■第5ターン結果
●合成獣兵03『グリフィン』
詠み謳う煌然たる朱き社の従える屍隷兵達は、既に一度はケルベロス達の攻撃を凌いでいた。だが、その戦力ももはや残り僅かとなり、ケルベロス達によって脆くも崩れ去ろうとしている。
香坂・雪斗(スノードロップ・e04791)は、楼閣の中で詠み謳う煌然たる朱き社を追っていた。
「……お前が『社』……。お前らのしてる事、ほんまに胸糞悪いわ。これ以上、お前らの研究を進めさせはしない!」
「そう言われても、研究進めとるのは最上忍軍に限らんからのう……」
じりじりと壁に追い詰められていく社。だが、彼女は壁際によるとニヤリと笑った。
「来ませいっ合成獣兵03『グリフィン』!!」
強く壁を叩くと、壁の一部が社を飲みこむように回転する。
「何っ!?」
社と入れ替わる形で現れたのは、合成獣兵『グリフィン』だ。
「くっ!!」
追いかけようとした雪斗だが、すぐに壁は閉じてしまう。
さらに合成獣兵グリフィンは、その場にいたケルベロス達へと襲い掛かろうとしていた。
「屍隷兵、なるべく倒したくはないけど……せめて楽にしてあげられたなら」
この屍隷兵が作られるまでに、どれだけ大量の動物たちが使われたのかは想像に難くない。
「まあ、虎の体に見合う頭部を持つ鷲は地球上に存在せんし、似た他の星の動物かもしれんけどな……」
何にせよ、ここで倒さねばさらに多くの犠牲を生むことになる。
グリフィンを取り囲んだケルベロス達は、矢継ぎ早にグリフィンへと攻撃を繰り出していく。
多少力は強かろうと、既に指令を出す者もおらず、野生動物同然の動きしかしないグリフィンを追い詰めるのは、ケルベロス達にとって難しいことではなかった。
「これで、終わりや!!」
雪斗の蹴りの一撃が、グリフィンにとどめを刺す。
動かぬ死体に戻ったグリフィンの体は、すぐに死体同士の結合を失い、蒸発するように消えて行った。
「さて、社は……他の皆が追い付いてるといいんだけど」
●詠み謳う煌然たる朱き社
雪斗達の前から逃げ伸びた社は、這う這うの体で別の屍隷兵と合流していた。
「このまま隠れていれば、なんとか逃げおおせることが出来るかも知れんな……」
そんな淡い期待を、屍隷兵を使う螺旋忍軍への怒りを燃やすケルベロス達が許すはずもなかった。
「いました! 社です!!」
「くはぁ……早過ぎるじゃろ!!」
土竜・岳(ジュエルファインダー・e04093)が声をあげると、すぐに集まって来たケルベロス達が屍隷兵達を蹴散らし始める。
「命を道具として弄ぶ方々……許せませんね。ここでご退場いただきましょう」
「いや、ケルベロスもデウスエクスの亡骸から武器を鍛造するとか、魂喰らうとかそんな奴ら身内に抱えこんでおるじゃろ……」
思わず呆れたように応じる社。ドラゴンが遺した肉体の一部から造られた武器とかケルベロス達の定番である。岳はしばし沈黙したが、
「い、いや、だからといって、ここであなたを見逃す理由にはならないですよ!!」
「ちっ」
問答の間に逃げようとした社の行く手を塞ぐ岳。
社は大仰に舌打ちすると、もはや腹をくくったように、屍隷兵達に指示を下す。
「全く、仕方がないのう……!! 屍隷兵ども、精々時間を稼げ!!」
どこか投げやりな指示に、
だが、最上忍軍の幻襄や幻斎をも破ったケルベロス達を、社が相手にするのは土台無理があった。
「『想い』の力、受け取って下さい!!」
岳が床を拳で殴りつける。
ドワーフたる岳の力は地脈を操り、殴りつけた場所からルビーの如き赤い光の奔流が溢れ出す。
赤い光に呑み込まれ、床に倒れ伏す社に、
「ルビーの石言葉は情熱・仁愛です。私達の熱い思い、貴女がたには理解できないのでしょうね……」
「いや多分、妾だけでなく、デウスエクスみんな、自分達のこと棚に上げて地球人の命だけ特別扱いしているとしか思わんぞ……?」
「ええ……?」
困惑するような岳の声に、もはや言葉を返すこともない。
社の肉体と命は、赤い光の中に溶けるようにして消えて行った。
●レプリゼンタ・ロキ
ロキが制圧した尖塔は、もはや大樹の如き有様となっていた。
攻性植物の支配する尖塔を、ケルベロス達はひたすらに駆け上っていく。
目指すは攻性植物の指揮官、レプリゼンタ・ロキの元だ。
尖塔を支配した攻性植物達は、ロキが大阪ユグドラシルゲートから連れて来たようだが、それでも難なく切り拓かれていった。
「思ったよりも、燃えませんねぇ」
長谷川・紅音(こうみしゃんたん・e22843)はそうぼやきつつ、地獄の炎を放っていく。別に攻性植物は火に弱いというわけでもないが、充分な威力を伴って放たれたグラビティは、往く手を遮っていた攻性植物を焼き払っていた。
その先に広がっていた緑のドーム、脈動する植物の力に満ちた空間の中央には、邪悪な形相をした存在が座していた。
「あれが、ロキですか……」
「おいおい、とうとう来やがった。怖すぎるぜケルベロス……」
ロキは紅音達はじめ多数のケルベロスが手にした如意棒を見つつ、心底嫌そうな様子で顔をしかめる。
「ケルベロスの諸君……ここはひとつ、土下座で許してくれないか?」
「冗談! 私が扱えるだけの炎、ありったけで燃やし尽くします!」
紅音は地獄の炎を燃え盛らせると、ロキへ向けて突き進む。
「あなたがゲートを持っていこうとしていることは、お見通しですよ!!」
レプリゼンタ・ロキがなんらかの手段でゲートを奪い去ろうとしていることは、ヘリオライダーの予知から既に判明済みだ。
それを指摘され、ロキは再び顔をしかめた。
「いやー何で分かったのかな。その如意棒の数も、俺が怖いって事元々知ってたんだよな? 何が何だかさっぱり分からんが……その力、『欲しい』な……!」
「危ない!」
直感を超えた反射で、ケルベロス達は咄嗟に飛び退いた。
ロキは、その身に纏う不思議な道具の数々で戦っている。
だが、今感じた感覚は、そのいずれとも違う……!
「あー、避けられたか。俺には荷が重いな」
「お前に、ゲートを与えるわけにはいかない……」
裏切りの邪猿、ロキ。
彼の被害を受けたハヌマーン達が辿った運命を知らないケルベロスはいない。
もしも彼にゲートの力を持ち去らせれば、いかなる悲劇が起こるか分からないのだ。
決死の攻撃を繰り返すケルベロス達の攻撃に、次第にロキの体に傷が生まれ始める。
「あーだめだ、その眼、強いやつにも平気で立ち向かっていく眼。カンギの言う『全て護る者達』ってやつか……」
「燃えよ喰らえよ我が腕よ! この先に進むために!」
ロキの言葉を掻き消すように、紅音の左腕に宿る地獄の炎が、左腕全体を喰らうように活性化していく。
炎の塊の如くなった腕に力を篭め、紅音は拳を握り込んだ。
圧縮された地獄の炎が、掌の中に圧縮、吸収されていく。それと同時に、紅音は、逆の手に握った如意棒から異なる意思が流れ込んで来るのを感じていた。その気配に、ロキが顔色を青ざめさせる。
「あらら」
「トドメだ!! 完成せよ! 紅爆掌!」
掌底が叩きつけられた瞬間、ロキの腹部で、地獄の炎が轟然と爆発を起こす。
吹き飛ばされたロキの体が壁に激突した瞬間、『偶然にも』仕掛けが作動し、ロキの体が開いた落とし穴から、螺旋大伽藍に点在する空間の歪みに呑み込まれていく。
空間の歪みに呑み込まれたロキの姿が、ケルベロス達の前から消え去った。
だが、紅音達、如意棒を手にした者達には、感じ取ることが出来ていた。
螺旋大伽藍から落下していったロキは、大阪方面へ向けて飛翔している。撤退中だ。
見えるはずもないのに、それが何故か分かる。
これが、如意棒のもたらした影響であることは明らかだった。
『我らの意思は、永遠にレプリゼンタを追い詰め続ける』
どこからともなく、何者かの声が聴こえる。
それは、滅びしハヌマーンの呟きだったのか……。
「確かに、居場所が分かっていればロキの陰謀を阻止するのは簡単だな」
ロキはまだ気づいていないだろうが、陰謀のために動こうとしたら、実行の前に叩くこともできるかもしれない。
レプリゼンタを殺す方法に直接至ってはいないが、ロキの動きを阻止するのが、これまでと比べて圧倒的に容易になったことをケルベロス達は理解していた。
→有力敵一覧
→(4)ペンプ・オグ&ナウ・ソーン(2勝0敗/戦力390→290)
→(7)最上・幻夢&ダウ・ガル(11勝2敗/戦力760→190)
→(9)星喰いのアグダ(3勝1敗/戦力360→200)
→(11)最上・牡丹&亜紗斬(2勝1敗/戦力1240→1130)
→(12)詠み謳う煌然たる朱き社&合成獣(9勝1敗/戦力330→0/制圧完了!)
→(14)レプリゼンタ・ロキ(41勝3敗/戦力1600→0/制圧完了!)
→(15)イグニス(0勝5敗/戦力1143→1093)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。