■第7ターン結果
●ビルシャナ大菩薩
三菩薩によって構成された『大菩薩大護光』が消えると、金色の光の幕に覆い隠されていた『暗夜の宝石』の先へと、ケルベロス達は突入した。
雲霞のように現れるビルシャナを突破したケルベロス達の眼前に広がるのは、海を思わせる広大な黄金の輝きだった。
そして輝きの上に、半跏趺坐の姿勢を取って浮かぶのは、三菩薩を遥かに上回る巨大なビルシャナだった。
鎌倉に出現したものに似て、しかし、それよりも遥かに巨大な姿。
「ビルシャナ大菩薩……!」
月原・煌介(白砂月閃・e09504)が、思わず呟く。
呼ばれた名に応えるように、ビルシャナ大菩薩がうっすらと目を開く。
その瞬間、強烈な思念が月面にいる者全ての脳裏に響いた。
『すべては、衆合無(カタルシス)までの暇(いとま)なり。
我とひとつとなり、衆合無を迎えるべし』
その瞬間、ケルベロスたちは総身の毛が逆立つのを感じた。
理性を無視して、ケルベロス達の細胞の一つ一つが、その光の一部となれることに歓喜の声を上げているかのようだ。
意志の力で、その異常な考えをねじ伏せることは、ケルベロス達にとっては容易い。
だがそのような耐性を持たない一般人であれば、欣喜雀躍しながらビルシャナと化し、光の中へ自らを溶かとしていただろう。
「……まさか……!?」
煌介は、大菩薩の周囲に広がる光の海に目を向け、そして直感的に理解した。
光の一つ一つ、全てがビルシャナであり、そしてビルシャナ大菩薩の一部なのだと。
見れば、ビルシャナ大菩薩の足先は、光の海に浸されていた。
光の海は、『暗夜の宝石』へと染み込もうとしている。
無生物ですら教化する、恐るべき信仰の力。
今も『暗夜の宝石』は刻一刻とビルシャナ大菩薩の一部へ造り替えられようとしているのだ。荘厳なようでありながら、果てしなくおぞましい光景だった。
『全ての信仰は、我と共にあり──』
その言葉の正しさを示すように、光の海から続々と現れるビルシャナ達は、その種類も様々に、しかし等しくケルベロスを迎撃せんとする。
彼らにとって、個は全。全は個。
だが、それを地球の人々に強制することを認められるはずもなかった。
「さて……頑張ろう」
静かに気合を入れると、煌介は聖樹の杖を振りかざした。
「皆、支援するから……思い切り、行って……」
生命を賦活する電気が、ケルベロスの戦闘能力を引き上げていく。ここまで戦い抜いた者達に、いまさら倒れることなど許さない。
ウィッチドクターである煌介は、静かに宣言するかのように回復を行使していく。
彼をはじめとして、支援を行うケルベロスに支えられる形で、ケルベロス達は波を裂いて走る船のように、押し寄せるビルシャナの群れを突破していく。
そして、ケルベロス達はビルシャナ大菩薩を射程に捉えた。
繰り出されるグラビティが、ビルシャナ大菩薩の巨体を揺るがせていく。
『全は個、個は全。我は全ての信仰の元、最後のビルシャナへと至るべき者──』
ビルシャナ大菩薩から届いた思念に、煌介は理解する。
『最終生存体(レプリゼンタ)』。大菩薩は、そうなるべくして生まれた存在なのだ。
ひとつになることで、争いも悩みもなく、衆合無(カタルシス)までを生きる……。
あるいはそれが、菩薩たちの望みだったのか。
だとしても、地球の人々にビルシャナと同じ諦観を抱かせるわけにはいかない。
定められた命しか持たないとしても、だからこそ守らねばならない。
「それに……月は、返してもらうよ」
金の海の上を跳ぶように渡り、ビルシャナ大菩薩へと迫った煌介はその杖を一閃させた。杖の軌跡に沿う形で、大菩薩の喉に生まれた傷口から、金色の光の奔流が宇宙へと消えていく。
『衆合合切衆合無、衆合合切衆合無、導く菩薩は如来に至る……』
最期に、そう経を読み、ビルシャナ大菩薩の巨身は静かに消えていった。
光の海が潮が引くように退き、『暗夜の宝石』がその黒い輝きを取り戻す。
そして、光の海──ビルシャナ達が退いていく先に、ケルベロス達は見た。
巨大な光の渦。あれこそは──。
「大菩薩大回廊!!」
→有力敵一覧
→(4)レプリゼンタ・ギガトラルドン(0勝1敗/戦力500→490)
→(8)レプリゼンタ・パントファルドス(0勝1敗/戦力550→540)
→(10)レプリゼンタ・ジェイダリオン(1勝0敗/戦力500→450)
→(12)クルウルク(9勝5敗/戦力970→470)
→(13)ネカルギャハタ(0勝1敗/戦力900→890)
→(15)ビルシャナ大菩薩(26勝3敗/戦力970→0/制圧完了!)
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