■第4ターン結果
●狂信のユハ
太平洋上に広がっていた『冥府の渦』は、冥王イグニスの死(本人の言が正しいなら、あくまで一時的なものであろうが)に伴って、その勢いを急激に衰えさせつつあった。
ザルバルク剣化波動の効果もあり、海の変化は一時的なものに収まるだろう。
そのような状況下にあっても、なお残存している死神の勢力があった。
「生者の世界は冥府の海に飲み込まれる。それが冥王の示した定め!」
ドラゴンの蘇生(サルベージ)を狙っていた『狂信のユハ』は、なおもその目的を諦め切れぬ様子であった。
竜業合体ドラゴンという極大の戦力を蘇生(サルベージ)できれば、死神たちにとっても大きな影響があるのは確かだが、それだけとは思えぬ執着だ。
その姿は、彼が持つ『狂信』の二つ名を端的に示していると言えたかも知れない。
「でも、そんな勝手な真似は、させないよ!」
リーナ・エスタ(シェルブリット・e00649)は、艦載機上から指先をユハに突きつけ宣言する。
「己の欲望のままに死者を弄ぶ死神……その罪、このリーナたんが裁く!」
「審判者を気取るか。おこがましいな、リーナタンとやら!」
微妙に勘違いした発音でリーナを呼ぶと、ユハの周囲の気温が急激に低下する。
「私の邪魔をするならば、蒼き氷の内に沈め!」
蒼氷の華を咲かせ、ケルベロス達を包み込まんとするユハ。
対するケルベロス達は、蒼氷を蹴り、残存する死神達を滅ぼしていく。
既にユハを守る戦力も残りわずか。雷神砲までもが突き刺さり、ユハを守る蒼氷を吹き飛ばす。
「ワガママと言われようと構わないから! 裁きの雷を受けなさい!」
眼下にユハを見下ろし、リーナは素早くパズルを組み替える。
死罪を告げるべく放たれた一条の雷が、ユハを貫き、彼の体は氷上に屈する。
「竜業合体ドラゴンを、エインヘリアルの王子を、攻性植物の聖王女をサルベージすべき、この私が、ケルベロス如きに滅ぼされるとは……」
そう言い残し、死神の姿は消滅していくのだった。
●(18)聖王女アンジェローゼ
「ゲートなしに移動できる能力をもっているのは厄介だな。ここでなんとか倒しきれれば良いんだが……」
小剣型艦載機群を足場にして、アンジェローゼの戦場に突入したルーク・アルカード(白麗・e04248)は、聖王女の危険性を認識し手にした惨殺ナイフに力を込める。
だが、危険性は別として、アンジェローゼの動きには不明な点も多い。
攻性植物との決戦であったユグドラシル・ウォーでは、戦場に出てはいたが、ゲートを守護するのでもなく、戦後すぐに撤退している。
その後、残党勢力を糾合しようとする動きは見せていたが、主体的な動きはしていなかった。
今回の一連の動きも、竜業合体ドラゴンへの支援であった筈だが、予知によれば、何かを確かめて戦争の途中で撤退するのだという。
「厄介さは最大。しかし、目的がわからない敵か……。可能ならば、その目的を暴き出せれば良いんだが」
ルークは、そう結論づけると、小剣型艦載機群を足場にして、敵陣深くに切り込んでいく。
攻性植物の残存勢力が防衛に出てくるが、今のケルベロスにとっては、さほど強敵と言う事は無い。
ルークは、共に戦うケルベロス達と協力して、デウスエクスを次々と撃破すると、聖王女アンジェローゼの前へと押し進んだ。
そして遂に、全ての迎撃網を突破したケルベロス達は、攻性植物残党軍の首魁、聖王女アンジェローゼと相対する。
彼女は、手にした青い球体をいつくしむように抱えると、ルーク達ケルベロスに、無垢な笑顔で微笑んでみせた。
「ようこそいらっしゃいました、ケルベロス。皆さんが、ここまで来てくれた事を、祝福いたしますね」
その言葉と同時に、まばゆい光……シャイニングレイがアンジェローゼの後背の翼より放たれた。
目を焼かれ、飛びのくルーク達ケルベロス。
「ようこそいらっしゃいましたと言いながら、これは無いんじゃないのか?」
攻撃に耐えたルークは、惨殺ナイフを逆手に持ち油断なくアンジェローゼと距離を取る。
「これが、私アンジェローゼの最後の仕事ですので、多少の無作法はお許しください。さぁ、どうぞ、遠慮はいりません。私を倒してみてください」
紅茶をもう一杯いかがですか? と勧めるように、自分を倒すようにと勧めるアンジェローゼの言葉に、ルークは、より警戒を強めた。
「最後の仕事? それが、あんたの確かめたい事なのか?」
ルークは、そう問いかけつつ攻撃を仕掛けると、アンジェローゼは避けるまでも無く、惨殺ナイフの刃を受け止めて見せた。
「はい、そうです。私は大阪城にいた死神が不完全な形で聖王女の蘇生(サルベージ)を行った際、聖王女エロヒムの力でユグドラシルへと送られました。世界の全てを救う希望の光を探す為に……。当初は、レプリゼンタこそが、そうであると考えていたのですが」
残念ながら、彼らは相応しいとは言えませんでした。アンジェローゼは、可愛らしく小首をかしげてそう続けた。
「……偉そうに言う。で、今度はケルベロスを試す為に戦うのか?」
ルークの反駁に、アンジェローゼは、微笑んで頷いた。
「あなた達がグラビティに込めている本当の願いを知るには、攻撃を受けるのが一番確実です。さて、私アンジェローゼの願いは、デウスエクスの存続です。デウスエクスが必ずしも善良なる存在とは言いませんが、全滅せねばならない程に罪深いとは思えませんから」
再び放たれたアンジェローゼのシャイニングレイ。
その攻撃を受けたルーク達ケルベロスは、アンジェローゼのその言葉が真実である事を認識する。
攻撃を通して、互いの真実を交換しようとでもいうのだろうか?
「俺の望みは、誰かを……愛する者を守る事。そして、この地球を平和にする事だ! デウスエクスを滅ぼすつもりは無い。定命化を受け入れてくれれば、共に生きる仲間だからな」
ルークもまた、願いと共にアンジェローゼにブラックスライムを放った。
その攻撃によって翼の一対を喰い千切られながら、アンジェローゼは嬉しそうに微笑んだ。
「とても、良い願いですね。ですが、定命化を受け入れられるデウスエクスは決して多くありません。定命化を受け入れられない存在は、等しく死を与えなければならない悪なのでしょうか? かつてのように、遠い世界で互いに幸せになる事はできないのでしょうか?」
放たれた時空凍結結界によって凍り付いた時間の中、ルークは、アンジェローゼの問いかけの意味を考える。
宇宙の星々の数を考えれば、これまでに地球に現れたデウスエクスなど、「ほんの一部に過ぎない」のかも知れない。
宇宙を襲うグラビティ枯渇現象が収まらない限り、いつか遠い未来に、新たなデウスエクスがグラビティ・チェインを欲して地球の知的生命体を狙わないとは限らない。
その時ケルベロスは、彼らに諦めろとだけ告げ、殺すのか。
しばし逡巡しながらも、ルークは意を決し、アンジェローゼに最後の攻撃を繰り出した。
「定命化を受け入れないデウスエクスを全て滅ぼすべきか否か……か。俺が決める事では無いし、俺が決められる事でも無い。だが、それがどんな困難な問題であろうと、俺達は絶対に、より良い未来を切り開いて見せる。それが、ケルベロスだ!」
その言葉と共にルークのブラックスライムが、アンジェローゼの体を穿ち捕食する。
致命の一撃を受けたアンジェローゼ、
だが、彼女は、嬉しそうな微笑みを浮かべて、その攻撃を受け入れていた。
「今はその言葉で充分です。聖王女エロヒムは、死神によってデスバレスの奥底に封じられています」
かつて、死神は聖王女を蘇生(サルベージ)しようとしたことがあった。
その時点で既に、あるいはもっと古くから、聖王女はデスバレスに確保されていたのだろう。
「どうか、デスバレスの奥底の聖王女エロヒムにお会いください。そして、その時にこそ、あなた達の最後の答えを、聞かせてください」
ケルベロスによって、死神の望む形で聖王女が蘇生(サルベージ)されることは、これまで免れられている。聖王女に会うことは、全ての真実を解き明かす鍵となるのかも知れない。
「冥王イグニスは『死者の泉』を手に入れる為、地球の海のデスバレス化を行うでしょう。しかし、その時こそデスバレスに侵攻する唯一の機会となるのです」
アンジェローゼはそう告げると、光の粒子となって空と海に解けていく。
残されたケルベロスは、その言葉を胸に、ドラゴンとの決着に向けて歩みだした。
→有力敵一覧
→(2)漆剋竜アマデウス(0勝1敗/戦力1130→1120)
→(4)楽園竜パラディシカ(1勝0敗/戦力730→605)
→(5)レスタシア(0勝2敗/戦力55→35)
→(6)大罪竜王シン・バビロン(8勝4敗/戦力1365→325)
→(7)暴風竜ボレアス(0勝1敗/戦力1000→990)
→(8)魔竜アストラ・ワイズ(2勝1敗/戦力450→190)
→(11)空中戦艦レナト・クエリア(1勝0敗/戦力825→700)
→(14)光世蝕仏(1勝0敗/戦力825→700)
→(15)狂信のユハ(1勝2敗/戦力35→0/制圧完了!)
→(16)『森の女神』メデイン(1勝0敗/戦力925→800)
→(18)聖王女アンジェローゼ(11勝1敗/戦力865→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。