝撃を受け止める。直後にはリオが燿く陽炎を靡かせた手を握り込んでいた。
「その負傷、私の拳で治してやろう」
 そのまま苦しみを消し飛ばすよう、治癒の拳圧で傷を霧散させる。同時にイズナは宙を翔け抜け、槍に黄金色の雷光を宿していた。
「これ以上ロナに何かしたら、わたしが許さないんだからね」
 言葉を体現するように、放つ刺突は苛烈。ラーシュの肩口を穿ち貫き、血潮を弾けさせてゆく。
 その一瞬に、芙蓉は魔力の光を注いでロナの力を押し上げていた。
「これで、いけるわ!」
「……」
 ロナは自身の手をぎゅっと握っている。そこには避けられぬものへの決意もあって──見取ったゼノアはラーシュへ打撃を繰り出し、膝をつかせていた。
 そこへ歩み、ロナは姫巫女の御霊を憑依させる。
 『姫巫女招来』──今ならこの力の正体が判るから。
(「……ずっとみまもってくれてたんだ」)
 思いと共に、神をも魅了する聖歌を歌った。儚く麗しく、声音に甘美なる力を宿させるその御霊は。
「おとうさんをおくってあげて。……おかあさん」
 美しい声音は確かにラーシュの魂にまで響き渡り、その命を優しく溶かすように消滅させていった。

 斃れた亡骸は、まるで星屑のような光になって消えてゆく。
 ゼノアはそれを見ていた。
「……おそらくは。お前の嫁は、ずっとお前を愛していたのだろう」
 届かなかった言葉を、せめてもの手向けにして祈りを贈りながら。
 そうしてその光の残滓すらも消えていくと、夜に静寂が戻ってくる。
 リオは武器を収めて軽く息をついていた。
「終わったな」
「ええ」
 芙蓉は言いながらも、その視線はロナに向いている。
 ロナは亡骸の消えた跡を見つめて佇んでいた。けれどその内にぽたり、ぽたりと頬に雫を伝わせる。
「……ロナ」
 ゼノアが傍に寄ると、ロナは心が耐えられぬようにゼノアへ縋った。
 どこで生まれたのか思い出した。どんな人が親だったのかも思い出した。そのどちらも、もうなくなってしまった。
 けれど、ゼノアは優しくロナを受け止める。
 ロナが顔を上げれば、ゼノアがいて、朱砂がいて。友達が、大好きな人が、守ってくれる人がいる。
 そして帰る所があるから。
「……わたしは、だいじょうぶ、だよ」
 それでも涙は零れてくる。ゼノアはそんな彼女の髪を撫でながら頷いた。
「……今は好きなだけ泣くといい。親が居らずとも、お前は俺が……俺達が支えてやる」
「ああ、もちろん」
 朱砂も同じ心でそう言って、変わらぬ表情で微笑んで見せる。
 ネフェライラと共にそっと見守っていたシャーリィンも──涙の引いたロナの顔を見て、安堵の心持ちを覚えていた。
 そうして頑張った彼女へと、月の様に微笑みを向ける。
「一緒に帰る事が出来て、嬉しいわ」
 ん、と、小さく頷くロナに、イズナも笑いかけていた。
「みんなで一緒に帰ろうね」
「歩けるか?」
 サイファが声をかければ、ロナはそれにも返事をして、一歩足を踏み出している。
 風はまだ冬の色で、心までもを冷やすようだ。
 それでもそこは暗闇ではなく、仰げば眩い程の星が煌めいていて──ロナはゆっくりと、その光の中を歩み始めていた。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年3月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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