■第3ターン結果
■脚部制圧
●老兵マグヌス
「くっ、また随分な人数で来たもんだのう」
アグニス軍団の一員である老兵マグヌスが弱音を漏らす。
ケルベロス達を多摩川防衛戦で一度は退けた、アグニス軍団きっての古強者をもってしても、戦況の不利はいかんともし難いものだ。
ケルベロス・ウォーを発動させ、全力で挑んで来るケルベロス達を、マグヌス率いる左後脚ルクバトの守備隊は一度は退けた。
だが、それは単に兵力の多さから、ケルベロス達が短時間での制圧を諦めただけのことだ。直接交戦したエインヘリアルの多くは、ケルベロス達に敗北し、戦力は減少している。
そして、イグニスがこの場で死ぬ気である以上、
「だが、ここで城を守るのに怖気づいてはアグリム軍団の名が泣くというものよ!」
「なるほど、あんたも部隊長としちゃぁ、まあまあだな」
中島・ヨシムネ(暴れん坊な八代目・e15546)が、斬霊刀の二刀を手にマグヌスへと斬り込んだ。
ヨシムネの刀と、マグヌスのルーンアックスがぶつかり合い、金属音が響く。
ヨシムネを退けようとマグヌスがルーンアックスに力を篭めた瞬間、横合いから飛び込んできたのはヨシムネのサーヴァント、ウイングキャットの『モンド』だ。
「何っ!!」
モンドの放つキャットリングが、マグヌスの手にした長柄のルーンアックスを封じ込める。
その瞬間、ヨシムネはマグヌスに向けて刀を投じた。
思わずそれを払いのけたマグヌスに生まれた隙を突いて、老兵の顔面にヨシムネの拳が叩き込まれる。
「マグヌス、打ち取ったり!!」
ヨシムネの声が響くのと、左後脚がその機能を止めるのはほぼ同時だった。
●豪勇オロフ
一度はケルベロスを撃退した左前脚ルクバトの戦場では、ケルベロスと赤き鎧のエインヘリアルが激戦を繰り広げていた。
先の戦いで兵力を磨り潰したエンンヘリアル達は、防戦一方となっていたが、頑強に抵抗を続ける。
そのエインヘリアル軍の中心に座すのは、アグリム軍団でもその人ありと言われた豪傑、豪勇オロフである。
「では、やり合うとするかケルベロス!」
オロフの巨躯が戦場を跳躍し、ケルベロス達に迫る。
その左右の手に握られた二丁の大斧は、縦横無尽にその暴虐的な力を撒き散らす。
「さあ、俺にかなう奴はいるか! かかって来いやァ!」
オロフは、強敵を求めるように戦場を駆け、ケルベロス達を挑発する。
このオロフの前に立ちふさがったのは、式森・槍(ミッドナイトランサー・e15010)であった。
「え、えっと、お願いします」
簒奪者の鎌を構えて思わず礼をしてしまった槍に、オロフはニヤリと笑って向き直った。
「どうやら、お主は礼儀を知る者らしいな」
「え、えっと、これは母さんが……」
槍がそう答えると、挨拶は終わりとばかりにオロフの双斧が唸り、その攻撃に反応した槍の簒奪者の鎌が煌いた。
更に、この戦闘を支援しようとする、ケルベロス達の攻撃がオロフに雨あられと降り注ぐ。
「ぬっ、一騎打ちでは無いのか」
「す、すみません。でも、仲間が居る事も、ボクの力のうちだから……。オロフさんと、ボク一人で戦うなんて怖すぎます」
正直にそう話す槍に、オロフは、納得したように頷く。
「仲間も自分の力か、なるほど。だが俺は豪勇オロフ。俺の力は俺だけのもの、ケルベロスが束になろうと、全て打ち殺してやろう!」
その後のオロフの戦いは、豪勇の名に恥じぬものだったろう。
しかし、多勢に無勢、蓄積されるダメージは、次第に限界を超えていく……。
「オロフさん。あなたは、立派な男性でした。ボクもいつかは……」
そう言うと、満身創痍のオロフに、槍は黒色の魔力弾を撃ち放った。
その攻撃は狙い違わずオロフの巨躯を貫き、そして絶命させたのだった。
「ふん。良い戦いだったぞ」
最後に、オロフはそういい残し、崩れるようにして塵と消えた。
●『壊滅』
「これだけの人数、凌げるか? 少々厳しい気もするね」
『壊滅』という通り名で呼ばれるアグリム軍団の指揮官は、戦場に雪崩れ込むケルベロスの軍勢を見て、思案げな表情でゾディアックソードを肩に担いだ。
「幾つか見た顔もあるようだが……。あの戦いでお前達を壊滅させられなかったのが、ケチのつけ始めという奴か」
多摩川の戦いでケルベロスに勝利してみせた『壊滅』にとっても、この戦場での戦いは、かなり厳しいと覚悟しているようだ。
代わって、ケルベロス達の士気は高い。
人馬宮ガイセリウムの進軍を止め、一千万都民を守るのだという使命感が、ケルベロス達を輝かせていた。
「さて、『壊滅』の首、この私が頂くとしますか」
矢野・優弥(闇を焼き尽くす昼行燈・e03116)が、愛用のカード『召喚符:顕現、八大龍王』を翳して宣言すると同時に、右後脚ルクバトの戦いの幕が切って落とされた。
戦いは、戦力的に優勢な、ケルベロス達が次第に敵を追い詰めていく。
個々の戦闘力で勝る『壊滅』の軍勢も、その戦力差の前に次々と力尽きていった。
そして遂に、『壊滅』の周囲にはケルベロス以外に立っているものはいなくなる…・・・。
「まだ戦うのですか? もう勝ち目はありませんよ」
そう嘯く優弥に、『壊滅』は首を横に振った。
「当然、戦うさ。ここで逃げれば、俺の通り名は良くて『敗残』くらいのものだろう。それは、許容できない」
そう言うと、壊滅はゾディアックソードを大上段に振り上げて、仁王立ちとなった。
それは、最後まで戦うという意思表示であったろう。
「俺の称号は昼行灯。だが、昼行燈というのは闇を焼き尽くすためにあるのですよ。『壊滅』勝負です!」
優弥は、その『壊滅』の意地にこたえるように名乗ると、続けて古代語の詠唱に入り……放たれた、一条の光線が『壊滅』を貫き、そして、その命を奪い取ったのだった。
「見事だ。『昼行灯』には及ばないかもしれぬが、俺の『壊滅』の通り名は、お前に譲ろう。いらなければ捨て去って……」
『壊滅』は、最後に優弥にそう言い残すと、潔く鎧ごと砕け散ったのだった。
アグリム軍団の精鋭達の死と共に、脚部は次々と機能を低下させていく。
一気に速度を落とすガイセリウムの様子は、ケルベロス達の優勢を全世界の人々に示していた。
■大ジャヒール城塞
脚部を制圧したケルベロス達は、大ジャヒール城塞へと攻め入っていく。
事前に奇襲攻撃を仕掛けた白馬師団から、全ケルベロスへと調べた限りの地形情報が連絡される。
事前のヘリオライダーの予知によれば、ここには妖精8種族ヴァルキュリアのコギトエルゴスムが保管されているはずであった。
ガイセリウムに侵入し、ヴァナディース暗殺を成し遂げたことで、デウスエクス『ヴァルキュリア』は『ニーベルングの指環』を用いたエインヘリアルの洗脳と支配から解放された。
だが、ケルベロス達に後事を託し、彼らの脱出を援護するべくエインヘリアル達に立ち向かったヴァルキュリアは、コギトエルゴスムと化して大ジャヒール城塞と、機械神殿フォールクヴァングに収められている。
理由は不明だが、ケルベロス達の侵入以前にコギトエルゴスムにされていた者達もおり、彼女達を救い出すには、まずはコギトエルゴスムを回収する必要があった。
●大スルタン『ジャヒール』
『よくぞ来たな、ケルベロス。イグニス様の認めし勇士達よ』
城塞深部へ辿り着いたリテ・ゴルドナ(雪原の紅い花・e17688)を出迎えるように声が響いた。
声の源は、部屋の奥に座していた一人のシャイターンだ。
人間と同サイズとは思えぬほどの威圧感をたたえたシャイターンは、堂々たる大音声で己の名を名乗る。
『我こそが古の族長アリの孫にして、略奪王ラハブの息子、シャイターンの全氏族を束ねる大スルタン、ジャヒールである』
「シャイターンの親玉ってわけか。ん、なんだ……?」
目に映る大スルタンの姿が、煙を帯びて次第に大きくなっていく。
「目の錯覚……ってわけでもなさそうだな」
『これもまた、大スルタンの秘儀の一つである』
彼のグラビティの一種だろう。だが、リテはそれを鼻で笑い飛ばした。
「デカブツ相手は慣れっこだぜ。デカくなったからって、それで怖気づくと思ったら大間違いだ!!」
威勢よく言うリテに同意するように、ケルベロス達は大スルタンを守る護衛のシャイターン達との交戦を開始する。
「てめぇがシャイターンの親玉だってんなら、何故、イグニスに従う! ヴァルキュリア達みたいに洗脳でもされてるってのか!?」
「我らデウスエクスは、死の価値を知らぬ。なぜならばそれは、全宇宙でお前達だけが有する秘儀であるからだ」
大スルタンは、リテのブラックスライムを片手で受け止めながら言った。
拳が衝撃を帯びて振り下ろされ、それを受けたケルベロスごと、城塞の床に大穴が穿たれる。
「死の価値を知れば、わずか一瞬であっても、我はイグニス様の御心に近づく事ができるであろう。その一瞬の為ならば、我は大スルタンの地位も、自らの命も要らぬ」
「一体、何言ってやがる……死の価値を知りたきゃそこでじっとしてりゃぁ教えてやるぜ。イグニスの何が特別だってんだ!」
「イグニス様は、すなわち炎と略奪。我らの全てである」
シャイターンの巨大な姿から、膨大な炎が溢れ出し、城塞の壁を、床を覆う。
それを耐え切ったケルベロス達は、一斉の反撃を繰り出した。
『むぅっ……!!』
「行くぜ、大スルタン! 死の瞬間ってやつを見て来いよ!!」
炎を突き破って、リテの『御業』が放った炎が、大スルタンを貫いた。
巨大な全身が炎に包まれ、次第に小さくなっていく。やがて、リテより僅かに背が高い程度の姿となった大スルタンは、切れ切れに言葉を放つ。
「イグニス様に……シャイターンに、栄光あれ……」
その言葉を最後に、シャイターンの大スルタンは消滅した。
●特務暗殺者『白いコブラ』
リト・フワ(レプリカントのウィッチドクタ・e00643)をはじめとするケルベロス達は、戦ううちに城塞の深部へと辿り着いていた。
「ここは……宝物庫のようですね」
鍵のかかった扉をぶち破ったケルベロス達の目に、幾つもの麻袋が映る。
その袋の入口には、不思議な輝きを放つ幾つもの宝石が顔をのぞかせていた。
「コギトエルゴスム! ヴァルキュリア達ですね!」
リトの言葉に、ケルベロス達から快哉が上がる。
だが、その喜びも束の間、リトは目にした刃の煌めきに警告を発した。
「敵襲!」
潜んでいたシャイターン達が、闇の奥から次々と現れるシャイターン達。
凶刃を逃れたケルベロス達は、即座に反撃に入る。
「仕損じるとはな。やはり螺旋忍軍どもを倒しただけの事はある」
次々と襲い掛かるシャイターンの暗殺者達に、リトは警戒の視線を向ける。
「何者です?」
「何、そう警戒するな。白いコブラなどと呼ばれているが……暗殺の技術しか持たぬ、つまらぬ男だよ」
そう気安く言った男の気配が、瞬時に掻き消えたかと思うと、ケルベロスとシャイターンの戦闘の只中に身を躍らせている。
「敵指揮官……!」
それも、おそらくは暗殺部隊の、だ。
ヴァルキュリアのコギトエルゴスムを発見したケルベロス達の警戒が緩む瞬間を狙い、襲い掛かって来た彼らの暗殺技術を、ケルベロス達はその実力をもって跳ね返し、逆に死を与えていく。
「やはり、強い!」
「正面から攻めて来てくれれば、やりようはあります」
「戦って死ねというのが、クライアント……イグニス様のお望みでな!」
イグニスのためならば死をもいとわぬというのか。
この忠誠心がどこから来ているのか、己の手で命を救う為、ウィッチドクターとなったリトには理解しがたいものであった。
「命を捨てて、何の意味があるというのです!」
ウィッチドクターの象徴たるライトニングロッドから、一条の雷がほとばしり、白いコブラを貫いていく。
「死を与えられるのは、久方ぶりだ。いや、これが真の死、か……」
消滅していく暗殺者の姿を、リトは複雑そうな表情で見送る。
リトは彼に完全なる死を与えた。
対して目の前の暗殺者が真の意味で『死』を与えたことは果たしてあったのだろうか?
疑問を追いやるように頭を一つ振ると、リトはヴァルキュリアのコギトエルゴスムを回収するべく、宝物庫へと足を踏み入れていった。
→有力敵一覧
→(3)左後脚ルクバト(20勝2敗/戦力850→0/制圧完了!)
→(5)左前脚ルクバト(7勝3敗/戦力150→0/制圧完了!)
→(9)右後脚ルクバト(11勝3敗/戦力350→0/制圧完了!)
→(10)フォールクヴァング(10勝0敗/戦力1900→1400)
→(11)大ジャヒール城塞(37勝0敗/戦力1750→0/制圧完了!)
→(17)イグニスのハーレム(4勝0敗/戦力1500→1300)
→(18)霊廟宮ヌンキ(3勝0敗/戦力1550→1400)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。