鎌倉奪還戦

■第3ターン結果

●斧闘士イグアレス
 御霊神社神殿へと攻め入ったケルベロス達は、再びヴァルキュリアの軍勢と相対する。
 天崎・ケイ(地球人の降魔拳士・e00355)をはじめとしたケルベロス達の度重なる呼びかけにも、ヴァルキュリア達は答えようとしない。
「何故なのですか……?」
「戦ってる最中に、余計なこと考えてんじゃねぇぜ!」
 爆音が響き、現れるのは、
「イグアレス……とかいうエインヘリアルですか」
「おうよ!!」
 ヴァルキュリア達の指揮を執っていたエインヘリアル。
 だが、ケルベロスによって与えられた死の宿命は彼を蝕んでいる。
 既に、ここが死地と覚悟しているのだろう。
 防御を捨てて、勢いよくケルベロス達へと挑みかかって来ていた。
「さあ、イグアレスの斧にぶった切られたい恐れ知らずは掛かって来い!」
 斧にルーンが浮かび、勢いよく振り下ろされる。
 盛大に鎮守の森を破壊しながらの戦いは、しかしケルベロス達の有利に進んだ。
 もはや、ヴァルキュリア達の力では、ケルベロスを止め切ることが出来るのは明らかであっただろう。
 周囲にいたヴァルキュリア達がいなくなると、イグアレスへと攻撃が集中していった。
 エインヘリアルの姿は血に塗れていく。
「オおおッ!!」
「終わりましょうか」
 破れかぶれの突撃をガトリングガンを盾にして受け止めると、ケイはバトルガントレットをイグアレスへと叩き込む。狙い澄ました拳の一撃はイグアレスの心臓を強打、巨漢は血だまりの上にくずおれる。
「クッソ、お前達に倒されちまったら完全終了か。もっと、戦いたかったぜ」
「ヴァルキュリアを束縛している報いと思って受け容れると良いでしょう」
「俺達が束縛してるって? 弱い連中が支配されたって、そんなもん当然だろうぜ」
 消滅する間際にイグアレスが遺した言葉は、ケルベロス達にとっては受け入れがたいものに違いないだろう。
 数百年に渡り虐げられ続けてきた立場から、抗うための力を手に入れたのが、ケルベロスなのだから。
「イグアレス様……遅かったか!」
 救援に現れたヴァルキュリアの一団が、ケイ達の前に降下して来たのは、その時だった。

●クリムヒルト
 ケイ達の前に現れたヴァルキュリアの一団の人数は少なく、満身創痍だった。
 指揮官であるイグアレスの元へと馳せ参じた彼女達もまた、ケルベロス達との戦いを経ているのだ。
 その先頭、ケイへと斧を向けるのは、先程も交戦したヴァルキュリアの隊長の一人、クリムヒルトだ。
 先程のケルベロス達との戦いで与えられた死の宿命は、その身を死へと追いやろうとしている。
 死相を浮かべ、切り込んで来るクリムヒルトに、ケイはそっと言葉をかける。
「束縛された心の翼では羽ばたくことなど出来ません。
 その翼は自由に羽ばたく為にあるのではないのですか?」
 死の間際に立ったクリムヒルトは、その言葉に額を抑えた。
 大きな隙に切り込むことをせず、ケルベロスは彼女の様子を見守った。
 忘我の表情で、ぶつぶつと何かを口にする。
「コギトエルゴスムとなって保管されている同胞達……。いや、それだけではない。それだけならば、愛が沸かぬ理由にはならぬ。くぅっ……!!」
「おっと」
 突然、錯乱したかのように斧を振り回し始めるクリムヒルト。
 だが、その動きにはもはや力はなく、やむなく斧を受け止めたケイへと、彼女は力なく倒れ込んで来る。
「『ニーベルングの指環』……あの指環が……」
 後は言葉にならぬまま、クリムヒルトは死を迎えた。他のヴァルキュリア達も、ケルベロス達の攻撃を受けて次々に死を迎え、消滅していく。
 腕の中でクリムヒルトの体が消滅するのを、ケイはじっと見守る。
「『ニーベルングの指環』? ……オペラというわけでもないでしょうに」
 ケイの疑問に、答える者はいなかった。

●隠れんぼの途中で帰るやつ絶対殺す明王
 ビルシャナ大菩薩の戦場に現れたケルベロス達を待ち受けたのは、隠れんぼの途中で帰るやつ絶対殺す明王であった。
 隠れんぼの途中で帰るやつ絶対殺す明王は、ケルベロス達に、こう宣言した。
「今から『隠れんぼ』を開始する。途中で帰る事まかりならん」
 と……。

 子供の遊戯の一つ『隠れんぼ』。
 隠れんぼという遊びを全くをした事が無いものは、この日本には、ほとんど存在しないだろう。
 子供の遊びの多くが、運動神経や社交力、或いは頭の良し悪しが重要な要素となる中、『隠れる』という要素のみで勝敗が決する、子供カーストの下位のものが活躍できる、それが『隠れんぼ』という遊戯の特徴である。
 だが『隠れんぼ』には、その構造上、致命的な欠点があった。
 探すという行為は、探しものが存在するから成立する。
 存在しないものを探すという行為は、無限の時間を使用して、なお決して終わる事のない苦行と化してしまうのだから。
 すなわち、隠れんぼの途中で帰るやつがいると、残された者達は、永遠に終わらない苦痛の時間を過ごさねばならないという、まさに、致命的な欠点なのであった。

「そういう事情はわからないでは無いのですよね」
 メッシェリエ・セブンライヴス(星詠・e00014)は、目の前で憤怒の表情で仁王立ちする、隠れんぼの途中で帰るやつ絶対殺す明王に、そう話しかけた。
 おそらく日本中、もしかしたら、世界中の、隠れんぼの途中で帰るやつに対する怒りが凝縮されたビルシャナなのだろう。
 その憤怒は確かに正当性があり、否定するのは非常に難しい事だ。
 が、しかし、それとこれとは話は別である。
 隠れんぼの途中で帰るやつ絶対殺す明王は、この戦いを隠れんぼと定義した。
 つまり、この戦場から離脱しようとするものは、絶対に許さないという意志を示したということなのだ。
 隠れんぼの途中で帰るやつ絶対殺す明王を倒さぬ限り、ケルベロスは、この先に進むことは出来ないし、逃げ帰ることもできないのだ。

「では、創めましょう、私達の隠れんぼを。私は隠れないし途中で帰る事は絶対にありませんよ。最期まで……楽しく遊びましょうね」
 メッシェリエは、そう言うとボクスドラゴンのブルーと共に、高く跳躍し、隠れんぼの途中で帰るやつ絶対殺す明王の正面から正々堂々と殴りかかった。
 その言葉を聞いた、隠れんぼの途中で帰るやつ絶対殺す明王は、憤怒の表情の中に少しだけ喜びを表し、メッシェリエの攻撃を受け止めたのだった。
「ならば、最期までつきあってもらおう。途中で帰るのは絶対に無しだからな」
 おごそかにそう宣じた、隠れんぼの途中で帰るやつ絶対殺す明王は、メッシェリエをはじめとしたケルベロス達と、激しく、そして楽しそうに戦い……。
 メッシェリエのシャドウリッパーによって、その命を散らしたのだった。
 だが、その散り際、隠れんぼの途中で帰るやつ絶対殺す明王は、憤怒の表情を捨て、にこりと笑ってみせた。
「楽しかったぞ……」
 そう言い残して。

「えぇ、楽しい戦いでしたね」
 メッシェリエは、そう答えると、戦場の先へと進む。
 鎌倉奪還戦は佳境へと差し掛かっていた。

●ビルシャナ大菩薩
 鎌倉の大仏を中心に、ビルシャナの光が集結していた。
 光の使徒たるビルシャナの光は、まるで後光のように大仏の周囲を渦巻き、大仏の中へと吸い込まれていく。
 やがて次第に、大仏自体が光り輝きはじめる。
 大仏の外側へと滲み出したビルシャナの光は、光の羽毛と化して大仏の表層に固着化し、覆っていった。
 そして、大仏の巨体は、まるで巨大なビルシャナのように変化していく……。
 ビルシャナ大菩薩のその異形は、ビルシャナの特性を示していたのかもしれない。

 個にして全、全にして個。
 悟りとは自己と他者の垣根をなくし合一する事。
 個としてのビルシャナは、個でありながら、全のビルシャナの一部であり、全のビルシャナは全のビルシャナでありつつ、個のビルシャナを内包する。
 悟りに至りしものにビルシャナ大菩薩の光あれ。
 ビルシャナの光に善も悪も無し。
 ビルシャナの光を持つものにより、その姿は千変万化し、そして、いつかは、全のビルシャナへと統合されていくのだ。
 ビルシャナの悟りとは、光を受け入れることでは無い。
 受け入れた光を道標に、全なるビルシャナへの道を辿る、その歩く道こそがビルシャナの悟りとなるだろう。

「はぅぅぅ……」
 ビルシャナ大菩薩の戦場に攻め込み、その光を正面から浴びてしまったシグナル・ランフォード(赤ノ斬リ姫・e02535)は激しい頭痛を感じて、思わず膝をついてしまう。
 ビルシャナ大菩薩の光を浴びた瞬間、ビルシャナ大菩薩の意志が脳内にダイレクトに流れ込んできたのだ。
 個にして全、全にして個。何を言っているかは分からないが、その意志には強い説得力が備わっていた。
「これは……、普通の人が浴びてしまっては、ひとたまりも無いでしょう」
 シグナルは、焼ききれそうな脳内回路を冷却しつつそう言葉を発した。
 ケルベロス以外の人間が、この光を浴びれば、ビルシャナ大菩薩の意志に帰依して、ビルシャナへと変化してしまう危険性が高い。
 この大仏の光があまねく世界を照らせば、この世界はビルシャナの世界と成り果てるかもしれないのだ。
 同じようにビルシャナ大菩薩の精神攻撃を受けたケルベロス達も、その危機感を共通していた。
 中には耳や目から血を流しているものもおり、ビルシャナ大菩薩の光の凄まじさを見せつけていた……。

「これは絶対に破壊しなくてはならないでしょう。もしかしたら、虹の城ビフレストのエインヘリヤルよりも恐ろしい存在かもしれません」
「あぁ、幸い、あの大菩薩の戦闘力はそれほど高さそうだ。一気に行くぜ」
「応っ!」
 ケルベロス達は、必倒の意志をグラビティに宿し、ビルシャナ大菩薩へと攻撃を集中する。
 そして遂に……。
「私は、私の今を護りたい。ただそれだけなのです。そのために、あなたの光、消させていただきます」
 シグナルは、ビルシャナの光を断ち切る為、自らが持つ2本の斬霊刀にありったけの雷の霊力を集め、そして、神速の突きをビルシャナ大菩薩の眉間に突き立てた。
 その一撃が致命傷になったのか、ビルシャナ大菩薩の体に亀裂が入り、ひび割れ、そして崩壊した。
 崩れ落ちたビルシャナ大菩薩から漏れでた光は、そのまま霧散し弱い光となって、空へと吸い込まれた。ビルシャナ大菩薩はその光を完全に失ったのである。
「ビルシャナ大菩薩の残骸は、完全に焼き払わなければですね。ヒールはそのあとです」
 シグナルの号令で、大菩薩の破片はすべて焼き払われた。
 これで、戦争後のビルシャナの行動は大きく妨害できることだろう。

→有力敵一覧

→(6)御霊神社神殿(10勝4敗/戦力200→0/制圧完了!)

→(8)天空鶴岡八幡宮(16勝5敗/戦力1800→1000)

→(9)ビルシャナ大菩薩(38勝17敗/戦力1500→0/制圧完了!)

→重傷復活者一覧

→死亡者一覧

■有力敵一覧

有力敵 戦功点 現状

斧闘士イグアレス
400
(6)御霊神社神殿:Battle4にて、天崎・ケイ(地球人の降魔拳士・e00355)に倒される。

クリムヒルト
320
(6)御霊神社神殿の制圧と共に、死の宿命に巻きこまれ死亡する。

ビルシャナ大菩薩
500
(9)ビルシャナ大菩薩:Battle7にて、シグナル・ランフォード(赤ノ斬リ姫・e02535)に倒される。

隠れんぼの途中で帰るやつ絶対殺す明王
380
(9)ビルシャナ大菩薩:Battle30にて、メッシェリエ・セブンライヴス(星詠・e00014)に倒される。

戦功点の★は、「死の宿命」が付与されていることを表します。

戦闘結果を取得しています。しばらくお待ちください。