ヒーリングバレンタイン2017~わんぱくチョコ

作者:荒雲ニンザ

 割烹着姿の日之出・吟醸(レプリカントの螺旋忍者・en0221)が、暢気な笑顔を乗せてやって来た。
「やー、大活躍! 皆のおかげで、これまでミッション地域となっていた複数地域の奪還に成功したでござるよ!」
 で、と付け加え。
「まー、そんなこんなで、町のヒールをお願いしたいのでござるが……、吟ちゃんが何でこんな格好をしてるかと言いますと、現在、取り戻した地域の復興も兼ねて、バレンタインのチョコレートを作ろうではないか、というお話になっておりましてですね」
 どうやら、取り戻したミッション地域の復興も兼ねたイメージアップのために、バレンタインの時期に便乗したイベントを開きたいという内容のようだ。

「我々が担当する地区は、埼玉県春日部市の一画でござる。元々都心までほどよい距離で、住宅地として人気の高かった場所だけあって、市民の見学も世帯単位で来ると予想されているでござる」
 大体の見学者の傾向だが、引越しを考えている人などが下見で来るのが多いと想定するのが良いだろう。
「ご家族や、これからご家族になっちゃうかもしれないカップルなんかが多いんじゃないかなと見ているでござる。ミッション地域の周辺住民なんかも様子を見に来るかも知れないでござるな」
 ヒールの参考にして欲しい。
「バレンタインチョコは、主にご家族のお子様向けでござる。テンション上がりまくっちゃったわんぱくに大騒ぎされたら、親御さん方も安心して見学できないだろうでござるからして、そこを我々がチョコで落ち着かせる! お子ちゃまのハートをギュッとできるようなデザインを考えてほしいでござるよ!」
 ヒールをしつつ、道具や材料の搬入をし、わんぱくを諫め、親御さん方のお相手をする。
「うーむ……盛りだくさんで大変そうでござるな。じゃあ、疲れもとれるし、自分用のチョコを作ってもいいでござるよ」
 この機に遠慮なく『自分のバレンタインチョコ』も作っちゃいましょう。


■リプレイ

●ヒールパフォーマー
 チョコ作りのために張られたテントで待機しているケルベロスご一行。そこへ、地区担当の日之出・吟醸(レプリカントの螺旋忍者・en0221)が逃げるようになだれ込んで来た。
「ヒ……ヒィィ!! ヒヒヒールをお手伝いしてくれるケルベロスの皆様はドチラでござるかー!?」
 集まっていたケルベロスの中、一つ視線を下ろした場所からウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)がヒョコッと顔を出す。
「吟醸おにいも張り切っておるのう」
「ほ、他には!? は、早くしないと、奴らがやってくるでござるー!!」
 そのすぐ後、小さな足音が無数にこちらに向かってくるのが聞こえた。声変わり前の甲高い元気なわんぱくキッズ達が砂埃をまき散らしながら現れると、そのまま吟醸張り倒してテント前で止まる。
 わんぱくは全員で6名。思わず『うわあ……』と言いたくなるような濃厚なわんぱくだったが、おそらくソレは子供達がケルベロスを見た印象と同じことだろう。
「あんだよー、チョコくれるって言うからついてきたのに、ねーのかよー」
「さぎだー」
 さぎだーさぎだー。連呼を始めるわんぱくを前に、やばいと思ったミシェル・グランディエ(スティグマ・e29526)とレイフ・ラグランジェ(クレアシオン・e31898)が一歩前へ進み出た。
「はーい、ボク達にちゅーもくっ♪」
 マイクを持ってきゅるんとした笑顔を振りまいたのは、小悪魔アイドルのミシェルだ。
「今日は皆にチョコをプレゼントするよ! ありがたく受け取ってよね♪」
 マイクが小さくハウリングを起こしたのが幸いし、一瞬の間が開く。そこでレイフが手を振った。
「みんな知ってるかな。知らない子は、覚えてって。おれたちはイノセンス。ミシェルの言うようにチョコと、それから歌を届けにきたんだ。良ければ一緒にうたってほしいな」
 何を隠そうこの二人、期間限定のアイドルユニット『イノセンス』として現役活動中の子役だ。
 ミシェルとレイフが目を合わせると、どこからともなく二人が出演したドラマの主題歌が流れ始め、彼らは弾ける笑顔で歌い始める。
 わんぱく達は大きく口を開けて生演奏に絶句すると、動きが止まった!
 華輪・灯(幻灯の鳥・e04881)とミリム・ウィアテスト(天誓騎士・e07815)もこのドハデな雰囲気に続き、テント内の簡易キッチンにかけてあるクロスを勢いよく引いてパフォーマンスにかかった。
 だがしかし、ぶつかる視線がバチバチと火花をあげている。
「ふふふ! あかりなんかよりもボクの料理の腕前が上だもんね!」
「わ……私は本気出せばエクセレントシェフで、と、とにかくミリム、チョコ勝負ですよ!」
 こんな場所に来てまでライバル対決を始める二人。良くも悪くもイノセンスの歌でショーアップされてしまい、そのストーリー性に子供達の視線もガッチリ釘付けだ。
 灯がオラトリオヴェールでキラキラヒールをし、ついでにわんぱくの目の前にチョコの噴水を作成。それに対抗したミリムがヒールドローンを飛ばし、ついでに煌びやかなお菓子風の家を建てた。
 わんぱく達は大喜び。二人はフフンといった面持ちで、用意したチョコフォンデュのケースを開けた。
「ここで豪華なチョコフォンデュをっ……って、マ、マネっこですー!」
「ボクが用意したのはチョコフォン……えぇ? なんでそっちも同じなんだ!?」
「こっちにはハート形の苺にマシュマロ、女子力の結晶マカロンもあります! 女の子がきゅんきゅん☆するキュートなメニュー! ミリムにはマネできません!」
「しかしボクにはハングリーなわんぱくボーイの心を鷲掴みにするフォンデュにつける様々なドーナツとケーキがある! ふふん、あかりにはこんなものないだろー?」
「さらに私知ってます、女子は和素材が好き! そこで塩おにぎりを用意しました!」
「コロッケ! 餃子! アメリカンドッグもあるのだ!」
「む、そっちもなかなか斬新ですね」
 灯がドヤればミリムがムキーッ。ミリムがドヤれば灯がムキー。その勝負は周囲を完全放置したままエスカレートの極みを迎えた。
「さぁ……あかり!」
「日本の味とアメリカン他、どっちが上か勝負です!」
 でで、でたぁ~! クロスカウンター試食だぁぁ~!!
 カンカンカン! ……と観客が各々の心の中でゴングを鳴らすと、おにぎりを口の中にねじ込められたミリムと、灯とミリムの両者からおにぎりと餃子をねじ込まれた吟醸が、ズシャアアと音を立ててステージに倒れた。
 何で急に巻き込まれたのか分かっていない吟醸が横になったままホロホロ泣いているのは放置して、丁度イノセンスの歌も終わった所で、ミシェルとレイフが用意していた動物型のチョコが入った袋を配り始めた。
「おれたちからのお願い。このあとは、静かに見学してね」
 何はともあれ、とりあえず出だしとしてはわんぱくのハートが掴めたと見て間違いはないだろう。

●同調大作戦
 実直に準備を進めてきたのはチロ・リンデンバウム(ウェアライダーの降魔拳士・e12915)。ステージ横に設置してあるテントの更に横、屋台を持ち込んでテンパリングの準備からチョコ串屋台の用意に入った。
「チョコ串屋台だよ~。ちびっこ大好き、チョコ串屋台だよ~」
 吹き戻しの笛をピロピロと鳴らして屋台を引いて行くと、わんぱくが意識をひかれて振り返る。
 説明しよう! チョコ串屋台とは、果物が刺さった串を溶けたチョコに浸し、チョコが固まる前に星形シュガーやチョコスプレーで可愛くアレンジするという、食べて美味しい、作って楽しい屋台のことである!
「ほら、ちびっこが大喜びで駆け寄って……あれ、ルルたん、何でそっち側に居るの……」
 が。置いてあった三輪車でウィリーかましてわんぱくから拍手喝采されているその人が、ルル・サルティーナ(ドワーフのミュージックファイター・e03571)本人。
 近くにいたマリオン・フォーレ(野良オラトリオ・e01022)が、それを見て白目を剥いている。
「ちびっこの説得なら、ルルの出番だね! 頑張ろう! ってあんなにやる気を見せてたのに…………いきなり謀反を起こして、寝返りやがった……」
「例えどんなに疲れていても! 大人しくしていなさいと言われれば断固拒絶する! それがちびっこ!」
 ルルがそう言いながら、三輪車の上でポーズをキメる。
 実は、つい先程までちゃんとやる気満々で用意はしていたのだ。だが、先陣を切ったイノセンスの歌にノッた灯とミリムのライバル対決を見て、ちびっこの血が騒いで全く協力する気が無くなったらしい。
「油断したなケルベロス!」
 戦力が大幅増強されたわんぱく達は、頼れる指揮官を得たことで明らかに勢いづいてしまった。
 そこでマリオンが懐に仕込んでおいた板チョコをチラリとルルに見せる。
「仕方が無い……ここはリーサルウェポン・チョコレートを……」
 ルルは一度視線をよこしたが、食べなれた板チョコを華麗にスルーし、再び百連発でんぐり返しを続けた。
「テンション上がってきたぜー!」
「え!? 無視!? 無視なの!? チラ見しただけでスルー!?? ただの板チョコには興味無いってか!? この飽食チルドレンめ……!!」
 わんぱくキッズも板チョコを無視して屋台に走っているのを見て、マリオンは歯軋りと共にボリボリと板を砕いていくのであった。
「板チョコ美味しいじゃろうがぁあああ」
 まずい。や、板チョコは美味いが、その意味のまずいではなく。
 特に地区別で競争をしている訳ではなかったが、担当した地区の評価が著しく悪いとあれば、周囲から後ろ指を指されてヤーイとか言われる人生を送るかも知れない。かつて住宅地として人気の高かった春日部は、ケルベロスたちのヘナチョコによって滅ぼされてしまうのだろうか。
 チョコはチョコでもそんなチョコはいらないバリに姿を現したのが、玖々乱・儚(罪花喰らい・e00265)と八千沢・こはる(ローリングわんこ・e01105)とロベリア・エカルラート(花言葉は悪意・e01329)の3名。
 テントの一つから儚が様子を見にやって来た。
「ロベリアさんにこはるさん、そちらの準備はどう? 暖かい紅茶も準備してるから、落ち着いたら一息入れましょう。わんぱくっこの相手は体力を使うからね」
 こはるが最後の飾り付けをしている。
 デフォルメされた車型のもの、犬猫兎等かわいい動物さんのもの、色をつけてイチゴ味のハートや星の形だったり、これらをカワイイ包装につめてリボンつけて、はい完成。
「わあ、カワイイですね。私のチョコは、デフォルメサーバントたちのチョコクッキー。オルトロスにテレビウムウイングキャットにナノナノ。あとはドラゴンに、忘れちゃいけないビバインドもいますよ」
 ロベリアがカゴの中から1つを手にとり、二人に見せて言う。
「チョコは私の趣味で、童話のキャラクターや動物を模した形のもの。女の子にはウケると思う」
 赤いフードの彼女は、童話に出てくるような服装をしている。この格好でチョコをもらったら、女の子は大喜びだろう。
「それじゃ行きましょうか! わんぱくな子供たちの元へ。てれもチョコレートをもったね! さぁレッツゴー」
 儚のかけ声で、テレビウムのてれとこはるがテントから飛び出した。
「よーし、きゃあきゃあ騒いでる子にチョコのプレゼント攻撃! 動物好きっぽい子には動物変身でポメラニアンモフモフアタック!」
「……なんていうか、寒いのに子供は元気だよね」
 ロベリアの視界には、完全にこはるも入っている。
「でもまあ、たまには良いね、こういうの」
 そういう彼女に儚が微笑み、頷いた。
「みんなの分も準備してあるから、あとで交換しようね」
 すると、横にいたわんぱく少女が笑顔でロベリアの衣装を握りしめた。お気に入りの服をチョコのついた手で触られたが、まあ今日は気にしないことにしよう。
「柄じゃないけど、少しはこれからの戦いも頑張ろうって気になれたよ」
 ここにきて、ようやく落ち着いたイベントになってきたようだ。

●チョコ化学の時間
 周囲のケルベロスたちがわんぱく相手にてんやわんやとやっている中、淡々と周囲にヒールを続けるウィゼ。ついでにクロスカウンター試食でやられた吟醸にもヒールをかけている。
 彼女は何やらチョコ作りを難しく考えすぎている傾向の古海・公子(化学の高校教師・e03253)と会話をしていた。
「先だって、オークキッズイタズラ団を退治した地と申しましょうか。私の住んでいるところも、元はといえば新興住宅街で、似てると言えば似た街ですね~」
「あたしもこの地には思い入れがあるというか、あたしの宿敵が迷惑をかけておったからのう。皆が早く戻ってこれるようにしっかり復興せんとのう」
 戦いの傷跡が残らぬよう、しっかりとヒールをし、目処が立ったところでウィゼもチョコ作りに入る。
「さて、チョコレート作りじゃが、あたしはオークキッズイタズラ団のチョコを作るのじゃ」
「えっ!? 子供にあげるのに、えっちなチョコはダメでござる!」
 吟醸が慌てて飛び起きると、ウィゼが首を横に振った。
「子供や女性にも人気がありそうといったら、やはりカワイイキャラクター物じゃからのう。あやつらも何もしなければ充分にマスコットの素質があるのじゃ」
 まあ、何も言わなければ、子供はオークだとは思わずにコブタさんと思ってくれるだろう。それは良いとして、吟醸がリアルなオークにならぬよう見守る中、『子供向け』というキーワードに公子が引っかかったようだ。
「そうだ! 私、化学教師ですし、ここは何か面白実験をやってみて気を引かさせる、というのも手かも!」
 チョコ作りというか、料理全般が苦手そうな49歳女子がバレンタインで化学をやろうとする典型的な姿勢に、吟醸は不安丸出しで震えた。
 ドンドンとカウンターの上に並べられる実験道具。どこから持ち込んでしまったの。
「自分のも併せて、4つ……。近所に住んでる祖父母の分も併せて、6つの実験を行います……!」
 一方こちらは、絵的に画面が狭いというか、チョコが固まりそうにない雰囲気というか、流派ドラゴニアンと黒豹ウェアライダーがそろってチョコ作りをしていた。
 だがしかし、意外に器用な両名。
 アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)が何やら薄平たい物を玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)に差し出した。
「チョコレートなら、そのまんまでも子供が大人しくなりそうだが。まぁ、せっかくケルベロスが提供するって話だし、ケルベロスカードを模した小さい板チョコレートを計画してきたよ」
 チョコ型を作ってきたようだ。細かい配慮に陣内が感心する。
「ケルベロスカード型の板チョコ? アジサイ、器用だなあ。そんな小さい型を自作してくるなんて」
 すんなり褒めてもらえたのが疑わしく、アジサイは竜派ドラゴニアン特有の口元を歪ませる。
「……ケルベロスカードに見えない? うるせぇ、そんなに器用じゃないんだからしょうがないだろう。要は気持ちの問題だ」
「……え、嫌味じゃないよ。俺も発想は似たようなものだったりする」
 陣内はジャーンと笑いながら懐から束のカードを取り出し、扇状に開いてみせる。
「……って、お前さんのその型……ドラゴニアンだな」
「アジサイ先生のケルベロスカード、全10種類。本物じゃないです。俺が描きました」
「俺かよ」
 確かに、本物とはデザインが違う。本物志向ではあったが、いかにも遊びで作ったのがよく分かるマニアな仕上がりだ。
「最近は印刷所に頼むのも結構気軽にできて便利なのな。レア扱いの絵柄は飾り枠や背景に凝ってみたぜ。チョコと一緒に袋に入れれば、お子さま大歓喜間違いナシ」
 お互いケルベロスカードチョコはいい着目点ではある。大昔から、わんぱくキッズは種類が豊富なカードとかシールの類いに弱いのだ。
 だがまあ、アジサイ本人としてはツッコみたい。
「なんで自分じゃないんだよ」
「……俺? 自分のは恥ずかしいから嫌だ。アジサイが描いてくれよ」
 軽口を放り投げてはいたが、着々とチョコレートを型に流し込むアジサイに再び陣内は感心する。
「それはそうと、テンパリングなんてどこで覚えたんだ?」
「やり方は多少調べて来たんだ」
 そう言いながらもチラチラ机の脇をのぞき込む。茶色い指紋のついたコピー用紙が数枚張ってあるのに気がつき、成るほどと頷いた。

●家族定義
 何やかんやと、先程から甘い物をたらふく食べさせてもらっている子供達はご満悦で、力一杯遊んでもらい、走り回り、流派ドラゴニアンと黒豹ウェアライダーの強面にも慣れた頃になると、そろそろくたびれて大人しくなっていた。
 銃捌きでは華麗なパトリシア・シランス(紅蓮地獄・e10443)であったが、いかんせんバレンタインのチョコ作りは赤点だ。
 ヒールから戻ってきた望月・巌(茜色の空に浮かぶ満月・e00281)が、懐かれたわんぱくに手を振っている。
「パティは、子供は好きかい?」
 唐突にそう訪ねられ、湯気の上がる鍋を前にパトリシアは顔を上げた。
「俺は、ああいう風に幸せそうな家族を見るの、好きだな。俺らが笑顔を護ってるんだって、思えるからね」
 巌の穏やかな表情に、パトリシアは何かを読み取ってやる。そして小さく苦笑いして答えた。
「子供は……実を言うとあんまり好きではないの。でもその考えは素敵ね。そっか、わたし達がチキュウの未来を護っているのよね」
 巌はニッと微笑み、腕をまくってから入念に手を洗う。
「さて、腕白な子達を楽しませるチョコを作ろうか」
「楽しませるチョコ……ねぇ? 中に小さな玩具でも入れてみるのはどうかしら? 空洞を作って、接着して……とか。わたしには難しいかしら……」
「パティ、去年は湯の中にチョコ突っ込んでたっけ」
「え、だって湯煎ってお湯inチョコでしょう?」
 違う違うと、1から丁寧に教えてくれる巌に習い、パトリシアは不器用なりに一生懸命がんばっている。
「アッ、間にボウルが入るのね……」
 ここもまた、ある意味実験だ。
 チョコを作りながら、自分の近況をぽつぽつと語り始める巌。
「お陰様でね、彼とは良好な関係を築けているよ」
 そしてそれを、笑って聞くパトリシア。
「そう、良好なのね。何よりだわ!」
 パティはどうだね? そう聞かれ、彼女はうーんと一言。
「わたしのほうはね……そうね、二人から求婚されて困っちゃってるわ」
 それからくすりと笑い、冗談めかしたように視線の端で巌を眺めてやる。
「逃がした魚は大きいわよ?」
 まいったなといった面持ちで巌は笑い、氷の入ったボウルからチョコの型を取りだした。
「パティとは色々あったけど、俺は大事な友達だと思っているんだ。だから、いっぱい笑って欲しいし、幸せになって欲しいぞ」
 冷やした型を軽く熱湯につけ、表面を柔らかくした所で、中のチョコを落とす。
 人の接し方と同じだ。
「さて、どんなチョコが出来たかな? きっと相手に喜んで貰えるに違いないね」
 そんな思いで作られたバレンタインのプレゼント。
 きっとこれから、大勢の家族がこの土地にやってくるだろう。

作者:荒雲ニンザ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年2月13日
難度:易しい
参加:16人
結果:成功!
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