ユグドラシル・ウォー

●金狐カラクリ棟梁

　ケルベロスの奇襲を受け、機械の体を持つ螺旋忍軍達は、風雲金狐城を目覚めさせようとしていた。飛行可能な城を使い、戦場から逃れようというのだ。
「急ぐでコン！　この城があれば、我が忍軍はまだまだ戦えるでコン！！」
「しかし、搬出用ゲートはまだ！」
「ええい、壊して外に出れば良いコン！」
　カラクリ忍者達に指示を飛ばす狐顔の螺旋忍軍、金狐カタクリ棟梁。
　技術交流を経て、忍びの技を得た（つまり螺旋忍軍になった）ダモクレス達が城を防衛しようとする。
　だが、攻め寄せるケルベロスの勢いはその守りを容易く打ち破りつつあった。

「さあさあ、私の大立ち回り、始まるよー！！」
　和風の城の内部へと突入した火倶利・ひなみく（スウィート・e10573）は、翼を一打ちして飛来する手裏剣を回避すると、そのまま敵へと突っこんだ。
　狐の頭部を持つ螺旋忍軍を、勢いよく振り抜かれたドラゴニックハンマーが轟音と共に粉砕する。
　そのままの勢いで、ひなみく達は城の心臓部へと躍り込んだ。ケルベロス達は中枢部の雰囲気から、この城の実情を見て取る。
「やっぱり、この城そのものが巨大なダモクレスなんだね」
　ダモクレスの大規模な地球侵攻の際にはしばしば見られるタイプの相手だ。
　ジュモー・エレクトリシアンの協力もあったのかもしれないが、螺旋忍軍主導でも作れてしまう辺りは、デウスエクス同士の技術交流が盛んな大阪城ならではだろう。
　まだ動いてはいないようだが、飛行可能な要塞の厄介さは定命化する以前のグランドロン達でも証明されている。

　城の起動を急いでいた金狐カラクリ棟梁は、その背から伸びるアームの先端に持っていた工具を金庫に収めると、腹部の金庫の中から取り出した忍具に持ち替えた。
「こ、ここでやられるわけにはいかないコン！」
　金狐カラクリ棟梁の背のアームが伸びる。
　忍者刀と螺旋手裏剣が繰り出され、さらに腹部の金庫が開くと、次々と忍具が飛び出してくる。

「金狐忍軍の恐ろしさ、味わうがいいでコン！」
　城内の螺旋忍軍をまとめているだけのことはあってか、その実力はケルベロス達から見て決して低いとは言えないだろう。
　だが、彼らの立場を考えれば、ソフィステギアより上というわけでもない。
　鋭い呼気と共に、ひなみくは手にした日本刀を一閃させた。
　棟梁の背から伸びる、日本刀を持っていたアームが断ち切られる。
　咄嗟に金庫から新たな忍具を取り出そうとした棟梁の胸を、なおも追い打ちをかけていく。
「お、おのれ……！！」
「これで、おしまいっ！！」
　続けざまに振るったひなみくの刀が、棟梁の胸に斬線を刻み付ける。倒れ伏し、爆発して消えていく棟梁。
　それを見届けると、ケルベロス達は風雲金狐城の心臓部を破壊し、その機能を停止させるのだった。