■第3ターン結果
●(2)三月ウサギ
ジュエルジグラットの手内部に入ってすぐ、城門に当たる区域には、オネイロスのトランプ兵達が展開していた。
本格的な開戦を前に、城のさらに奥へと奇襲攻撃を仕掛けた金糸雀師団もこの地域を切り抜けることが出来たことからも分かる通り、敵戦力はさほど多くない。
そして二度に渡るケルベロス達の攻撃を受け、城門付近の敵戦力は既に壊滅しようとしていた。
「だが、この疲労感は何なんだ……?」
城の内部に入る前後、ジュエルジグラットの手を構成する液体部分に入るたび、ペル・ディティオ(破滅へ歩む・e29224)達にも疲労が溜まる。
全世界決戦体制に支えられており、ただちに影響が出るものではないにせよ、ジュエルジグラットの手がもたらす疲労感は気になっていた。
その疑問に対する答えは、敵の方から来る。
「ニヒヒ、そいつぁ簡単さ。キミ達の想像力(ドリームエナジー)が、ジュエルジグラットに奪われてるんだよ! 抵抗力の無い者が長々いれば、最後はドロドロに溶けて流れて冥府の海へポイだ! この城みたいに、呑み込まれた過去の残滓を幻想化した避難所にでもいない限りね」
オネイロス幹部、三月ウサギ。その体と白衣は、ケルベロス達との戦いで既に満身創痍になっていた。
研究者とは言われていたが、自分の研究成果を他人に喋るのが嬉しくてたまらないという人種らしい。あるいはマッドサイエンティストと呼んだ方が相応しいかも知れない。
「失われた時の世界(ワイルドスペース)と同じ性質なのは、何故なんだ?」
「そいつはちょいと難しい。宇宙の流刑地にして超存在、十二創神『魔石獣ジュエルジグラット』がいつどうやって発生したのか、もはや誰にも判りやしないよ。それにそもそも、吾輩らは単なる『囚人』に過ぎないからね……!」
言いながら、三月ウサギはフラスコを投げつけて来る。
液状のワイルドスペースと混ざり合いながら流れて来る毒素をペルはしのぎ、三月ウサギの小さな体に拳を叩き込んだ。
「十二創神? 囚人……?」
だが、今度は三月ウサギは問い返す言葉に答えない。
いや、既にペルの言葉も、その長い耳には届いていなかった。
「失伝ジョブって……連中……体をワイルドスペースと置換する奴とか……あれ面白いよねぇ。研究したかったなぁ。アリス、どうか『最終儀式オネイロス』を……」
三月ウサギの体から力が抜け、溶け崩れていく。
得た情報をどう判断したものか、ペルは募る疲労の中でしばし考えるのだった。
●(6)帽子屋
戦場の帽子屋は、少しいらだったように、フィルトリア・フィルトレーゼ(傷だらけの復讐者・e03002)を始めとしたケルベロスを出迎えた。
「待っていたよ、フィルトリア。でも、君たちは礼がなっていないねぇ。この僕を無視して、アリスの所に行こうなんて……。こうなれば、仕方ない、君達をそうそうに片づけて、アリスの所に行かせてもらわなければね」
表面上は紳士のようにふるまっているが、帽子屋の言葉の節々から焦りと狂気がにじみ出ているのを、フィルトリアは見逃さなかった。
「悲しみのない世界を作る、それは素晴らしい理想かもしれません。ですが…どれだけ素晴らしい理想だったとしてもそのために誰かを傷つけてよいはずがありません。あなたは、ここで倒します」
フィルトリアは、オウガメタルを両腕に纏わせると、残り少ない帽子屋の軍勢に向けて攻撃を開始した。
「ならばしょうがありません。とっておきのお茶会で歓待させて頂きましょう。トランプ兵、特別にお茶会への参加を認めます」
その言葉に、四種のスートのトランプ兵は、帽子屋が用意した紅茶を飲みこむと、狂気の表情で、ケルベロスへと襲い掛かってきた。
「あの紅茶、麻薬っぽい何か?」
「ドーピング反対!」
ケルベロス達は口々に非難するが、帽子屋は意に介さずに、自らも紅茶を飲みほした。
「アババババ。タノヒィィィ!」
すると、帽子屋も正気を失ったかのように、ケルベロスに向けて狂ったように戦いを仕掛けてくる。
その様は、まさに狂戦士といった所だろうか。
「トランプ兵だけでなく、自分にまで使うとは……。正気の所業ではありません。いえ、正気を喪失しているからこその行動でしょうか?」
フィルトリアは、その狂気を受け止めつつ、帽子屋ならば狂っていて当然なのだろうと、戦いに集中する。
もしかしたら、アリスを護る為に全てを捨てて見せたのかもしれないが、その答えを知る正気のものは、もはや存在しないだろう。
「剣こそ正義、俺のスペードは血に飢えているー」
「我が杖のハートを畏れぬならばかかってくるが良い」
「ガンガンガーン! 銃こそ最強ダイヤー」
「串刺し串刺し槍で串刺しー」
狂気の影響か、これまでほぼ口を閉ざしていたトランプ兵達も、狂気に浮かれたように、ケルベロスを攻撃してくる。
「トランプ兵、喋れたんだ」
「まぁ、ドリームイーターだから当然だけど……」
ケルベロス達の中には、その意外性に少し驚いた者もいたようだが、戦いの趨勢には影響はない。
トランプ兵達を一体づつ確実に撃破し、帽子屋の包囲を完成させていったのだ。
そして、全ての配下を失い孤立した帽子屋に、フィルトリアの魂を喰らう降魔の拳が襲い掛かり、その胸を貫いた。
「せめて……心おきなく消滅してください」
「アリスー、アリスー、アリスー」
帽子屋は、狂気の表情のまま、アリスの名を叫ぶた、その声はやがて小さくなり、そして消えた。
●(9)アリス
「まるで、童話に出て来る城のような場所だな」
ドリームイーター集団『オネイロス』のリーダー、アリスと戦う為に戦場にやってきた、四辻・樒(黒の背反・e03880)は、戦場を見渡して、そうつぶやく。
他の悪夢めいた城ともまた異なる、楽しい童話の世界の幸せなお城のような空間で、アリスは、樒を出迎えた。
「白ウサギも、赤の女王も、公爵夫人も、眠りネズミも、三月ウサギも、帽子屋も、みんな死んでしまったわ」
アリスは、死んだ仲間達を思い出すように指折り数えて、悲しそうに首をかしげる。
「もうみんなで、楽しいお茶会を開くこともできないのね」
と。
「それは、お前達が、この世界に害をなす存在だからだ! お前の歪な夢を、実現させるわけにはいかないのだ!」
悲しみの無い世界……、確かに聞こえは良いが、それが本当に幸せなのだろうか?
それは違う、と樒は考える。
悲しみもまた、大切な記憶となり、人が生きた証になる。
もし、今までの人生の悲しみを全て消し去ってやろうといわれても、樒は、絶対に頷かない。
それは、自分が生きてきた証を、奪われるという事なのだから。
樒は、そのアリスの思想を否定する感情と、そして勢いのままに仲間と共に突撃し、戦線を突破し、アリスの軍勢を蹂躙し、撃破する。
そして、夜の風のようにアリスの背後に忍び寄った樒は、手にしたナイフを閃かせ、神速の雷をうち撃ち放つ。
それは致命の一撃であった。
しかし、アリスは、必死の思いで、その死神の刃から転がり逃げる。
「私の夢(オネイロス)はみんなの夢(オネイロス)。ここで死ぬわけには……」
衝撃で青いワンピースをボロボロに破られたアリスは、なんとか間合いをとり、あられもない姿で逃げ出した。
「逃がしましたか……」
樒は、残念そうにそう呟いたが、残る戦力を考えれば、アリスはもはや敵ではないと考えて、戦場を後にした。
→有力敵一覧
→(2)三月ウサギ(3勝1敗/戦力120→0/制圧完了!)
→(5)チェシャ猫(2勝1敗/戦力1190→1080)
→(6)帽子屋(3勝1敗/戦力160→0/制圧完了!)
→(9)アリス(29勝3敗/戦力1500→20)
→(10)貪欲なる夢喰い(22勝2敗/戦力1500→380)
→(11)偏食のカウリオドゥース(6勝1敗/戦力1600→1290)
→(12)第四の魔女・エリュマントス(1勝0敗/戦力1090→1040)
→(14)第二の魔女・レルネ(1勝1敗/戦力1400→1340)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。