スパイラル・ウォー

■第2ターン結果

●最上・幻斎
「夜城の。実力を見せてもらいますよ」
「はいはい。でもこの数じゃ無理じゃないの?」
「だとしても、イグニス様を守らねば勅忍になったところで未来はない。私にも、あなたにもね」
 最上・幻斎の言葉に完全には納得していないようだが、今さら脱走するわけにもいかず、夜城・ネネは持ち場についていく。
「ケルベロス達が奇襲を仕掛けて来た際のルートは判明しています。今回は正面からの戦いとなりますね」
 幻斎は、不利を理解しつつも言う。
 本来は忍法帖を与えられない程度の規模しかなかった最上忍軍が、軍勢としての体を整えているのは、五稜郭の時と同様に、全国を飛び回って他の螺旋忍軍を引き入れた幻斎の話術とカリスマ性によるところが大きい。
 さらに数を揃えるため、ダモクレスに情報を流し、螺旋大伽藍に引き込んだ。
 東京都内の螺旋忍軍の多数が、ケルベロスに拠点を襲撃されて隠れてしまい、所在がつかめなかったのは痛手とはいえ、これだけの手腕は、賞賛されるべきものだろう。
 が、なんとか数を揃えられたものの、それでもケルベロス達を相手にするには不安が伴う。今もイグニスの元から、勅忍の分身体が送られて来ている状態だ。

 幻斎率いる螺旋忍軍が待ち受ける畳の間へ、ケルベロス達が突入していく。
 畳を蹴りあげ、飛来するグラビティからの盾とした幻斎は、大太刀『天麩羅』を振るい、迫るケルベロス達を切り捨てる。
 秘剣を出し惜しみする余裕はない。
「あなた達も全力の様子。五稜郭での戦いのように、手加減はしませんよ」
 金色の大太刀が振るわれ、ディフェンダー達の守りを切り崩そうとする。
 だが、後に続く配下はいない。連携の取れない動きは、これが
「これが最上の忍びならば!!」
 五稜郭でケルベロスにより失った配下達のことを嘆く幻斎に、アシュレイ・ヘルブレイン(生まれたばかりの純心・e11722)は狙いを定めていた。
「奈良平野では不覚を取りましたが、今回こそは!!」
 アシュレイ達のチームは、奈良平野での戦いでは、幻斎の影を捉えることすらできなかった。だが、今こうして戦場で相見えた以上、必ず倒す。
「凍てつけ、必滅定めし非情の理……アクアロギア!!」
 アシュレイの勝利を求める心から生まれた針状の結晶は、幻斎の肩に突き刺さった。
「くっ!?」
 激痛の、幻斎の天麩羅を振るう手が鈍る。ケルベロス達が幻斎に攻撃を加えるたび、彼の体に針は喰い込み、激痛を走らせていく。
「私の武運もここまでですか。だが、最上一族のため、そして私自身の誇りのため、最後まで諦めはしますまい!!」
 配下を失った幻斎は、天麩羅を構え、ケルベロス達へと切り込んで来る。
 鬼気迫る様相の彼の渾身の一撃を迎え撃つように、アシュレイの体が宙を舞い、輝きを伴って蹴りが叩き込まれる。
 幻斎の体は金色の光と共に崩れ落ち、彼の愛刀も後を追うように消え去るのだった。

●夜城・ネネ
「どうにもツキが落ちてるねぇ……」
 最上・幻斎と別れた夜城・ネネは、状況の悪化に歯噛みした。
 函館五稜郭で乱戦の中でケルベロス達から螺旋忍法帖を見事奪い取ったまでは良いが、その後がどうにもよろしくない。
 撤退の前に最上忍軍の幻斎に倒され、コギトエルゴスム化した彼女は、グラビティ・チェインを与えられて復活し、その軍門に降った。
 配下もあまり持っていない彼女は、このままでは強力な者を複数抱える最上忍軍の中で埋没するのは目に見えていたが、ここで問題なのが、いかにも戦局が劣勢ということだ。
「ゲートの破壊を防ぐためとはいえ、もっと他にやりようはありそうなもんだけど」
 と、愚痴ったところで仕方がない。
 螺旋帝の血族を、そしてゲートを守らなければ、彼女に未来が無いことも明らかだ。

「夜城・ネネ。恨みは無いけれど、ここで果ててもらうわね」
「ほら、こういのも来るし」
「……?」
 エフイー・ロスト(もふもふを抱いて唄歌う機人・e16281)は、相手の反応に怪訝そうな様子を一瞬見せた。
「こっちの話さ。さあ、あんた達、ここで死んだら元も子も無いよ!!」
 自分に言い聞かせるようにいって、ネネは一気に跳躍した。
 距離を取り、配下達の隙間を縫うように鎖分銅を伸ばし、ケルベロス達を絡め取る。
 分銅を放つ動きにはよどみなく、歴戦の螺旋忍軍であることを感じさせた。
「へぇ……中々やるじゃない」
 エフイーは賞賛の言葉を向けると、戦場の只中で彼女の《音-ノイズ》を奏で始める。
「何を言っているんだか、さっぱり分かりやしないわ」
「そう……あなたもその程度なの?」
 繰り返されるケルベロス達の攻撃は、螺旋忍軍の反撃を押し返し、そのまま駆逐していく。ネネもまた実力で勝りながらも、エフイーをはじめとするケルベロスに追い詰められていった。
「どうしたの? その程度?」
「数で勝ってるからって、調子に乗って……!!」
 ネネの姿が一瞬霞んだように消えたかと思うと、振るわれた刀が、エフイーを切り裂く。だが、ドレスを血に染めながら突進したエフイーのドラゴニックハンマーが、ネネの構えた忍者刀ごと、彼女を打ち据えていた。
「か、は……ッ」
「手加減はしたつもりだけど……まあデウスエクス相手には無駄なことね」
 かえって苦痛を長引かせるだけだろうと思いつつ、エフイーは小さく息を吐く。
「残念。ここまでね。サヨウナラ」
 命尽き果てた夜城・ネネの体は消失し、幻斎、ネネという指揮官を失った残る螺旋忍軍も続けて消えていく。

●アグニ
「あーあ、なんで邪魔っすかなぁ」
 浮遊要塞『螺旋大伽藍』の尖端部分で怪しげな儀式を進めていた、アグニが、乱入したケルベロス達を振り向きざまに罵った。
 その姿は親に遊びを止められて不貞腐れた小学生のようにも見えるが、ただの遊びと言うにはその儀式は禍々しいものだった。
「一体何の儀式なんスか? イグニスの復活に関係あるっスか? 父親を甦らせたい気持ちちょっとだけわかるっス」
 コンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)は、アグニの行っていた儀式に興味をもって聞き出そうとする。
「アレっ、でも復活させる準備というなら今のイグニスは敗北確定?」
 この、コンスタンツァの失礼な言葉に、アグニが頬を膨らませて反論する。
「父ちゃんは、負けないんだぞ!
この儀式は、螺旋忍軍が不正に溜め込んでいた情報を、デウスエクスみんなに広める為の儀式なんだ。正しい情報の公開が正しい世界を生み出すって、父ちゃん言ってた!」
 その言葉を聞いて、コンスタンツァは、ふむふむと頷いた。
(「螺旋忍軍はあらゆる組織に入り込み情報を集めていたっス。そして、スパイラスにはその集められた情報が全てあるのかもしれないっス。この儀式で、その情報を都合良く編集して好きな場所に背信でるなら情報操作し放題っスよ!」)
 ここまで考えた、コンスタンツァは、イグニスの智謀に思わず感心してしまう。
 情報を制するものは、全てを制する。
 イグニスが螺旋帝の血族へと生まれ変わったのは、この儀式こそが目的だったのかもしれない。
 少なくとも、自分の子供達を呼び寄せて行わせるほどには重要な作戦に違いはないのだから。

「正しい情報の公開は世界を正しくするっすスね。でも、歪んだ情報を広めたなら、世界に混沌を振りまくのも事実っス。そして、イグニスという個人が自分の欲望のために公開する情報は、確実に歪んでいるっス!
つまり、悪に間違いないっスよ!」
 コンスタンツァは、アグニをそう論破すると、そのままの勢いでエクスカリバールを、アグニに向けて投げつけた。
 エクスカリバールはクルクルと回りながらアグニの鳩尾に深く突き刺さる。
「えっ、なんで僕が、父ちゃん助け……」
 アグニは鳩尾を貫く痛みに耐え切れずに、イグニスに助けを求めたが、助けの手は現れず、そのまま息絶えるのだった。

「こんな幼い子供すら手駒にするイグニス。許せないッスね……いやデウスエクスだから外見と年齢一致しないッスかね?」
 そんな疑問を抱きつつも、コンスタンツァとケルベロス達は、イグニスへの怒りを新たに戦場を後にしたのだった。

●ライラ
「お父様、ケルベロスが戦場に現れました。ご指示をお願いします」
 真っ赤な踊り子のような服をまとった、シャイターンの少女が、虚空に向かって話しかける。
「あっ、はい、了解しました。全てはお父様の御心のままに」
 その様子は、アイズフォンを使用するレプリカントのようでもあったが、性能は大きく違っている。
 彼女の能力は、スパイラスに居るイグニスの通信を、アスガルドで受信する程に極めて強力な物なのだ。

(「イグニスとの秘匿回線ですか? 厄介な能力ですね……。だが、うまく使えば、イグニスの情報を得る手段になるでしょう」)
 結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)は、そう考えつつ油断無くライラへと距離を詰めていく。
 螺旋帝の血族となったイグニスを殺しても、また別のイグニスが復活する可能性がある。
 それを阻止するヒントを得られれば、最良であろう。
 それが出来なくても、イグニスと連絡を取れるライラを殺害しておく事で、今回のような連携を取りにくくなる筈だ。
 そう考えて、レオナルドはライラの攻撃をわざと受けつつ、苦戦するような擬態をしてみせる。

「くっ、残念だがここは引かねばならぬか……。最後に、この儀式が何か知る事ができれば……」
 レオナルドは、苦悶の表情でそう言葉を紡ぐと、ライラは嬉しげに答えを返す。
「引いてくれるのですか、それはありがたいですね。お父様からは、極力交戦せずに、儀式の準備を行えと言われているの」
 レオナルドは、苦悶の演技の裏で、その説明を吟味する。
(やはり、イグニスは「この後の事」を考えて、子供達を呼んだのか……?)
 爆殖核爆砕戦でも、イグニスの配下らしきシャイターンがエネルギーを他に送っている。おそらく今回も、同様の狙いがあったのではないか。
 そう思い至ったレオナルドは、今までの傷ついた演技をやめると、心を静め、抜き撃ち気味にドラゴニックハンマーを振り下ろした。
 レオナルドから発した陽炎に幻惑され、ライラにはドラゴニックハンマーの軌跡すら見る事はかなわなかっただろう。

「お父様、すみません。ライラ、失敗してしまいましたわ……」
 ライラは最後に、そう言うと、そのまま戦場に屍を晒し、謎の儀式は謎のまま、その動きを止めたのだった。

→有力敵一覧

→(4)ペンプ・オグ&ナウ・ソーン(6勝3敗/戦力1000→670)

→(5)アグニ&ライラ(25勝6敗/戦力800→0/制圧完了!)

→(6)最上・幻斎&夜城・ネネ(41勝6敗/戦力950→0/制圧完了!)

→重傷復活者一覧

→死亡者一覧

■有力敵一覧

有力敵 戦功点 現状

アグニ
660
(5)アグニ&ライラ:Battle1にて、コンスタンツァ・キルシェ(ロリポップガンナー・e07326)に倒される。

ライラ
660
(5)アグニ&ライラ:Battle2にて、結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)に倒される。

最上・幻斎
1080
(6)最上・幻斎&夜城・ネネ:Battle1にて、アシュレイ・ヘルブレイン(生まれたばかりの純心・e11722)に倒される。

夜城・ネネ
990
(6)最上・幻斎&夜城・ネネ:Battle2にて、エフイー・ロスト(もふもふを抱いて唄歌う機人・e16281)に倒される。

戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。

戦闘結果を取得しています。しばらくお待ちください。