「みなさん大変ですよ!」
四夜・凶(妖怪恋話くれ・en0169)はバッと日本地図を広げて複数の地点に丸を付ける。
「今回のミッション破壊作戦により、こちらの地域が解放されました。これに伴い、ヒールによる復興支援とともにバレンタインと絡めてイベントを執り行うことで、これらの地域のイメージアップを図る作戦がとられることになりました!」
番犬たちがめでたいことだとのほほんとしていたのもつかの間。目の前の悪人面がぐわっと迫ってきた!
「バレンタインですよ? 恋の季節ですよ!? 何をボサっとしているのですか!? これはきっと数多くの恋バナを聞けるに違いない一大イベングホォ!?」
「みんな、凶がうざくてごめんね?」
大神・ユキ(元気印のヘリオライダー・en0168)がボディブローからのヘッドロックで発言はおろか呼吸すら抑え込みつつ、改めて解説。
「概要は凶が言った通り、町のヒールとチョコレートを作るイベントを開催して、今の町がどうなってるのか様子を見に来た人たちにいい印象を持ってもらうのが目的なの。その中で、みんなには京都に行って欲しいんだ」
さっと寺の資料を広げて見せるユキ自身が首を傾げつつ。
「京都ってやっぱりたくさんのお寺があるよね……それとチョコが関わってるって言っていいかわからないけど、凶が和菓子っぽいチョコを作ろうとしてるみたい。ほら、お花の形したお饅頭とかあるでしょ?」
見てよし食べてよしのチョコづくり、ということらしい。
「凶がここぞとばかりに張り切ってるからね……たぶん馬鹿みたいにチョコ作るから、お友達と食べに来るのもありだと思う。あ、ちゃんとヒールはしてね?」
「こ、恋バナも……聞けると……嬉しい……で……ぅ」
カクッ。
「今のは気にしなくていいから」
KOした凶を投げ捨てて、少女はにっこり。
「みんなで綺麗なチョコレート作って、町も綺麗にして、また京の都って呼べるくらい復興させちゃお!」
ユキは「おー!」と拳を突き上げるのだった。
●
「こっちの方が女子中高生来そうよね~☆」
「ぽてと……なんだこれ」
ヒールで京都触手寺は京都チョコ寺に。そこまでは良かった。
「お寺と言えばご本尊でしょ?」
「いや、だからって……」
鎮座するのは、カイトの相棒たいやきを象ったチョコ像(十倍サイズ)と踏み潰された豚。
「これ、ヤバくないか? 主にカロ……」
「言わないで」
カイトを手で制したぽてとが唸る。
「どう考えてもオーバーね……こうなったらたいやき本人に……!」
「共食いにならないかそれ? たいやきもなんで狙ってんだよ」
「だって私が食べたら……」
既に半泣きのぽてとにため息をつきつつ、カイトは用意した贈り物をどうしたものか、と思考の海に沈んでいく。
「……できた!」
ホワイトチョコにビターチョコで水墨画のように地蔵を描いた法華は安堵のため息。
「運命の導きを……ダイスの導きを感じます」
九十五って数字が頭を過りつつ、ユキを発見。
「ユキさん! これ、お一つどうぞ!」
「え、いいの? ……甘苦い、オトナの味?」
「実はその……」
事の次第を聞いてユキはサムズアップ。
「シンプルに黒! ここはシックにかっこよく贈るべきだよ!!」
「そ、そうでしょうか……」
既にその瞬間を想像したのか、ラッピングする法華の頬は赤みが差していた。
●
「これ……バレンタインプレゼント……」
(あれ、ほとりって料理できたっけか……?)
恥ずかしそうに差し出された、手作りと思しき抹茶チョコを見た頼牙は疑問符を浮かべつつも、ぱくり。
「どう? 美味しい……?」
そわそわと見上げるほとりに、頼牙の掌が落ちて。
「悪くない、ありがとう」
淡い微笑みが添えられ、ほとりも顔をほころばせる。
「そっか……ならまた今度何か作ってあげるね」
「あぁ」
(またほとりといちゃつく口実ができただと!?)
クールな頼牙は本心が表に出てこないのだった。
「京都、イメージアップ、着物!」
安直過ぎやしないかと思いながらも市松模様の着物姿の楓だが、白い着物姿の雨弓は従弟と薄紅の着物のだいふくを見て微笑みつつ、チョコが気になる様子。
「花や蝶の形なんですね……」
精緻な蝶を見つめ、色々な角度から観察すると、手に取り。
「それでは、いただきます」
「へぇ、案外ウマイじゃん」
頬張る楓も二つ目をとろうとして、手が空を切る。
「ナノ」
だいふくが示したのは、パクパクと頬張る雨弓。
「美味しい! すごく美味しいです!」
「そういや、甘党だったな姉さん」
遠い目をする楓の前で、だいふくに雨弓があーん。
「美味しいですか?」
「ナノー!!」
「楓君も、あーん」
「いらねぇよ! 恥ずかしいだろ!?」
「え……」
顔を隠すように身構える楓に、スッと表情が陰る雨弓。
「そ、そんなにしゅんとすんなよ! ったく……」
テレながらも、しっかり食べる楓なのだった。
「もぐもぐ……ん、これは……」
餅チョコを頬張るコルティリアの目が見開かれる。
「抹茶にきなこに……あんこまで!?」
次から次へと目移りする彼女に蓮華がクスクス。
「蓮華がオススメするので変わった和チョコだと、焦がし醤油ってあるね~」
「醤油!?」
にゃにそれ!? と振り向くこるちーに蓮華が見せたのは、独特の光沢を放つチョコ。
「この香ばしさがキャラメルみたいにアクセント効いてて美味しいんだけどな~?」
「キャラメルって……ていうか、甘くないよね?」
「そのギャップが美味しさを引き立てるの。そ、れ、よ、り!」
すすすっと、蓮華がコルティリアの真横で頬を重ねるように、こそっと。
「コルちゃんのチョコ選びの目的は何かな? みんな用? それとも?」
「……え? 誰にって、もちろんみんなに……」
「それだけ?」
「う、も、もちろん、あの人にも渡すよ!?」
かぁあ……のぼせるように赤くなっていくコルティリアは、ふと仔猫のチョコを見つけて。
「……このチョコで、喜んでくれると、いいな……」
何かの気まぐれか、それは和風チョコに混じった、コラットのチョコ。
「コルちゃん、さりげなく自分のアピール?」
「うにゃ!?」
●
「ふむ、これはまた……」
二色のチョコを溶かして『半端に』混ぜ、枯山水を描いたチョコを見つめるビスマスが唸り、思考の世界に沈みかけたが、ナメビスがチョコをジッと見ているのに気づいて、それを手に。
「あーん、ですよ」
「がうーっ!」
尻尾をパタパタしつつ、もきゅもきゅ。
「そういえば、凶さんの料理の……特にお菓子の腕前は凄いと聞いた事がありますが」
「がぉ!」
「……行っちゃいましょうか」
目を輝かせるナメビスを連れてビスマスは凶の下へ。
「というわけで、お菓子の相談なんです」
「なめろうのお菓子ですか……でも、無理になめろうにしなくても」
「無理じゃありません」
ガシッと肩を掴まれ。
「なめろうにはあらゆる可能性が秘められているんですそれこそスイーツだって不可能ではないはずむしろ和チョコがあるならチョコなめろうだって……」
しばらくお待ちください。
「意外と器用なんだな。実はスイーツ作りが得意なのか」
力尽きた凶の前でチョコの薔薇を見るシグリット。
「和菓子風チョコとはまた珍しいっスなぁ……」
大福風ホワイトチョコをかじるハチがそっと彼の腰に手を回して。
「ね、天使様?」
「……煩い」
「む、煩いって酷いっスよ、シグリットぉ」
ハチがむくれ、困ったように頬をかく彼をしばし見つめて。
「時に凶は、色恋の話が好きだとか! 残念ながら、自分は何かを語れるほど色恋に明るくないんスが、強いて言うなら、天使様が可愛すぎて毎日大変っス! どうしたらいいっスかね、凶!?」
「抱きしめればいいんじゃないですか?」
むくり、にやぁ。
「そっスか!」
むぎぅ。しかし妙に大人しい彼に、ハチが眉尻を下げる。
「……自分と一緒に居るの、楽しくないっスか?」
「黙れ」
「……むぐっ!?」
顔を覗き込もうとしたハチの口にチョコを突っ込んだシグリットは口元を押さえて。
「嫌じゃないというか、恥ずかしいというか……とにかく、だ。凶は何も見なかった、いいな?」
「そういう事にしておきましょう」
「むぐー!?」
「折角のバレンタインなのに、そういう話もなくて楽しさ半減……」
憂いを帯びた瞳でどこか寂しさを感じさせるヴィルフレッド。
「あ、美味しいね、このチョコ……」
ふと、情報屋の少年は腰を降ろす。
「ちょっと聞いて欲しいんだけど、ほら、去年は結構ケルベロス活動してるし、そこそこ活躍もしてると思うんだよね。そろそろ女の子からきゃーきゃー言われても良いはずなんだけどそういうのほぼ音沙汰ないんだよね! ……何故だと思う?」
声を震わせて真剣に悩む様子の彼に、凶は首を傾げて。
「縁がないからじゃないですか?」
「へ?」
「有名人だとしても、街中で見かけた程度じゃ人違いかもって近づきにくいんじゃないですかね?」
「てことは、個人にアタックとか必要だったりするのかい?」
「意中の相手がいるのなら。いなくて単にモテたいのなら、一般の方にサービスするべきですかね?」
「そ、そうだったのか……」
「おばちゃん、離婚してんのよ」
「は、はい……」
溶かしたチョコにジュースを少し加えて、フルーツ風味に仕立てつつ語り始めるソフィアに凶も緊張が走る。
「相手に不満があったわけではなかったんだけど、子ども二人が独り立ちして、旦那と二人になったときに、そこはもう夫と妻じゃなくて、パパとママでしかなかったのよ。なんか自分はちゃんとこの人を愛しているのか……そう思うところがあって、それで別れちゃった。一からやり直せたときはまた一緒になろうかってことで」
「それで、やり直したいのですか?」
「んー、分かんない」
形を整えるソフィアに、凶は頷く。
「ではコイントスしましょう。表なら再婚、裏なら現状維持として投げて、それで結果を決めるのです。受け入れられるのなら、それが貴女の本心。残念に感じたり、強く拒んだらその逆が貴女の本心です」
「あぁ、本当に誰の意思でもないモノでハッキリさせようってわけね」
納得したソフィアが頷き、チョコを求肥で包む。
「そっか……」
完成したチョコを手土産に、ソフィアはどこかへ向かっていった……。
「あの、凶さん……ご相談してもいいですか? 実は最近、気になる方がいまして……」
「その恋バナ、くわしく」
凶から男性嫌いのあまり、素早いバックステップを決めてわたわたと手を振るテティス。
「恋バナ!? いや、えっと、その、今まで恋愛なんてしたことないから分からないのですが……」
チラチラと視線を泳がせるテティスは思い出すように、ゆっくりと言の葉を紡ぐ。
「ただ、その人と手紙のやり取りをしてるとすごく返事が待ち遠しくって。それに、その人も、手紙が届いたら、その日の内にお返事をくださって、それを読むと、とっても楽しい気分になるんです」
「ふむ、文通ですか……」
しみじみと呟く凶だが、テティスはポンと手を打つ。
「あ、そうか。恋愛とかは置いておいて、日頃の感謝でチョコを贈ってもいいんですよね!」
「自己解決しましたね!?」
もはや用済み? の凶を放置して、テティスが駆けて……こっち?
「というわけで、いつも手紙、ありがとうございます、久澄プロデューサー。こ、これ、日頃の感謝の手作りチョコです。あ、あくまで、義理ですからねっ!」
お、ぉう……。
「優しくて、話をしてるだけでも心が暖まって、何があっても、帰って来たくなる。わたしにとって、陽だまりのような子なんです」
「一目惚れで、一緒にいると暖かくて、戦いに出るのは危なっかしくて、でも大切なものを守りたい、そういった気持ちは知ってるつもりで、その人の帰る場所になりたい、陽だまりになりたい。ずっとずっと、そう思ってます」
小熊と真白の話を聞いて、凶がコメントしようとするが。
「真白ちゃん、好きな人いたんだね……」
「小熊ちゃんこそ……」
どこか寂しそうな小熊と、何かをこらえるような真白。凶が何かを察した。
「二人とも、意中の相手に告白したい、という話でしたよね?」
相談内容を確認して、凶がにっこり。
「アドバイスは二人に共通して、早く告白してしまう事です。今のお二人は、時計塔で待ち合わせって言ったら、片方は時計塔の前で、もう一人が時計塔の中で待っているような状態です。相手が他の誰かを好きかもしれないと思っても、諦めてはいけません。想いを告げなけらば必ず後悔します」
「そうなんですか……小熊ちゃん、上手くいくといいね」
「真白ちゃんこそ、きっと結ばれるよ!」
二人は手を取り合おうとして……互いを避けてしまった。去りゆく背中を見て、ポツリ。
「あいつら、両想いなのにいつ気づくんだろうな……」
凶は遠い目をしていた。
「凶さーん! 遊びに来たよー!」
赤地に梅柄の着物姿のわかなは新選組の衣装に狸面の陸也を連れてぱたぱた。
「このチョコ凶さんが作ったの? 食べるのが勿体無いぐらい綺麗だよねー」
「へぇ、器用だなー。これコスモスにして、これこそ本当のチョコレートコスモスとか言い張るのも面白いんじゃね」
「あぁ、そういう花を……ところで、二人きりということは……?」
白い花のチョコを手に取る陸也の隣では既にわかながチョコを頬張っており。
「んー、おいしー♪」
「なんもねーよ。他所でもあるんだよ、そういう反応。この頃俺らいっつもぐでぐで話してるだろ。というか最近住み込んでるし……」
「あ、おじーちゃん。このチョコ美味しいよー! はい!」
「ん……確かにうめー」
わかなに差し出されたチョコを頬張り、何事もなかったかのように目を合わせる陸也。
「みんなこの手の話好きだから、敏感過ぎんだよな」
「いやいやいやいや!? ナチュラルにあーんしてましたよね!?」
凶がすかさずツッコむのだった。
「元気しとったか、凶ー。恋愛相談という名の恋人自慢をしに来たぞー」
「ほぉう?」
早苗の惚気話と聞いて、聞く構えに入る凶。
「クリスマス頃にこう、いい感じになったんじゃがな? 顔はちょっと目付きが悪……もとい、鋭いからちょっぴり怖いかもしれんが中身は優しい男でな。よく頭も撫でて貰えるし、ぎゅーっとしてもくれるし、かっこいいし……ま、まあとにかく素敵なんじゃよ!」
パタパタと尻尾と耳を揺らす早苗の頬が染まる。
「んでな、今日もやっぱり一緒に過ごす訳なんじゃが……大丈夫じゃろか、わしどこかおかしな所とかないよな? 普段の二割増しくらいのキュートさじゃと思うんじゃが……」
紅いコートに白いマフラー、赤いリボンの髪留めを見てコクリ。
「えぇ、問題ないと思いますよ」
「そうか……っと、もう行かんと! 話を聞いてくれてありがとう、じゃあの!」
「やっぱり心配なのは、年下の娘と出かけたりしたら周囲から誤解されるんじゃないかってーことだな。どちらかって言うと、年下の方が好みなんだが、四夜はそういうのどう気を付けてるのかね?」
威圧感を放つ双吉と、彼に釣られて殺気を纏う凶。双吉に至っては、これこそ『徳』の稼ぎ処、と重力鎖が枯れるまでヒールしたものだから、疲労困憊でいつもの四割増しで顔がヤバい。
「必ず、手を引かせるのです」
「相手をリードしてこそ徳に繋がるんじゃねぇのか?」
「想像してください、男性が少女の手を引くのと、少女が男性の手を引っ張るの、どちらの方が安全に見えますか?」
「……なるほど」
悪人面同士、通じてしまった。
「では、その(恋人ができた)折には……」
「あぁ、必ずブツ(恋バナ)は持ってくるぜ」
ニヤァ。二人から一般人がそそくさと離れていった。
「刀剣士の恋人に手作りの刀を贈りたいんですが、俺はトラウマで刀剣の類を握れなくて……なにか妙案はないでしょうか? それから……いいプロポーズの台詞をご教授いただけないでしょうか。実はもう師団で二回済ませてはいるのですが、二人きりでムード溢れるプロポーズもしたいなと思いまして」
計都の相談に頭痛を覚えつつ、過去二回の話を聞いて。
「刀の鞘を渡すのです。そして「俺が君の居場所になる」とか言いましょう。刀と鞘は常に二つで一つ。その恋人を刀に見立て、貴方が鞘になるのです。全て終わったら結ばれるのでしょう? ならば、もうその刃を振るう必要はないのだから納まってくれ、とか」
「そんな搦め手が……でも刀が……」
計都は渡したい物に触れない、というジレンマにしばらく悩むのだった。
「凶ー! お財布持っておるかぇ?」
とてとて駆けてくるパティが販売されていたチョコを並べる。
「京都っぽいチョコをいろいろ買って回ったのだ♪ けど、お小遣いが尽きて買えなかったチョコがいっぱいあるのでどうすれば良い? 凶はお財布あるのだ? どうすれば良い?」
「わたしも興味があります! 四夜さんもありますよね!」
「え……!?」
りぼんも加わり、二人分のキラキラした視線に震える凶。
「凶がたかられとるじゃ……」
頬をチョコで膨らませていた小鉄がもきゅもきゅ。
「俺、凶手製の方でええじゃ。もっとよこすがええじゃ」
「お、おう……」
違う意味でほっぺ膨らませるパティとりぼんの視線を感じながら、仔虎のチョコを差し出す凶に小鉄がはしゃぎつつ。
「パティは甘いモンばっか食うけん、いっつもぷんすこしとる思うんじゃ。あれは、えーと。カルシウム不足じゃ」
「牛乳飲めるようになれば解決なのだ」
「ふぎょ!?」
怯える小鉄に、ドヤパティ。
「ね、凶、牛乳飲まないのはダメじゃろう?」
「パティさんもね?」
「……え?」
固まるパティに、凶がにっこり。
「京野菜って物があってですね?」
「パティは次のチョコ見てくるのだー!」
「あ、パティ待つじゃ!!」
逃げ出したパティを小鉄が追いかけて行き、りぼんが挙手。
「あっ、わたしの『友達の』話なのですが! 以前ユキさんからは『ありのままの自分で勝負!』みたいなお話を聞きました! で、ですね男性にも意見を聞いた方が良い気がしたのです! 四夜さんはどんな振る舞いをする女子が好きですか?」
「合わせてくれる所、かな? 一緒に居たくて頑張る様子が可愛らしく見えるのですよ」
「なるほど、ありがとうございます!」
無理はしてほしくないですけどね、と苦笑する凶に敬礼するりぼんなのだった。
「凶……その、チョコを作るコツを教えてくれないか?」
「おう、いいぞ」
ひょこり、顔を出した沙葉がテーブルに並び、ポツリ。
「恋愛の話が好きなのだな。なんというか、生き生きしていたぞ。皆の幸せそうな表情を見るのが嬉しい……といった所か? そういう意味では、私は凶にその嬉しさを感じさせられないのが、少し残念だな」
冗談めかして笑う彼女に、凶はケラケラ。
「いつか恋したら聞かせてくれるんだろ?」
「恋か……恋とはどんな気持ちなんだろう、凶は知っているか? 幸せな気持ちなのか、痛い気持ちなのか……私には、まだわからない」
「んー、恋する相手と一緒に居られて幸せだったり、相手に会えないと寂しかったり?」
「曖昧だな……」
ため息をつく沙葉が手元を見ると、形が歪になっていて。
「すまない、少し気が散ってしまったようだ……その、本番はちゃんとしたものを作るから」
「誰かに渡すんだ? その時の話、聞かせて欲しいな?」
「う、うむ」
ニヤリ、笑われた少女はそそくさと逃げてしまった。
作者:久澄零太 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年2月13日
難度:易しい
参加:26人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 4
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