■第7ターン結果
●統合王ジューダス
「改めて挨拶しておこう。我は統合王ジューダス。地球侵略の総指揮官だ。
お前達ケルベロスにとっては、敵の親玉ということになるな」
ゲートを目前にしたケルベロス達の前に現れたローカストは、そう名乗りをあげた。
ケルベロス達にも、彼が他のローカスト達と比較にならない強さを持っているのは見て取れる。
先ほど倒された『烈火』をさらに上回る力に、ケルベロス達にも緊張が走る。
ジューダスは、蜂に似た姿を持つローカストだった。
3mを越える長身のシルエットは人間に似ているが、四本の腕と、肩から生える蜂の腹状の部位が、彼の姿にいびつさを与えている。
ローカスト達が己の肉体を今のような姿に改造する以前から生き続け、神の信任を受けて全ての群れを総べる『統合王』。
ローカストにとっては、太陽神アポロンと同じく神話的な存在だ。
その彼が告げたのは、意外な一言だった。
「この場に至って、もはや戦いを止めるつもりは互いに無いだろう。
そして、ローカストゲートが破壊される未来は既に確定したと言える」
ジューダスの言葉に、ローカスト達に僅かな動揺が走った。
「意外と、あっさりしているのね?」
藤咲・うるる(まやかしジェーンドゥ・e00086)は首を傾げる。
ジューダスは、肩をすくめながら続けた。
「何故ならば、死をもたらす地球の戦士達よ、お前達の力はいまだ尽きておらぬ。
この一戦に敗北しようと、幾度でも攻撃を仕掛けることができるのだからな」
既に死力を尽くし、戦力の全てを注ぎ込んでの戦いを繰り広げているローカスト達とは異なり、ケルベロス達の力はこれが限界ではない。
世界経済への悪影響を気にしなければ、来月再び攻め寄せることすらできるだろう。
女王アリアや、既に死んだ六花の女王のような多産のローカストが戦力増強を試みたところで、焼け石に水だ。
「だが」とジューダスは言葉を続けた。
「太陽神アポロンによる『黙示録騎蝗(ローカスト・ウォー)』は既に発動した。
地球の命を喰らい尽くすまで、ローカストは暴殖の本能を止めはしない。
そして我も、我が信頼する戦士達もまた、お前達との闘争に敗北する気はない」
「ゲートを捨てれば幾らでも戦う道はある。なれば──今は太陽神アポロンに倣おう。
我が同胞(ローカスト)よ、暴殖せよ!!」
ジューダスの下知を受けたローカスト達の戦意が一気に高まるのをケルベロス達は見た。それこそが、ローカストという種族の本性なのか。
「すごい力。でもね……私達だって、負ける気なんてないから!!」
うるる達ケルベロスもまた、その全力をもってゲートへの最後の道を阻むジューダス達を倒しにかかる。
「我が友の遺せし刃、見るがい!!い──!」
自ら前線に立ったジューダスは、オウガメタル『烈火』の遺した刃をその四本の手に現すと、一気にケルベロス達の戦列を切り崩しにかかる。
「烈火氷蓮刃!!」
四連の刃は、ケルベロス達を次々と切り裂きながら、その体温を略奪していく。
前線に立つ一線級のディフェンダー達が、その刃の前に次々と膝を屈する。
親衛隊のローカスト達もまた、全力を以てケルベロス達へと喰らいついてくる。
「諦める必要などない! 我らが暴殖は、ここからだ!!」
ジューダスの号令に、奮い立つローカスト達。だが、ケルベロス達の勢いは次第にそれを上回っていく。
「統合王、バンザイ……!!」
ケルベロス達の前に、親衛隊の最後の一人が倒れ伏す。
一人となったジューダスは、しかしそれでもなお精強だった。
戦の昂ぶりは、彼に敵以外の全てを見えなくさせているかのようだ。
烈火氷蓮刃を振るい、抵抗を続けるジューダスの動きに、しかしケルベロス達は次第においついていく。
「我が速度に追い付いて来るか!!」
「少し頭を冷やした方がいいんじゃないの、王様!!」
うるるは、その身に溜め込んできた病魔を解き放つ。氷柱として現れたグラビティは、罪を裁くように、ジューダスを貫い、その熱を奪い去る。
「見事……!!」
ジューダスの手から刃が零れ落ち、その体から力が抜けていく。
その身が消滅する寸前、ジューダスは告げた。
「太陽神アポロンには気を付けることだ。奴は己を顧みることなどない。
だからこそ、奴は『神』なのだろうがな……」
後に残ったのは、渦を描いてローカスト本星へと続く『ゲート』。
ケルベロス達は、全力を篭めてゲートへとグラビティを放った。
●ヘラルド先遣隊
暴殖要塞アポルオンの下層。
甲殻列車の上では、ヘラルド先遣隊の蟻型ローカスト達と、ケルベロス達との戦いが最終幕を迎えようとしていた。
「ええい、ここに来て戦力を増強するとは!!」
甲殻列車の屋根の上。
隊長の『ヘラルド』は、勢いを増したケルベロス達の攻撃に決死の反撃を行っていた。
だが、既に部下達はことごとくが死亡し、残るは彼一人。
「抵抗は無駄です。武器を捨てて投降しなさい!!」
「愚かなことを!!」
牽制するように射撃を繰り出して来る物部・帳(お騒がせ警官・e02957)の言葉に、ヘラルドはガトリングガンを向ける。
甲殻列車の屋根上の凹凸を利用してそれを回避した帳は、ヘラルドへ向けて印を切る。
「禁縄禁縛呪!!」
黒蛇の如き御業が、ヘラルドを縛り付ける。
「くっ、これは……!!」
「今であります!!」
ヘラルドの動きが止まった瞬間に、ケルベロス達が一気に前進した。
ヘラルドへと次々に繰り出される攻撃は、ここまで長時間を耐え切った先遣隊長を確実に死へと追い込んでいく。
「おのれ、まだ、やられるわけには……!!」
オウガメタル製のガトリングガンを敵にぶつけるようにして後退するヘラルド。
だが、帳は彼を逃がさなかった。
「この弾は、少々特別製でありますよ!」
拳銃から飛び出した水銀の銃弾。それは、蛇神の御業を喚ぶための呪物だ。
ヘラルドはその弾丸を神業的な技量で撃ち落とすが、その瞬間に弾丸から飛び出したのは黒蛇の御業だった。
ヘラルドを取り巻くようにして猛烈な雷嵐が巻き起こり、帳が打ち込んでいた弾丸を巻き込んで連鎖的な反応を呼んだ。
雷の中で消滅していくヘラルドの姿は、帳達に勝利を告げるものだ。
だが、帳達が一息ついたのも束の間、甲殻列車が大きく揺れる。
「な、何でありますか?」
「ヘラルド殿、列車は自分達が必ずや有効活用させていただくデス」
甲殻列車の運転席には、イクソス・カーネルがいた。
先遣隊唯一の生き残りとなった彼は、ヘラルドが残した甲殻列車を飛行モードにする。虫翅を振るわせて飛翔を開始した列車がぐるぐると身をローリングさせると、取りついていたケルベロス達も次々に振り落されていく。
●太陽王アポロン
太陽神アポロンが座す暴殖要塞アポルオンの一角は、まるで宮殿のように飾り立てられていた。
だが、それもこの宮殿の主にとっては当然の権利であろう。
ケルベロス達が見た予兆が正しいならば、この宮殿の主は『太陽神』と呼ばれるアポロンであり、そして、暴殖要塞アポルオン自体が、アポロンが統合王ジューダスに与えたものなのだ。
だが、その太陽神アポロンは今、激怒していた。
「ジューダス、あの無能めが!! ほとほと呆れ果てるわ!」
自らの無策を棚に上げてジューダスを罵るアポロン。
だが、それを止める者はここにはいない。
何故ならば、アポロンは彼らの上に君臨する、偉大なる太陽神なのだ。
「アポロン様、急ぎ撤退を。既にケルベロスどもが迫っております」
「撤退ではない。出撃、だ。愚か者が!」
アポロンに忠告したローカストが、コギトエルゴスムと化して床に転がった。
(「愚かな奴め」)
アポロンの側に控えていたスポアローカストマスターが、それを拾い上げる。
地球の豊富なグラビティ・チェインがあれば、じき元に戻して戦力化されるだろうが。
「アポロン様……」
抑えきれぬ本能のままに、スポアローカストマスターはアポロンの言葉を促す。
「朕の臣民(ローカスト)よ。
汝らは理性の喪失を恐れるか? 定命化を、ケルベロスを恐れるか?
否、否、否だ!! 全て恐れる必要など、ありはしない!!
1年。ただの1年があれば、我らは地球全てを喰らい尽くそう!
この豊穣なるグラビティ・チェインに満ちたる地球こそ、朕達の約束の地!!
臣民(ローカスト)よ、ローカスト・ウォーは終わらぬ!!
朕に従え!! そして全てを喰らい尽くすのだ!!」
暴殖要塞アポルオンから、ローカストゲートが消滅していく。
それと時を同じくして、ローカスト達は一斉に上空へと飛び立った。
その姿はローカストの敗走と、展望なき『黙示録騎蝗(ローカスト・ウォー)』の始まりを告げるものであった。
→有力敵一覧
→(3)ヘラルド先遣隊(10勝4敗/戦力300→0/制圧完了!)
→(6)ヘルクレスト侵略部隊(0勝1敗/戦力1150→1150)
→(7)ストリックラー・キラー(8勝4敗/戦力900→500)
→(9)狂愛母帝アリア(5勝1敗/戦力1550→1300)
→(11)スコルピア・ヴェノム(16勝3敗/戦力1100→300)
→(12)狂愛のポリリャエラ(0勝2敗/戦力1800→1800)
→(14)阿修羅クワガタさん(4勝1敗/戦力1400→1200)
→(17)ローカストゲート(18勝16敗/戦力750→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。