星影の時刻

作者:崎田航輝

 ──上を見てごらん。
 そう言われて、親に手を引かれた子供の瞳に映ったのは満天の星だった。
 歩く内にいつしか屋根がなくなっていて、涼しい風が吹き抜ける。眩しいくらいに空に輝く光の粒が、時折明滅するように瞬く。
 夜の天文台。
 展望スペースから見えるのは、新緑の澄んだ風に吹かれた星空だった。
 五月も遅い時刻になると夏の星座が見えやすくなる。
 蛇使い、ヘルクレス、りゅう。春の星座に交って望める新たな輝きは、季節の訪れを告げるように夜を美しく彩っていた。
 いつもよりちょっとだけ夜更かしして。目をこすって改めて見上げる星々に、幼い表情もまたきらきらと輝く。
 そんな子を連れる親達を含め、訪れる人々が皆、星影のひとときを愉しんでいた。
 けれど眩しい空が翳るように、暗い何かが垣間見える。
 それは遥かな高みから降ってくる、異形の牙。一瞬後には地に突き刺さり、騎士姿の骸へ変貌する──竜牙兵だ。
「サア、絶望ノ、宴ヲ」
 餌を狩れる喜びに、不協和音の如き嗤い声を交えながら。目につく命を全て切り裂いて、殺戮を始めていった。

「段々と、初夏らしい季節になってきましたね」
 心地よい薫風の吹くヘリポート。
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は集まった皆へそんな言葉を口にしていた。
「星空もまた日に日に夏らしさが近づいて……見ていて飽きませんよね」
 けれど、と、そこで真剣な顔となる。
「そんな星のきれいな夜に、竜牙兵が出現することがわかったのです」
 現場は天文台の直ぐ側。
 周囲には天文台へ向かう人も含め、それなりの往来がある。天文台内にも多くの一般人がいる。放置しておけばこの全員が危機に晒されるだろう。
 だから皆さんの力を貸してほしいのです、と言った。
「竜牙兵が現れるのは建物のすぐ近くの野外。開けた場所です」
 今回は予知がずれてしまう危険性から、事前の避難は行なえないという。
「ただ、こちらが到着した後には警察や消防が避難活動を行ってくれますので、皆さんは到着後すぐに戦闘に集中して頂いて構いません」
 迅速な撃破を行うことで、人々や建物に被害を出さずに終えられるはずだ。
「ですので、無事勝利した暁には……皆さんも星など見ていってはいかがでしょうか」
 涼しい夜でもあるから、ゆったり過ごすことで戦いの疲れも癒えるだろう。
「そんな憩いの時間の為にも、ぜひ、敵を撃破してきてくださいね」


参加者
四辻・樒(黒の背反・e03880)
月篠・灯音(緋ノ宵・e04557)
バジル・ハーバルガーデン(薔薇庭園の守り人・e05462)
朝霞・結(紡ぎ結び続く縁・e25547)
之武良・しおん(太子流降魔拳士・e41147)
ウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399)
エトワール・ネフリティス(夜空の隣星・e62953)
ラグエル・アポリュオン(慈悲深き霧氷の狂刃・e79547)

■リプレイ

●星下の戦い
 無限遠の藍色に星々が輝く。
 初夏の夜空は満天の光に彩られ、清廉な美しさを見せていた。
 ひらりと天文台の前に降り立った四辻・樒(黒の背反・e03880)は、そんな夜天を仰ぎ感心を浮かべる。
「冬の張りつめた空気の星空も悪くはないが、この季節の星空もいいものだ」
「本当なのだ、とっても綺麗なのだ」
 隣り立つ月篠・灯音(緋ノ宵・e04557)もこくりと頷いて。ほんの短い時間、それに見惚れていた。
 けれどその空に黒点が滲むよう、高空から牙が降ってくると──之武良・しおん(太子流降魔拳士・e41147)は表情に変化はないまま、微かに吐息する。
 天文学を愛すうら若き淑女にとって、それは何よりの敵だ。
「竜牙兵……天文ファンとその卵を狙いますか。よりによって」
「ああ、本当に無粋な輩だね」
 ラグエル・アポリュオン(慈悲深き霧氷の狂刃・e79547)も判らぬ程度に肩をすくめると。澄んだ氷塊の如き翼を広げて前進を始める。
 声音は柔風のように穏やかなまま。
 それでも戦場に突き進むことに些かの躊躇いもなかった。
「──早々に退場願うとしようか」

 星が光なら、牙は闇だった。
 風を裂いて地に落ちたそれは漆黒色。異音を立てて骸の騎士と成ると、全てを喰らい尽くそうと剣を掲げて獲物を探す──けれど。
「そこまでだ。俺達番犬がここから先へは進ませないよ」
 面前に割って入るのはウリル・ウルヴェーラ(黒霧・e61399)。精悍な体躯を真っ直ぐに向けて、人々の盾となる。
 骸達は熱り立つように睨みつけた。
「犬共……我々ノ狩リヲ邪魔シニキタカ!」
「狩り、かぁ。そうやって手に入れたものを捧げるべきドラゴン、居るのかなぁ?」
 ぴょん、と跳んで敵陣の背後を取る朝霞・結(紡ぎ結び続く縁・e25547)は、少しばかり小首をかしげてみせる。
 ウリルもああと頷いた。
「ドラゴンゲートは閉じたというのに。まだグラビティを求めるのか」
「……黙レッ。絶望ヲ生ミ続ケレバ、ドラゴン様ガ支配スル日ガ必ズ来ルノダッ!」
 骸達は激昂と盲信の声を上げて、切りかかってくる。
 結は黄金の瞳できっと見据えて、手を翳した。
「その絶望はあなた達にあげるよ。なんなら、熨斗つけて、ね!」
 刹那、『凍焔乱華』──青白く凍える焔が、まるで猛吹雪の如く乱舞し一体を穿つ。
 驚く骸達へ、ウリルも光弾を放って動きを鈍らせれば──。
「そのまま、止まっていて貰いますね」
 声と共に、青空色の髪が棚引く。
 バジル・ハーバルガーデン(薔薇庭園の守り人・e05462)。茨を扇状に放ち、魔力を伝わせて淡く輝かせていた。
「青き薔薇よ、その神秘なる茨よ、辺りを取り巻き敵を拘束せよ」
 瞬間、花を咲き乱れさせるそれは『青薔薇の棘』。鋭利な衝撃で敵陣を取り囲み、動きを抑制してしまう。
「今のうちです」
「うん!」
 ふわりと星月が揺れる。
 明星を映したかのような金髪を靡かせて、エトワール・ネフリティス(夜空の隣星・e62953)が杖を踊らせていた。
 描く光もまた星の色。『無邪気な星屑』──飛び出したそれは追いかけっこをするかのように、爛漫に骸に飛びかかって魂を蝕んでいく。
「お姉ちゃんはみんなの方をお願いっ!」
 声に応え羽ばたくのは翼猫のルーナ。翼の先端を月色に煌めかせ、光を含んだ風で後方の護りを整えていた。
 敵の一体が剣風を放ってくるが、それにはラグエルが即時に反応。氷色に輝く雷光を周囲に生み出して壁と成し、治癒と防護を兼ねてみせる。
「ひとまず護りは問題ないね。そのまま攻撃を続けてくれるかい」
「了解なのだ」
 応える灯音は純白のコートをひらりと波打たせ、銀槍から魔力を飛ばした。
「──爆ぜろ」
 刹那、空気が爆縮して強烈な威力で拡散、骸を宙へ煽る。
 そこへ跳ぶのが、樒だ。
「まだまだ終わりじゃないぞ」
 空中で藻掻く敵へ、闇色のナイフを掲げる。そのまま一撃、稲妻を落とすかのように直下に刺突を打って敵を地に落とした。
 起き上がろうとする骸、だがその頃にはしおんが高く跳んでいる。
 ──オンアニチマリシエイソワカ。
 瞬間、陽光が現れたかのように日輪が燦めく。
 繰り出すのは『太陽光に紛れての一撃』。摩利支天の加護を背負った龍鎚の殴打で骸を砕き、光の彼方に飲み込むように跡形も残さなかった。

●星を護る
 夜の静謐を掻き消すように、骸骨の声が響く。
 同胞が死に、二体の骸は強い戦意に奮い立っていた。
「オノレ、犬共……。殺戮ダッ。皆殺シニシテ、我ラノ強サヲ判ラセテヤル!」
「殺戮、ですか。こんな綺麗な星空の目の当たりにしておきながら、どこまでもそのようなことしか考えないとは」
 空を仰ぐバジルは、少しだけ呆れを込めてみせる。
「竜牙兵の心も荒んでいますね」
「まぁ、無粋な連中にはさっさと星になって貰うしかないということだな」
 樒も頷きながら、いや、と嘆息した。
「……星になどなれないか。宇宙ゴミが精々だな」
「──侮辱ヲ!」
 骸達は忿怒と共に奔り込んでくる。けれどルビーの瞳で真っ直ぐ見据え、エトワールが立ちはだかっていた。
「きれいな星空の下で悪いことは許さないんだからっ! ──お姉ちゃん、お仕置きしちゃお!」
 声を向けると、ルーナは白の毛並みを揺らして空を泳ぎ、一体へ爪撃。エトワールも杖の翡翠から彗星を撃ち出し、敵の足元を貫いて行動を奪っていた。
 他方の一体が、最前の樒へ剣撃を放つ──けれど。
「私の樒に手を出そうなんて100万年はやいのだっ」
 灯音が滑り込み、銀槍を振るって刃を弾き返す。
「ん、助かった。では灯が庇ってくれた分、私も攻撃で頑張るとしよう」
 きっちり片づけて灯と星を堪能したいからな、と。
 樒は瞳を細めて疾風を纏った斬撃。一体を大きく後退させてゆく。
 その間にラグエルがグラビティの雫を氷結させ、灯音の傷を塞いでいた。灯音は礼を言うと樒へ向き直る。
 樒は頷き、灯音と共に駆け出した。
「一気に行かせて貰おうか。これ以上、灯を傷つけさせるわけにはいかないからな」
 刹那、影の如き速度で放つのは『斬』。全霊の一刀で骸の足元を断ち切った。合わせて灯音が銀槍を突き出せば──花吹雪のように舞った氷片がその一体の全身を刻んでいく。
 よろめく骸は朦朧と手を伸ばす。
「……マダ、ダ。我ハ、絶望、ヲ……」
「絶望なんてこっちは要らないから。お持ち帰りしてね! ハコも、行くよ!」
 結が疾走すれば、キュッ、と鳴き声を返すのは美しき箱竜。青白き羽根で空を滑ると、高速で体当たりして骸を吹っ飛ばす。
 結はブーツで地を蹴って高く跳躍。獣化させた拳を振りかぶり、容赦のない殴打でその一体を粉砕した。
「来るよ!」
 と、結が声を上げたのは残る一体が氷波を放ってきたからだ。
 しかしその暴風も、しおんが正面から受け止め槌で振り払う。
「私はこのハンマーの素材となったドラゴンの渾身の一撃を凌ぎきりましたが──その攻撃は、こんなものではありませんでしたよ?」
「……オノレ!」
 骸は歯噛みして直接の剣撃を目論む、が、その頃にはしおんがくるりと反転。刃の如き蹴撃で腹部を深々と抉った。
 直後には灯音が『白癒(弐)』。慈悲の濃霧で皆の傷を消し去ってゆく。
 形勢は決しつつあった。それでも骸が殺意を収めず攻めてくるから、ウリルは毅然と対峙する。
「負けないよ」
 星空を見上げるのは好きだった。
 だから護りたいと思うのだ。人々を、この場所を。
 刹那、繰り出す一撃は『Gargouille』。深い夜気と共に暴虐の一撃で片腕を引き裂く。
 ふらつく骸がまだ諦めないと見れば、ラグエルがそこへ一歩踏み寄っていた。
 触れるのは腰に佩いた喰霊刀。
 禍々しいオーラを纏うその漆黒の太刀から、黒い靄を生み出すと──それを体へ取り込んで氷の弓矢を生成する。
「……っ」
 激痛と尋常ならざる狂気の奔流を伴う、諸刃の力。
 それを押し殺して、視認も困難な速度の一矢を放つ──CoDe:【Venator】。突き抜ける衝撃が骸を貫き半身を吹き飛ばしていた。
 同時、バジルも高く跳躍している。
 くるりと宙で廻って耀かせるのは、青色のオーラ。雷光の如く迸る茨を纏うそれを、花の模様の描かれた美しい靴へ収束させると──冷気の残滓を描きながら降下していた。
「これで、氷漬けになってしまいなさい!」
 瞬間、旋転して鋭い蹴り落とし。零下の打撃で骸を凍結させて、千々に砕いて消滅させていった。

●星の時刻
 皆で戦闘痕を修復すれば、景色はほぼ元通り。そこはもう平和な天文台だった。
 人々を呼び戻せば、すぐに展望スペースも賑わい始める。
 無限の光を抱く天球を楽しげに仰ぐ人達。バジルもまたそこに交じって──星を見始めていた。
「綺麗な星空ですね」
 髪を涼風にそよがせながら、美しい瞳に星々の輝きを映す。
 春の大三角と共に夏の大三角──デネブ、ベガ、アルタイルも望めて、両得の気分だ。
「皆さんも楽しみにしていたんですね」
 ふと視線を下ろすと、沢山の人が空を見つめているのが見えた。
 星だけじゃなく、彼らの瞳と笑顔の輝きが眩しいからバジルはほんのりと顔を和らげる。
「この景色を守る事が出来て良かったです」
 そんな実感を胸にして。
 また仰ぐ空は、一層美しかった。

 樒と灯音は二人で星空デート。
 夜空を覆う宝石のような光の群の下、展望スペースへゆったりと歩み入って──肩を触れ合わす。
 樒はふと隣へ視線をやった。
「戦いのときの傷は平気か?」
「もちろんなのだ、樒が無事ならこのくらいは大丈夫なのだ」
 灯音は殆ど消えかかっている傷を見せると、花のような笑顔でぎゅむっと樒に抱きついてみせる。
 樒はそれを受け入れながら、よかった、と頷いて。そうして二人で並び合って星を見た。
 灯音の肩を抱いて、樒は天を指差す。
「ほら、二つ眩しい星が見えるだろ。あれが木星と、土星だ」
「綺麗なのだ。あっちが、木星?」
「ん、そうだ。天の川を挟んでこちらが木星で、向こうが土星。あんなふうに並ぶのは、めったに無いそうだぞ」
 光の川の岸で見つめ合うような、二つの惑星。
 同じ眺めが次に見られるのは六十年後なのだという。
「六十年後──すごいのだ」
 灯音は天へ手を伸ばす。
「また一緒にみれるといいね。樒」
「そうだな、次の六十年後も、その先も一緒に見よう」
 樒も心から、頷いた。だからいつまでも共に、と。
 灯音は樒に寄り添い、その温かさを感じる。そうすると樒も身を寄せた。
 眩しくて心地良い。星の下にあるのは幸せの時間だった。

「星、綺麗だねぇ、ハコ……」
 結はハコと共に星空を観賞していた。
 澄んだ夜気は、光を遮らずに地上に伝える。それが明るくて、まるで触れられそうなほど星を近くに感じた。
「私、星座は良く判らないけど。綺麗なものは綺麗だよね?」
 するとハコは結の肩に登って、ひとつ鳴き声を返す。
 結は微笑みを向けて、ふと呟いた。
「お父さんなら判るかな? 星座……」
 田舎の片隅で生まれ育った結にとって、満天の星空は故郷の夜空を思い出す景色だから。
 ──どんなに離れていても空は繋がっているよ。
 何となく、父の言葉が頭に浮かぶ。
「ウチの故郷と同じくらいに見えてる……かなぁ? ね、どう思う?」
 ハコは応えるように、きゅっ、と元気に声を出して羽ばたいた。
 それに視線を誘われて、結はまた空を見る。
 するとやっぱり綺麗だから、そうだね、と笑みを浮かべて。暫しの間、懐かしい空を見つめていた。

「アンタレスの側にあるのが、木星です。プロキオンとデネブの間にあるのが火星で……」
 しおんは集まる子供達に、天体の位置を教えてあげていた。
 耳馴染みのある惑星に、星座。指差してあげると子供達は喜んで、手元の星図と見比べたりしている。
 天文台の職員がお礼を言いに来ると、しおんは彼女とも話した。
「最近はブラックホールシャドウも画像で捉えられたりして、一層興味深いですね」
「ええ、本当に」
 職員も熱弁をふるうので、暫し専門的な話を交わしつつ。
 その中で、しおんは銀河の森天文台での報告書のことも話しながら、予兆に見られたドラゴンの動向を警戒したいと請うた。
「太陽系外から来る物体の観測をしてほしいんです」
「無論こちらで出来ることは、やりましょう」
 役立てるかは保証しかねるが、可能なことは行うと彼らは約束する。
 すると、子供達がまたやってくるので……しおんは星の説明を再開した。

 ウリルはゆったりと星を仰ぐ。
 夜の平和な静けさが感じられると改めて、良かった、と呟いて。
 初夏の夜の風が頬を撫でると、その気持ち良さにも初めて気付いた気分だった。
「ここは緑が多いから余計にそう思うのかな」
 自然の薫りを鼻先に感じながら、雄大な空を見つめる。
 へびつかい座、こと座。きらきらと瞬く星々はそのどれもが美しい。
「もう夏の星座が見られるんだな……時が過ぎていくのは早いね」
 こうしていると、無心にもなれる。
 広がる天空の大きさに今考えている事が些細な事のように思えて、小さく笑んだ。
「いつまでも眺めていられるね」
 深呼吸すると、涼やかな心地が心身に巡る。そうしてまた、前に歩き続けよう──そんな思いを抱いていた。

 エトワールはルーナと一緒に星見の時間。
「あのね、あのね。ボク少し星座の勉強したんだ」
 夜を指でなぞって、はくちょう座を描く。
 星が好きで、夜空が好きだから。星の海に浮かぶ鳥を指し示しているみたいで、こんなひとときが楽しい。
 けれど、お隣さんが居なくて少し寂しくて、物足りない。
 それはきっと──。
「……」
 言葉を躊躇うのは、多分、他とは違う『だいすき』の名前をまだ見つけられないから。
 それでも見上げる星はとてもきれいで、ルーナもそっと寄り添ってくれる。
 だから、ゆるりと首を振る。
 今は寂しさはぜんぶお星さまに預けて。
「今日見た星をとびっきりのおみやげ話にしよう、ね」
 ふわり、ふわり。
 柔らかく揺れる気持ちを、心の中にいだきながら。星の名を持つ少女はまた少しだけ笑顔になって、果てない星々を仰いだ。

「良い眺めだね」
 ラグエルは天空に広がる光の粒を見つめ、呟く。
 薄氷色の髪が少し揺れる。快い気候に、無限のパノラマ。美しいと、一言で片付けられないほどの光景。
 だからこそ思う。
「一緒に来られたらいいんだけれど、ね」
 和解、という表現は正しくないかも知れないけれど。いつか弟との関係が今より良くなったら。共にのんびりとこんな景色を眺めたい、と。
 そうしたら、目に映している星々が一層美しく感じられるだろうから。
 そんな時が来ればいいな、と思いながら。一先ずラグエルはゆっくりと歩を踏み出した。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年6月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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