ジグラット・ウォー

■第8ターン結果

●ゼー・フラクトゥール
 ジュエルジグラット中枢へ向かう道を遮っていたモザイクの群れは、ケルベロス達によって撃破され、もはや残り僅かとなっていた。
 モザイク達の上を飛ぶ、ゼー・フラクトゥールの姿を模したワイルドハントもまた残り少ない。
 その中に、あって、唯一モザイクに包まれているのが、ゼー・フラクトゥール本人だ。
 ジュエルジグラット潜入調査チームを逃がすため、ジュエルジグラットに残った3人のケルベロスの1人。
 碧とコクマが救出された今、彼が最後の一人となっている。
 ゼーを救出せんとするケルベロス達は、必死に呼び掛けを届かせようとしていた。
「ゼーさん!!」
 戦友調査チームの者達の声に、ゼーの目が動く。
 だが、モザイクは影響を薄れさせつつも、ゼーの体を未だに蝕んでいた。
 暴走したままのゼーは、グラビティを撃ち出しながらながら低空を横切ろうとする。

 フレック・ヴィクター(武器を鳴らす者・e24378)は、それに追随するように全力で駆けた。光の翼を広げ、そして飛ぶ。
「貴方はまだ意思を失くしていない。ならば、救って見せるわ」
 フレックは翼に力を籠めた。
 光の翼が、たちまちのうちに鋼鉄の刃へと変化する。
「我が手に来たるは大いなる父神が神槍! 刹那たるこの時にてその力を示せ!」
 刃の羽が、空を裂くようにして飛んだ。
 モザイクに侵されたゼーの翼の付け根へと、突き刺さり、そして断ち切る。
 急激に速度を落とし、地を滑りながら着地したゼーは、モザイクに覆われた反対側の翼を、差し出すようにフレックへと向けた。
「上等……。少し待ってね、助けて見せる。だってその方がよい、物語よ!」
 フレックの繰り出した熾炎業炎砲が、モザイクを燃やし尽くしていく。
 ゼーの体からモザイクが消えると、彼の竜体は音を立てて地に倒れた。
 その体が、ゆっくりと普段のものへと戻っていく。

●ワイルドスペースとジュエルジグラット
 本来の姿に戻ったゼーは、ヒールグラビティを受け、翼を繋がれたところで目を開けた。ふらつく彼をフレックが支え、担架に乗せる。
「ありがたい。しかし、面倒をかけたのう」
「いいんです! 助かってくれれば、それで!!」
「そうですよ。まだまだお若いんですから」
 潜入調査チームをはじめ、ケルベロス達が口々に彼の帰還を祝福する。
 ゼーも、モザイクに囚われている中で幾つかのことが分かったという。
「ワイルド化した心臓が、伝えて来ておった。このジュエルジグラットは生来『ワイルドスペースでできた生命体』なのじゃ」
 モザイクに侵食された今でこそ中枢部『ジグラット・ハート』が顕現しているが、本来のジュエルジグラットは『混沌の水(ワイルドスペース)』が集まっただけの生命体であった。

「でも、『手』が出現する以前から地球にワイルドスペースはありましたよね?」
「ドリームイーターが侵略に使ったものは、本星の一部を持っていったとして……。それ以外はジュエルジグラットが地球と繋がった時に飛び散ったか、全く別の由来で地球に現れたものじゃろうなあ」
『ワイルドブリンガー』の祖先は、その多くがこうしたワイルドスペースに触れて力を得た者だろうとゼーは推測していた。

 そして、大きなワイルドスペースの内部は、ジュエルジグラットとのゲートが繋がる以前の世界が保たれていたり、全く異なる歴史が流れる世界だったりする。
「ポンペリポッサが、狂った歴史が流れるワイルドスペースに、失伝ジョブの継承者達を捕らえたこともありましたね……」
「故に、ワイルドスペースが『失われた時の世界』と認識される事もあるようじゃ」

 2016年のハロウィンで、ケルベロス達の意志の力に呼応して現れたワイルドスペース(失われた時の世界)も、そうした大きなワイルドスペースのひとつだ。
 もっとも、シャーマンズゴーストが神霊として現れたのは、地球の人々が主因だろうとゼーは言う。
「地球の人々が『ケルベロスの新たな力を望んだ』ことや、ハロウィンのドリームエナジーの影響が大きいのじゃろうな」
 それが活かせているかは、各々の主次第なのだろう。

 そして、こうした情報が他の戦場に伝わるよりも早く、ジグラット・ハートとの戦いは決着の時を迎えようとしていた。

●『ジグラット・ハート』
 十二創神『魔石獣ジュエルジグラット』の中枢部での戦いは、ドリームイーターとではなく、モザイクとケルベロス達の間で行われるものとなっていた。
 初代ジグラットゼクスの姿をとったモザイク達が、その力を再現しながら襲い掛かって来るのを、ケルベロス達は退け、中枢たるジグラット・ハートを目指す。

 ジグラット・ハートは、ただひたすらに、モザイクだけをばら撒く存在と化していた。子供が駄々をこねるように、滅茶苦茶に手足を振り回す。
 そのたびに、モザイクが溢れ出し、ケルベロス達を侵食していく。
 モザイク化され、後送される者達も続出する中、霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)は守護者たちを突破していく。
『王様』の振り回そうとした腕を射抜き、『お姫様』の誘惑を退け、そして『ランプの魔神』の胴に散弾銃を突き付け、発射。
 ランプの魔神が吹き飛んだ隙から、和希は転がるようにしてジグラット・ハートの前へと躍り出た。
 身体の傷が痛みを訴えて来る。それには構わず、彼は魔導銃をジグラット・ハートに向け、そして引き金を引いた。

『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■────────!!』

 ジグラット・ハートが凄まじい声をあげた。
 それは痛みにか、あるいはモザイクの痛苦から解放されることへの喜びにか。
 散弾に貫かれたジグラット・ハートの命と共に、巨大なジュエルジグラット全体が鳴動し、そして死へと向かっていく。
 和希は、消えゆくジグラット・ハートにふと問い掛けを放った。
「お前は、何を求めたんだ?」
『知ることを望むならば答えよう。この者は、星々の救済を望んだ』
 声の方へと振り向くと、先程胴を撃ち抜いたランプの魔神が転がっていた。
 倒れたままの魔神は、モザイクへと戻りながら言う。
『それは、あまりにも巨大な欲望。十二創神といえど、モザイクに侵された身で全てを救えるはずもなし』
「……そうだな。誰にだって無理かもしれない」
 ランプの魔神の言葉に、和希は応じた。
 ドリームエナジーを求め、地球の人々を襲って来たドリームイーター。
 ピラーをゲートに変える技術を広めた初代ジグラットゼクス。
 その支配者であり、モザイクの発生源と化していたジュエルジグラットは、倒さねばならない相手だった。
「だけど、誰かを助けたいと思って、叶えられないのは、悲しいな」
 巨大な欲望を抱いたまま死へ向かう十二創神に背を向け、そして歩き出した。
「いずれにせよ、滅びないものはない。そうだろう?」
 仲間達の元へ戻ろうとする和希。その耳に、ランプの魔神の最期の声が届く。

『恐怖を押し殺し戦う者よ。
 たとえ望まずとも、『イグニス』は必ずや汝らの前に姿を示す。
 そして、終わりなき滅びと戦いに汝らを巻き込むだろう』
「イグニス……!?」
 再び振り向いた時、ランプの魔神の姿は既に消えている。
 消えていくモザイクの破片だけが、ただその消滅を物語っていた。

●ジュエルジグラットゲート消滅
 ジグラット・ハートを失ったジュエルジグラットは、その巨大さ故に時間がかかるものの、いずれ完全に消滅する。
 本星にいたドリームイーター達は、ごく一部が戦争中、魔空回廊を利用してゲートから地球上に逃亡したようだが、ほぼ全てはジュエルジグラットと運命を共にした。
 ジュエルジグラットが完全に消滅した後、ドリームイーターはいずれグラビティ・チェインの枯渇した者から順にコギトエルゴスムとなり、宇宙を漂うことになる。
 デウスエクスである彼らは、定命化するかケルベロスの手によらずして死ぬことはない。

 だが、それももう遥か遠い宇宙の彼方の話だ。
 ケルベロス達は、地球側に撤退するとともにゲートを破壊した。
 それによって繋がりを断たれた『手』は、東京都に落下するよりも早く完全に消滅する。
 かつて起きた『手』の落下との差は、『ジグラット・ハート』の撃破成功を、全世界に示すことになった。
 ドリームイーターとの最終決戦は、地球側に一切の被害を出すことなく終わりを迎えたのだ。地球の人々は歓喜の声と共に、見事な勝利を収めたケルベロス達を迎える。

→有力敵一覧

→(5)チェシャ猫(1勝1敗/戦力220→160)

→(7)赤の王様(1勝0敗/戦力520→470)

→(10)ゼー・フラクトゥール(2勝2敗/戦力70→0/制圧完了!)

→(13)ジグラット・ハート(17勝18敗/戦力758→0/制圧完了!)

→重傷復活者一覧

→死亡者一覧

■有力敵一覧

有力敵 戦功点 現状

ゼー・フラクトゥール
2460
(10)ゼー・フラクトゥール:Battle1にて、フレック・ヴィクター(武器を鳴らす者・e24378)に倒される。

『ジグラット・ハート』
3333
(13)ジグラット・ハート:Battle1にて、霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)に倒される。

戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。

戦闘結果を取得しています。しばらくお待ちください。