■第5ターン結果
■フォールクヴァング
●凶星のディオレッツァ
東京防衛戦の戦いは、激しさを増し、戦場は人馬宮ガイセリウムの中心部へと場所を変えていた。
そして、ケルベロス達は遂に、潜入部隊がヴァナディースを撃破した場所、フォールクヴァングへと足を踏み入れたのだ。
フォールクヴァングは、光り輝く宝石により飾られており、その美しさは、名状しがたい程であり、ケルベロス達は思わず息を呑んだ。
「美しいだろう? 当然さ、この輝きは、アガーテ、エスメラルダ、シフォーツェ、ラメルラメラ、イーツェルー……。
私を愛してくれた、数多のヴァルキュリア達のコギトエルゴスムの輝きなのだからね」
ケルベロスが自分に殺される様をヴァルキュリア達にも見てもらおうと飾りつけたのだと言う、その声の主は、ヴァルキュリア部隊の指揮官であったエインヘリアル、凶星のディオレッツァであった。
彼は、ケルベロス達の様子を確認すると、その金髪をファサーとかきあげると、言葉を継いだ。
「だが、ケルベロスにも美しい者は居るようだ。ならば、お前達の過ちを許そう、美しき者には罪がないのだから」
ディオレッツァは、ケルベロスを、特にカルラ・アノニム(鼓動亡き銃狐・e01348)を見て、両手を差し伸べた。
その芝居がかった仕草は、自分の美しさに絶対の自信を持つものだけが語ることができる、言葉であったかもしれない。
が、それに応えるケルベロスなど、居るはずもない。
「自分を愛してくれたじゃと? 洗脳して操っていたの間違いじゃろう」
カルラは、キセルを一服すると、ディオレッツァの言葉を完全に否定した。
ディオレッツァの言葉は、ヴァルキュリアと、そして、ヴァルキュリアをケルベロスに託して逝ったヴァナディースを侮辱するものであったのだから。
「洗脳? 聞き捨てならないね。まぁ、私の美しさに心が囚われることを洗脳と呼ぶならば、そうかもしれないが……。まぁいい、お前達も、いずれ、私の美しさの虜囚となるのだ、多少の無礼はその美しさに免じて許してやろう」
ディオレッツァはカルラにそう答えると、長柄のハルバートを片手で振り回し、ケルベロス達の中心へと悠然と歩み出た。
「私が美しき者と同じくらいに好きなものを知っているかい? それは、虐殺と死闘さっ! さぁ、存分に死合おうじゃないか」
ディオレッツァは、そう言って正面から撃ちかかって来たが……ケルベロス達には、それに付き合う理由は特に無かった。
ディオレッツァを取り囲んだケルベロスのグラビティが、雨霰のようにディオレッツァへと降り注ぐ。
その攻撃に、ディオレッツァの秀麗な顔が歪んだ。
美しい自分に、このような蛮行をするなど信じられないと言う表情である。
が、信じようが信じまいが、ダメージはダメージであり、周囲をケルベロスに囲まれたディオレッツァに、既に勝機は無かった。
そして、最後に、カルラが纏った地獄の炎がディオレッツァの着衣を焼き尽くし、そのままティオレッツァ本人も徐々に燃え尽きていくのだった。
「大層な二つ名をもち、自分は美しいとでも思っているようじゃが……、ケルルベロスの中では、まぁ、普通くらいの顔じゃったろうよ」
その、カルラの最後の言葉に、ディオレッツァは絶望の表情を作り、そして灰燼と帰した。
こうして、ケルベロス達は、フォールクヴァングを征圧し、ヴァルキュリアのコギトエルゴスムを確保する事に成功したのだった。
●楽園樹『オーズ』
人馬宮ガイセリウム中枢、フォールクヴァング。
そこは、アスガルド神・ヴァナディースが捕らえられていた、機械神殿である。
「あれは全て、ヴァルキュリア達のコギトエルゴスムかよ……」
神殿の装飾のように、飾られる宝石がコギトエルゴスムである事に気づいた鷹野・慶(魔技の描き手・e08354)が、声をあげる。
更に、その神殿の中心部、ヴァナディースが居た場所に、居てはならない物を発見し、うぇっと声を飲み込んだ。
かつて、ヴァナディースが居た中枢部は、蠢く巨大な大樹が繁茂していたのだ。
それもただの大樹では無い。
大樹から枝分かれした小鳥や虫や動物達が、あたかも、大樹の世界の住人のようにざわめき、不思議な力を秘めた果実が、たわわに実る楽園樹『オーズ』だったのだ。
「アスガルド神の力を吸収した攻性植物だとでも言うつもりか?」
「あの果実は、まさかっ?」
このまま放置すれば、この大樹は新世界を孕みつつ、巨大に育ち、いずれ世界を飲み込むかもしれない……。
オーズを見た慶達は、そんな現実離れした危機感を感じで、肌を粟立たせた。
「イグニスも危険だが、この『オーズ』は、更に危険かもしれない。ここで必ず倒す」
慶の号令で、ケルベロス達が『オーズ』を攻撃する。
そして、ケルベロスは、オーズの新世界を焼き尽くし破壊していく。
砕かれる果実、滅ぼされる小鳥と動物、切り裂かれる枝、毎散る葉……。
そして遂に、オーズの中心たるコアが露出する。
「たとえ、敵が新世界であったとしても、ケルベロスの牙は必ず噛み砕く。行けっ! ユキ」
その声を聞き、慶のウィングキャット・ユキが、尻尾の輪を飛ばし、オーズのコアを破壊して見せたのだ。
そして、遂に轟音と共に、『オーズ』が崩れ落ちたのだった。
その後慶は、誇らしげなユキの喉をなでてあげながら、
「オーズの果実……。あれが、既に世に出回っていたとすれば、イグニス王子の魔の手は既に地上に及んでいたのかもしれないな」
オーズが滅びた空間を睨み上げ、そう呟くのだった。
■イグニスのハーレム
●玉の輿狙いのミアン
左脚のアルカブを破壊した事で、高さを下げた人馬宮ガイセリウム。
動力炉アル・ナスルを征圧したケルベロス達は、イグニスの天空神殿に攻め込むべく、高高度からの突入作戦を敢行していた。
突入したのは、イグニスの天空神殿の上部に造られた、イグニスのハーレムである。
ハーレムを制圧する事に成功すれば、イグニスの天空神殿の防備はかなり薄くなる。
戦略的に重要な地点なのだ。
「女性は守るべきだというのに、その女性に自分を守らせるなんて、イグニスも見下げ果てた男ですね」
ハーレムへの突入を果たした神薙・流人(護りしもの・e13632)は、そう吐き捨てる。
周囲の建物は、毒々しい色彩のヴェールがふんだんに使われ、磨きぬかれた通路の壁を飾っている。
照明として設置されたたいまつからは、イランイランのような上品で淫靡な香りがかぐわってくる。
そして、敵として立ちふさがるのは、全て艶かしい姿をしたシャイターンの踊り子達なのだ。
シャイターンの踊り子達の褐色の肌の色が、戦場を埋め尽くす。
それはまさに、肌色が7、その他が3の世界だ。
この戦場は、性別か年齢かのどちらかの制限が必要であったかもしれない。
「あられもない姿の女性を攻撃するのは抵抗がありますが……仕方ありません」
見えてはいけないものが、いろいろ見えてしまうが、流人は、鍛錬で培った精神力で平常心を維持して戦い続けてみせた。
「あんた、不能なの~? こんな魅力的な私を目の前にして、堅くならないなんて不能くらいしかありえないわっ!
見てよ、イグニス様の子種を授かる為に、磨き上げたこの体を! 誰に見られても恥じるところなんて、ひとっかけらもないわっ!」
そんな平常心で戦う流人に怒りを露にしたのは、その場のハーレム要因の中で最も肌が艶々で、最も胸がぽよぽよで、最もお腹が引き締まり、最も尻が安産型の踊り子であった。
「今日は、この私、ミアンの待ちに待った水揚げの日だったのよ。戦場で高ぶったイグニス様のアレを、こうして、あぁして、あぁ、私、濡れざるをえない~~」
玉の輿を狙ってハーレムに入り、そして遂にその本懐を遂げようとしていたミアンは、艶々の肌を露出してぽよぽよを見せ付けながら、八つ当たり気味に攻撃を仕掛けてくる。
思わず顔を赤らめるケルベロス達を尻目に流人は、
『一閃……!』
そのミアンの急所を狙いあたわず貫き、切り捨てた。
「あぁ凄い、私、貫かれてる。あぁ、逝くぅぅぅぅ」
切り捨てられたミアンは、昇天するような表情で、息絶え……。
「敵があなただったのは不幸中の幸いでしたね。女性を切り捨てた罪悪感を、感じなくてすみそうです」
流人の眉を顰めさせたのだった。
●滾血のバルフウラ
「ヒャハハハハ! てめぇらを血祭りにあげて、その血でハーレムのじゅうたんを真っ赤に染め上げてやるぜぇぇ!!」
ハーレムの守備を任されたシャイターン、滾血のバルフウラは、その名の通り、戦いに血をたぎらせ、美貌を台無しにするように表情をゆがめ、完全な狂乱状態に入っていた。
既にハーレム内部は、シャイターン達との交戦で荒れ果てているが、その中でも、バルフウラの周囲は、特に被害が酷い。
タールの翼が鞭のようにしなり、周囲を荒れ果てさせているのだ。
他のシャイターンは使用していない。
おそらくは、彼女独自のグラビティなのだろう。
「あまり、近付きたくない相手ですね」
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)は、バルフウラの狂乱ぶりに眉をしかめる。
だが、敵の攻撃が激しければ激しいほど、ディフェンダーとして役立つ機会もあるというものだと、気合を入れ直したイッパイアッテナは、まっすぐにバルフウラへと前進していく。
「それに、こちらが優勢。もうすぐ陥落させられるはずです!」
既に幾度かに渡る攻撃を退けているハーレムだが、陥落は間近だ。
それを感じ取っているのだろう、バルフウラの顔にも焦りの色が滲んでいるのをイッパイアッテナは見逃さなかった。
「言うじゃねぇかよ、地べたを這いずり回る穴掘りドワーフ風情が! テメェの目の穴と鼻の穴もつなげてやるぜ!!」
言うがはやいが、翼が形を変え、イッパイアッテナへと襲い掛かった。
武装ジャケットが一瞬にしてぼろぼろになるが、彼はそれに耐え切り、叫びをあげる。
「今です!!」
攻撃に集中するあまり、守りをおろそかにしたバルフウラへと攻撃が次々と突き刺さる。
「テメェ、よくも……!!」
イッパイアッテナを再び狙わんとしたバルフウラに、しかし飛び込んできた
イッパイアッテナのミミックにして相棒のザラキだ。
「行くぞ!」
生まれた隙を見逃さず、イッパイアッテナはエクトプラズムの武器を次々と交換しながら、2人がかりでバルフウラへと反撃を繰り出していく。
やがて全身にエクトプラズムの武器を突きたてられたバルフウラは倒れ、二度と起き上がることなく消滅していく。
■霊廟宮ヌンキ
ケルベロス達の再三の攻撃は、霊廟宮ヌンキの敵戦力を次第にすり減らしていた。
アグリム軍団が多くいた下層部と比べ、霊廟宮に集う敵は、それほど脅威とはならない。勇戦するケルベロス達、そして死んでいく守備隊やザルバルクの姿を、死神『カラミティ・ルージュ』が黙然として見つめる。
その後ろに、
「どうやらケルベロス達が本格的にここを陥としに来たようだ。護衛の任務は放棄し、私も出させてもらう」
「ああ、世話になったな」
一瞬、驚いたような気配を漂わせたダーク・ビートは、無言のままカラミティ・ルージュの前から去って行った。
「……この体のデータベースにあった挨拶を試してみたが、何かおかしな部分があっただろうか」
やはりダモクレスのデータなどあてにならないものだと一人嘯き、カラミティ・ルージュもまた、霊廟宮ヌンキの通路を歩きだした。
●ダーク・ビート
「強いな。何者なんだ……?」
ソロ・ドレンテ(胡蝶の夢・e01399)は、ヌンキの守備に現れたダーク・ビートの強さに目を見張った。
先刻死んだアグリムには及ばぬまでも、ダーク・ビートの実力は、アグリム軍団の猛者達を上回っている。
「イグニス王子の不審な点は、王に既に報告済みだ。後は、俺自身がお前達と戦うまでのことだ」
「王の?」
淡々と語るダーク・ビート。その言葉に、ソロは蒼のビフレストにも残霊と化して出現していた第一王子ザイフリートの参謀ハーゲンのことを思い出す。
ハーゲンはザイフリートの監視役を務めていたが、それと同様に、このダーク・ビートもまた、第五王子イグニスに対して付けられていた、王からの監視役だったのだろう。
「監視しないといけない王子ばっかりなのか、エインヘリアルは……」
王族というのはそういうものかも知れないが、エインヘリアルにはそういうのが多過ぎるのではないか。
そんなことを思いながら、ソロは仲間達と共に、ダーク・ビートへと攻撃を仕掛けていく。攻撃を回避するダーク・ビートは、エインヘリアルの中でもさらに長身ではあるが、螺旋忍軍ばりに鋭い。
「とはいえ、こちらも負けるわけにはいかないからな。お相手仕ろう!!」
ダーク・ビートの動きをもはや目で追うことを放棄し、瞳を閉じた。
電子頭脳が、移動する気配を捕らえた瞬間、
「そこっ!!」
高下駄が、通路に音を響かせる。
ダーク・ビートの動きの先に置くようにして振るわれた刃が、漆黒の鎧を貫く。
瞬間、ダーク・ビートを目掛けてその動きを封じるように、ケルベロス達の攻撃が集中した。
手にしたナイフで攻撃を切り払ったダーク・ビートの手の中に、漆黒の高重力球が生まれ、ケルベロス達を飲み込まんと放たれて来る。
だが、それをソロはその重力に耐え切ると、ダーク・ビートまでの距離を一気に駆け抜ける。
手にする刃がダーク・ビートを貫き、その命を終わらせた。
●カラミティ・ルージュ
「イグニス自身を祀る、この霊廟宮。祀るという行為自体に意味など無いだろうが、不死であるデウスエクスの『死』に対する感情は、なかなかに興味深いものだ。
そして、ケルベロス……デウスエクスに死を与える者達。面白い」
カラミティ・ルージュの率いるザルバルクの群れを、ケルベロス達はほとんど一方的に蹴散らしていた。
だが、同族が死んでいるというのに、ルージュは一切の痛痒を見せない。
「何故、ダモクレスが死神になっているの?」
「蘇生(サルベージ)だけが、死神の力ではないからな」
「ええ……それは、よく分かっているわ」
明らかな別人格として話している姉……ルージュの姿に、ソネット・マディエンティ(自由という名の呪縛・e01532)が底冷えのする声で呟く。
アンドロイド型ダモクレスとして死んだはずの彼女の姉が、死神として蘇っている。
過去に死んだ者達の蘇生(サルベージ)だけではない、異様な能力は、ケルベロス達にも事態の異様さを伝えていた。
「なんとも不届きな奴め……成敗してくれよう!」
ファミリアロッドを構える市松・重臣(爺児・e03058)の足元で、オルトロスの『八雲』が勇ましく吠える。
「じゃが、何のためにここにおる?」
「イグニスの死を……その魂がデスバレスに落ちるのを、見届けるために八王子で合流した」
あっさりと、カラミティ・ルージュは自分の目的を告げた。
ケルベロス達は、ザルバルク達と戦いながらも、その目的に不審を覚える。
「ならば、儂らを止める意味はなかろう? デウスエクスはケルベロス以外によっては殺せまい」
「通常はそうだ。だが、奴はデスバレスへ落ちる。そういう性質だからだ」
ルージュの声に、ザルバルクを始末しながら重臣は問う。
「シャイターン達が、盲目的なまでの様子でイグニスに従う理由と、関係があるんかのう……」
「私はそこまでは知らん。問答もここまでとしよう」
言葉を発する間にも、ルージュの機械の肉体は戦闘機能を完全に解放し、ケルベロス達へと攻撃を繰り出していた。
言葉を切ったルージュの周囲にいた敵群を片付けると、ケルベロス達は一気に攻撃を開始した。
やがて、ケルベロス達の攻撃の前に、カラミティ・ルージュの身体から火花が上がる。
「私もまた、お前達に死を与えられるか。それもまた良い」
「禍根を断ちたいところじゃが、なんぞ根深い問題になりそうな予感がするのう……」
大器晩成撃でルージュを倒した重臣は、苦い表情でそう呟くのだった。
→有力敵一覧
→(10)フォールクヴァング(19勝6敗/戦力600→0/制圧完了!)
→(13)カウス・ボレアリス(7勝1敗/戦力1800→1450)
→(14)カウス・アウストラリス(9勝1敗/戦力1650→1200)
→(17)イグニスのハーレム(21勝0敗/戦力950→0/制圧完了!)
→(18)霊廟宮ヌンキ(31勝0敗/戦力1150→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。