菩薩累乗会

●（41）衆合無ビルシャナ
　物部・帳（お騒がせ警官・e02957）は、衆合無ビルシャナと共に現れた『輝きの軍勢』のダモクレスと交戦していた。
　リボルバー『捕鳥部万』から放たれた弾丸は、『輝きの槍』と呼ばれる型式の機体の装甲の隙間から体内に飛び込むと、内部で跳弾を引き起こし回路を引き裂き食い荒らす。
　黒煙を上げて倒れ伏したダモクレスにはもはや目もくれず、帳はその場を飛びのいた。
　翼を広げて突っ込んで来た新たな『輝きの槍』が、同類の残骸ごと帳の居た場所を破壊していく。
「仲間の死にもお構いなしというのは、ダモクレスらしいでありますね」
　ピエロを思わせる顔にペイントをした機械天使は、瞼を閉じたままの顔を帳へと向ける。
『衆合無ビルシャナのデータ収集と並行し、ケルベロスのデータ収集を実施』
　唇を動かすことも無く言うと、機械の腕に力がこもり、翼が開く。
　突撃の態勢だ。
「ならば！　この弾は、少々特別製でありますよ！」
　帳は水銀の銃弾を『捕鳥部万』の弾倉に叩き込むと、引き金を引いた。
　飛び込んで来る機械天使は、銃弾が直撃しないことを即座に判断してなおも直進せんとする。だが、銃弾は機械天使の至近で破裂した。
　破裂の中から飛び出した『御業』は、連鎖的に雷を引き起こし、横合いから輝きの槍を呑み込んだ。
『輝きの槍』の突撃が逸れ、そのまま近くの寺院の壁に突っ込み爆発する。
「ふっふっふ、これぞ特科の底力！どうです皆さん！」
　ガッツポーズを作っていう帳。
　彼らの活躍もあってビルシャナの掃討を終えたケルベロス達は、強敵達の待ち受ける戦場への道を切り拓いていった。

●（49）衆合無ビルシャナ
　自愛菩薩への道を造らんとする葉月・静夏（戦うことを楽しもう・e04116）達の前に、衆合無ビルシャナ達と共に現れたのは、螺旋忍軍『幻花衆』。
　これまでにも、菩薩累乗会を巡る事件で交戦して来た相手だが、累乗曼荼羅という常にビルシャナの教えに晒される状況に置かれた彼らは、既に正気を失っていた。
「人間社会への、情など要らぬ……ただ、要るのは、己への愛のみ……」
　自愛菩薩の影響を強く受けているのだろう。
　どこか恍惚とした様子ながらも、振るう忍術の冴えに変わりはない。
　振るう苦無を【盛夏】と号した大戦斧で弾き返すと、静夏は幻花衆の様子を観察する。
「こうなってしまったら、螺旋忍軍も形無しだね」
　もっとも、ケルベロス達にとっても笑いごとでは済まされないのは、静夏も理解している。
　デウスエクスですら、ビルシャナの教化に晒されれば心を侵されてしまうのだ。
　菩薩累乗会を止められず、ビルシャナの教えが日本に、そして世界に広がれば、被害は止め処なく拡大していくだろう。

　ただでさえビルシャナが引き起こす事件の数は他のデウスエクスを圧倒している。
「また事件を増やされたら、たまったものじゃないし……！」
　飛びかかって来る幻花衆の苦無を逸らし、静夏は懐に飛び込んだ。
「ハードな西瓜割りの時間だよ！」
　お辞儀をするような姿勢から、強烈なヘッドバッドが螺旋忍軍に叩き込まれる。
　凄まじい衝撃音。
　平然と頭をあげる静夏の足元で、幻花衆が床にくずおれる。
「これで、目標の四戦場全てに行けるようになったね」

　恵縁耶悌菩薩、芸夢主菩薩、ヴィゾフニル明王、そして自愛菩薩。
　これで、曼荼羅卍を構成し、マンダラマンダラへの道を閉ざしている四体のビルシャナの戦場全ての攻略が可能となった。
　だが、増殖していく累乗曼荼羅の勢いを止めるにはケルベロス達もまた戦いを加速させる必要がありそうだった。