ユグドラシル・ウォー

■第5ターン結果

●(23)ムシュフシュ樹海

 ゲートを守るように広がる樹海。その一角ムシュフシュ樹海は、荒廃しつつあった。
 ゲートの向こうにいる世界樹ユグドラシルの影響か、樹海は強力な再生能力を有している。
 だが、攻め寄せるケルベロスと、それに応戦する攻性植物達の激戦がもたらす被害は、その再生能力を完全に上回っていた。
 戦いの中で薙ぎ倒された木々の再生は間に合っていない。
 グラビティに巻き込まれて圧し折れ、あるいは粉砕された木々を縫うようにして、植物でできたトカゲともいうべき形状の攻性植物『ムシュフシュ』の群れが迫り来る。
 まるで津波のように迫る緑の群れの後方からは、漆黒の巨体が前進しつつあった。
 カンギ戦士団最大とも言われるドラゴン『破壊竜アベルビジ』だ。
 心の弱い者であれば見ただけで戦意を失いそうな姿。
 だが、強敵の姿に、ドルフィン・ドットハック(蒼き狂竜・e00638)の瞳に獰猛な光が宿る。
「カッカッカッ! トカゲどもが死にに来たか! さあ来るがいい、片っ端から叩きのめしてくれよう!!」
 呵々大笑しながら、ドルフィンは口から氷の吐息を吐き出す。
 突進して来ていたムシュフシュの群れが凍てつき、ケルベロス達の攻撃によって粉砕されていく。
「さあ行くぞ皆!」
 ムシュフシュの群れという名の森を切り拓くかのように、ドルフィンをはじめとするケルベロス達は真っ向から巨大な敵群へと立ち向かっていく。
「来るぞ……!!」
 アビルベジの喉の奥に真っ赤な熱が膨れ上がるのを認め、警告が放たれる。
 次の瞬間、熱線が樹海を赤く染めた。収束したブレスは、ケルベロス達だけを薙ぎ払っていく。
「ほう、中々の火力と正確さ……! 多少は知恵も回ると見える!」
 熱線を凌いだドルフィンは、ブレスを吹き付けながらその巨体の足元へと駆けていく。どうにか体に取りつこうとするケルベロス達を退けようと、巨大な尾が振り回される。
 ケルベロス達を行動不能に追い込んでいく尾の戻り際に、ドルフィンは翼を広げ、その尾へと飛びついた。
「往くぞ、耐えられるものなら耐えてみるがいい!!」
 アベルビジが反応するよりも早く、ドルフィンは巨大な破壊竜の背を駆け抜けた。目指すのは胸の中央、熱線の発射の際に最も輝いた一点だ。
「汝の弱点、見抜いたり!!」
 ドルフィンの拳に宿る光が、剣の形をとりながらアベルビジの胸を貫く。

 GUOOOOOOOOOOOOOOOO!!

 咆哮と共に崩れ落ちていく巨体へと、ケルベロス達の攻撃が集中した。
「よき戦いであったわ、カッカッカッ!」
 敵を称えるように言い、ドルフィンは次なる戦場へと駆けて行った。

●(13)カンギ戦士団防衛線

 地下大河を舞台にしたカンギ戦士団との戦いを、ケルベロス達はついに制しつつあった。
『どうやらここまで、かしら……少しはカンギの役には立てたかしらね』
 防衛部隊の指揮を執る死神フューネラルは、可愛らしい顔に微笑を湛えてそう口にしつつも、グラビティを繰り出すのを止めていない。
 死をもたらす花を放ち続ける死神の微笑に、藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)の心の中に燃え盛る『地獄』が、何かに反応しているのを感じる。
「(なんでしょう……この感覚は)」
 夜空を思わせる瑠璃色の瞳。
 少女とも見える若々しい顔つきを気にしていた彼女がもしも生きていたならば、自分と同じ年頃だろうか──。
 思い出されようとした記憶も陽炎のように消え、それを代償とするかのように、彼の戦意は地獄と燃える。

 景臣が先日交渉した死翼騎士団たちが冥府の海(タルタロス)の意を受けた者達だとするならば、フューネラルはその本流から離れた者であると言えるだろう。
 だが、命を落とし、その肉体を死神に奪われる。
 死神という存在がもたらす悲しみの質に変わりはない。
 それを知る神白・鈴(天狼姉弟の天使なお姉ちゃん・e04623)は、弟の神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)と共にフューネラルへと迫った。
 既に攻性植物達はあらかた倒されているが、フューネラルはなおも頑強に抵抗を続けている。
「ここで、終わらせます!」
『私の友諠を示すためにも、まだ粘らせて貰うわ』
「大切な仲間がいるのなら、なんで相手にも大切な人がいると思えないんですか!」
『そういう事情があったって、殺す時は殺すものよ』
 あなた達だって、そうでしょう?
 言葉と共に放たれる葬送の花が、ケルベロス達を包み込もうとする。
 だが、それをむざむざと受けることはしない。
「わたしだって……お父さんの娘なんだからっ!!」
 狼のエネルギーが、鈴の体を覆う。
 翼を広げた鈴は地を蹴り、翼を一打ちして飛んだ。
 光の矢の如く加速した鈴は、狼に導かれるようにしてフューネラルへと加速する。
「奥義『天星狼牙』っ! 消えろぉぉ!!」
 死神の放った花を吹き散らしながらの突撃から繰り出された拳が、白い死神を貫いていく。
『まだっ……!!』
「いって、リュガ!!」
 鈴の肩を蹴り、狼属性のボクスドラゴン、リュガが跳んだ。
 逃れようとしたフューネラルを、リュガの口から放たれたブレスが包み込む。
 花が、白いドレスが燃え、そして死神の姿は消滅していった。

●(4)大阪城地上攻性植物軍

「そろそろ、最後にしてほしいんなんだけどな」
 長久・千翠(泥中より空を望む者・e50574)は、多少の焦りを滲ませながら、巨大な三日月斧を担ぎ戦いに挑む。
 竹の攻性植物の軍勢、サキュレントの大群など、大阪城の周囲には緩衝地域の防衛の任についていた戦力がユグドラシルゲートへの増援の為に集結している。
 ケルベロス達はその排除に手間取っていた。
 現在、大阪城の主戦場も、攻性植物とその傘下に集ったデウスエクスの連合軍の頑強な抵抗にあって、思うように進んでいない。
 もし、この戦場を制圧に失敗すれば、強大な増援を得たユグドラシルゲートの制圧は困難を極めるだろう。
 ことここに至れば、一刻も早く地上部を制圧して、ユグドラシルゲート攻略への道筋をつけなければならないのだ。

 千翠は、三日月斧『鬼斧』を豪快に振り回して、バンブーソルジャーを斬り捨てると、戦場の中心、青い燐光を放つ繭を包むような巨大なサキュレント、サキュレント・ユビキタスへと向かう。
 千翠に続くケルベロス達も、それぞれグラビティを放ちながら、サキュレント・ユビキタスへと肉迫するが、突如、サキュレント・ユビキタスの繭が激しい光を放った。
 咄嗟に目を瞑った千翠達だが、その光は瞼を貫通して直接脳髄を貫いていく。
 サキュレント・ユビキタスが巨体を振るわせると、極大化した重力が戦場に放たれる。「こ、この程度でっ!」
 千翠は、重くなった足を強靭な意志力で前に進ませる。
 重量を増した斧を振り上げ、そして重い斬撃を、サキュレント・ユビキタスの根へと突き立ててみせた。
「あと一歩だ、みんな、攻撃を集中させるんだ!」
 千翠の勇気ある一歩に奮起したケルベロス達が、更なる攻撃を集中させる。
 サキュレント・ユビキタスの青い燐光が更に強まる。
 薙ぎ払うように樹がうねるが、千翠達は食らいついて離さない。
 動きの鈍ったサキュレント・ユビキタスに、戦場の全てのケルベロスが、攻撃を仕掛けていく。
 最後の足掻きでその攻撃を回避していたユビキタスだが、ケルベロス達の連携は、ついに樹木によって護られていた繭の全貌を、明らかとする。
「これは……地球の植物を取り込んで、サキュレントシリーズに変容させているのか?」
 取り込まれている植物が何であるのかを見て取った千翠は、嫌悪と怒りを禁じえなかった。
「なんて醜悪な。まるで、悪意が形をとって蠢いているようだ」
 守るべき人々と、犠牲になった植物への千翠の思いが、呪言となって鬼斬の刃に波紋のように映り込んでいく。
「地球の植物たちの為。人々の生活だけでなく、植物達の生存さえも脅かす、お前は絶対に許さない!」
 呪詛を載せた斬撃は、美しい三日月の軌跡を描いた。
 サキュレント・ユビキタスの繭に食い込むと、その柔らかな腹腔を引き裂き、ねじり切るように破壊していく。
 たまらず、言葉を発しない筈の植物から、断末魔の響きがあがる。
 それは、産まれる事ができなかったサキュレント達の断末魔の叫びであったのだろうか。それでも、千翠は手を止める事なく、サキュレント・ユビキタスを両断してのける。
「除草のためなら力は惜しまない!根っこまで食い千切れ!」
 両断されたサキュレント・ユビキタスの樹身は、急速に枯死していく。
 光を失った繭からドロリと溢れた粘液は、急速に腐食し、その胎内の粘液を地面にぶちまけた。
 千翠は、残敵が居ない事を確認し、腐食した粘液の悪臭に耐えながら戦場を後にする。
 ユグドラシルゲート決戦の帰趨は、まだ予断を許さなかった。

(4)(13)(23)の制圧により、(24)ユグドラシルゲートの戦力が大きく減少しました

→有力敵一覧

→(2)要塞ヤルンヴィド(1勝0敗/戦力1480→1430)

→(3)ハール軍残党(1勝0敗/戦力750→700)

→(4)大阪城地上攻性植物軍(11勝4敗/戦力440→0/制圧完了!)

→(6)屍隷兵実験場(1勝0敗/戦力550→500)

→(7)ドリーム学校空間(0勝1敗/戦力730→720)

→(8)ファンガス地帯(1勝0敗/戦力740→690)

→(10)ニーズヘッグ地帯(0勝1敗/戦力1210→1200)

→(11)ダモクレス実験施設(0勝1敗/戦力900→890)

→(12)ドリーム直角迷宮(1勝0敗/戦力890→840)

→(13)カンギ戦士団防衛線(4勝1敗/戦力90→0/制圧完了!)

→(15)邪樹竜の森(0勝1敗/戦力820→810)

→(18)白猿宝物殿(1勝0敗/戦力500→450)

→(22)ラフム樹海(4勝1敗/戦力1000→790)

→(23)ムシュフシュ樹海(9勝2敗/戦力270→0/制圧完了!)

→(24)ユグドラシルゲート(1勝1敗/戦力7000→2380)

→(31)大阪城地下港(0勝1敗/戦力900→890)

→重傷復活者一覧

→死亡者一覧

■有力敵一覧

有力敵 戦功点 現状

サキュレント・ユビキタス
2400
(4)大阪城地上攻性植物軍:Battle1にて、長久・千翠(泥中より空を望む者・e50574)に倒される。

フューネラル
1600
(13)カンギ戦士団防衛線:Battle1にて、リュガ(神白・鈴のサーヴァント)に倒される。

破壊竜アベルビジ
2850
(23)ムシュフシュ樹海:Battle1にて、ドルフィン・ドットハック(蒼き狂竜・e00638)に倒される。

戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。

戦闘結果を取得しています。しばらくお待ちください。