ヒーリングバレンタイン2017~ブックオブショコラ

作者:波多蜜花

「集まってくれてありがとな、皆の頑張りのお陰で今までミッション地域になっとった複数の地域の奪還に成功することができたんよ! それでな、この取り戻した地域の復興も兼ねてバレンタインのチョコレート作りなんてどうやろか?」
 信濃・撫子(撫子繚乱のヘリオライダー・en0223)が声を弾ませてケルベロス達へ説明を始める。
 解放したミッション地域は、基本的に住人はいないのだが引越しを考える人々や、ミッション地域周辺に住む住人達が見学に来る事があるのでちょっとしたイメージアップにもなり得るだろうという計画だった。
「今回復興イベントを行うんは神田古書店街でな、かつては歩けばいくらでも古書店があって、純喫茶なんかも多数あったとこなんよ」
 ヒールを行う場所は、古書店が立ち並んでいた通りの一部でヒールが終わった後は一般の参加者も招いてチョコレートを皆で作る、手作りチョコイベントが開催されるのだという。
「ヒールを行った場所のビルに道具や材料を搬入してな、心の籠もった手作りチョコを作るんやけど、古書店街っちゅーんにちなんで本にちなんだパッケージも作れるんやって」
 カルトナージュと呼ばれる技法で本の形をした入れ物を作り、それに手作りしたチョコレートを詰めてラッピングができるのだという。もちろん、不器用な人の為に既にカルトナージュされた本型の容器もあるよって安心して参加できるで? と撫子が笑いながら言う。
「アイデア次第で色んなチョコレートやラッピングができると思うんよ、ウチも今からめっちゃ楽しみやわ!」
 バレンタイン前に大切な人への想いを綴ったチョコレートを作るのもいいし、友チョコを友人とわいわいしながら作るのもいいだろう。もちろん自分用のチョコレートだって大歓迎だ。
 だから、よかったら皆で楽しみに行こう、と撫子が両手を広げで微笑んだ。


■リプレイ

●復興の兆し
 先日解放されたミッション地域、神田古書店街はケルベロス達による復興イベントで賑わっていた。群青色のパーカーを着た青年、亮一も復興に力を貸すケルベロスの1人だ。
「ヒールドローン展開っと……さあドローン達、修復の手伝いをしてくれよな」
 この後に行われるというチョコレートイベントの会場であるビルに向かって、亮一が小型治療無人機の群れを放つ。細やかな動きを見せながら、彼が操るドローン達は損壊が酷い箇所を次々と修復していく。
 その横では、顔見知りである千歳が同じようにヒールドローンを展開してビルの修復にあたっていた。
「こちらが会場になるビルですね、古書店も近くに沢山あって……いい場所です」
 街の修復が終わったら古書店巡りをするのもいいかもしれないと思いながら、巫女服の赤い袴を華麗に捌いてドローン達を操り、ヒールを行う。献身的なケルベロス達のヒールにより、古書店街の街並みが以前に近い状態になっていくのはどこか心躍るもの。知らず、笑みが浮かんでいた。
「ふぅ、この物資はこちらで良いので?」
 会場の修復が終わりかけた頃、先駆けてイベントに必要な道具や材料を運んでいた泰山が撫子に声を掛けた。忙しなく動いていた撫子が、
「せやね、それはこっちでええよ! ありがとなー」
 と、返事をすれば泰山が軽く会釈をして指定された場所に荷物を下ろす。その後ろを、亮一が瓦礫の撤去を手伝う為に走っていくのが見えた。
「会場のセッティングのお手伝いはこちらでよろしいですか?」
 建物の修復を済ませた千歳もまた、他に手伝う事はと撫子に声を掛けている。まだまだ山積みの荷物を運ぶ為、泰山が来た道を戻る。イベントが行われると聞き、折角だからとやって来たけれど1人だと何をしていいか迷っていた彼女にとって、単純だけれども荷物を運ぶという仕事はありがたかった。
「考えてみれば1人で祭り事に来てみた事が無かったでありますね……」
 そんな事を呟きながら、ふと足元に転がる本が目に付いた。凄惨たる被害を免れたのであろうそれをぱらりと捲って見てみれば、その1ページが心に響く。
「……そうでありますね、近々バレンタインでありますし、チョコの作り方の勉強がてら楽しむとするでありますか」
 この荷物を全て運び、会場のセッティングが終わったら。そうしたら、今日という日を楽しむのも悪くないと微笑んだ。

●チョコレートをご一緒に
「皆さんはどんなチョコレートを作るんですか?」
 先日ショコラティエに教わったばかりのエレがボウルに刻んだチョコを入れながら、一緒に参加することになった真奈とセラフィに問い掛ける。
「おばちゃんは当日作るチョコケーキの試作や。どんなのにするかな」
 おばちゃん、と言えどドワーフである真奈の見た目は幼女そのもの。今日の服装の白いニットに藤色のスカートとも相まって可愛らしいという言葉が相応しい。けれど中身は関西のおばちゃんなのだ。
「ぼくはね、ぼくの旅団のみんなに配れるよう、ひとくちで食べれるチョコをたっぷり作るつもりだよ」
 褐色の肌に金の髪でにっこりと微笑むセラフィは女の子と見紛うばかりの可愛らしさだが、れっきとした男の子だ。愛情のお裾分けなのだけど、どんなチョコがいいか2人に意見を求めるとエレも真奈も嬉々として相談に乗る。
「ひとくちやったら、型抜きチョコもええと思うで?」
「数も簡単にできますしね。あとはそうですね……丁度私が作ろうと思っているトリュフチョコもいいと思います」
 手元のボウルを湯煎に掛けながらエレが言えば、お手本にしたいとセラフィが見よう見真似でボウルに刻んだチョコを放り込む。
「水が入ると分離してしまいますから……難しかったら温めた生クリームをそのボウルに入れて混ぜてもできます」
 ショコラティエから学んだ知識を惜しみなくセラフィに伝えると、セラフィが真剣な顔で頷いた。真奈はといえば、同じようにチョコケーキに使うチョコを鼻歌交じりに湯煎しながら、一生懸命作業を行うエレとセラフィに笑みを浮かべていた。
 柔らかで美味しそうなガナッシュを作り上げたエレは、程よい硬さになったそれを成形して竹串を刺していく。後はビターチョコでコーティングすればトリュフチョコの出来上がりだ。
「こうやって皆さんとチョコを作るのも楽しいですね」
 出来上がったトリュフにアラザンやドライ苺を砕いたものを使って可愛らしくアレンジをしていたエレが出来上がりつつあるチョコに笑みを浮かべて言うと、エレの作業をお手本にして作っていたセラフィが自分の作ったチョコに金粉をまぶしながら顔を上げて、
「ほんとだね! このあと、どうやってラッピングしようかって考えるのも楽しいし、来てよかった」
 と、楽しそうに笑う。チョコケーキを焼きあげた真奈が出来立てのケーキを冷ます為に、クーラーと呼ばれる網の上に載せて戻ってくると、2人の作ったチョコを見て顔を輝かせた。
「お、うまそうやな! ちょっと味見させてや」
「ちゃんと固まったら、皆さんで少し味見しましょう……美味しく出来てるといいのですけれど」
「おばちゃんのもな、もうちょっとで出来るから食べたってや!」
「ボクのも! 試食したら、あとでラッピングもしにいこうね」
 トリュフを袋詰めして本型の箱に入れるんだとセラフィが張り切っている。バレンタインを前に迎えたとても平和な午後のひと時だった。
「本で模るチョコレート……ふふっ、とっても素敵ね?」
 リルシャーナがアルニに微笑むと、アルニも薄い笑みを浮かべて頷く。チョコ作りなんて今までしたこともない彼は、彼女が机に並べていく材料や道具に少し戸惑っていた。こっそりとアイズフォンを起動して、チョコ作り・基本で検索を掛ける。すぐにアルニが求める情報は入手できたけれど、意外と手間の掛かるその作業にそっと溜息を吐いた。
「……機械やネットワークみたいに楽にはいきませんねぇ……」
 けれど、それを人は喜ぶし手間隙を掛けてバレンタイントいう日を楽しむのだ。ならば自分もやってみるだけの価値はあるのかもしれない……何より、目の前で楽しそうにしているリルシャーナを前に不平不満を言うわけにもいかない。
「さあ、始めましょう!」
 折角だから色々な種類を作りたいとリルシャーナが作り方が載った本をお手本にしながらチョコ作りを開始する。少しだけお酒を混ぜたものや、エッセンスを混ぜたものを作っていく。
「ふふ、サキュバスミスト入り、なんてのもどうかしら……?」
 そんな冗談を交えながら、リルシャーナとアルニは湯煎で溶かしてテンパリングしたチョコを様々な形へと変えていく。
「ねぇアルニ、型はどれがいい……?」
 サーヴァントのモリオンに運ばせた本の形をした型を数種類見せれば、アルニがそのうちのひとつを指差した。
「なら、これがいいです」
 ハートのワンポイントが付いたその型を迷いなく選んで、アルニがチョコを流し込む。リルシャーナも鍵のワンポイントが付いた物へ流し込み、チョコが固まるのを待った。

●カルトナージュであなた好みに
 ビルの2Fフロアでカルトナージュに勤しんでいるのはアリスとミルフィだ。
「わあ、たくさんのご本がありますね……♪ えっと、私はこの本をモチーフにしますっ……♪」
 金色の髪を揺らし、アリスが手に取ったのは不思議の国へ迷い込んでしまった少女の物語。
「ふふっ……♪ やはりアリス姫様はその童話がお気に入りですわね。では、わたくしは……」
 アリスの後ろから白い指を伸ばし、ミルフィが手に取ったのはアリスが選んだ物語の続編に当たる童話だ。それではと材料が用意された机に向かい、2人並んでカルトナージュを行うことにした。
 カルトナージュとは厚紙で組み立てた箱などに好きな模様の紙や布を貼り付けて仕上げたもので、熟練の職人ともなると家具までカルトナージュで作ることもできるのだという。
「アリス姫様、ここはこうして……」
「はい、ミルフィ。ここはこうするんですね……?」
 9歳とはいえティアラハート家のメイドとして仕えるミルフィにとっては、簡単なカルトナージュならお手の物。さりげなくアリスが困っている箇所を手伝い、導いていく。
「はい、とってもお上手ですわ♪」
 アリスの作り上げていくカルトナージュは、空色基調のもの。丁寧に貼り付けたら、不思議の国の住人達をモチーフとした装飾を飾り付けていく。対するミルフィは白と赤の布を基調として貼り付け、美しく仕上げた箱に鏡の国の住人達の装飾を飾り付けた。
 対をなすブック型のカルトナージュは、まるで2人のようでもあった。
「ところで姫様?」
 完成した箱を満足気に眺め、あとは作ったチョコを入れてラッピングだとはしゃぐアリスにミルフィが問い掛ける。
「はい?」
「姫様のそれは……どなたに差し上げますの?」
 悪戯っ子のようなミルフィの微笑みに、アリスが目を瞬かせてこう答えた。
「秘密です♪」
 渡す相手は目の前の彼女だけれど、それは当日のお楽しみなのだとアリスは黙って微笑んだ。
「カルトナージュ、発祥はフランスだそうですね」
 白い獅子の風貌とは裏腹に、穏やかな声で風音に話すのはロジオンだ。サイドの金に輝く鬣を編んだその手でどの箱型にしようかと机の上の材料を選んでいる。
「そうなんですか? でも確かにフランスっぽいお洒落な感じがしますね」
 古い辞書をイメージしながら材料を選ぶ風音が涼しげな眼差しでなるほど、と頷いた。材料を選び終わると、向かい合わせに座って箱型に布を貼り付けていく。ロジオンは魔道書をイメージして古びた風合いの布を、風音は茶系の布地に蔓草と花の模様……どこか森を思わせる布地を丁寧に貼り付ける。
「これ、布を貼った後に染色してもよろしいですかね?」
 ロジオンが通り掛かった撫子に、カルトナージュした物にステンシルは可能かと問い掛けた。
「失敗した時にやり直しできへんとは思うけど、構わへんと思うよ。素敵なんができるとええね!」
「ロジオンさんのカルトナージュは、ステンシルを……素敵な発想ですね。きっと、とても素敵なものになると私も思います」
 2人の言葉に微笑んで頷き、ロジオンが魔法陣柄を切り抜いた厚紙を取り出してごそごそと始めると、風音もシャティレの抜け落ちた羽根を箱の飾りにできないかと飾り付けに頭を悩ませた。それは楽しい悩み事で、シャティレも緑の羽根をパタパタと動かしている。
 それぞれの作業がひと段落すると、ロジオンが満足そうに顔をあげて風音へ声を掛けた。
「作製の調子はいかがでございますか?」
「これを付ければ終わり……です」
 綺麗な花飾りを付けて完成としたそれに、ロジオンが素敵な外観でございますねと微笑む。そして自分の作った物に目を向け、作ったはいいが誰に贈ろうかと頭を悩ませた。
「渡す方、ですか? ええと、今のところは自分用、ですね」
 でも、と風音が口を開く。
「いつか、本当に大切な方ができたら、改めて作ってお渡ししたいです」
「私もですね、これは旅団の皆様へのお土産にしましょうか」
 これから中に詰めるチョコレートを思って、ロジオンの目が細くなる。きっといいお土産になるだろうと2人は顔を見合わせて笑みを浮かべた。
 大切な人に贈り物をしたいけれど、1人だと真剣になりすぎて余計な力が入ってしまうと自覚している紺は今年も付き添いを、と灯乃に頼んでいた。
「今年も大切な贈り物作りに誘ってもろて嬉しいな。俺に何のお手伝いができるかわからんけど、ご指名とあらばやってみよか」
 それはもう保護者のような気持ちで、灯乃は紺の横に座る。
「ありがとうございます、形が崩れていないかとか、可愛くなりすぎていないかとか……見ていただければ」
 決して不器用ではないけれど、大切な人への贈り物だと思うだけで緊張してしまうのか、どうにも手元が狂いそうになるのだと紺が深呼吸をする。
「カルトナージュって要するにデコやんな? 茶葉や繭を保管したって説もあるみたいやし……大事なものの入れ物を綺麗に飾ったったらえぇねんや」
 せやからそないに緊張せんと、と灯乃が笑えば、紺もどこかリラックスした様子で作業を始めた。
「布は接着剤で濡れると伸びるさかい、あんま引っ張らんようにな。紺ちゃんの想いを乗せて重ねて、や」
「私の……はい。ええと、あともうひとつ」
 なんや? と首を傾げた灯乃に、普段あまり表情を変えない紺がほんのりと笑みを浮かべる。
「青、緑、赤……どの色があの方らしいでしょうか」
 あの方、と言われて脳裏に浮かんだ色は赤。けれど大事にして欲しいと願うなら――。
「紺ちゃんのイメージカラーでもえぇんやないかな? 綺麗な青い瞳とか、よく身に付けとる緑の輝石とか」
 その発想はなかったと、紺の青い瞳が揺れる。選び取った色はやっぱり赤だったけれど、手にした刺繍糸は紺色。赤い布にそっと施した刺繍は紺の気持ちだった。
「ところで、鷹司さんは……気になる方はいらっしゃらないのですか?」
 去年の今頃に聞いた時には、するりとはぐらかされてしまったリベンジにと紺が問い掛けると、灯乃の目が優しく細められ唇の前で指が立てられた。
「今は……大事な子がおるからね」
 内緒やで? と笑う灯乃が幸せそうで、紺は静かに頷いた。
「あとはこれがいいかしら」
 大変そうだけれど、最初から作ってみたいと考えていたウルズラが必要な材料を手に取っていく。作り方の書かれた紙をお手本に厚紙に定規を使って線を引き、間違いがないか確認してカッターで切り取り、パーツの断面にしっかりとボンドを塗って組み立てれば、それだけで何かの入れ物に使えるような箱になった。
 作業をしていく中で、ウルズラは贈る相手を想う。幼い頃から身体が弱かった自分を大事に育ててくれた両親、何度夜通しの看病をしてくれただろうか。それが今、ケルベロスとしてこうしていられるのはウルズラが言うところの奇跡があったからだけれど、何より2人が守ってきてくれたからだと薄い灰緑の布を貼りながら考えていた。
 本の表紙になる部分の布には、苺を飾り枠のように刺繍する。ひと針ひと針に想いを籠めて。
「ふふ、詰めるチョコも苺のものにしようかしら」
 贈りたい想いに相応しい花言葉だと、ウルズラに笑みが浮かぶ。
「きっと返したりない恩返し、まずは1つね」
 苺の刺繍に籠めた想いは、尊敬と愛情、そして幸福な家庭――。

●ラッピングに愛を籠めて
 3Fフロアではラッピングコーナーが開かれていた。それぞれがラッピングを楽しんでいる中、何故か殺気を放つオラトリオ……マリオンがいた。
「どうも、去年のホワイトデーには高級ハーブと偽られたその辺の雑草を食わされたオラトリオです」
「アホだからその辺の雑草でも喜んで食うと思ってたのに」
 殺気を向けられてもなんのその、ルイスが案外勘が良いんだよなとぽつりと漏らす。というか、食ったんだな雑草。
「今年こそはちゃんとやれよ!? 間違ってもその辺の石ころ詰めるなよ!? 犬の以下略とか以ての外だかんな!!」
「本当に勘がいいな」
 青筋を立てたマリオンを軽くいなし、仕方ないとルイスが大人しくラッピングを始める。元々手先が器用なのだろう、チョコで出来た歯車や螺子を綺麗に組み立てて本型のケースにオルゴールの内部を再現していた。
 その横では、マリオンが大事な友達に渡すチョコのラッピングを真剣な顔で行っている。『さんすう』と書かれた本型ケースの中に、ひよこちゃんチョコをちょっとしたかくれんぼのように配置する。
「この中にひよこちゃんは何匹隠れているでしょう! パカッ! 5匹でした~! とかすれば、きっと5連続0点だったと無邪気に笑ったあの子も少しはやる気を……」
 出すだろうか。夏休みの宿題を冬まで持ち越したあの子が……そこまで考えてマリオンはちょっとキュッとなった胃を撫でた。
「ほい、これでノルマ終了な」
 知らぬうちにアラザンや金箔で部品ごとに質感を変えてラッピングまで丁寧に行っていたルイスがスマホを弄りながらマリオンに声を掛けた。
「やれば出来るじゃないですか」
「まあな。ちなみにさ……人の未来なんて歯車の回り方で如何様にでも変わるんだから、根詰めて悩んだところで徒労に終わると思うけどね、俺は」
 胃を撫でるマリオンをどこか労わるような声音でそう言ったルイスにマリオンが笑みを浮かべるが、すぐに目が据わる。
「って、他人事みたいな顔してるお前の引き篭もりだって、お姉ちゃんの頭痛の種なんだからな!?」
 藪蛇だった。モンギョロオオオ! と奇声を上げたマリオンにルイスがデコピン100連発を喰らうのはすぐの事。

 帰る間際、リルシャーナが隣を歩くアルニへ、
「お仕事ついでにこんな事が出来るなんて素敵ね。アルニ、今日は誘ってくれて本当にありがとう♪」
 と、綺麗にラッピングしたそれを差し出す。ほんの少しだけ動きを止めたアルニがそれを受け取ると、ポケットからさり気なく出した自分が作ったチョコをリルシャーナの前へと出した。
「あー、その。男が渡すのもありなようなので。ハッピーバレンタインです、リル」
 その行動が予想外だったのだろう、リルシャーナの顔が驚きで満ちる。そして、今日一番の華やかな笑顔を咲かせたのだった。

作者:波多蜜花 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年2月13日
難度:易しい
参加:17人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 4
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