■第6ターン結果
●コクマ・シヴァルス
全知を司りし大賢者を名乗る、コクマ・シヴァルス。
だが、彼の指揮するモザイクとワイルドハントは、既に大半がケルベロスによって討ち果たされている。その智謀をもってしても、戦況を挽回する事は不可能となっていた。
コクマ自身、満身創痍の状態となり、通常では死を免れない状況だった。
「コクマ、お前ぇさん粘るなぁ。とは言え、その様子だと目は覚めてきたみてぇだなぁ」
追い詰められたコクマに対し、独自の歩法で戦場を大股に闊歩して歩み寄った、不知火・梓(酔虎・e00528)が、光の軌跡を空に刻み、天羽を放つ。
「おのれアスガルドの神共がぁ!」
コクマは必死の形相で攻撃を転がって避け続ける。
「目が覚めたかと思ったが……、そうでもねぇのか?」
意外に粘るコクマに、梓は肩を竦める。
ジュエルジグラット調査の厳しい戦いを共に戦い抜いた戦友であるコクマが、その強さを示すのは、尊敬に値するが、このまま無為に過ごすわけにもいかない。
つまり、コクマを、こちらに引き戻す切っ掛けが必要なのだ。
この梓の苦戦に、同じ調査隊の昴が助太刀に入る。その躍動的な動きに、コクマの視線が僅かに泳いだ。
更に、星黎殿・ユル、クノーヴレット・メーベルナッハ、江戸川・シャーロット、フレック・ヴィクター、ミュオソーティス・アルペーストニス、春夏秋冬・愛来、ララ・フリージアらが、次々とコクマを視覚心理戦の要領で攪乱していく……。
彼女達こそ、コクマを暴走から救う為に駆け付けてくれた、コクマの隙を創り出す事ができる逸材たちであった。
女神もかくやという美しく豊満な肉体の前に、コクマは、その戦意を急速に鈍らせていく。
「男として、わかるっちゃわかるがねぇ。さっさと起きねぇなら、どんどん手荒く行くぜっ」
梓は戦闘力が弱まったコクマを狙い、マインドリングから光の剣を具象化した。
必殺の一撃を繰り出すべく精神を集中する。
そして、この梓の一撃を必殺のものとすべく、サキュバスのプラン・クラリスが両手を広げた。
「わたしの術をためしてみる?」
プランはコクマの頭を優しく掻き抱くように、その腕を伸ばした。コクマは、自分を包む柔らかい何かにうずもれ、うっとりとした表情で動きを止める。
その刹那、梓のマインドソードが、煩悩ごと暴走したコクマを打ち倒した。
「どうやら正気に戻ったようだな。後はゼーの爺っさまだけだが、いけるな?」
「ああ、勿論だ」
正気に戻ったコクマは、プランの腕の中で、不知火の問いに頷きを返した。
「迷惑をかけたな」
そして、自分を救う為に集まってくれたケルベロス達に再び頭を下げるのだった。
●『継母』
ドリームイーター最強のジュエルジグラット(寓話六塔)。
その最後の一塔『継母』の居城は、中枢部から遠く離れた、ジュエルジグラット内部の都市のひとつにあった。
壮麗な西洋風の城は、ジュエルジグラットの『手』の内部にあったものによく似ている。『継母』と配下達によるものだろう、モザイクの侵食も及んでいない。
都市へ攻め入って来たケルベロス達の姿に、城を守るドリームイーター達は驚愕の表情を浮かべた。
「なっ、中枢を目指すのでは……!」
『継母』配下のドリームイーターが狼狽えるように言う。
確かに、中枢までの道のりしか知らない状態であれば、ジグラット・ハートを目指そうとして、貴重な時間を空費していたかもしれない。
だが、こちらにはヘリオライダーの予知があるのだ。
『継母』がジグラット・ハートへの道のりを塞ぐ術を仕掛けたことは、ケルベロス達には既に露見していた。
「カッカッカ! 地球を甘く見たのう!!」
ドルフィン・ドットハック(蒼き狂竜・e00638)は高笑いすると、口を開いた。
「これぞドラゴンアーツの真骨頂じゃ!!」
口から噴出されるのは、光輝く「氷のように冷たい炎」。
その矛盾した存在は、ドリームイーター達を凍てつかせ、
「ウルフクラウド達が命を張ったというに、総大将たるジグラットゼクスがこのように奥へ籠っているとは、ドリームイーターの命運も尽きておるな」
そう思いつつ、ドルフィンは城の通用門を蹴り破ると、城門のレバーを下げる。
音を立てて開いていく門から、ケルベロス達は『継母』のいる城へと踏み込んでいく。その戦力は、『継母』の城の護りを破るのに充分なものだ。
瞬く間に戦場と化した城内を踏破し、ケルベロス達は玉座の間へと辿り着く。
「誰の許しを得て、ここまで足を踏み入れた!」
「カッカッカ! 貴様ら相手に、今さら許しが必要かよ!」
憎悪の表情で喝破する『継母』に、高笑いで応じたドルフィンはふと頭上を見上げた。何かが宙を舞っている。
それは、異様な色をした林檎だった。
ケルベロス達が踏み込んだ瞬間、既に投げ上げていたのだろう。
「だが、貴様らが来たならば、今こそ復讐の時だ。死ね!」
『継母』の言葉と共に、玉座の間の天井近くで毒林檎が弾ける。
だが、ケルベロス達は誰一人として動かなかった。
降り注いでくる液体が、なぜか全く危険性がないかのように感じられたのだ。
そして体に当たった液体に蝕まれながら、ケルベロス達は自分達の予感が全く的外れなものであることを知った。
「ど、どうなっとるんじゃ……?」
「我こそは『継母』、最強のジグラットゼクス!」
『継母』が、信用ならない曲者であることを、ケルベロス達の本能が訴えて来る。
だが、『継母』の一挙手一投足を注視するたび、それが定かならざるもののように感じられて来るのだ。
「どうした? 『私はここにいる』ぞ?」
「当たらん……どうなっておる?」
攻撃は、確かに『継母』の存在を捉えている。そのはずだ。だが、まるで当たった感覚がない不安感の中、幾人ものケルベロス達が催眠に陥っていく。
「『全く信用されない』とは、こういうことか……」
ケルベロス達は、ヘリオライダーが予知していた『継母』の能力を理解する。
「その声を聴けば、敵はその五感にすら、猜疑心を抱かねばならぬか。ならば!」
ドルフィンは、両手を一度耳に当てると、『継母』へ向け躍りかかった。『継母』が、正確に自らの方へ飛び掛かって来たドルフィンを、翼のようなプロテクターを展開して防ぐ。
「気付いたか」
「なんのことはない、声を使った詐術であれば、対処など容易いわ」
ドルフィンは氷を削り、耳栓の代わりとしていた。ドルフィンの対処を見習い、他のケルベロス達もその場で耳栓を造り対処とする。
「じゃが、ここからが本番じゃな」
事実、その通りであった。
ジュエルジグラット最強と言われたのは偽りではない。
ケルベロス達の猛攻を受けながらも、『継母』の魔術はケルベロス達の肉体感覚をかき乱し、毒に侵して来る。
また配下のドリームイーターも、『継母』は己の言葉を用い、その動きを制御していた。
誰にも信用されない寓話特性をも、己の武器とする。それが『継母』をジグラットゼクス最強へ押し上げたのだろう。
「全く、大した女じゃな」
感心するドルフィン。
だが、『継母』がたびたび発現する、その復讐心だけが奇妙だった。
「復讐を口にしていたが、それも己のものではないように思える……?」
だが、今は疑問を突き詰めている暇はない。
ドルフィンは、再び投げ上げられた毒林檎が弾ける瞬間、『継母』へと突進した。
翼をひとつうち、降り注ぐ毒の果肉と撒き散らされる毒液を避けながら、『継母』の懐へ潜り込む。その拳に螺旋の力が宿り、そして放たれる。
「これで、決着よ!」
「おのれ……この流刑地から脱することは叶わぬか。『鏡の中の愛しいあなた』。せめて、あなただけは……」
末期の声と共に、『継母』は力なく崩れ落ち、そして消滅していく。
『継母』の死と共に、ゼーのいるエリアの向こう、中枢ジグラット・ハートへ至る道を塞いでいた毒の沼が消えていく。
ジュエルジグラットでの戦いは、最終局面に入ろうとしていた。
→有力敵一覧
→(5)チェシャ猫(1勝0敗/戦力320→270)
→(7)赤の王様(1勝0敗/戦力580→530)
→(9)コクマ・シヴァルス(2勝1敗/戦力20→0/制圧完了!)
→(10)ゼー・フラクトゥール(5勝1敗/戦力690→430)
→(11)『継母』(24勝4敗/戦力1200→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。