熊本滅竜戦

■第8ターン結果

●黒牙卿・ヴォーダン

『良くぞ来た、ケルベロス共よ! さあ、決着をつけようぞ!』
 黒牙卿・ヴォーダンは、残る黒牙騎兵団の総力をあげて、ケルベロスを迎え撃つべく立ち上がった。
 熊本滅竜戦の当初より、今まで、常に戦い続けたヴォーダンの軍勢はほぼ壊滅しており、ヴォーダンもまた、死の宿命を負い、その命の灯は消えんとしていた。
 しかし、黒牙卿・ヴォーダンは立ち上がり、戦い続ける。

『我は、魔竜を一体でも多く送り出す為の捨て石となろう。そして願わくば、満足できる闘いを!」
 黒牙卿・ヴォーダンが漆黒の大剣を振るい戦場を駆ける。
 デウスエクスとして幾百の人間を惨殺した邪悪な竜牙兵であっても、ドラゴンに対するその忠義は絶大であった。
 その団長の忠義に応えるように、残り少ない配下の黒牙騎兵団も、命を的に戦場で武を振るい、死のその瞬間まで、ケルベロスと死闘を続けるのだった。

「逃さない………逃さない、――逃さない」
 そのヴォーダンの戦いを昏い瞳で睨みつける男が一人。
 その男、落内・眠堂(指括り・e01178)は、護符を掲げて執拗にヴォーダンを狙う。
「貴様の名は?」
 眠堂の執拗な攻撃に追い詰められた、ヴォーダンが眠堂の名を問う。
「俺の名は落内・眠堂。お前に死を与えるものだっ!」
 ヴォーダンは、その答えに頷くと、渾身の力で大剣を握りしめた。
「良い狂気、良い憎しみだ。我は、黒牙騎兵団団長、黒牙卿・ヴォーダン。貴様のような戦士が、我が斃す最後の敵であった事に感謝するぞ!」
 もはや死を覚悟したヴォーダンは、雄叫びをあげて、眠堂に切りかかった。
 だが、満身創痍のヴォーダンの攻撃は、眠堂に届く事は無い。
 その攻撃を半身で交わした眠堂は、研ぎ澄まされた気を凝縮させてカウンター気味に撃ちだすと、ヴォーダンの首を引き千切るように穿ったのだ。
「お前は多くの者を傷つけ過ぎた。俺は、お前を許さない。お前が還るべきは、地の底、根の国のみ!」
 首を千切り飛ばされたヴォーダンは、眠堂の言葉を首だけになったまま聞き、そして塵となり消える。
 この戦いで、ヴォーダンとその軍団は、完全に滅ぶ。
 眠堂の願い通り、二度と、人を傷付ける事ができなくなったのだ。

●竜闘姫リファイア・レンブランド

「……あれ、ドラグナー?」
 ルカ・エルステラ(優雅なる破壊者・e38371)は、眼前に現れたドラグナー、竜闘姫リファイア・レンブランドの姿に首を傾げた。
「もしかしてこれは、シエラに同族と戦わせまいとする無意識の産物……」
 ルカの足元で、シエラが違う違うと首を振った。
「あれぇ?」
「何をごちゃごちゃと言っている!!」

 たちまちにして距離を詰め、拳打を繰り出して来るリファイア。
 その引き連れている配下の竜牙拳士達の数は、もはや少数というべきものだ。
「よし、ドラゴン……もといドラグナー狩りと行こう!」
「余裕だな……!!」
 妹を討たれ、復讐戦と位置づけるリファイアにとって、そのような余裕は戦意を狩り立てるものであっただろう。
 だが、しばらく戦ううち、復讐者として以上にリファイアの雰囲気が変わって来るのを、ルカは感じていた。
「よく連携が取れている……なかなかやるな!!」
「復讐じゃなかったのかな……」
 リファイアの顔に、戦を好む者としての歓喜の色が明らかに滲んでいた。
「妹の仇はとる。戦いは楽しむ。どちらの感情であれ、私のものだ!!」
「すごい割り切り方だね……」
 そうでもなければ、ドラゴンの配下などやっていられないのかも知れない。
 理解できないものを感じながらも、ルカはシエラに指示を下す。
「シエラ!!」
 リファイアの背後に回り込んでいたシエラが、強烈なタックルを叩き込む。
「痛みは甘く、鮮烈に──」
 たたらを踏んだリファイアに向け、ルカの回し蹴りが叩き込まれる。
 その蹴りがもたらす痛みは、やがて現実の紅い炎と化してリファイアの胸から広がり、彼女を焼き尽くしていった。

●大禍瑠璃

 海水が熊本港へ向けての流れを作りつつあることが観測されつつあった。
 それが大禍瑠璃の『大海嘯』の前兆であることを疑う者はもはや僅かだ。
 発動したが最後、熊本県を滅ぼすであろう龍の一撃を阻止すべく、ケルベロス達は大禍瑠璃が待ち受ける熊本港を目指していた。

 熊本市の海の玄関口、熊本港。
 有明海に面した、熊本市の西の海に建設された、人口島形式の港湾である。
 本来は熊本港大橋で陸地とつながっているのだが、その橋も当然のようにドラゴン勢力の攻撃によって落とされている。

「さすがに今の海で闇夜の海水浴をする気にはなれんな……」

 橋脚の残骸を飛び移るジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)は、足元から響く音に顔をしかめた。
『大海嘯』発動の前兆として海水は唸り、渦巻き、呑み込む全てを砕かんとしている。
 ケルベロスですら、『大海嘯』に呑み込まれれば、無事では済まないだろう。

 やがて人工島に近付くにつれ、海水そのもので出来たような肉体を持つ、巨大なドラゴンの姿が、闇夜に映し出される。
「あれが、大禍瑠璃……」
 ドラゴン勢力の『海』の巨魁。
 その威容に、ケルベロス達の背筋に緊張感が走る。
「大丈夫だって、アストライオスだって倒したんだ。また同じように倒してやりゃいいさ!」
 ケルベロス達の中、唯一、大禍瑠璃の威圧感を意に介さぬように、深宮司・蒼(綿津見降ろし・e16730)が明るい声を上げた。
 だが、その蒼の心の中に、大禍瑠璃の女性的ともいえる声が響く。
『良くぞ。良くぞ我が前に来てくれました』
「へ、俺?」
 蒼を目にした大禍瑠璃の目が、爛々と輝くのをケルベロス達は目にした。
 そこに宿るのは、歓喜の色。そして、明白な殺意だ。
『あなたを殺せば、我が力は完全なものとなる……!! 熊本だけとは言いますまい。九州全土を、海へと引きずり込むことすら叶いましょう!!』
 蒼の胸が、大きく一つ鼓動を打った。
 魂の中で、何かがあのドラゴンに呼応するように蠢くのを感じ、蒼は声を上げた。
「やばい、狙われてる、かも……!!」
 蒼の言葉と同時に、大禍瑠璃配下の敵が一斉に彼の方へと押し寄せる。
 大禍瑠璃自らもまた、その身を海に躍らせ、蒼を目掛けて迫らんとしていた。
「理由は分からんが、どうやら、事実のようだな……!!」
「え、さっきの聞こえてなかったの!? もしかして聞こえたの俺だけ!?」
 泡を食って先程の大禍瑠璃の言葉を説明する蒼を中心にケルベロス達は防衛体制を取る。攻守が逆転した奇妙な状況の中、ケルベロスは押し寄せる配下種族を撃退していく。
 だが、大禍瑠璃の力は絶大だ。
 足場が悪い上に、大禍瑠璃が巧みに波を操り、ケルベロス達を夜の海へ叩き落としにかかる。配下の敵との戦闘を強いられるケルベロス達に、苦戦の気配が濃くなっていった。
 仲間の窮地を目にした蒼の決断は早かった。
「あいつを、陸地に引き付ける……!!」
 そう言葉を残すと、彼は来た側に向けて一気に駆け出した。
 蒼を狙わんとする大禍瑠璃の注意が、他のケルベロス達から逸れ、蒼を追って陸地へと向かっていく。
「まだ無事な者は、蒼と一緒に走れ! 殺させるな!!」
 ジークリットの声に応じられた者達が、蒼と大禍瑠璃を追って駆けだす。

「陸地なら、こっちのもんだろ!!」
 大禍瑠璃の生み出すグラビティの波を次々と受け、建物の残骸が押し流されていく。
 その残骸を飛び移りながらケルベロス達は、大禍瑠璃へと迫り、グラビティを繰り出していった。
 コール・タール(マホウ使い・e10649)のフロストレーザーをはじめとして、氷を受けた大禍瑠璃の体は、その構成する海水ごと、瞬く間に凍りついていく。
『小癪な真似を……』
 大禍瑠璃はしかし恐るべき執念を見せた。
 次々と繰り出される波がケルベロス達を押し流し、その波はやがて、囮となっていた蒼へと届く。
「みんな、後、頼む……!!」
 波の直撃を受け意識を手放した蒼の体は、波に乗って、蒼の体が急速に大禍瑠璃へと引き寄せられ、その海水の内へと吸い込まれていく。
『その魂を、いただく!!』
 勝利への確信とさらなる進化の予感に、大禍瑠璃が歓喜の声を上げる。
 だが、それが最大の隙となった。
「いくぞ、光闇! アイリス! リリ! ルー! ステラ! クラウス!!」
 波にさらわれ、何処にいるとも知れぬ者達を含めた仲間の名を叫び、ジークリットは剣を振るった。
「風よ、邪竜を討ち滅ぼせ! 烈風!!」
 空を裂いた衝撃が、もはや崩れかけていた大禍瑠璃の肉体に、最後の一撃を加える。
『口惜しや……あと一歩のところで……!!』
「力を得る好機が、目を曇らせたな」
 落下した蒼の体を受け止めたジークリットは、そう言い放つ。
 大禍瑠璃の瞳はしばし明滅していたが、それもやがて海水として有明海に消えていった。

 海水のうねりが収まり、『大海嘯』の発動が起きないことが共通の理解となると同時、生き残っていたドラゴン達は熊本市内から一斉に飛び去っていった。
 配下種族もまた、魔空回廊を用いて逃げ去っていく。

「熊本市の奪還は完了した! 我々の勝利だ!!」
 そして、ケルベロス達の勝利宣言が、全世界の人々に届けられる。
 ケルベロス達はドラゴンとの大規模戦闘に、勝利を収めたのだ。

→有力敵一覧

→(2)黒牙卿・ヴォーダン(4勝2敗/戦力60→0/制圧完了!)

→(3)竜闘姫リファイア・レンブランド(7勝1敗/戦力270→0/制圧完了!)

→(4)害蟲竜バルグガロン(0勝1敗/戦力1230→1220)

→(8)喪亡竜エウロス(1勝1敗/戦力930→870)

→(10)貪食竜ボレアース(3勝0敗/戦力790→640)

→(11)大禍瑠璃(47勝11敗/戦力836→0/制圧完了!)

→(13)魔竜アストラ・ワイズ(1勝0敗/戦力1270→1220)

→(14)魔竜デス・グランデリオン(1勝0敗/戦力1150→1100)

→(16)魔竜ブースト・レイノルズ(1勝0敗/戦力1350→1300)

→(17)魔竜アポクリファ・セラフィム(0勝1敗/戦力1350→1340)

→(23)魔竜ニフカルマ・グリード(0勝1敗/戦力1250→1240)

→(24)魔竜クリエイション・ダーク(0勝1敗/戦力1300→1290)

→(27)魔竜フォーマルハウト・グラビティ(0勝1敗/戦力1330→1320)

→(28)魔竜ワード・ブレイカー(1勝0敗/戦力1310→1260)

→重傷復活者一覧

→死亡者一覧

■有力敵一覧

有力敵 戦功点 現状

黒牙卿・ヴォーダン
1800
(2)黒牙卿・ヴォーダン:Battle1にて、落内・眠堂(指括り・e01178)に倒される。

竜闘姫リファイア・レンブランド
1800
(3)竜闘姫リファイア・レンブランド:Battle1にて、シエラ(ルカ・エルステラのサーヴァント)に倒される。

大禍瑠璃
3540
(11)大禍瑠璃:Battle1にて、ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・e63164)に倒される。

戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。

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