ケルベロス・ウォー

　近衛軍を率いるディオンを破った万能戦艦ケルベロスブレイドは、次第に高度を落とし、惑星マキナクロスの地表付近へと降下していく。
　数えるのも嫌になる程の数の対空砲から放たれる無数の光線は、惑星マキナクロスの空を染め上げんとするかのようだ。
　その攻撃を分解式魔導障壁で受け止めた万能戦艦ケルベロスブレイドの内部では、マキナクロスの情報収集と解析が進んでいた。 　障壁に無数の火花を散らしながら空を征く艦の中、グラビティ・チェインレーダーと接続したヘリオライダー達が、館内放送でケルベロス達に情報を伝える。

『アダム・カドモンの居場所が判明しました！』
　館内に設置されたモニターに、予知された付近の情報が映し出される。
「ここは……使者たちがアダム・カドモンとの会談を行った場所か？」
　隠蔽されていた敵の居場所が判明し、万能戦艦ケルベロスブレイドは一直線に空を翔けていく。
　ダモクレスによる対空迎撃も、近衛軍を退けた今は手薄だ。
　そして目標地点の上空に差し掛かると、万能戦艦ケルベロスブレイドのハッチが開く。
　急激に高度を下げていく万能戦艦。
　そのハッチから外を眺めつつ、シルディ・ガード（平和への祈り・e05020）は思わず呟く。
「まあ、やっぱり、これだよね」
　艦載機群と共に艦の外に飛び出していくのは、ケルベロス達だ。
「目標地点目掛けて落ちるのはケルベロスの必須技能……！！」
　シルディは意を決し、その身を宙に踊らせた。
　大気は、金属の匂いを帯びている。
　飛来するダモクレスの気配を察し、その放つグラビティを手近な艦載機を蹴って避けたシルディは、全身を回転させて星形のハンマーを振るう。
　砲撃形態に変形したハンマーから放たれた砲弾が、頭上を横切ったダモクレスに命中、炎を受けて爆散する。
　その爆風を受け、さらに加速したシルディは、勢いを増して金属の地表へと到達する。
「……さ、流石に高いと痛いね……」
　音を立てて、ケルベロス達が降り立ったケルベロス達は、視線を上げ、周囲を見た。
　そして、
「散開ッ！！」
　一斉に地面を蹴ったケルベロス達は、着地地点に叩き込まれてくる砲火を避け、それを放ったダモクレス達へと飛び込んでいく。
「さあ、僕らの想いを届けにいこう！！」
　ケルベロス達は一斉に、アダム・カドモンへの行く手を阻むダモクレスとの交戦を開始した。

　惑星マキナクロスの地表での戦いは、ケルベロス達の優勢のまま進みつつある。
　超神機アダム・カドモンは、惑星各所に設置されたカメラを通じ、その光景を目にしていた。

『ケルベロスが勝てば、コギトエルゴスム化を封じる方法を模索すればいい。
　歪みを生まれなくすることで、宇宙の平和は保たれよう。
　私が勝てば、地球をマキナクロス化し、我が同胞たるダモクレスを進化させる。
　さらなる機械化と進化によって、『歪み』への対策を模索しよう』

　己の生死、そして宇宙の未来をかけた戦いに望まんとするダモクレスの創造主は、静かにカメラから流れてくる情報を分析していく。

『いずれにしても、宇宙は救われる。
　いずれも正しいならば、力によって正義を確かめる他に無い。
　同胞達よ、存分に、ケルベロスにその力を見せるがいい』