■第1ターン結果
●スター・ピルグリム
黒曜石のように美しい筈の『暗夜の宝石』の戦場は、冒涜的な肉と植物が綯交ぜとなった存在に穢されていた。
その様子を遠くから見れば、培地で繁殖する細菌のコロニーのように見えるだろう。
「貴方のような性質の虫や植物も、この星にはある。きっと貴方も本能に従っているだけなのでしょう」
シア・ベクルクス(花虎の尾・e10131)は、眼下の戦場の様子をそう評しつつも、清浄な霊気を纏った斬霊刀、寒花万切を構えて、その巣へと足を踏み入れた。
彼女の突入と共に、後衛のケルベロス達のグラビティが砲撃のように降り注ぎ、道を切り開いていく。
砲撃で薙ぎ払われたスター・ピルグリムは肉塊となるが、周囲のスター・ピルグリムは、薙ぎ払われた仲間の肉塊を糧に増殖して、シア達の進軍を防ごうと蠢動し始めた。
「させないのですわっ!」
シアは、繁殖しようとするスター・ピルリムを研ぎ澄まされた突きでもって一撃で絶命させると、仲間と共に、戦場の中心へと駆け抜ける。
目指すは、戦場の中央に座し、この戦場をスター・ピルグリムの苗床へと変えた『スター・ピルグリム繁殖体』だ。
『繁殖体』を撃破せずとも、戦場を制圧する事は可能かもしれないが……、そうなれば、宇宙の何処かでまた繁殖を続け、この宇宙に害悪をまき散らせ続けるのは間違いない。
「あなたは絶対の悪では無いのかもしれない。でも、元からいた生物を食い尽くす外来生物は許されないわ。ここれで、駆逐されるが定めと思いなさい」
シアは、『ピルグリムは、ここで滅ぼす』との強い決意で前に進む。
この戦いは善と悪との戦いでは無い。
外来種と在来種による生存競争なのだ。
仲間との連携によって、スター・ピルグリムの群れを引き裂いて戦場の中央に到達したシアは、そこで、まわりの個体より一回り大きく、それ以上に肥大化した産卵管を持つ、スター・ピルグリムを発見した。
その偉容は、スター・ピルグリム繁殖体に間違い無い。
連携して、繁殖体に攻撃を集中させるケルベロス達のグラビティが繁殖体に襲い掛かる。
シアもまた、直前の攻撃を回避する為に、態勢を崩した繁殖体に向けて、必殺の雷刃突を突き入れる。
「あなたの居場所は、私達の宇宙にはないのです。いますぐ、この宇宙から退場していただきすわ」
寒花万切に纏う霊力が雷の性質を得て神速となり、繁殖体の急所を穿ち貫く。
繁殖体は、シアのグラビティにより肉塊ごと浄化され、宇宙の塵へと還っていく。
浸食され汚されていた戦場も、元の黒く美しい姿を取り戻していった。
「これで危機の一つは去りましたわね。でも、まだ先は長そうですの」
戦場を制圧したシア達は、ほっと息をつきつつも、先の戦場を思って、気を引き締めた。
●死合世明王
ケルベロス達は乱戦の月面を駆け抜け、ビルシャナ大菩薩を目指して突き進んだ。
その攻撃は、死合世明王が率いるビルシャナの守りをたちまち突破していく。
『大切な人達と共に死ぬ。それこそが、定命の者の死合世(しあわせ)……』
死合世明王と、それに従うビルシャナ達は、己の教義を振りかざし、ケルベロス達に抵抗を見せる。
「大切な人と過ごす時間は尊いものだね」
ミライ・トリカラード(夜明けを告げる色・e00193)は、口の中でそう呟いた。死合世明王の教義に、共感できる部分があると思える。
「全員がそういう最期を迎えられる訳じゃないよね」
今の地球に、自分が望まぬ形で死を迎える人など無数にいる。
そんなことは、ケルベロスとして人々の死を防いで来たミライにも分かっている。
もっとも、一部の正しさを認めたとて、彼女はビルシャナが全面的に正しいと受け入れてはいなかった。
「……でも、だからって、今死んでいいなんてことは無いよ!」
『暗夜の宝石』の黒い地面に、ミライの地獄の炎が燃え盛った。
「ヘルズゲート・アンロック! コール・トリカラード!」
地獄の炎が魔法陣を描き出す。その中央から飛び出してくるのは、赤、黄、青の三色の炎を宿した鎖たちだ。
鎖たちは蛇のような執念深さで死合世明王を追い、殴打を加えていく。
「『死ぬまで生きる』! それが定命のボク達が持つ権利で義務さ!」
『わたくしもまた……ビルシャナ大菩薩と合一するためにも、死ぬことは出来ない……』
ミライの鎖に追い詰められた死合世明王は、鎖に縛られた翼を引きちぎると僅かな手勢と共に脱出していく。
「この戦場は、もう突破できるね。先を急がないと!」
まだ、突破すべき戦場は数多く存在している。
戦力を費やしている余裕は、ケルベロス達にもないのかも知れなかった。
→有力敵一覧
→(2)スター・ピルグリム(18勝2敗/戦力900→0/制圧完了!)
→(3)死合世明王(15勝2敗/戦力800→30)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。