■第7ターン結果
●双子の死神達
『もうすぐ、水が大地を満たすのね、キュー姉様』
『大地を満たした水は凍りつくわ、キュー姉様』
互いを『キュー姉様』と呼び合う双子の死神、キューモドケーとキュマトレーゲ。
2人は人形を通じ、言葉を交わしていた。
東京湾の入り口、浦賀水道付近にまで拡大していた。
付近の潮位も次第に上がりつつある。
充分に力を蓄え、解放すれば、そのまま海水は地上を飲み込んでいくだろう。
『ケルベロスが来るわ』
『そうね。怖い人達……』
既にケルベロス達は、2人の死神の居場所の敵戦力を殲滅しつつある。
双子の死神に、戦いの音は近付きつつあった。
『でも、恐れる必要はないわ』
『ええ、そうねキュー姉様。たとえ命を喪おうとも』
『私達はいつでも一緒なのだから』
双子との会話を打ち切ったキューモドケーが、踊るように宙へと浮き上がる。
暴風が一際つよく、彼女に近付きつつあったケルベロス達へと吹き付ける。
●『暴雨の死神』キュマトレーゲ
「はあ、ネレなんだっけ? おたくらにゃ世話んなりましたね」
サイガ・クロガネ(唯我裁断・e04394)は、雨に濡れながら宮川湾に立つ『暴雨の死神』キュマトレーゲと相対していた。
周辺に巣食う死神達は、ケルベロスによって駆逐されつつあるが、キュマトレーゲの茫洋としながらも冷たい視線は、何を考えているのかつかみかねるものだ。
だが、その敵意は確かなものだった。
冷たい雨が、文字通り『刺す』ようにケルベロス達へと降り注ぎ始める。
「オッケー、よく分かった!」
雨に触れた素肌から血が飛び散る。その危険性を認識した瞬間、サイガは走り出していた。
「敵の能力は氷雨。極細の針が大量に降り注いでいるようなものっと……!!」
頭の上にかざした黒鎖を高速で旋回させて氷雨を弾き飛ばすと、サイガは一息に距離を詰める。
「よりによって番犬巣食う東京狙いたぁ、わざわざ喰われにきたとみた。お望み通りに殺してやる!」
夏以来の一連の事件に関わり続けた死神集団ネレイデス。
その狙いを再び阻止し、ここで決着をつけねばならない。
サイガは漆黒の爪へと降魔の力を宿すと、
次第次第に、キュマトレーゲの美しい顔が焦燥に歪んでいく。
だが、それがサイガの心に何らの痛痒を与えることはなかった。
『キュー姉様……!!』
「――あっち(地獄)にいってもよろしくな!」
いっそ明るい声音で告げると共に、キュマトレーゲの姿は消し飛んだ。
●『暴風の死神』キューモドケー
奇襲攻撃に始まり、開戦直後から攻められ続けていた大房岬に残る敵は僅かだった。
キューモドケーの居場所を、ビスマス・テルマール(なめろう鎧装騎兵・e01893)が発見するのは簡単だった。
最も強い風雨が吹いている地点。
それが、関東平野を水没させんとする死神の居場所だ。
ドレスを纏った死神キューモドケーは、この岬にいる者の中でただ一人濡れることもなく、その美しい姿を示していた。
「なめろうの聖地で、なんてことをしてくれるんですか」
もしも関東平野の水没を許せば、それで失われる郷土文化の数は計り知れない。
なめろうを始め、郷土文化を愛するビスマスが、それを許せるはずもなかった。
戦いに決着をつけるべく、ビスマスは必殺のグラビティを発動させる。
「ガイアグラビティ……生成完了っ! マカジキフォーム装着……武装と胸部同時展開っ!」
ビスマスの体に、マカジキをモチーフとした武装付き全身鎧装が装着される。
同じくマカジキ型のアームドフォートの展開と同時、胸部装甲が変形。
現れるのは、グラビティの発射口だ。
「貫き砕けよ……マカジキフォトン・ブラスターッ!」
発射口、そしてアームドフォートから放たれたのは、マカジキ型をした巨大なフォトン弾。
三匹のマカジキ型フォトン弾は、次々とキューモドケーを貫いた。
『キュー姉様……!!』
奇しくも、宮川湾でキュマトレーゲと同時刻。
悲鳴と共に、キューモドケーの姿は消滅していく。
●エインヘリアル第二王女ハール
宝瓶宮創神の間。
エインヘリアル第二王女ハールは、この場所で『星霊甲冑オーディン』の創造を続けていた。
「アスガルドに住まう幾つもの種族を創造した『狂戦士オーディン』……その力を寄越しなさい」
オーディンのコギトエルゴスムが宿す力が、ハールの身に着けた星霊甲冑へと流れ込んでいく。
グランドロン内部に秘密裡に作られた創神の間の存在を知る者は、計画実行までごく一部の者だけに限られていた。
ハールは父王達にも、協力者であった第四王女レリにも、この場所の存在は勿論のこと、星霊甲冑オーディンのことすら明かしていない。
他の兄弟姉妹を出し抜き、王の後継者としての地位を確立するための、完全な独断専行だ。
だが、その創神の間は、既にケルベロス達の侵入を許していた。
英雄神ペルセウスと同様、創神の間を守るエインヘリアルの多くも命を捨てて戦い、そして敗れ去った。それだけ、ハールにかけられている期待は大きいものであったのだろう。
生き残りの僅かな部下達を伴い、ケルベロス達を前にしてハールは不敵に笑って見せる。
「ペルセウスを破るとはね。ザイフリート兄上やイグニスをくだしたケルベロス、甘く見たつもりは無かったけれど……自分の読みの浅さが嫌になるわ」
「お前がハールか……お前を倒し、ここで戦いを終わらせる!!」
ケルベロス達が猛攻を開始する。
彼らの勢いは、ハールを守らんとする兵士達を次々と打ち破るに足るものだった。
だが、あと一歩のところで、敵陣の完全なる崩壊を食い止めたのはハール本人の力だった。
「オーディンの槍、グングニル。その力を私に!!」
ハールが手にした槍が鈍く光ると共に、衝撃が戦場を貫き、ルーン文字が乱舞する。
戦いは、長くは続かなかった。
「く……撤退する!!」
ここまでを勝ち抜いて来たケルベロス達を、未完成ながらも星霊甲冑オーディンを纏ったハールは退けたのだ。だが、ハールの代償もまた大きかった。
「創神の間が……」
戦いによって荒れ果てた創神の間。
そして、数少ない護衛の騎士や兵士達。
これ以上、この場に留まったとしても、星霊甲冑オーディンを完成させるのは不可能だ。
さらに戦いで力を使い過ぎたのか、星霊甲冑が帯びていた力も失われていく……。
「死をもたらすケルベロスとの戦い……未完成の星霊甲冑では、荷が重すぎたというの?」
ハールは憮然として呟き、頭上を見上げた。
「グランドロン、あなたには……散ってもらうわ」
●『グランドロン』
『契約者ハールの命令を確認しました。妖精グランドロンは、その務めを遂行します』
創神の間を制圧しつつあったケルベロスの耳に、その声は響いた。
同時、宝瓶宮グランドロン全体が鳴動を始める。
その鳴動は、すぐに大きな揺れとなった。続けてグランドロンの各所に穴が開いたかと思うと、内部にいたケルベロスが次々に外部へと放り出され、東京湾の海面に落下する。
「冷たッ!?」
「妖精グランドロン……え、まさか、妖精八種族……?」
魔導神殿群ヴァルハラの一つ、宝瓶宮グランドロン。
そのグランドロンは意志を持っており、なおかつ『妖精』である。
あまりにも『妖精』という言葉からイメージされるものとはかけ離れた情報に、その事実をケルベロスが把握するにはしばしの時間を要した。
「家屋に憑く妖精だろうか? そういう伝承は地球にもあるが」
「何か違うような気もしますが……」
そう言いながら、水に潜って逃走を図ろうとしたエインヘリアル達を倒すケルベロス。
その間にも、グランドロンは更なる変化を見せる。
液体燃料ロケットを思わせる、強烈な魔力の奔流を噴射し始めたのだ。
「飛ぶのか……!?」
かき乱される海水に翻弄されるケルベロス達のうち、飛行可能なケルベロス達な者達は咄嗟にグランドロンに取り付こうとする。
だが、グランドロンは彼らを置き去りに、球状の全体を晒しながら上空へと舞い上がった。
そして、遥か上空に達したグランドロンは、五つの断片に分かれると、その一つ一つが異なる方角へと飛んでいく。
「衛星とかで追えてるかな?」
「東京湾マキナクロスも消え始めている。ある程度は追えていると思うが……東京湾にもまだ残存する敵も、放置はできないだろうな」
第二王女ハールと共に消えた宝瓶宮グランドロン。
それが新たな事件の火種となるであろうことを、静けさを取り戻しつつある東京湾で、ケルベロス達は直感していた。
→有力敵一覧
→(2)築地城壁(0勝1敗/戦力720→710)
→(3)月島城壁(0勝1敗/戦力860→850)
→(5)汐留城壁(0勝1敗/戦力1100→1090)
→(10)レインボーブリッジ(1勝0敗/戦力1500→1450)
→(11)京葉工業地域(1勝0敗/戦力900→850)
→(12)品川城壁(0勝1敗/戦力780→770)
→(13)石油化学コンビナート群(1勝0敗/戦力860→810)
→(19)東京湾アクアブリッジ(0勝1敗/戦力680→670)
→(21)川崎港(1勝0敗/戦力690→640)
→(22)宝瓶宮創神の間(10勝6敗/戦力290→0/制圧完了!)
→(23)木更津港(1勝0敗/戦力770→720)
→(28)富津岬(1勝0敗/戦力660→610)
→(31)観音崎灯台(0勝1敗/戦力530→520)
→(32)新舞子海水浴場(1勝0敗/戦力500→450)
→(37)三浦海岸海水浴場(1勝0敗/戦力1140→1090)
→(38)金谷港(1勝0敗/戦力700→650)
→(41)宮川湾(22勝7敗/戦力1140→0/制圧完了!)
→(42)大房岬(7勝7敗/戦力270→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。