■第5ターン結果
●『神託の死神』ネーメルテース
「冥府の神の神託を受ける者……ですか」
大型の死神の背に立つ目隠しの死神。
その姿は、あたかも神託を告げる巫女のようにも見えた。
カルナ・ロッシュ(彷徨える霧雨・e05112)は、その姿を見下ろしながら、華輪・灯(春色の翼・e04881)と共に戦場を飛ぶ。
「咲き誇れ、氷晶の華よ!」
詠唱が氷の華となり、死神達を包んでは冥府の海へと消えていく。
幾つもの防衛ラインによる抵抗も、万能戦艦ケルベロスブレイドを阻みきれるものではなかった。
死神たちは、正面からの決戦ではなく、こうして時間稼ぎとダメージの蓄積を狙っている。防衛戦ということもあるのだろうが、ケルベロスの性質を理解した動きであった。
「全ての源はどこにあるのでしょう? 冥王は識っているのでしょうか?」
冥王イグニスと繋がっている、神託の死神ネーメルテース。
彼女ならば、なんらかの答えを知っているのかも知れない。だが……。
「いえ、識っていたとしても、それは過去の話ですね。だからこそ冥王は、未来を可能性を畏れる……」
幾つもの姿になって勢力間を渡り歩き、デウスエクス達を意のままに御する能力を持つイグニスをして、図るきることのできないケルベロスという未知。
ならばこそ、自分達こそが死神の陰謀を砕けるのだと、カルナは確信する。
「だから進みます、この先も一緒に!」
灯の援護を受けつつ、カルナは小剣型艦載機をネーメルテースへと向ける。
凍気を放つ形状に変形したドラゴニックハンマーを大きく振りかぶり、神託の死神へと叩きつける。
「……!? 撤退、します……援護を……」
確かな手応え。
だが、ネーメルテースは苦痛に耐えつつ、残存する死神達に守られて撤退していく。
「仕損じましたか……」
万能戦艦ケルベロスブレイドへと帰還するのだった。
●死神レクイエム
死神レクイエムが率いる主戦場の戦力は、これまでの戦場でも最も多いものとなっていた。渦を巻くようにして、万能戦艦ケルベロスブレイドを取り巻く死神達。
その中央に、黒衣の死神がいる。
「『死者の泉』は持ってこなかったのですね」
万能戦艦ケルベロスブレイドの方を見て、黒衣の死神はどこか残念そうに言った。
小剣型艦載機から飛び、蹴り掛かりながら、リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)は応える。
確かに命中していながら、どこか不確かな感触に、リリエッタは眉を寄せつつも死神レクイエムに告げる。
「『死者の泉』を、あなた達に渡す意味なんて無いんだよ!」
「そうでしょうか。『死者の泉』を返せば、生と死の境界線は正されるというのに」
「生と死の境界線……? それが、『死者の泉』の機能?」
黒衣の死神が放った漆黒の種が弾けたかと思うと、彼岸花が空中に咲き乱れ、その花弁からさらに大量の花粉のようなものが飛んでくる。
ケルベロス達の命を貪らんとする花を避けながら、リリエッタは考える。
アスガルド神やエインヘリアルは、『死者の泉』を新たなエインヘリアルを作るために使っていた。が、それは死神が有していた時の、本来の機能ではあろうはずがない。
それは、ケルベロス達にも容易に推測できることだ。
この黒衣の死神、レクイエムの言葉が正しいのだとすれば……。
「『死者の泉』とは『生と死の境界』。
アスガルド神の指示のもと、ヴァルキュリア達が『死者の泉』を奪った時から、死神はあなた方の宇宙に染み出すようになった。
『死者の泉』が戻れば、それもなくなるでしょう」
かつて一時は共闘すらした死神『死翼騎士団』が言っていたことと一致する。
確かに、それなら死神と争う必要などないかにも思える。
「……ううん、やっぱりダメだよ」
生死の境目が完全に閉ざされた後、行き場をなくしたザルバルクが冥府の海を広げ続けるだけならば良いが、『冥府の海は必ず溢れ出す』ことを、既にケルベロスは知った。
そして死神は既に、邪悪な意図を持って地球を滅ぼそうとするまでに至っている。
「『死者の泉』が完全に冥府の海の側にいってしまえば……向こうからだけじゃなくて、こちらからの介入も出来なくなる。そういうことなの?」
『なぜ狂戦士オーディンは、死者の泉を奪ったのか?』
その答えのひとつを、リリエッタは掴んだように思った。
主目的が『突入口の確保』であったのなら、多少のリスクを覚悟の上で、敵(死神)が気付く前に動く価値はあっただろう。
さらにオーディンは、『死者の泉』を利用することで、対死神の戦力としてエインヘリアルを創神してもいる。一石二鳥の策だ。
「私は『レクイエム』。『生と死の境界線』に在る者……」
話は終わりというように、レクイエムは両手を広げる。
再び、赤々とした彼岸花が、戦場を覆い尽くさんと咲き乱れていく。
「死者を冒涜しておいて鎮魂歌だなんて、おこがましいんだよ!」
黒衣の死神が『死神の因子』を用いてデウスエクス達を狂わせていたことは、リリエッタ達もよく知っていた。
決して無垢なる存在などではないのだ。
咲き乱れ、ケルベロス達の命を貪ろうとする彼岸花を切り裂いて、小剣型艦載機が飛んでいく。ケルベロス達の攻撃がレクイエムの巻き起こす嵐を、その黒衣を貫いていった。
「ルー、力を貸して!」
「ええ、思う存分、やってしまって」
リリエッタは、飛来したルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)の手を握る。
両者の手を通じて循環し、瞬時に高められた魔力は、かざされた手から死神レクイエムを目掛けて撃ち出された。彼岸花を貫いて飛んだ荊棘の魔弾は、死神レクイエムへと命中し、そして食らいついた。
肉体を蝕まれる痛みの中で、レクイエムは表情も変えずに言う。
「戦いの痛み……これも、身体なくば味わうことのなかったものかも知れませんね」
「あなたは……一体、何なの?」
ただの死神ではない。
だが、デウスエクスのような生命力も感じない。
「私は、奪われし『死者の泉』が冥府の海に落とす影法師。
ここで斃れても、『死者の泉』と冥府の海が存在する限り、再び現れるでしょう」
「……あなたもそっち系なの」
無尽蔵に増殖し姿を変えるザルバルク。
同じく様々な姿で現れ、蘇生(サルベージ)を繰り返すカラミティ。
そして、『死者の泉』がある限り、何度でも現れるレクイエム。
どうも冥府の海で重要とされる者達は、そろって滅びない性質を持つらしい。
「デウスエクスが生死の均衡を乱すとかいう割に、自分達も滅茶苦茶だね」
「デウスエクスの誕生が、私達を産んだ。生死の狂いも反映されたのでしょう」
「それって……?」
リリエッタが再びレクイエムの方を向いた時、彼女の姿は既に消えている。
最後の言葉の意味を考えつつ、リリエッタ達は万能戦艦ケルベロスブレイドへと帰還する。
そして主戦場の制圧を受け、万能戦艦ケルベロスブレイドは第六次防衛ラインを強行突破すると、さらに『地獄』へと近付いていくのだった。
→有力敵一覧
→(17)ゼーミアミン・ブロイト(1勝1敗/戦力900→760)
→(18)白鯨(1勝1敗/戦力900→760)
→(19)第6次防衛ライン主戦場(18勝4敗/戦力1500→0/制圧完了!)
→(20)『神託の死神』ネーメルテース(6勝2敗/戦力900→100)
→(21)ヴォジャノーイ・カローリ(1勝1敗/戦力900→760)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。