■第6ターン結果
虹色に輝く空中要塞ビフレストへと通じる回廊を確保したケルベロス達。
回廊の出口を守るエインヘリアル達との交戦は、
ビフレストに敵増援が現れるまでの時間は、残り僅か。
勝利を勝ち取るべく、決死の攻撃が行われていく。
●長き牙剣アルガド
鶴岡八幡宮のドラゴン勢力は、度重なるケルベロスの攻勢を退け続けた。
だが、防衛の主力となった、竜牙兵達は、骨折れ牙尽きるまで戦い続け、満身創痍なれど、鶴岡の地に立ち続けていた。
「敵の攻勢は途絶えたぞ、全軍『ドラゴンズネスト』に進撃せよ。メギドラス様の御身を、お守りするのだっ!」
そう言って、残存の竜牙兵を集結させたのは、鶴岡八幡宮の守備を任されていた、竜牙兵の守備隊長、長き牙剣アルガドであった。
先ほどの戦い、ケルベロスは小町通方面だけでなく、ドラゴンズネストからも攻め寄せてきたのだ。
万が一にもメギドラス様が討ち取られるとは思えないが、配下の軍勢が打ち破られた可能性は否定出来ない。
そう考えての『ドラゴンスネスト』進撃命令であった。
「万が一の時は、我が身命に変えて、メギドラス様だけでも落ち延びていただく……」
長き牙剣アルガドの決意は、だが、ドラゴンズネスト方面から攻め寄せてきたケルベロスによって、打ち砕かれた。
アルガドの決意を聞いた、エリュシカ・クロスロザリオ(微笑みのオラトリオ・e09685)が、真実を彼に伝えたのだ。
「残念ですが、手遅れですわ。滅炎竜メギドラスは、わたくし達ケルベロスが既に討ち取ったですの。あなた様も、今すぐ主の元に送ってさしあげますわね」
エリュシカの言葉に、アルガドは驚愕と絶望の表情を露わにした。
その驚愕は骸骨だけに表情の変化は乏しい筈の、アルガドの表情を読み取れる程であった。
「ぬぅ。まさか、メギドラス様が……。まさかまさか、ありえぬありえぬぞっ」
アルガドは、そう言って牙剣を振り回して遮二無二突撃してくる。
「その動揺こそ、わたくしの言葉を信じた証、それがわかりませんですの?」
エリュシカは、ひらりと、アルガドの牙剣を避けると、彼女のボクスドラゴン『ナナシ』が、ボクスタックルでアルガドの胸骨を突き上げた。
「ぐぉぅ」
たまらず距離を取ったアルガドは、エリュシカの言葉に真実を見つけ、メギドラスの死を認めた。
ガチガチガチ。
その思いと共に弔いの牙を鳴らすアルガド。それは、忠誠を尽くす主への惜別であったろうか。
短い弔いを終えたアルガドは、今度は配下達の退路を創るべく、牙剣を構え直した。
「メギドラス様はもういない。我が殿を務める、お前達は……」
だが、その時には、まわりはケルベロスに囲まれ、残り少なかった配下達も全て討ち取らた後であった。
アルガドは、その状況を認識し地に膝をついた。
「我、我が任務の全てを失敗せり。其は残念無念なり……。我が牙を抜き、誉れとするが良い」
そういったアルガドは、牙剣を捨て、アルガドは大きく口を開けた姿勢で、跪いた。
それは、竜牙兵の降伏の証なのであろうか。
「ナナシ、行くですの」
エリュシカはそう言うと、ナナシの頭を軽く投げる。すると、心得たようにナナシがボクスタックルを決め、アルガドを構成していた骨達がガラガラと崩れ、戦場の塵と消え去った。
●緑鱗ヴァシュカ
鶴岡八幡宮の戦いの趨勢は既に決していた。
竜牙兵の一部は、ドラゴンズネストに攻め込もうと無謀な突撃を試みたようだが、緑鱗ヴァシュカは、その動きに呼応する事は無かった。
「メギドラス様が倒された以上、この地に残る意味なんてないのよっ」
彼女は、そう吐き捨てると、緑色の竜の姿にその体を変える。
ドラグナーである彼女は、一時的とはいえ、竜の力を顕現できるのだ。
だが、その力は、主であるドラゴンから与えられた力であり、アルジタルメギドラスが討ち取られた以上、いつまで持つかわかったものではない。
「はやく、そして、遠く。どこでも良い、どこでも良いから安全な場所にっ!」
緑鱗ヴァシュカは、緑色の翼をはためかせ、ふわりと地上を離れた。
もどかしげに翼を羽ばたかせる。
しかし、何故か、一向に空に浮かび上がらない。
「そろそろ終わりにしましょう?」
それもそのはず、鶴岡八幡宮の鳥居から飛び降りて、彼女の脚にとりついたレーヌ・クレピュスキュール(同胞殺しの戦闘狂・e02205)が、その逃走を阻止すべく彼女の翼を切り裂いていたのだ。
更に、周囲を囲むケルベロス達が、彼女の逃走を阻止せんと幾重にもグラビティを重ねて攻撃を連ねる。
それでもなんとか退路を探すヴァシュカに、レーヌは、どこか壊れた表情で問いかけた。
「地獄の番犬から、無料で逃げられるなんて、まさか思っていないわよね?」
と。
「無料じゃない? じゃぁ幾らなの、幾らでも払うから、私を逃しなさいよっ」
緑鱗ヴァシュカは、ケルベロスの攻撃に打ち据えられながらも、レーヌに叫び返す。
「通行料? それは、とても安いものよ。薄汚くて路傍の石よりも価値がない、そんなもので十分なの」
レーヌがそう答えると、ヴァシュカは一瞬、喜色を浮かべるがその表情はすぐに絶望に染まった。
「つまり、あなたの命ね」
レーヌは心底嬉しそうに日本刀を振り上げると、緩やかな弧を描いて振り下ろし、ヴァシュカの素っ首を叩き落とした。
悲鳴とともに首を失ったヴァシュカは、ドラゴンから異形の人の姿に戻り、その後、塵となり風に消える……。
「貴方の歌は、あまり良くは無かったけれど、必死さが伝わったので、まぁ許してあげるわね」
レーヌは、そういうと、楽しそうにクスクスと笑うのだった。
●電鉄ブレイン
『工場』の攻略を続けるケルベロスたちの眼前で、分厚い壁がボコリと変形した。
見る間に組み上がり、巨大な鋼鉄機械と化すその姿を、ケルベロスたちは既に一度目にしていた。
「路電合体グレート江ノ電見に来たんだけど何だよ、未完成かよ。合体ロボは男の子の夢なんよ……」
そう、九頭・竜一(地球人の自宅警備員・e03704)が呟く。路電合体グレート江ノ電(未完成)は、残念ながらと言うべきか、幸いにというべきか、未完成状態で合体機能を実装していなかった。
だが、どうあれダモクレスたちを放っておくわけにはいかない。敵を排除せんと向かってくるダモクレスの群れに押し戻されまいと構えたケルベロスたちが、ダモクレス軍と正面から激突した。
「修復完了。敵性体、ケルベロスを『工場』より排除」
修復を果たした電鉄ブレインが、モーター音を立てて襲い来る。竜一が飛び退った一瞬後、彼の立っていた場所をがりがりと削りながらスピンホイールが飛んで行った。
ダモクレスの攻撃は、先の戦闘と変わらず激しい。多くのケルベロスが傷を負い、膝をつきかけた。だが、そこであっさりと諦めるようなケルベロスではない。
「そんじゃ遠慮なくぶっこわしときますかぁ!」
竜一は軽く宙へと跳び上がり、煌きと重力をその蹴りに乗せる。流星の尾を引いて炸裂した飛び蹴りの一撃が、電鉄ブレインのコアを捉えてひびを入れた。
「江ノ島ベースとの合流……不能。侵入者排除……困難。一時、撤収……」
途切れ途切れの音声が遠ざかり、ダモクレスは再び壁に飲みこまれるようにして消えていく。
強敵が退いたことを確認して、竜一は軽く肩をすくめた。
●参謀武官ベガール
「ザイフリート王子の予知は、やはり正しかったか……」
ケルベロス達の迎撃に出たエインヘリアルの中、参謀武官ベガールは、他とは一線を画した強さを発揮していた。
ベガールは本来、ザイフリート王子の参謀として仕えている古強者だ。
彼がこうして前線に出てきている事は、エインヘリアル達に危機感を覚えさせている。
「終末戦争を乗り越え、アスガルドを征した者、それが我らエインヘリアル!
貴様らが我等の障害になると言うのであれば、殲滅するのみだ!」
「だからと言って、むざむざやられる理由は無い!」
ケルベロスの攻撃が、ベガールへと集中した。
その攻撃を巌の如き肉体で受け止めたのは、
巨大な拳を打ち合わせる老戦士へと、ケルベロス達は立ち向かう。
かつて、アスガルドの神々を破ったエインヘリアルの勇者達。
ベガールもまた、その一員であったのだろう。
「何とも好ましい強さだ。貴様らの魂、さぞ優れた勇者となろう!」
ベガールの拳から、強烈な冷気が放出される。
それを振り払い、ファー・ファンダム(動物と毛皮を愛する紳士・e00747)は素早く詠唱を開始。
『全てに害なす禍いの力。偽りの伝承の元、我が敵に永劫の破滅を……。ドラゴニア・レーヴァテインッ!』
ファーの編み出した模造魔法が炸裂した。
黒炎として再現された、神話に語られる宝が、ベガールの体を焼きつくしていく。
その時、ベガールの懐から、光が走った。
「王子から回収した秘宝、ビフレスト……王へとお返しせねばならぬものを」
ベガールは、どうと音を立てて床に倒れる。
「ビフレスト……?」
ベガールへ歩みよろうとしたファーは、巨漢の胸元で虹色の光が明滅したのを目撃する……。
●エインヘリアル第一王子ザイフリート
ケルベロス達は、虹の城ビフレストの最奥へとエインヘリアル第一王子ザイフリートを追い詰めていた。
「ここまで追い詰められるとはな。だが、まだ負けてはおらぬぞ!」
護衛のエインヘリアル達を乗り越え、眼前に迫るケルベロスへと、ザイフリートは槍を向ける。
他のエインヘリアル達よりも小柄なザイフリートだが、その実力が護衛達よりも遥かに高いことを、ケルベロス達は一目で理解する。
年若い者の少なくないケルベロス達にとって、年齢や体格が強さの基準にならないことなど百も承知だ。
「我が名はザイフリート、エインヘリアルの第一王子である!
ケルベロスよ、私と出会ったことが、お前達の不運と知れ!」
兜のバイザーで隠れているが、その下からケルベロス達を見る目つきが険しいであろうことは、疑う余地もなかった。
斬り掛かって来るエインヘリアルを薙ぎ払い、ケルベロスはザイフリートへと叫ぶ。
「お前を倒し、この戦いを終わらせる!」
「させるものか。間もなく増援が来る。そうなれば、私の勝利だ!
戦士達よ、時を稼げ! そうすれば、勝利の栄光は我らのものだ!!」
ザイフリートの命令を受け、エインヘリアル達が一斉に動き出す。
エインヘリアル達の中、一人気を吐いているのはザイフリート王子当人だった。
「貴様ら如きに侮られる私では無い!」
「あれのどこが軟弱なのかな……」
「王族としては、ってことかな」
麻痺する指で引き金を引こうとした葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)をザイフリートの槍が貫く。
「く……はははは! 生き延びた! 生き延びたぞ! これで、私は……」
だが、ザイフリートが哄笑を上げた瞬間だった。
ビフレストが、鳴動を始めたのだ。
ザイフリートの顔色が変わる。
「まさか……ベガールが破れたというのか!? あいつは私よりも強いのだぞ!! だからこそ、万が一のことを考えビフレストを持たせていたというのに!!」
「ビフレスト……? まあ、仲間の敗北までは、予知できなかったみたいだね」
「黙れ……!!」
憎まれ口をたたいた唯奈。
「これでは、殲滅のための増援が、来られぬではないか……! エインヘリアルの破滅は、覆せぬというのか……!!」
絶望しきった様子で、ザイフリートはケルベロス達をおいて、その場を去って行った。
●ビフレスト崩壊
ファーが倒した参謀武官ベガール。
彼が持っていた虹の城ビフレストの核たる宝石だった。
ベガールの死と共に砕け散った虹色の宝石は、ファー達の前で天井を突き抜け、飛んでいく。
「今のは……」
「それより、どうも危険みたいだな」
ビフレストの壁にひびが入る。
虹色の宝石が砕けたためだろう。虹の城ビフレストが、崩壊を始めたのだ。
「またお約束な……」
「撤退、撤退だ!!」
たとえ死ぬことが無いとはいえ、瓦礫に押しつぶされるのを好む者は居ない。
ビフレストの崩壊によって、魔法的な防御力を喪った鎌倉市城塞は、もはやただの瓦礫の塊へと変貌しつつあった。
瓦礫を吹き飛ばし、その隙間から外へと抜け出して、ケルベロス達は城塞を脱出していく。
一方、虹の城ビフレストの遥か下にある鎌倉駅でも、ケルベロス達が避難を進めていた。
重傷を負ったケルベロス達が後退する中、崩れ落ちた天井の上に見える夜空が、青く染まるのをケルベロス達は見る。
落下して来たのは、青い光だ。
「え、何?」
ケルベロス達が目を丸くする中、光は鎌倉駅の瓦礫へと吸い込まれていった。
●蒼のビフレスト
鎌倉市城塞を形成していた瓦礫は、元あった場所へと戻るように地表へ落下していった。
当然ながら、城塞化の際に破壊され尽くした土地は無事では済まない。
今後、時間をかけてヒールによる修復が必要となるだろう。
そして、鎌倉駅へと赴いたケルベロス達は、そこに巨大な扉を目撃する。
それは、ケルベロス達に『ダンジョン』の出現を告げるものであった。
→有力敵一覧
→(8)天空鶴岡八幡宮(3勝4敗/戦力200→50)
→(11)湘南モノレール回廊(3勝3敗/戦力800→650)
→(12)江ノ電回廊(2勝3敗/戦力150→50)
→(14)モザイクキャッスル(3勝5敗/戦力1100→950)
→(15)虹の城ビフレスト(52勝13敗/戦力1450→0/制圧完了!)
→重傷復活者一覧
→死亡者一覧
■有力敵一覧
戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。