■第4ターン結果
●(3)メカニスィーヤ工作部隊
「ケルベロスが攻めて来た? 勝手に対応するがいいさ、俺が出るまでも無いだろう」
指揮官である整備士メカニスィーヤは、本来ならばその全力を載霊機ドレッドノート本体やダモクレスの修復に向けていたことはずだった。
だが、劇場艇モンストロの指揮官にして、彼の直接の上位ユニットである舞台演出家ゼペットを失った今、彼に優先すべき命令は無い。
その修理の速度はかつての素早さを失っている。
臍周りの修復も終わらず、ケルベロス達がヘリオンを用いての突入に際して被害が無かったのも、天那・摘木(ビハインドとお姉さん・e05696)をはじめ、劇場艇モンストロのダモクレス達と戦ったケルベロス達の活躍が一因であると言っても良かっただろう。
「やる気が無い割りには、よく頑張ったもんだな」
ヤクト・ラオフォーゲル(銀毛金眼の焔天狼・e02399)は小さく鼻を鳴らした。
既に三度に渡ってケルベロス達の攻撃を退けて来たメカニスィーヤ。
だが、彼の部隊にも、終わりの時は刻一刻と近づいていた。
それでも、損傷を負ったダモクレス達を尋常ならざる速度で修理し、戦線へと復帰させるメカニスィーヤの手つきには淀みは無い。
「己の機能を発揮できること。それも魅力的なことのひとつだろう。やらない理由は無い……だが」
言葉を区切り、メカニスイーヤはダモクレス達の補修を続ける。
「それ以外の価値を見出すことができるかもしれなかった。未来の可能性を断たれ、なお生き続けねばならないこともまた、『悲劇』の一種であるとゼペットなら言ったかも知れないがね」
「ハッ。やる気がないなら退場しても問題ないだろ。そのまま、砕けて消えちまいな」
劇場艇モンストロのの中で、数々の人々を改造してきたメカニスィーヤ。
容赦をする必要も、その意味も無いとヤクトは判断。
地獄の炎をなびかせて加速した彼へと、メカニスィーヤの工具が突き立てられる。
だが、その勢いのままにヤクトは整備士の首元へ指先を叩き込んだ。
「やる気がないなら、そのまま動かずにいるんだな」
指先から流れ込んだ気が、メカニスィーヤの全身を石へと変えていく。
そしてその変化が全身に及んだ時、整備士は整備のしようもないほどの石の欠片となり、バラバラに砕け散っていた。
●(7)アリスティナ殺戮部隊
アリスティナ殺戮部隊を率いるアリスティナ・ローゼの姿は、ユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)に似通っていた。
かたや硬い表情で、かたや作り物の笑顔という違いこそあったが。
ユスティーナの妹であるアリスティナは、自らダモクレスとなることを望み、そしてその望みを叶えたのだ。
スカートの中から刃物を幾つにも結び合わせたかの如き外見の、殺人機械が生み出され、それを叩き付けるようにしてケルベロス達へと挑ませてくる。
「『どうか私をばらばらに切り刻んで人を殺すための機械に変えてください』……可愛い望みもあったものね」
既にケルベロス達の攻撃を幾度かに渡って退けていたアリスティナだが、その戦力にも限界が来ようとしていた。追い詰められながらも、アリスティナは殺人機械をスカートの裾の下から生み出し続ける。
「心無い人間に殺された両親の仇を討つためにダモクレスに自らを改造するよう望み、そして受け入れられた。それを知識として覚えてはいるけれど」
イジュ・オドラータ(白星花・e15644)が振るうルーンアックスは、彼女が生み出す殺人機械を断ち割った。
「だから、全部の人間を憎んで、殺そうっていうの?」
憎悪。怨恨。それらはケルベロス達にとっても理解できないものではない。
だが、ダモクレスと化した彼女は、それを否定する。
「いいえ。今の私は、敵であっても憎悪の情を抱いてはいないわ。──だって感情ってキモチ悪いでしょう?」
アリスティナ・ローゼは、『かつての自分』がダモクレスになろうとした動機すら切り捨てる。
「だって、一部の人間が悪を為したからといって、人類全体を憎むに至るのは、一時の感情の暴走によるものでしょう」
ダモクレスと化し、力を高めた彼女は、既に感情を解せぬ異なるいきものだった。
「感情って、素敵かも知れないけど綺麗なものばかりじゃないよね。感情を模倣することでさらなる力を得られるんじゃないかって、実験を重ねている人達もいるけれど」
歪な笑みが、アリスティナの顔に浮かぶ。
言葉と共に生み出され続ける殺人機械。
彼女本体の質量を遥かに超える不気味な機械の群れを、イジュの斧が薙ぎ払う。
確実に迫って来るケルベロス達に、しかしアリスティナは笑顔を崩さない。
それは虚勢なのか、彼女が言うように感情を捨て去ったからなのか。
「むむむ、おっきいからって、それだけで勝てると思わないでよね!」
殺人機械の群れを蹴散らしてイジュは加速。
その先にあるアリスティナの姿が、崩れるようにしてほどけた。
姉そっくりの顔を残し、機体が裏返る。
体内から現れるのは、無数の冷たい刃の華だ。
その全身をもってケルベロス達を包み込もうとするアリスティナへと、イジュは斧を振り上げ、そして振り下ろした。
機械の割れ砕ける響きが、殺人機械の終わりを告げる。
●(11)シン・オブ・スロース
「陰陽道四乃森流、四乃森沙雪。参ります」
四乃森・沙雪(陰陽師・e00645)は、左手で刀印を結び、右手に持った斬霊刀を慎重に構えつつドレッドノートの右腕の戦場へと足を踏み入れた。
戦場の大部分は既に制圧が完了していたが、確実に残敵を掃討しつつ歩を進めていく。
「攻略の手を広げすぎれば、戦力の分散に繋がってしまうんだ。確実にひとつひとつ攻略していくのが良いだろうね」
そもそも、このドレッドノートの戦場自体が、ケルベロスの戦力を分散させる罠でもある。
この罠を破るには、沙雪の言うとおり、一人一人ができる事を確実に行っていくしかないだろう。
右腕の戦場に残る敵は、もはや戦う気概を持たぬように、覇気無く撃破されていく。
他の戦場のように、自らの命を盾に指揮官型ダモクレスやドレッドノートを護るという気概は一切感じられなかった。
そして、戦場の最奥。
この戦場の指揮官であるシン・オブ・スロースもまた、けだるそうにケルベロス達を見ると、面倒くさそうに口を開いた。
「ほんと、こういうの面倒だから、帰ってくれないかな? この戦場を制圧したって、意味なんて無いんだからさ。全く、奇襲攻撃が来た時もビックリしたくらいなのに……。帰るのが嫌なら、先に進んでいいから、もうほっといてくれよ」
ブラフでも何でも無く、本心からそう思っているようなやけっぱちな口調であった。
実際、ケルベロスウォー直前に行われたドレッドノートの戦いで、コマンダー・レジーナを撃破している為、ドレッドノートの両腕による攻撃は無くなり、この戦場の価値は大きく減じている。
もし、レジーナの撃破に失敗したのならば、この両腕の武器が縦横無尽に振るわれ、ケルベロス達も苦戦は免れなかったのだろうが……。
だから、スロースは本心からケルベロスに恨みがましく不満を言い募った。
「せっかく俺が、戦闘になりにくい戦場に配置してもらったって言うのに……。あんたら何? 無能な働き者なの? 銃殺されたいの?」
奇襲を受けた時は単に怠惰一色に染まっていたシン・オブ・スロースだが、今の彼には怠惰でいさせてくれないケルベロス達への苛立ちが見えた。
「名は体を現すとは言うけれど、君は本当に怠惰なのだな。だけどね、俺達がここに来た理由は、お前の怠慢にも原因があるのだよ」
沙雪は、スロースの怠惰を嗜めるようにそう告げた。
スロースが怠惰により溜め込んだ力が、イマジネイターの力を強めているのだ。
イマジネイターの撃破を目指すのならば、この戦場を制圧する意味は充分にある。
「恨むのならば、自分の怠惰を恨むのだね」
沙雪はそう言うと、スロースに向けて四乃森流陰陽道護符を向けた。
「わかったよ、もういいよ。好きにすれば」
スロースも、面倒くさそうに『ベルフェゴールの錨』なる武器を構えるが、やる気は感じられない。
どうせ殺されるなら、抵抗しても無駄だと開き直っているようだ。
「まったく、これだから定命の奴は……そんなに急いで何をするっていうんだ」
スロースを、沙雪は素早い動きで確実に追い込み、そして……。
『鬼魔駆逐、破邪、建御雷!臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前!』
破邪聖剣・建御雷の詠唱と共に光の刀身を生み出して貫き通してみせた。
「あぁ、だる……」
貫かれたスロースはそう言い残し、怠惰なるままに永遠の眠りについたのだった。
●(13)機召羅
戦場には黒き姿の六腕仏像、機召羅の読経が響いていた。
「ナムハラハッターリンピョウトウシャ」
お経の意味は良く判らないが、実際、特に意味は無いのだろう。
だが、その読経によって機召羅は、配下の残霊達を操り戦いの場へと導いているように感じられた。さらに、その読経に加わるのは、ビルシャナを模したダモクレスの軍団だ。
「発進!! ちゅっちゅ明王ロボ軍団、ケルベロスを薙ぎ払え! ナムダイシヘンジョウチュッチュー!」
『『『ちゅっちゅちゅっちゅちゅっちゅちゅっちゅ!!!』』』
機召羅の号令に、ちゅっちゅ明王ロボ軍団の機械触手ちゅっちゅがケルベロスに襲い掛かると、シグリッド・エクレフ(虹見る小鳥・e02274)は半ば呆れ顔で戦場を見渡した。
「ビルシャナのデータを元に造られたとは聞いていましたが、これは少し酷いかもしれませんですの」
非正規部隊であるイマジネイター配下であるのだから、ある程度はしょうがないのかもしれないが……。
ケルベロス達は、ちゅっちゅちゅっちゅ煩い雑魚ダモクレスを戦力に物を言わせて薙ぎ払うと、戦場の掃討を開始する。
この戦場を制圧すれば、踏破王クビアラの戦場へ攻め入る事が可能となる。
その為の大事な一戦と思えば、多少、触手がちゅっちゅしても、腹は立たないような気がしないでもない。
「ベーゴマノーマイカー!」
シグリッドは、機召羅の意味不明の読経により、周囲の気温が3度下がったように感じるが、あえて無視してその懐に飛び込んだ。
機召羅は六腕をくるくると回転運動させてシグリッドを追いやろうとするが、その目的は果たせず懐に入られてしまう。
「ビルシャナの残霊とはまた、他力本願ですことね。翼持つ者として、縛られたままの皆さんを解放してさしあげますわ!」
シグリッドの素早い動きに翻弄された機召羅は、なんとか6本の手で梵字の印を組み、
「インドノソバヤー!」
と攻撃するも、そのような手なりの攻撃で怯むシグリッドでは無い。
腰を落とした構えのまま、その攻撃を受けきると、音速を超える拳で、機召羅を貫き吹き飛ばしてみせたのだ。
吹き飛ばされた機召羅は、六本腕をありえない方向にねじまげつつ、地面に激突しそのまま機能を停止する。
「これが、借り物の力に頼ったものの末路ですわね」
シグリッドは、破壊された機召羅の亡骸にそう声をかけ、興味を失ったように背を向けた。
ドレッドノートの戦いは、いよいよ佳境を迎えようとしていた。
→有力敵一覧
→(3)メカニスィーヤ工作部隊(3勝1敗/戦力100→0/制圧完了!)
→(6)あずさ実験部隊(2勝0敗/戦力1490→1390)
→(7)アリスティナ殺戮部隊(5勝1敗/戦力210→0/制圧完了!)
→(8)シュヴァロイド・ゼブル(6勝1敗/戦力1440→1130)
→(10)智の門番アゾート(2勝0敗/戦力1540→1440)
→(11)シン・オブ・スロース(3勝4敗/戦力170→0/制圧完了!)
→(12)英霊機タロマティア(5勝1敗/戦力2340→2080)
→(13)機召羅(49勝4敗/戦力2000→0/制圧完了!)
→(21)メタルガールソルジャー・タイプS(0勝1敗/戦力1270→1260)
→(27)レイナGGG07(1勝1敗/戦力360→300)
→(28)マルミGGG03(5勝2敗/戦力690→420)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。