寓話六塔戦争

■第8ターン結果

●(8)グロワール騎馬隊
「合成人間創造計画」。
 それはドリームイーター「ラ・グロワール」が発案した計画である。
 もともと頭部と首から下が別々のラ・グロワールは、ある時、自分を顧みてこう思い付いた。
『ドリームエナジーに満ちた定命の者達の体の素敵なパーツを集めたら、素晴らしい神造デウスエクスが作れるのでは?』
 屍隷兵(レブナント)という前例もある。
 生かしたままで様々な部位をあつめて一つの存在を作り上げることが出来れば、幸い、最近のワイルドハント達を使えば、体を溶かしたりするのも自由自在だ。
 できあがる合成人間は、できれば長耳が良いなぁ。

 最後にフェチが混じった狂気の発想に対し、上下を弁えていれば寛大な上司であるところのジグラットゼクス『青ひげ』は『良かろう、好きにやってみるがいい』と答えたものである。
 だが、それもラ・グロワールが生き残らねば話にならない。

『ここまで来て、むざむざと殺されてたまるものかよ……!!』
 胴体の腕が素早く大剣を振るい、アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)の頬に血が滴る。シャドウエルフである彼の耳を目にし、ラ・グロワールは欲情めいた感情を抱いていた。
『この場を切り抜け、お前も合成人間にしてやろう』
「長い耳が欲しいんだって?」
『ああ、その通りだ。長い耳を持つ妖精族、シャドウエルフやヴァルキュリアなどは実に良い。定命化していて、よく狩れる。お前の耳も寄越すがいい!!』
 ラ・グロワールの突撃を受けたアンセルムの体が、城の壁に激突する。
 衝撃を咄嗟に束ねた攻性植物をクッション代わりに抑えたとはいえ、ダメージは小さくはない。だが、
「お断りだよ。デウスエクスにくれてやる物なんか、死以外にありはしない」
 アンセルムは冷たい声音で言った。
『ほざけ!!』
「それに長い耳が欲しいなら、自前のを千切れば良いだろう?」
 再び剣を振り回し、突撃を仕掛けて来るラ・グロワールを前に、アンセルムの持つ人形が、攻性植物の蔦に覆われかたちを変えていく。
「変容するは致命。其は、死線に踊る殺戮の獣──!」
 蔦兎へと変じた人形が、ラ・グロワールの四本脚を断ち、続けざまに抱えられていた頭を、真っ二つに断ち割る。
「駄目じゃないか。ちゃんと受け取れよ」
 頭を取り落とした体に割れた頭を戻してやったアンセルムは、ふとラ・グロワールの懐から覗く『合成人間創造計画』の計画書に目をやる。
 軽く目を通すと、アンセルムは再び人形に手を伸ばす。
「あまり気を遣う必要も無い相手だったな」
 アンセルムの命令を受け、人形はラ・グロワールごと、その狂気の計画書を粉みじんに切り裂いた。

●(11)偏食のカウリオドゥース
「狼は好きよ。養父も養母も狼のウェアライダーだから。でも……貴方はダメね」
 いきなりのダメ出しをされた偏食のカウリオドゥースは、しかし言った黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)をしげしげと見つめると、言った。
「俺は、お前、良いと、思う」
「は?」
「いける。地獄化してるの、食うの、初めて。楽しみ」
「……褒められてるのかしら、これ……」
 偏食家で鳴らす偏食のカウリオドゥースだが、女性であれば寛容なようだ。
「だが、肉付き、少々悪いな。頭から、食う」
 故に頭から食す。巨大な口を開き、瞬きの間に舞彩の前へと移動した偏食のカウリオドゥースの狼の顎が開き、涎が滴る。だが、
「まあ、どっちにしても、あなたはここで終わりよ」
 繊細な体つきの舞彩の左腕から地獄が噴出、上顎へと叩き付けられた。
 そうして顎が閉じるのを防いでいる間に、噴出した地獄は「竜殺しの大剣」へと変じる。さすがにこれは噛み切れず、後退する狼を目掛け、立て続けにビームと地獄の炎、闘気の雷光と、舞彩は次々に放っていった。
「ウルフクラウドの不死身の秘密……話しそうにもないわね」
 多少のやり取りでも、まだ戦意を喪っていないのが分かった。
 窮鼠猫を噛むの例えもあるが、偽りなどを吹き込まれてもたまらない。
「終わりよ」
 だから、舞彩は力を籠め、大剣を振り下ろす。
 雷光が崩れる麻布の街を一瞬だけ照らし出し、それがやんだ時には、街を荒らしまわった狼の群れの姿は消えてなくなっていた。

●(15)第一の魔女・ネメア
「六本木で沢山の方々を犠牲にした事、忘れていません……! 今度こそ企みを阻止します」
 シア・ベクルクス(花虎の尾・e10131)は、第一の魔女・ネメアが生み出そうとしている、光の柱の儀式を前に、そう決意を新たにする。
 ダモクレスといい、ドリームイーターといい、人々の楽しいイベントの魔力を、自らの野望の為に使おうとするデウスエクスは、絶対に許す事はできない。
「クリスマスは、1年を良い子に過ごした子供たちがプレゼントをもらえる素敵な日ですわ! その魔力を、悪しきことに利用するなんて許せないですわね! だから……クリスマスの魔力は奪わせませんわ!」
 その宣言に、ネメアもまたシアを見返すと、真っ向から反論する。
「良い子にプレゼントですか。ならば、そのプレゼントは、わたくし達にこそ相応しい。わたくし達ほど多くの犠牲を払い、わたくし達ほどジュエルジグラットに貢献した者は居ないのです。この儀式は、死んでいった『パッチワークの魔女』の夢と願いが託されているのです。その思いを、消させはしません」
 光の柱の儀式が行われている、森ビル52階の展望室からは、避難して無人となった東京の夜景が見下ろせる。
 大都会東京の街並みが暗く沈んでいる様子に、シアを始めケルベロス達は冬の寒さ以上の寒々しさを感じていた。
 もし、自分達が勝利できなければ、東京から避難した人々は寒空の下、きっと心細い思いを続けることになるだろう。
「あなた達魔女にクリスマスは似合わない! 避難した人達が自宅でクリスマスを過ごせるように、あなた達をここで倒します!」
 シアのその言葉と共に、光の柱を死守せんとするネメア軍と、光の柱を破壊しようとするケルベロス軍が激突する。
 互いに死力を尽くして行われた戦いは展望室全てを蹂躙し、ケルベロス達の剣撃音と幻想魔獣の唸り声が部屋を満たし、飛び散る血と肉の匂いにむせ返るような血戦が繰り広げられる……。
 だが、勝利の余勢を駆るケルベロス達と、後の無いパッチワークの魔女という戦況が、次第に、ネメアの軍勢を追い込んでいく。
 ケルベロス達の猛攻の前に、次々と狩られていく屍隷兵。
 大型の屍隷兵が倒されるごとに、歓声があがり、戦況は刻一刻とケルベロスに有利となっていったのだ。
「さあ、芽吹きましょう!」
 そして遂にネメアの足元にフェアリーサークルが完成した。芽吹いた植物が華麗に咲き乱れそして散りゆく。そして、その花が散ると共に、
「貴方に我々ケルベロスから少し早いクリスマスプレゼントを。それは『恐怖』です!」
 シアのグラビティ菫花(キンカ)が、ネメアに襲い掛かったのだ。
 その力の奔流は、ネメアとネメアの獅子の全身を穿ち、金色の粒子へと変えて消し去っていく……。
「あと少し、あと少しだったのに……。忌々しい赤ずきんが命を落とす瞬間こそが、パッチワーク最後の魔女がジグラットゼクスとなる最後の機会であったものを……。この時の為に、捨て駒のような扱いにも耐え、ここまで来たというのに。どうして……」
 金色の粒子となり消えかかりながらも、ネメアは、縋るように光の柱に手を伸ばす。
 だが、ネメアが致命傷を負うと同時に、光の柱は揺らめき、そして遂にはその光を完全に失った。
 ネメアの瞳は、その様子を恐怖の色で映し続け、その恐怖の中で命を消した。

「つまり……パッチワークの魔女は『赤ずきん』の死すら利用して、ジグラットゼクスの座を狙っていたという事ですの?」
 シアの疑問は、おそらく真実なのだろう。
 こうして、新たな『ジグラットゼクス』の誕生という危機を未然に防いだケルベロス達は、六本木ヒルズを後にしようとして、
「ウルフクラウドと、ポンペリポッサがいない……?」
 2体のジグラットゼクスの消失に気が付いた。

●ゲート封印
『継母』『ポンペリポッサ』『青ひげ』『ウルフクラウド』。
 4塔の強大なドリームイーターと配下の一部は、継母が守っていた『ゲート』に集まっていた。
「おお『赤ずきん』や、かわいそうに。ばばあを許しておくれ……」
「まさか少しも領土を得られぬとはな! 計画はご破産だ!」
「……私達がジグラットゼクスである事の益を、享受する日が来るとはな」

 そして彼等は、開放されたドリームイーターのゲートを見つめる。
 人類の科学技術にとって、5000mという高度はたとえジュエルジグラットの手で繋がっていなくとも、届かないものではない。
 首都東京の真上という位置柄、ケルベロス達は可能な限りの手を尽くし、ゲート破壊を図るであろうことは目に見えていた。
 本来ならば、ゲートが破壊されないよう、十重二十重の守りを固めねばならない。

 だが、それはジグラットゼクスが居なければ、の話であるようだ。
「私『継母』を筆頭に、塔を扉に変えし寓話六塔の名を以て、扉に鍵を掛けるものなり」
「ギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラ!」
 継母の宣言にウルフクラウドが吼えると、彼等の前に1本づつ『鍵』が現れた。
 ドリームイーターならば誰もが持つという『鍵』だが、その力は桁違いだ。
 4塔のジグラットゼクス達は、それぞれに自らの『鍵』をひねる。

 すると、みるみるうちにゲートに『扉』が出現し、閉じられてゆく……!
 果たして、ジグラットゼクスは扉の奥に消えたのか。
 はたまた、日本のどこかに姿を消したのか。

 それは分からない。ただ分かることは、ゲートが閉まった事で「ジュエルジグラットの手」が切断され、大地に落下してきた事だけだった。

 戦場を離れたケルベロス達は、渋谷上空に浮かんだままに止まった白い手の腕が切れたのを見る。それはドリームイーターの侵略の魔手が、一時的とはいえ止まったことを意味していた。
 覚醒する失伝ジョブの末裔達は、ケルベロスの新たな仲間となるだろう。
 そして、失伝ジョブの末裔達からは、ドリームイーター達に囚われたままの、他の失伝の末裔達がいることが伝えられる。
 彼らを解放することで、より失伝ジョブの研究も深まり、他のケルベロス達も力を扱えるようになっていくことだろう。
 幾つかの謎と、新たな仲間を得て、寓話六塔戦争は幕を閉じた。

→有力敵一覧

→(5)チェシャ猫(1勝1敗/戦力760→700)

→(8)グロワール騎馬隊(16勝2敗/戦力230→0/制圧完了!)

→(11)偏食のカウリオドゥース(6勝1敗/戦力40→0/制圧完了!)

→(12)第四の魔女・エリュマントス(1勝1敗/戦力960→900)

→(14)第二の魔女・レルネ(3勝2敗/戦力360→190)

→(15)第一の魔女・ネメア(38勝4敗/戦力1400→0/制圧完了!)

→(16)『ポンペリポッサ』(1勝0敗/戦力1330→1280)

→(18)『ウルフクラウド』(2勝0敗/戦力1440→1340)

→(19)『青ひげ』(1勝1敗/戦力3000→2940)

→(21)赤の王様(2勝1敗/戦力2290→2180)

→重傷復活者一覧

→死亡者一覧

■有力敵一覧

有力敵 戦功点 現状

ラ・グロワール
1260
(8)グロワール騎馬隊:Battle1にて、アンセルム・ビドー(蔦に鎖す・e34762)に倒される。

偏食のカウリオドゥース
1050
(11)偏食のカウリオドゥース:Battle1にて、黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)に倒される。

第一の魔女・ネメア
1170
(15)第一の魔女・ネメア:Battle1にて、シア・ベクルクス(花虎の尾・e10131)に倒される。

戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。

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