ユグドラシル・ウォー

●(22)ラフム樹海

　緋色蜂師団による奇襲時に続き、再び攻め入ったラフム樹海で、ケルベロス達は群れ為すラフムに対して優勢な戦いを続けていた。
　緋色蜂師団によって戦力が減っていたこと、攻性植物『ラフム』の能力を突き止めることのできていたのもその一因だろう。

「ムシュフシュ樹海からゲートへの道は開けたけど、万全を期しておかないとね！」
　紙属性のボクスドラゴン『ワカクサ』と共に樹海へ攻め入ったクロウ・リトルラウンド（ストレイキャリバー・e37937）は、バスターライフル『レイヴンシューター』を構える。
「汚物は消毒だーっ、なんてね！！」
　接近するラフム達を光線が貫き、その巨体が樹海の木々の中に倒れていく。
　その時、ワカクサが激しく翼をはためかせた。
　危険を知らせようとしているのだと即座に理解し、クロウが地を蹴った瞬間、上空から落下して来た屈強な老人の手にした斧が、ケルベロス達のいる一帯に巨大なクレーターを作りだす。
「やってくれるもんだなぁ、ケルベロス！　レプリゼンタを次々倒してるってのは本当みたいだな！」
　斧を担いだ老エインヘリアル『パラシュラマ』はケルベロスを称賛する。
　飄々とした様子だが、強い者と戦えることの喜びを、ミリム・ウィアテスト（リベレーショントルーパー・e07815）は老人の声に感じとる。
「デウスエクスの精神年齢と外見年齢の相関は無いとはいえ、どうにも外見とのギャップを感じますね」
「長いこと戦い続けてたもんでなぁ。面白い奴と戦うぐらいしか楽しみはねぇんだよ」
　これもまた、戦いの中での変化なのだろう。戦いの中で心が摩耗することを感じているミリムとは、また別の方向への変化なのかもしれない。
　額をぴしゃりと叩き、パラシュラマは斧をミリム達ケルベロスへと向けた。
「カンギ戦士団に名高き斧使いパラシュラマとは俺のことだ、かかって来なッ！」
　言うが早いが、爆熱を帯びた斧が投じられる。
　残るラフム達が一斉に跳躍し、ケルベロス達へと飛び掛かった。

　ワカクサと共にラフムを撃破しながら、クロウは戦場を駆け抜けていく。
　パラシュラマが斧を振るうたび、爆発するような音が響き渡っている。
「派手なお爺さんだね！！　でも死なないのを除けばカンギよりずっと強いんじゃないの？　よく従ってるね」
　かつての爆殖核爆砕戦で確認されたカンギよりも、今のパラシュラマの方がずっと強いようにケルベロス達には感じられていた。
　デウスエクスを支配するのは力の論理。
　基本的に、上に立つ者は強くあらねばならない。それがデウスエクスだ。
　例外的な者達（どこぞのエインヘリアル第一王子等）は、軽んじられるのを避けられない。
　パラシュラマは回転させた斧でケルベロス達の攻撃を凌ぎつつ、その疑問に応じる。
「なぜってそりゃあ俺はカンギちゃんの親友だし、何より本来のカンギちゃんは俺より強いからよ」
「本来？」
「ガネーシャの英雄、惑星ブラフマン最強戦力……ま、本人と戦って確かめてみるんだな！」
　クロウの手にしたガネーシャパズルを見て言うと、ケルベロス達の攻撃を凌ぎ切ったパラシュラマは突進から斧を振り下ろす。爆発を引き起こし続ける災害のような老人へと、クロウは駆けた。
「飛ぶよ、ワカクサ！」
　後方から飛来したワカクサが、折り紙のように変形すると翼の形をとり、クロウの背中へと合体する。そのまま急加速して迫るクロウを、パラシュラマは斧で受け止めた。
「おおっと、危ない危ない……！」
　赤熱する斧が、クロウの翼を焼き切っていく。だが、地に転がるかに見えたクロウは、それを予期していたかのように転がりながらレイヴンシューターを構えた。
　銃口の先にパラシュラマの背を捉え、トリガーを引く。
　放たれた光線は、パラシュラマを貫き、その力を奪い去っていく。
「やるねえ……ジジイはここまでか」
　苦笑するように言い、倒れ伏すパラシュラマ。強敵をなんとか撃破したことに、ケルベロス達の口から安堵の息がこぼれた。

（22）の制圧により、（24）の戦力が大きく減少しました。