偽りの神罰

作者:崎田航輝

 その日人々が見たのは、救いの神などではなかった。
 街に突然現れたのは、見上げるほどの巨大な威容を持つ人型。亜麻布の衣を纏った人のようなそれは、泣いているとも笑っているともつかぬ、不思議な表情で人々を見下ろしている。
 携えるのは、光り輝く杖と巨大な翼。
 見るものが見れば、それはまるで神の偶像にも見えたことだろう。
 だがそれは恵みもたらしはしない。光は熱量の塊で、翼は金属の絡繰。救いの神と喚ぶには悍ましい、神像の形をした機械人形だった。
『断罪モード、実行──。全テノ者ニハ、罪ガアル。罪ニハ、罰ヲ……』
 ただの機械音声に、しかし人々が畏怖してしまうのは、それがどこまでも容赦のない殺戮を繰り広げるからだった。
 杖から生まれた光線は、まるで裁きの光のように降り注ぐ。機械の体が歩けば、それだけであらゆる建物が壊され、街が蹂躙されていった。
 そして、ダモクレスが暴虐の限りを尽くし、数分経った頃。
 血に沈む人々の上空に、魔空回廊が出現する。ダモクレスは程なくそこに消え、街からいなくなった。
 あとに残ったのは、瓦礫の街。そして命の残骸と、咽び泣く人々の声ばかりだった。

「集まっていただいて、ありがとうございます」
 イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)はケルベロス達に説明を始めていた。
「本日は、ダモクレスの出現が予知されたことを伝えさせていただきますね」
 以前より散見される、大戦末期に封印されたダモクレスが復活する事件だ。
 場所は神奈川県にある中規模の街。
「仲間のダモクレスによって復活させられた個体であり……魔空回廊を通じて、この仲間達に回収される予定らしいです」
 放置しておけば、街は破壊され、死者もかなりの数が出てしまうだろう。
 だけでなく、ダモクレス勢力の戦力増強にも繋がってしまう。
「これを防ぐために、このダモクレスの撃破をお願いします」

 状況の詳細を、とイマジネイターは続ける。
「敵はダモクレス1体。出現場所は市街地の中心です」
 今回の敵は、出現から7分後には魔空回廊が開き、そこから撤退。追うのは困難になるだろうということだった。
 即ち、倒すならば7分の間で行う必要がある。
「出現場所は分かっているので、待ち伏せをすることは可能です」
 市民の退避も事前に行われるということで、避難などは必要無いという。建物についても、後でヒールをすれば問題ない。
 戦闘に集中できる環境と言えるでしょう、と言った。
「ダモクレスについての詳細ですが、この個体は巨大なロボ型の機体のようです」
 人のような見た目をしてはいるが、殺戮のために動く攻撃兵器だ。
 高さは約7メートル。グラビティ・チェインの枯渇状態にあるとはいえ、相応の戦闘力はあるだろう。
 攻撃能力は、光の雨を降らす遠列パラライズ攻撃、光線による遠単武器封じ攻撃、物理攻撃による近単服破り攻撃の3つ。
 また、この敵は戦闘中、一度だけフルパワーの攻撃を行ってくるという。
「敵自身も大きな反動でダメージを受けるようですが、その分威力は凄まじいものと思われます。列攻撃で、ダメージに特化した力でしょう」
 可能な限りの警戒をしておくべきでしょう、と言った。
「中々、厄介な敵であるようです。けれど、皆さんならば撃破も可能だと思いますので、健闘をお祈りしていますね」
 イマジネイターはそう言って頭を下げた。


参加者
八柳・蜂(械蜂・e00563)
翡翠寺・ロビン(駒鳥・e00814)
ミステリス・クロッサリア(文明開華のサッキュバス・e02728)
隠・キカ(輝る翳・e03014)
ルース・ボルドウィン(クラスファイブ・e03829)
ドミニク・ジェナー(激情サウダージ・e14679)
葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)
七宝・琉音(黒魔術の唄・e46059)

■リプレイ

●開戦
 ビルの立ち並ぶ市街に、ケルベロス達は降り立ってきていた。
 周囲の避難は済んでおり、既に一帯は無人。辺りには静寂だけが降りている。ただ、同時に不穏な空気が漂っているようでもあった。
「……そろそろ、来るかのォ」
 それに何か嫌な感覚を覚えて、ドミニク・ジェナー(激情サウダージ・e14679)は呟く。不愉快な気分だからこそ、その予感も正しい気がしていた。
「どうやら、そのようだ」
 と、そこでルース・ボルドウィン(クラスファイブ・e03829)が下方へ視線をやったときだ。
 濃くなった気配は地鳴りとなり、一瞬の内に巨大な振動へ変わる。
 直後、アスファルトに亀裂が入ると、大音を上げて巨大な人型が出現していた。
『神ニハ、罪ガ見エル──』
 それは、神像の巨大ロボ型ダモクレス。首を回し、ゆっくりと見下ろしている。
 七宝・琉音(黒魔術の唄・e46059)は腕時計のアラームをセット。戦いの時を刻み始め、上方を仰いだ。
「それにしても、神を騙るとは罰当たりなダモクレスね」
「ふしぎな顔だね。にせものの、かみさま──泣いてるのかな、おこってるのかな。キキは、どう思う?」
 隠・キカ(輝る翳・e03014)も、ストップウォッチをセットしつつ、玩具のロボ『キキ』に語りかける。キキはキカが動かすことで、何とも言えない、という仕草をとっていた。
 ダモクレスはこちらの会話を聞いていたように、目線を下ろしている。
『神ヲ否定スルカ。ソレモマタ、罪ナリ』
「……神さまなんて、いやしないわ」
 翡翠寺・ロビン(駒鳥・e00814)は、その巨影に怯む様子もなく、声を返していた。
「あなたは、ただのダモクレス。祈りを受け止めるこころすら、持たないモノ」
『罪有ル者ガ祈ッテモ、無駄ナ事。ソシテ、全テノ者ニハ罪ガアル』
 だから断罪を、と。ダモクレスは応えて杖を光らせ始めていた。
 だが、その攻撃に先んじて、ルースが既に高々と跳んでいる。
「ならば、お前にも罪があるのだろう?」
『……何ヲ』
「お迎えが来る前に、その罪には俺達が罰を与えてやろうと言っているんだ。──罪人如きの為に神の手を煩わせるまでもない」
 そう言ってみせると、ルースは戦闘杖・墓標をぶん回して、一撃。敵の杖を強烈な殴打で弾いていた。
「破壊を始めるぞ」
「了解だよぉ」
 次いで、ルースに頷く葛之葉・咲耶(野に咲く藤の花のように・e32485)も、エクスカリバールを手に、敵の足元へ接近していた。
 自作の御札で呪的な軽量化と強化を実現したそれを、咲耶は軽々と振るう。
「これで、金属の塊にも安心だよぉ」
 言葉通り、それは小さな膂力で凄まじい破壊力を生み、敵の脚部の一部をひしゃげさせていた。
「キヒヒ、まずはどんどん、ダメージを与えていこうねぇ」
「ええ。では次は、私が」
 そう言って疾駆するのは、八柳・蜂(械蜂・e00563)。身軽に建物を蹴り、ダモクレスの後背へ回ると、指先から小さな針を生み出している。
 その力は『蜂毒』。自らの血液と地獄から生み出した、文字通り蜂の如き毒針だった。それを狙いすまして突き刺すと、機巧を蝕んで巨体の動きを止めていく。
「それじゃ、今のうちに態勢を整えておくの!」
 と、この間に、ミステリス・クロッサリア(文明開華のサッキュバス・e02728)は前衛に金属製のシェルターを展開していた。
 それは『けっこうあんぜんシェルター』。破壊してきた大型ダモクレスの装甲を使うことで、頑丈な防御力をもたらす能力だった。
「これでどこからでもかかってこいなのね」
『……罪ハ、裁ク』
 ダモクレスは、それごと破壊せんと光線を放ってくる。
 が、シェルターは確実にその威力を軽減。ミステリスが受けたダメージも、キカが攻性植物を展開して生み出した光で、回復していった。
 ロビンは攻撃役の仲間へ魔法盾を付与していき、守備を万全にする。ダモクレスもこの間に再度攻撃を狙ってくるが、琉音がその隙を与えない。
「やらせないわよ──この飛び蹴りでも、食らえー!」
 瞬間、跳躍すると痛烈な蹴りを顔面に叩き込む。ダモクレスは大音を上げ、一歩下がった。
『神ヲ、足蹴ニスルカ──』
「何が神だよ」
 と、睨みつけるのはドミニクだった。
「何が、罪だ。何が、罰だ。ガラクタ風情が神様気取りかよ。……あァ、胸糞悪ィ」
 声に滲むのは不機嫌な色。ダモクレスを目にすると起こる、頭の奥がチリつくような不快感が今もあったのだ。
「てめェの面ァ見てっと、むしゃくしゃするンじゃ。手間ァかけさせンと──大人しゅうくたばってくれンかのォ!」
 刹那、真上に跳んだドミニクは、体を回転させて踵落とし。ダモクレスの頬を砕き、その破片を宙に散らせていった。

●闘争
 時間は2分が経過。皆は継続して攻撃を加えることで、ダモクレスの装甲を徐々に傷つけ始めていた。
 ただ、ダモクレスは未だ悠然と、こちらを見回している。
『抵抗ハ、無為ダ。断罪ヲ受ケ入レヨ……』
「断罪、ね。そもそも罪のない人々を虐殺する事の、どこが断罪なのよ?」
 琉音がふと声を返すと、キカもこくりと頷いた。
「うん。すべての人に、ぜったい罪があるわけじゃないの」
 それから語りかけるように続ける。
「すくなくとも、あなたがきずつけようとしてるのはきっと罪のない人ばかりだよ。勝手に、そのいのちをうばっちゃいけないよ」
『……全人ナド、存在セヌ。如何ナ者デモ、大小ノ罪ヲ有シテイル』
「だからといって、何も救わないカミサマなんて、最悪ね」
 蜂は呟くように声を零す。
 元々蜂は、カミサマという存在に少し引っかかるものも覚えていた。だから小さく、首を振っている。
「そうでなくても、機械がカミサマなんて、愚か。偽物、偶像なんて──跡形も残さず燃やしてあげます」
 瞬間、蜂は漆黒の短刀に紫の地獄を滾らせる。そのまま距離を詰めて一閃。業炎を伴う斬撃で、敵の全身に炎を広げた。
 この隙に、キカは鮮やかな爆風を創り出す。拡散した光に、淡い白金の髪を七色に輝かせながら、前衛の戦闘力を高めていった。
 その力を活かすように、咲耶は符を掲げる。
「ありがとうねぇ。これでもっと頑張れるよぉ」
 咲耶は、戦うことは苦手だ。けれど、のんびりとした声音と、奮った勇気でそれを乗り越えようとするように。符を突き出し、氷の騎士を召喚した。
 ダモクレスに突き進んだそれは、氷気を纏う斬撃を放ち、巨体の足元を凍結させる。
「さ、今のうちだよぉ」
「ああ」
 そこへ、ルースも疾走するように接近していた。同時、墓標を大ぶりに、一撃。殴りつけるような打撃で、脚にひびを入れていく。
 バランスを崩すダモクレス。だが、それで退かず、光の雨を降らせてきた。
 衝撃は、広く襲ってくる。しかしロビンがそこで剣を掲げ、星々の光を生んでいた。
「どうぞ、支えるのはわたしに任せてちょうだい」
 眩い守護星座の光は、敵の放つ光を塗り替えるように消していき、仲間の傷を癒していく。
 次いで、ミステリスはかつんと足を踏み鳴らし、踊るようにオーラを展開。花嵐を舞わせることで、皆の麻痺も回復させた。
「あと少しで、皆の体力もいい感じなのね」
「じゃあ黒影、あとは頼むわね!」
 さらに、琉音の声に応じてボクスドラゴンの黒影も、属性の力を行使。攻撃役を癒し、前衛を万全状態に近づけていく。
 その間に、ドミニクはブラックスライムを解き放っていた。流動するそれは、敵の全身にまで広がって動きを縛っていく。
「こンなものかのォ。よし、思いっきりやったれ」
「ええ」
 頷いた琉音は、疾風のように駆けて、一撃。低い軌道で正面から飛び蹴りを加え、脚を払う形でダモクレスを転倒させていた。

●裁き
 粉塵の中で、機械の巨影は立ち上がる。
 体の各所は破損しており、傷の蓄積は如実に表れている。それでもダモクレスはあくまで、厳然と声を発していた。
『神ヲ討トウト、罪ハ消エヌ。罰ハ、逃レ得エヌノダ……』
「罪には罰を、ってことねぇ」
 咲耶は一瞬考えるようにしてから、声を返す。
「その考えはきっと正しいことだけどぉ。けれどそれは、あなたが勝手にして良いことじゃないはずだよぉ」
「ええ」
 ロビンも頷き、声を継いでいた。
「あなたの言いかたで言えば、わたしは罪びとかもしれない。でも、デウスエクスにそれを裁く権利はない。──そういう神様ヅラは、反吐がでるわ」
「その通りじゃ。ガラクタはガラクタらしく……壊れとれ!」
 同時、ドミニクは手を突き出してグラビティを爆縮。ダモクレスの眼前で炸裂させ、吹っ飛ばすように巨体を後退させる。
 咲耶もブラックスライム・別天津渾沌泥濘を飛ばして敵を打ち据えていた。が、そこでふと気づく。下がったダモクレスが攻勢に入ってこないのだ。
「何だか、動きが変ねぇ」
「時間は残りは3分、か。仕掛けて来てもおかしくない頃合いかも知れンのォ」
 ドミニクは時計を見て呟く。
 すると読み通り、敵の体がうっすらと光るのが窺えた。
「エネルギーを溜めてる……のかしら? とにかく、皆、準備よ!」
 琉音が言うと、皆もすぐに厳戒態勢へ。
 キカは『樂園硝失』を行使。優しい記憶を喚起させることで、咲耶を治癒。温かな感覚とともに浅い傷を完治させていた。
「これでみんな、じゅんびは整ったよ」
「あとは避けられればいい──けど、これは無理そうなの!」
 ミステリスが言ったのは、ダモクレスが空から、雨よりも濃密な光の洪水を降らせてきたからだ。ルースは目を細める。
「来るぞ、前衛だ」
「こんなもん、まともに食らったら危険なのね! 盾になるの!」
 言ってミステリスが走らせたのは、ライドキャリバーの乗馬マスィーン一九。それで攻撃役を守らせると、同時に蜂も前面に出ていた。
「私も、守ります」
 蜂の声音は静かだ。それでも、敵を倒すまでは意地でも膝をつかない強い意思がある。
 そうして盾役が防御態勢を取った直後。光の奔流がそこを襲った。
 一瞬、皆の視界がハレーションを起したように真っ白になる。
 だがすぐ後には、盾となった全員が衝撃を受けきり、無事に立っていた。
 ロビンは治癒の星明りを注ぎ、皆を回復させる。
「大丈夫、かしら?」
「ええ。ありがとうございます」
 蜂が健常に声を返してみせると、ミステリスも乗馬マスィーン一九とともに頷いていた。
「平気なのね。それより、敵の方も大打撃みたいなの」
 見ると、ダモクレスの体には光が電流のように走り、自らを蝕んでもいるようだった。
「罪には罰、よく出来た話だ。行くぞ」
 ルースが言うと、皆は頷き、攻勢へ。ミステリスが魔法矢を放って足元を穿つと、蜂は背後から蜂毒を撃ち出す。
 ダモクレスが衝撃で前傾によろめくと、琉音は正面から迫り、跳躍。宙返りするようにダモクレスの顔を蹴り上げていた。
「これ以上余分な攻撃をさせないように、一気に行くわよ!」
「ああ。神頼みも無駄だと、罪人に教えてやる」
 琉音に言ったルースは、墓標を直線上に投げつけるような刺突。ダモクレスの片足を粉砕し、大きく体勢を崩させていた。

●決着
 ダモクレスは姿勢を保つことも難しく、膝をついた状態で煙を上げていた。
 声は機械的なノイズが走り、途切れ途切れになってもいる。
『裁カレネバ……罪ハ……許サレヌ……』
「あなたは、きぃをゆるさなくていいよ」
 と、キカはそっと語りかける。
「みんなは、あなたをねむらせてくれるから。あなたが、だれかのいのちをうばう前に」
「そうね。時間は、あと2分──終りも見えてきたし、攻めましょう」
 琉音の言葉とともに、時計のアラームが響く。皆はそれを合図に、一気に攻め込んでいった。
 ダモクレスは杖を振り上げてくるが、ミステリスはそこへアームドフォートCCC[シープラスプラス]を向け、一斉砲撃。砲弾でその動きを止めていく。
 琉音は低い姿勢から肉迫し、自身の脚にグラビティを込めていた。
「さぁ、炎よ。高く燃え上がれ!」
 そのまま、熱気をたなびかせて一撃。蹴撃でダモクレスの全身に炎を広げていく。
 ダモクレスは体を溶解させつつも、無理矢理に杖を振り下ろした。が、その攻撃は、蜂が地獄化した左腕で防御。紫の焔を靡かせて衝撃を受けきっている。
 直後には、ロビンが光の盾で守るように蜂を回復させていた。
「あとの攻撃は、お願いね」
「ええ、分かりました」
 声を返した蜂は、そのまま短刀を縦横に走らせて、機械の全身を斬り刻んでいく。
 次いで、そこに咲耶も『彼岸割断呪』を行使していた。
「人々を傷付けたりなんてさせないんだからねぇ──これで、咲き誇れぇ!」
 それは御札から呪を解き放ち、無数の斬撃を生み出す技。重ねられた刃の跡はまるで彼岸花のごとく刻まれ、ダモクレスの生命を一気に追い込んでいく。
 ダモクレスはそこで間合いを取ろうとするが、その眼前にドミニクが飛び降りていた。
「……絶対ェ逃がさンわ。てめェはここで風穴だらけなって──無様に堕ちろ」
 瞬間、『糸切り牙』。高速のファニングショットで、音が一つに聞こえる程の連射攻撃。一瞬の時間で、残る手足を破砕していく。
 キカはそこに攻性植物を放ち、瀕死のダモクレスを縛りつけていた。
 少し目を伏せているのは、こうして番犬に倒されるダモクレスに、いつも己を重ねるからだ。それでも、攻撃をやめることはない。
「おやすみなさい」
「それじゃ、こいつで終りだ」
 ルースは身動きの取れぬ敵の後背から、『VIXI-I』。延髄を貫くような強烈な蹴りで、ダモクレスの命を打ち砕いていった。

「おわったわねえ。お疲れさま」
 戦闘後、ロビンの言葉に皆は頷いていた。
 人のいない街は一転して静寂。瓦礫とダモクレスの残骸ばかりが散らばっていた。
「全く、今度はサキュバスでも模して出直してこいなのー!」
 と、ミステリスは言いながら怪しげな意匠の箱を取り出し、ダモクレスの部品を詰め込んでいく。最終的には、消滅した分を除いてかなりの量を回収していた。
 ルースは風景を見回している。
「派手にぶっ壊されたな」
「うん。あとは周りをヒールして、作戦終了だね」
 琉音が言うと皆もそれぞれに、修復作業を開始した。
 建物などの破損は大きかったが、戦闘範囲は狭く済んだために、それも時間がかからず終わる。少しの後には、戦闘痕はなくなっていた。
 キカは綺麗な街並みを眺める。
「これで、きれいになったね」
「そうじゃのォ」
 と、作業を終えたドミニクは一服し、それも終えると歩き出していった。
 皆も、避難した人々を呼び戻し、三々五々帰路へ。賑やかになり始めた街を後にしていく。
 咲耶は平和な街並みに一度振り返る。
「もうこんな事件がなければいいのにねぇ……」
「ええ。……それでも敵が出てくるのならば。また、守ってみせましょう」
 蜂はそんなふうに応えた。それから踵を返すと、自分もまた、街を去っていった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2018年3月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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