■第2ターン結果
●『終末機巧』エスカトロジー
先の侵攻で戦力を大きく削がれた、浦安マキナクロスの軍勢は、主将である『終末機巧』エスカトロジーが先頭に立つ事で、なんとか軍勢としての体裁を整え直し、侵攻してくるケルベロス達に相対する。
「卑怯なだけかと思ったが、やるときはやるという事か?」
ゼレフ・スティガル(雲・e00179)は、指揮官先頭を実践するエスカトロジーを少しだけ見直したが、すぐにその考えを改めた。エスカトロジーは、戦意を高めたケルベロスの前に立つと、慇懃無礼に一礼をし、こう口にしたのだ。
「取引をしましょう」
と。
エスカトロジーは、他のデウスエクス勢力の危険性を訴え、更に、ダモクレスの軍勢が『東京湾マキナクロス』さえ完成すれば、これ以上の地球侵攻は行わなくて済むので、共存が可能だとケルベロスに言い募った。
当然ながら、ケルベロス達の反応は薄い。次第に焦りをみせた彼は、
「東京湾マキナクロスの目的の一つは、かつてのピラーと同様のグラビティ・チェイン収奪機能を機能させる事。これが成功し、ケルベロスが東京湾マキナクロスの存在を許容するのならば、ダモクレス全軍は地球からの撤退が可能になる。どうです、話し合いの余地はありませんか?」
などと、早口で捲し立てはじめる。
だが、この取引の申し出を、ゼレフは即座に拒絶した。
「取引だと? それは互いに信用があって初めて行えるものだ。――僕の友を実験材料と扱った、君に、その信用は無い!」
その上で、エスカトロジーの言葉には2つの欺瞞があった。
東京湾マキナクロスがピラーの能力を得られるというのが予測でしかない事、これを実現できなければ、人類を虐殺してのグラビティ・チェインをダモクレスが続行するであろう。
更に、仮にグラビティ・チェインの収奪に成功したとしても『ダモクレスは地球からの撤退が可能になる』と言っているだけで、撤退すると明言しているわけでは無いのだ。
質の悪い、詐術。詐欺の類と考えて間違いないだろう。
このゼレフの言葉に、エスカトロジーは説得の言葉を止めた。
「突撃せよ!!」
一丸となってケルベロスに襲い掛かったダモクレス軍は、劣勢の戦況の中でも奮闘してみせたが、彼我の戦力の差は覆らず、ケルベロスの武力の前に殲滅されていく。
エスカトロジーもまた、多数のケルベロスに包囲され、絶体絶命の状況に追い込まれていく。
「観念するんだな、エスカトロジー。そう何度も逃げおおせるとでも思ったか?」
ゼレフが惨殺ナイフ『冬浪』を構えて宣言すると、エスカトロジーは諦めたように手を降ろした。
「ここで、君を返り討ちにしても、逃れる術は無い。ならば、こういうのが礼儀でしょうね。殺せ……と」
エスカトロジーの揶揄するような言葉に反応し、ゼレフは跳んだ。
「これは、返礼だ」
『冬浪』の柄を逆手で捻ると、エスカトロジーに深く深く抉り込む。
致命傷を負ったエスカトロジーは、掠れる声で言った。
「ダモクレスとの共存はありえますよ。今は信じなくても構わないですが、戦いの終局で、完全勝利を望めなくなった時に『東京湾マキナクロスが定着すれば、ダモクレスとの共存の可能性が生まれる』事を思い出しなさい。そうすれば……」
そう遺言を残して滅びさった。
その言葉は、東京湾マキナクロスの定着の可能性を少しでも上げる為の詐術であったのか?
ゼレフ達ケルベロスには、その真偽を知る術は存在していない。だが、
「死に際まで性質の悪い奴だ」
命懸けで詐術を試みたのならば、それもまた、人間を研究しようとしたエスカトロジーの一面であったのかもしれない。
●狐仙術士チハヤ
フェーミナ騎士団全体の軍師役も務める狐仙術士チハヤ。
ファーストアタック、セカンドアタックにおける海ほたる周辺での戦いでは指揮に専念し、前に出て来ていなかった彼女も、今となっては一隊を率いて前線に立っている。
「ですが、これで時間を稼げれば……踏みとどまりますよ、皆さん!」
チハヤの呼び掛けに、返る声の数は僅かだ。
ケルベロスは海ほたるを完全に制圧しつつあった。
「団長はまだ前線ですか。団長だけなら包囲を破って東側に抜けることも……」
「それは困りますね」
「……!!」
言葉と共に飛来したのは、何匹もの龍の群れだ。それに食らいつかれながらも、チハヤ符を叩きつけるように殴りつけ牙を免れる。
「ドラゴンではない……のは、幸いというべきなんですかね」
「やはりこれだけ戦力を整えた上に戦略に長けたものがいると骨が折れますね。ですが、ここで首級は取らせて貰いますよ」
顕現させた龍を伴い自分を見る矢野・優弥(闇を焼き尽くす昼行燈・e03116)の姿に、チハヤは覚悟を決めたように表情を硬くした。周囲にいた護衛達も、ばたばたと倒れ伏し、消滅していく。
「……もはや、これまでですね。ですが一人でも多く倒させてもらいます!」
大量の符が空中を舞い飛んだ。
符は狐火へと変わりながら、ケルベロス達へと迫る。
「古に伝わる八柱の龍王よ。汝が真名と我が魂の契約において、命ず。荒ぶる水と氷の力を持て、我が眼前に立ちふさがりし者ども討て!」
優弥の声に龍王達が狐火を次々と撃墜。
その爆発に紛れるようにして飛んだ尖ったガラスの破片が、チハヤの胸を貫いた。
「大物に目を取られ過ぎましたか……」
優弥のビハインド、ミズキシュターデンの姿に、チハヤは苦笑し、飛来する龍王を受け止める。
優弥が龍王達を送還した時、チハヤや他のエインヘリアル達は力尽き、戦場から消えていた。
●巨人殺しの剣聖レイラトゥー
巨人殺しの剣聖レイラトゥー。その実力が他の隊長級の者達よりも一段上であることを、ケルベロス達は身をもって実感させられていた。
天司・桜子(桜花絢爛・e20368)は、配下達が倒れてなお孤軍奮闘を続けるレイラトゥーの前に躍り出ると名乗りを挙げた。
「私は桜子、いざ勝負だよー」
「いい度胸だ。あたしはレイラトゥー、巨人殺しの剣聖と呼ばれた女だ。行くぞ!!」
「こっちだって、ケルベロスとして、簡単には負けないから!」
全身に傷を負い、体を血の色に染めながらも、ケルベロス達へと剣撃を繰り出し続けるレイラトゥー。女ながらにエインヘリアル達に剣聖と称されたというのは嘘ではないのだろう。その一撃一撃はケルベロス達の剣士達をして、見事という他ないものだ。
「ハールの嬢ちゃんが大それた夢を叶えようっていうんだ。それを手助けしなけりゃ剣聖の名が廃るってものさ!!」
全身から吹き上がるような闘気が、ハイレインの戦意を示していた。
フェーミナ騎士団の者達は、自分達の主と認めたハールを止めない限り、戦いをやめるまい。
「だけど、その夢のために、地球のみんなを苦しめるのはダメだよ!」
「誰かを犠牲にしなけりゃ生きていけない奴もいるんだよ!!」
こちらの首筋を狙って振り下ろされて来るレイラトゥーの剣を、桜子は咄嗟に桜花術書で受け止める。凄まじい威力に、頑丈な魔導書のページが舞い散り、一瞬桜子の姿を隠す。
「桜の花々よ、紅き炎となりて、かの者を焼き尽くせ!」
その声に応え、舞い散るページに紛れるように、桜の花弁状のエナジーが無数に出現していく。
レイラトゥーを取り囲んだ桜の花弁は、そのまま無数の紅蓮の炎へと変わり、彼女を焼き尽くさんとする。
剣を振るい、その炎をかき消したのも束の間、エアシューズを履いた桜子の足が、レイラトゥーへと突き刺さる。
「どう? 桜子の実力を見たかなー?」
「見事なもんだ……!! ハイレイン、ハール、後は任せた!」
桜子への称賛、そして友への末期の言葉を残し、剣聖はくずおれ、消滅していった。
→有力敵一覧
→(2)築地城壁(1勝1敗/戦力940→880)
→(3)月島城壁(1勝0敗/戦力990→940)
→(5)汐留城壁(0勝1敗/戦力1190→1180)
→(8)浦安マキナクロス(17勝2敗/戦力330→0/制圧完了!)
→(11)京葉工業地域(0勝1敗/戦力990→980)
→(12)品川城壁(1勝0敗/戦力950→900)
→(13)石油化学コンビナート群(0勝1敗/戦力950→940)
→(18)海ほたるPA(9勝4敗/戦力390→0/制圧完了!)
→(20)木更津ジャンクション(4勝3敗/戦力390→160)
→(21)川崎港(1勝0敗/戦力780→730)
→(24)横浜港(7勝1敗/戦力740→380)
→(28)富津岬(0勝1敗/戦力790→780)
→(29)横須賀米海軍施設(5勝1敗/戦力340→80)
→(32)新舞子海水浴場(0勝1敗/戦力590→580)
→(37)三浦海岸海水浴場(0勝1敗/戦力1190→1180)
→(38)金谷港(1勝0敗/戦力950→900)
→(41)宮川湾(1勝1敗/戦力1540→1480)
→(42)大房岬(1勝1敗/戦力1150→1090)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。