ヒーリングバレンタイン2017~甘い花籠

作者:志羽

●ヒーリングバレンタイン2017
 鳥取県米子市――そこはつい先日までデウスエクスによって占拠されていた場所だ。
 しかし、ケルベロス達の活躍により、この地域の奪還に成功した。
 この取り戻した地域の復興も兼ねて、バレンタインのプレゼント作りが催される事となった。
 ということを、夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)はケルベロス達へと伝えた。
「解放したこの地域は、基本的に住人はいないんだけど引っ越ししてこようかな、とか。そういう人も下見にきてたりするんだよね」
 ということで、一般の人でも参加できるようなイベントにすると、この解放した地域のイメージアップにもなるだろうという事なのだ。
「俺からお願いしたいのは鳥取の米子市にあるとある学校」
 まずここをヒールし、その後でイベントとなる。
「そう! そこでみんなで甘い花籠つくりはどうかなって思うの」
 と、身を乗り出してきたのはザザ・コドラ(鴇色・en0050)だ。
 甘い花籠。それはチョコレートで花を作り、ブーケや花籠のように作り上げようというものだ。
「チョコの薔薇って結構簡単にできそうなのよね。丸めたチョコの種を自分でぺたっと薄くして花弁をつくる。最初の花芯つくって、そこに同じようにつくった花弁を巻いて付けていくって感じ」
 手先の器用さは問われるかもしれないが、作業としては難しくない。花弁の形をがんばれば、他にも色んな花が造れるとザザは言う。
「花つくるのは面倒って人の為にすでにできあがった花チョコも用意しておくから大丈夫じゃないかな」
「そうね、それもあれば気軽に参加できそうー。あ、花籠もあんまり大きいと大変になるから両手の上にのるサイズくらいがよさそうね」
 土台となるケーキ、その上に作ったチョコの花を飾り、籠にいれれば花籠のできあがり。絶対に籠にいれなければいけないということもないのでそのままラッピングしても良い。
「私はちょっと手間かけてブーケみたいにしたい! こういうの」
 と、ザザは手にある携帯端末の画面を見せる。それを見たイチは、それ作れるのと問う。
「えー! でもできそうじゃない? このメリア型なブーケみたいなのチョコでつくりたい……」
 いくつもの花をほどいて一枚の花弁にして。そしてそれをすべて使って一つの大きな花を作る。そんなブーケの真似をチョコレートの花弁でしようと思っているらしい。
「できそうではあるけど面倒そう……」
 バランスとか難しそうだけどなぁと思いながらイチは黙る。
「大丈夫! きっとできるわ! 難しそうだったら手伝ってね!」
 と、ザザは言って。
 皆も、甘い花籠作りましょうと笑むのだった。


■リプレイ

 一斉にヒールをして壊れた学校は元の姿を取り戻す。
 そして――これからバレンタインイベント。

 一緒にいるとどきどきそわそわ。同じものを見たり感じたりがとてもうれしくて。
 時々胸がきゅーっとなる感じとか。
 しあわせな気持ちをたくさんもらっているからお返しをとイルヴァが紡ぐ様に。
「そのひとの話をしているイルヴァ、すごく良い表情してるもん」
「え、えとえと。それよりっ、いちるさんの大切なひとってどんな人ですか?」
「……私の好きなひとはねぇ、一緒にいて安心するひと」
 まだ気持ち伝える勇気はないけど、チョコだけはと笑む。
 その様にかわいいと、応援しますからと言うイルヴァ。
 それになんだか照れるといちるははにかんで。
 お互いの健闘を祈るばかりだ。

「スズランのお花、花言葉は再び幸せが訪れる、とか優しさ、愛らしさです。このお花リリーナちゃんにすごく似合うと思うのですよね……」
 素敵な花言葉、と言って一緒に作りましょうとリリーナは少し照れる。
 チョコで作ることに難しいと零しつつ二人で頑張ってひと段落したところで。
「ちょっと甘い香りが……、うー、チョコ食べたいです……」
「もう、リンさんってば食いしん坊ですっ。はい、あーんですよっ」
 そのおねだりに口の中に広がる甘い味。
 最後まで頑張りましょうとリリーナは言って。
「……だから、私にもあーんってしてくれますか?」
「リリーナちゃんも食べますですか?」
 はい、あーんと幸せのお返し。

「地球の方は聖人さんの命日に何やら興味深いことをなさるようで?」
 水蓮は面白いと零し手を伸ばす。
 野郎同志ばかり。だからといって薔薇というわけではないのだけど。
「薔薇には友情とか感謝とかそんな花言葉もあるね」
 マサムネは上手く出来たかなと薔薇を掲げ郷里は頷いて。
「オレンジとか、黄色の薔薇には友情とか、信頼とかの花言葉」
 あとは本数による。一番言葉の種類が多いんじゃないかなと言いながら黄色系のチョコを。
「なるほど……この作業楽しいね!」
 一騎は今年が初めてと楽しみにしていた。外見が凝ったものを作るのは初めてで。
 自分の不器用さに笑いながら優之介はいくつも作っていく。するとだんだん、マシと思えるものができて。
「……何かもう乗せなくて良い気がしてきたな」
 そう零すのは目の前に沢山あるからだ。工夫がみられるものがあったりと夢中だったんだなと笑い零れる。
 皆で話しながらやがて、出来がる。
「花言葉は」
 貴方に会えてよかっただよ、と皆に会えた感謝をこめて郷里は渡す。
 水蓮は気恥ずかしいと言いながらピンクのガーベラの花籠を。そこには感謝、崇高美、童心にかえる――それに畏敬の念を。
「いつも子供のようにはしゃいでいる皆さんに」
 そしてせっかくだからのつまみ食い。
 沢山あるからと優之介は遠慮なくどうぞ、と。
「俺も遠慮なく食わせてもらうからよ」
「あっ優之介さんオレのもどぞどぞ」
 美味しい物は皆で食べるともっと美味しい。

 上手くできるか不安もあったのだが。
「説明聞いたら簡単そうだし私にも綺麗な薔薇が作れる……わけねーじゃねーか!」
 と、棘が声上げる傍らで。
「……まあ! 俺! できてしまうんですけれども!」
 ドヤァとした後にソファは棘のアメーバな薔薇を見て。
「えっと棘殿ソレは花の種ですかね?」
「……そ、そうそう、これは種なのよ。これから綺麗なお花を咲かせるの、ソファが」
「ボクならできる……!」
 意外と難しいなと思いつつ、それなりの形になったんじゃないかなと和は萎れかけのような花を並べ。
「和殿は独創的ですね! あ、毒草ではないですよ?」
「ってソファ……それまさかソファが作ったの?」
 上級者がいるなんて、と和は自分の手の花を見て。
「イヤでもきっと棘よりはボクの方がうまく作れてる……!」
「和ちんのは……でもよく見るとオレのとどっこいかな。よう仲間!」
 と、張り合いつつ二人はソファの花籠へ。
「ソファにもお裾分けしてあげるね」
「じゃあこの失っぱ……美しくなる可能性を秘めた薔薇はソファちゃんの花籠へ、ね?」
「ってちょっと俺の作品に何て事を!」
 この不器用コンビときたらもう、とソファは笑う。
 何はともあれ花籠と共に素敵な想い出もできて。

 最初の一輪は相思相愛の意を持つ白い薔薇。
 有理は一輪ずつ、花を咲かせてゆく。そんな集中している姿にこちらを向いてほしくて。
「ちょっと口を開けてみて」
 冬真の声、素直に開いた口に溶ける赤薔薇。
「どう? おいしいかな?」
「美味しいよ」
 良かった、とその愛しい唇を冬真そっとなぞる。
 君が作ったものを頂くのも嬉しいけれど、その逆も嬉しいものだねと。
 嬉しさと恥ずかしさを感じながら有理は愛おしさ籠めて微笑み返した。
 小休憩も終わり、二人で一緒に花咲かせていく。

 最初は失敗したが、続ければ慣れてきてサクサクと作業が進むアクレッサス。
「アクレッサス、馴染むの早いね……流石、御節を振舞ってくれるだけ、ある」
「煌介も上手じゃないか。他の花で作ったんだな。綺麗なもんだ」
 そういって、リティリシアもアレンジまでしてすごいなぁとアクレッサスは感心する。
 ビスケット型を敷き詰めてチョコタルト。それがリティリシアの土台だ。そこに花弁作って、薔薇を作ってゆく。
 リティリシアのその土台に煌介も瞬いて。
「素敵だね……花が活きるよ」
「わぁ、リティリシアさんもアークさんもすごい、ですね」
 そういってメルルは自分の手元に視線を。
 いびつな形、けれど落ち込んでは居られないと。
「つまったら、アクレッサスさんにアドバイスもらっちゃいましょうか……!」
 ね、とリティリシアが言うとアクレッサスも頷いて。
「メルル、シェン、手伝うからゆっくり作っていこうな」
「メルルはこういうの好きそうだし……シェンはなんでもそつなくこなすと思ってた。でも、そういうところ、良いよね」
「お料理も……ですが、あんまり器用では無いのです」
 ほら、できるよと煌介は手を添えた。
「シェンさん……頑張りましょう、ね」
「ああ頑張ろう」
 メルルはぐっと拳握り、シェンも頷く。
 シェンの手にあるものは歪ながらも一つの花となって。
「ありがとう煌介、お前のお陰でようやく形になったよ」
 剣技以外はからっきしでなあとシェンは笑い、しかし皆で作ることができて良かったと。
「何方かにプレゼントするのですか?」
 ふと、メルルが興味で訪ねる。
 すると煌介は白のガーベラを差し出した。
 希望を齎す花。それを君たち皆に贈らせてと。
 皆で楽しく作る時間は、あっという間だ。

「綾ちゃんも、アルさんも分からないことがあれば聞いてね!」
 何でも教えるよ、と先生は春乃。
 花芯を作って花弁を巻き付けて。
 はじめてにしては上出来と見本を作り二人の手元に視線を。
「あ、綾ちゃん。そこはゆっくりやるほうがいいよ」
「えっ、は、早くてもダメなのかのう……?」
「ああ、アルさんは逆にゆっくり過ぎる気がする!」
「むむ、ゆっくり過ぎては駄目か?」
 と、綾の様子を見れば気になって。
「綾はどう? 手伝う?」
 自分のはまだ出来ていないけど遂と手を貸すと。
「あー! ととさま、ダメ、綾がひとりで出来るー!」
 そうして楽しく作った物を並べて写真を。
「チョコの花籠って綺麗だな、食べるの勿体無い……」
 そこでそういえば、とアラドファルは二人に問う。
「二人は、誰にあげるのだろう」
「綾はね、あねさまとととさまに半分ずつ食べてほしいのじゃ!」
「あたしの花も二人で半分ずつ食べてね!」
 それは何より。俺のも二人に、と笑む。

「あら……勿体ない」
 貴女に花を貰ったらきっと誰であれ笑顔咲かずにはいられないだろうにと純香は言う。
 褒め過ぎですよと戯れつつ、今作っているケーキはお互いに。
 純香からは白の大輪の薔薇と蕾のケーキを。
 シィラはチョコの花弁を重ねて真剣な眼差し。
 けれどその口元にあーんと花弁を差し出されれば無意識にぱくり。
 気恥ずかしさと共に差し出されたお返しにぱくり。
「佳い甘さでしょうか?」
 癖になりそうな甘さ、と無自覚な少女の眩さに瞳細める。

 色や本数で意味合いが違うと聞いて。
「皆様そゆのは籠めるのです?」
「わたしは白色すきなだけだからなあ」
 サヤはピンクから白へのふんわりグラデーションの薔薇を。
 それを見てイチカはかわいいな、と笑み。
「まねっこしちゃお!」
「粘土遊びみたいで楽しい……ん、初心者にしては結構上手なんじゃない?」
 紡はホワイトチョコに黄色を。たまには自分で作ってみるのも楽しいと笑み零す。
 わしも初心者ゆえ、と梅子も薔薇の形を。
「ふふ、手先の器用さには自信があるからの! 亀の甲より年の功、なのじゃ」
 イチゴチョコとミルクチョコをよい塩梅でと小さめの花をたくさん。余力残して二つ作るのはつまみ食いと称し食べる用だ。
「地味だけど大変」
 でも気持ちが籠っていればとジゼルはオレンジ色のチョコを潰して広げて組み合わせて。
「味見は禁止、食べたいけど禁止」
 そう言いながら鮮やかなオレンジの花籠を。
 薔薇の写真参考に、ハクアは白と水色の薔薇を。
「薔薇に見える……?」
 ちょっと歪だけれどと大小色々な薔薇を作り網目の綺麗な四角の花籠へ。
 サヤは丸い土台に丸い花。出来上がった所から二番目にきれいなのを抜いたのは味見用に。代わりにそこへ蕾をさして本当の完成。
 出来上がった花籠は鮮やかで綺麗で。
「ところで……みなは誰に渡す予定なのじゃ?」
 幾つになってもコイバナはと梅子は興味津々。
「あたしは喫茶店に飾っておこうかな」
 黄色い薔薇って『友情』の意味もあるんでしょ? と紡。
「わたしは、大事な相棒にプレゼントかな」
 ハクアが思うのはいつも一緒のボクスドラゴン。
「これは女子力つよいやつかなあ?」
 イチカは持ち手のあるまんまるバスケットに咲く薔薇もつぼみも盛って。
「いろとりどりでたいへんかわゆいのですよ」
「みんなの女子力つよい。……つよい」
 ジゼルは女子力高いと唸る。
「なるほど女子力」
 甘いチョコと甘いお話は、ご茶菓にちょうどよいですねえとサヤも頷く。
「そだよ、みんなで作ったからには交換こも楽しみのひとつだもんね!」
 つまみ食い用に白いばらの花弁をとイチカはおすそわけ。
 けどお味見に前に、皆で並べて写真に。

 花と言えば。
「やはり俺はいつも桜を思い浮かべてしまうな」
 そう零す唯覇の隣で恐る恐る、丁寧にセレシェイラも花弁を模っている。
 桜は、二人の花だから。
 二人、同じ花を作っており恐る恐る丁寧に作るセレシェイラを見て。
 君と一緒なら菓子作りも良いものだなと唯覇は微笑む。
 桜をケーキに。それと一緒に笑顔も咲く。
 そして出来上がったものは、中々上手くできて。
「大好きな貴方に、ひと足早く春をお届け!」
 そのお返しに愛しい君へと唯覇も笑む。

「うっ、また潰してしまいました……こういう手先の器用さが求められるのは苦手なのでありますよね」
 帳はそこで皆の手元見て。
 チェレスタの手元では白バラとピンクのバラ。それがもう抹茶チョコの葉と合わさりバウムクーヘンの樹に咲きかけ。
「確か花言葉は」
 リューディガーは『私は幸せ』『幸運を運ぶ』だったかと言いながらクチナシの花を添える。
 それはチェレスタの花だ。そこにある想いにチェレスタは笑み零す。
 今年のバレンタインは特別。夫婦になって初めて迎えるのだから。
 幸せが続くようにと、願いが込められている。
 その様子にエリオットは微笑む。見ている自分まで幸せな気持ちになるのだ。
「ルーディ殿、チェレスタ殿、ちょっと待って下さいよー!」
 と、そこでヘルプがかかって。
「私、全然追いついてないんですけどっ!」
 帳の声にエリオットも二人と一緒に手伝いを。
 その最中でぱくり。その様子を見られて帳は慌てる。
「これはどんな味かなーって気になっただけでして、決してつまみ食いに本腰を入れ始めたわけではっ!」
「作業が終わったら、みんなでお茶にしましょうか」
 エリオットはそれを楽しみに頑張りましょうと笑む。

 ケーキをクマの形にカットして、お腹や口とベルンハルトは作り上げていく。
「ふむ、いいんじゃないだろうか……あ」
 そこで思い出したのは花。小さな花束を作ろうと思い、ふと傍らの兎夜はとチラッ
「わたしのは完成楽しみに――っていっても無難なバラだよ」
「む、秘密なら仕方ないな……楽しみにしておこう」
 それに気付いて兎夜は笑み、ベルンはと見れば花が見当たらない。
「ふふっ、気になるなら最後交換しようか?」
 それは後のお楽しみ。
 兎夜は薄目の色合いの、花弁一枚ずつ色の違うレインボーローズを作り上げた所。土台に霞草を描いて作業の続き。

「……んん」
 チキチキ動くマシンアームをロッタは凝視して。
「いや、それはキモくないです? みょいんって出てますけども」
「えー、気持ち悪いとか言わないでよ」
 久繁はほら見て、と言って。
「この剥がれそうな花弁を抑えつつ新しいのを貼り付けるの、普通ならこうはいかない」
 唸りながらちょびっと味見。
 それをとりあえずとロッタは積んでいく。
「薔薇タワーですよお!」
 土台より大きなタワー、邪道じゃない? と久繁が言うと、あげますよとロッタは言う。
「ロッタからの僅かなお礼ってことで」
「俺、貰ってもこんなにチョコ食べれないんだけれど」 これからも『仲良く』よろしくと。

「折角ですし、いろんな種類のチョコ種を使うと、可愛くなる、です?」
 希月はフルーツ系のチョコ種も、とザザにおすすめ。
「薄緑からピンク色にしたい、野望!」
 その声に希月はこくと頷いて、まずは一枚一枚、様々な色の花弁をと一緒に作っていく。
 地道なレベル上げのように潰して丸めて、一枚一枚丁寧に。
 茜がケーキに菓子を刺しサボテン、というのをペシュメリアが名を呼び戒めると。
「嘘です真面目にやります、ザザ君も一枚いかが?」
 そう言って差し出したのは失敗した花弁。
 それぞれ作る花弁の色を見てペシュメリアは交換をと。使わなくとも、こっそり味見でも。
「花弁交換とは、メリア型だけにナイスペシュメリアイデア!」
 折角だからあとで記念写真撮りましょうと茜は笑む。
 きゃっきゃしながら作業していくとチョコの花も沢山できていく。
 多少不出来でも本物だって一つずつ違う、とヒコは納得。
「――……それ、全部使って花束にするのか?」
 花弁量産中のザザに声をかけ、手伝うぜと一言。
「んで、だ。ザザはこれを誰にあげるんだ?」
「それはもちろん……自分用よ! でも」
 一人では食べきれないから皆にも分けるのと言って。
「一切れごちそうするわ」
 その一言に楽しみだとヒコは笑む。
 春告げの花をケーキに彩ってアラタはよしと笑み零し、苦戦中の姿を見て。
「ザザ、溶けチョコレートから水飴に接着剤を切り替えるのもいいかもな?」
「なるほど! アラタちゃんありがと!」
 外側、下側。難しい所は手伝うから頑張れとアラタは言う。

 ふたりで菓子作りは二回目。
「なぁ、ギルはどんなの作んの?」
「ぁ? どんなの作るって、出来てのお楽しみだ」
 柊一郎は話しながら手を動かすが、その話を聞いていない悪戦苦闘中のギルベルト。
 その様に頬膨らませつつチョコ種で花弁作る柊一郎。
 そして完成したのは桃の花。ベリーケーキの上の飾り、春告げるような淡い花籠に。
「何だ、シュウのは春みてェなケーキだな」
 可愛くて良いんじゃねーのと続く言葉に満更でもない顔して、ギルのも悪くねぇ出来じゃんと柊一郎は言う。
「なぁなぁ、それ誰にあげんの?」
「ぁー渡す人なんて居ねェな」
 勿体ねぇと零し、じゃあと柊一郎は提案する。
「俺のこれあげるから、ギルの籠、俺にちょうだい」
 にこにこ笑う様に仕方ねェなと満更でもない様子でギルベルトも笑う。

「リシェさんは案外手先は器用なのでしょうか?」
 うまく出来るといいですねとクライスは笑む。
 クライスはオフィーリアを手伝いつつ、ホワイトチョコでアザレア。
 そして小鳥を作る。
「見てください、大分それらしくなってきた気がします!」
 試行錯誤の末、できた花をオフィーリアは見せる。と、同時にクライスの作った物を見て。
「クライスさんはやっぱり上手ですねぇ……あら、可愛い、リネットですね!」
 小鳥に気付いて笑み浮かべ、食べるのが勿体なくなってきたと困り顔。
「ハッピーバレンタイン」
 リシェさんとリネットに幸あらんことを、と。
 それを受け取って、代わりにと差し出す一輪。
「作った中ではこれが一番綺麗に出来たと思うんです」
 差し出す薔薇は想いのお返し。

「あっ。やだ、ちょっとこれは……」
 突然上がった声に瞬いて、オルテンシアの手元見れば歪となった一片。
「不器用なところも可愛いわよ」
 小さく笑うその姿に揺れる悪戯の蕾。
 口元に不意に触れた一片をメロゥは反射的に。
 甘く溶け出す、愛――それは喪くしたと、メロゥは思っていた。
「ひとつ摘まんだからにはすべて受け取ってね」
 そしてできあがった救済頼みの花籠。
 その精一杯を受け取れば嬉しくて笑み溢れ。
「あなたに、私の心をあげる……返品不可、よ」
「返してって乞われたところで願い下げよ」
 最も甘いのは花綻ぶ笑顔。それは私のもの。

作者:志羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年2月13日
難度:易しい
参加:51人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。