ヒーリングバレンタイン2017~古都の趣の手作り市

作者:質種剰

●解放された触手寺
「皆さんのご活躍により、これまでミッション地域となっていた複数地域の奪還に成功したのは、記憶に新しいことと存じます」
 小檻・かけら(藍宝石ヘリオライダー・en0031)が、にこにこと楽しそうに説明を始める。
「この取り戻した地域の復興も兼ねて、バレンタインのプレゼントを一緒に作りませんか?」
 解放したミッション地域には住民がまず居ないのだが、引越しを考えている人などが下見に来ていたり、ミッション地域周辺の住民が見学に来る事はあるという。
「一般の方にもご参加頂けるようなイベントにすれば、解放したミッション地域のイメージアップにもなるかと思うでありますよ♪」
 そうかけらは笑顔で補足した。
「皆さんにヒールして頂きたい場所は、京都市右京区にあるお寺さんのひとつであります♪」
 京都といえばやはり寺社仏閣が多く、それは右京区の中でも観光地として名高い嵐山や嵯峨野にも当て嵌まる。
「京都では、数あるお寺さんや神社の敷地を活かして、定期的に手作り市やバザーを開催している所が沢山あるのであります。ですから、お寺さんでバレンタインチョコやバレンタインに贈るプレゼント作りのイベントを開催すれば、きっとお客さんがいっぱい来て下さいます」
 自信を持って請け負うかけら。
「皆さんには、お寺の本堂などをヒールで修復して頂いた後に、チョコ作りを楽しんで頂けたらと思います」
 手作り市と言っても売り物は様々だが、今回はぬいぐるみ作りを中心に行うようだ。
「京都には様々な伝統工芸がありまして、染め物の『端切れ』がよく出るのであります。そんな『端切れ』を縫い合わせた小さなぬいぐるみが、手作り市の定番商品になってるのでありますよ」
 好きな色や模様の端切れを使った手作りのぬいぐるみに簡単な手作りチョコを添えて、バレンタインのプレゼントにするのがお手軽ながら可愛らしく纏まってお薦めだという。
 勿論、ぬいぐるみ作りかチョコ作り、どちらかに一点集中しても構わない。
「それでは、皆さんのご参加を楽しみにお待ち致しております。素敵なバレンタインのプレゼントができますように♪」
 注意事項は未成年者の飲酒喫煙の禁止のみである。


■リプレイ


 京都市右京区にある寺院。
「古都に求められるものは色々とありますからね。私たちはイベントを開催する場としてのお寺を最高の状態に出来るように、尽力しましょう」
 落ち着いた物言いで修復活動——但し手作業の——に勤しむのは穣。
「Gun&Joe商会も今日だけでなく、継続的に寺の支援が出来たら良いよな」
 そう呟く巌も、京都の景観の保護や歴史的観点を念頭に置いて、慎重なヒールに励んでいる。
「穣は手慣れてる感あるなあ、流石だぜ」
 同じく手作業で大工仕事をしていた陽治も、汗を拭いながら言う。
 彼ら3人は、主に建物の土台や基礎部の修理をヒールで行い、外観は手作業で修理すると決めていた。
 そんな修理の合間、陽治は2人が根を詰め過ぎないように、適度に休憩を取らせた。
「これなら手軽だしな」
 手作り市で買ってきたホットチョコを配る声は優しい。
 すると、巌もお茶請けにチョコレートの金平糖を振る舞った。
「2月の限定商品なんだってさ」
 それは京都にある有名な店の金平糖。専門店ならではの豊富なフレーバーと上質で爽やかな甘みから大変人気があるのだった。

「ぬいぐるみ、貰うのは大好きなのだけれど……作るのって苦手で」
 デザインも、お裁縫も完璧、だけれど……命の吹き込み方が、わからないの。
 助けてすみれちゃん! と嘆くのはミライ。
「命の吹き込み方……」
 すみれは思慮深い光を湛えた瞳を瞬いて、
「あたしはね、下手くそだけど、大好きって思いながら、あげる人が幸せになりますようにって祈りながら、作ってるよ」
 と小首を傾げた。
 すみれ自身が挑戦するは、親友の武器のオウガメタル。
 ミライは驚くも、全力で技術面のサポートしようと端切れを選ぶ。
「それなら、紺色の紗綾形の生地とか……あ、いやクッキー、ですからそれこそ市松模様もいいかなぁ?」
「さすがミライさん! この端切れ使うの可愛いねっ」
 すみれはミライの指導の下、目やリボンをつけてまふもふクッキーちゃんを仕上げた。
「ミライさんとクッキーちゃんにいっぱいの愛をこめて!」
 ミライも負けじと気持ちを新たに針を運ぶ。
(「きっと誰より、君に愛を籠めて」)

 ルリィとユーロの姉妹は、どちらがぬいぐるみを上手く作れるか勝負していた。
 ルリィは、茶色に波模様の布と白布を縫い合わせ、トラ猫のぬいぐるみを器用に作っていく。
 鼻は桃色の布、目は薄い緑の釦を縫い付け、首に紅いリボンを巻いて完成。長めの縞々尻尾が可愛らしい。
 一方ユーロは、黒、茶色、白布を縫い合わせ、三毛猫の風合い。
 目は黄色い釦に鼻は桃色の布。首に巻くのはピンクのリボンだ。
 どちらの出来もそこそこな為、勝負はチョコ作りに雪崩れ込む。
「お料理はそこそこ得意なのよ」
 と、それぞれレーズンとオレンジピールを入れたハート型チョコを披露するルリィ。
「私だってお母様に教わったから料理は得意なのだ」
 豪語するユーロは、小さく砕いたナッツをミルクチョコとキャラメルチョコへ混ぜたのをハート型に作った。
 後は、皆でチョコを食べ比べたり、小檻手製の鮪ぐるみと猫ぐるみを交換したりとイベントを楽しむ姉妹。
「みんなはバレンタインにわたす相手決めてるの?」


「あたし結構お裁縫得意なの、かわいいの作るからね!」
「おう。ぬいぐるみってこんな感じに作るんだな」
 ヴィヴィアンが危なげなく針を進める傍ら、鬼人は材料調達で恋人の役に立とうと、様々な端切れや釦を持ってきた。
(「にしても……優しい目でぬいぐるみを作ってるんだな」
 じっと飽かずに横顔を眺める鬼人。
 ふっと顔を上げた彼女と目が合った。
「そ、その……もしかして、ずっと見てた?」
「おう、実は、ずっと、な」
「ふわー、ちょっと恥ずかしい……」
 照れつつも首にピンクの鈴付きリボンを結ぶヴィヴィアン。
(「それにしても、ぬいぐるみの俺、幸せ者だな。ヴィヴィアンの視線を独り占めできてよ。ちょっと妬けるな」)
 完成したのは、青の花柄縮緬とさらっとした白い布を併せた体に、グレーの釦の目が可愛い猫ぬいぐるみ。
「トリュフもくれるのか? ありがとうな」
 喜んで両方受け取った鬼人は、端切れの白猫を自分の横に掲げて、
「どっちが格好いい?」
「え? かっこいいのはもちろん鬼人だよ」
 ふふ、あたしには鬼人が一番だもの。

(「シャインさんっぽいうさぎさん、おどろくかな♪」)
 密かに意気込むミストリースは、淡い青と紫の布を丁寧にはぎ合わせ、ちょっと下手で布のヨレた、それでも可愛らしさ充分のお祈りうさぎさんを作った。
「実はシャインさんにさしあげたいです……心が強くなれるように、おまもりなのです」
 シャインは目を丸くして礼を言う。
「有難う……私に似てる?」
 そして、自分も絆創膏だらけの手で作った子リスを贈った。
「わあ、かわいいですー」
 子リスを抱き締めたミストリースは笑顔全開で大喜び。
 満足そうに眺めるシャインだが、もう一つ作ったわんこノクスは、
「……きっと彼に……私の想いは届いてない……」
 悲しげに呟いて一度はゴミ箱へ捨ててしまった。
 それでも脳裡に彼の顔が浮かぶや慌てて拾い上げ、大事に両手で包む。
「ねぇ……ミストのパパとママの様に、彼と私仲良くやっていけるかな……」
「おとうさんとおかあさんも、けんかしても仲良しです。シャインさんたちもきっと仲良しなのです」

 薄紅色に矢絣模様の布を赤糸でちくちく繕っていた春撫が、小さく叫ぶ。
「いたっ、指さしちゃった」
 婚約者である陽葉の着物の柄でぬいぐるみを作る最中、針で指を刺したのだ。
「!? はるはる、どうしたの!? ああっ、はるはるの綺麗な指に怪我が!」
「意外と難しいんだね。って、陽葉!?」
 振り向くや否や陽葉へ指を口に含まれ、血を舐め取られて、頬を赤らめた。
「ん、あとは絆創膏貼っておこうか。次からは気を付けてね?」
「あ、ありがと……」
 恥ずかしそうに辺りを見回し、春撫は小声になるも。
「陽葉も怪我したら言ってね? し、してあげるから……」
「えっ!? う、うん、じゃあ、僕が怪我した時はお願いしようかな……なんて」
 照れる陽葉が作ったのは、薄桃の生地に苺の白花が映えるはるはるにゃん。
「あ、2人とも猫作ったんだ。お揃い……だね?」
「陽葉って猫っぽいから、猫のぬいぐるみにしてみたの」
 あきにゃんとはるはるにゃんを寄り添わせ、キスさせる2人は幸せそうだ。

「まぁ……あたしは之でも武器を主眼とする戦乙女だしね」
 フレックは手際良く焼き上げたチョコケーキへ、これも器用に刀の絵を描いていく。
「こういう時は協力も大事ってね。だから……かけらのチョコも味見させて?」
 一緒に作業していた小檻へ笑いかければ、彼女も快諾してチョコを差し出してきた。
「あら、シンプルなハート型なのね」
「失敗防止であります。それにしてもフレック殿はお菓子作りもお上手で……こんな美味しいチョコケーキ初めて♪」

 朔太郎は、緑が綺麗な生地を選び、熊のぬいぐるみを作る。
 釦は悩んだ末に、奏がクリスマスデートで着たコートを思い浮かべてピンクにした。
 奏も紅く可愛い和柄の生地へ紫の釦を縫いつけ、テディベア作り。
「……ちょっと歪ですがまぁ、テディベアに見えます……よね?」
 首を傾げつつ緑のリボンを結ぶ奏。
「……狼は、難しそうだったので」
 朔太郎が完成した熊へ銀のリボンを結んで奏へ贈れば、
「どうぞ」
 奏もテディベアと手作りの生チョコの入った紙袋を渡してくれた。
「有難うございます……宝物にしますね」
 頭を撫でて礼を言う朔太郎は頬が緩むも、
(「私が作ったのよりも可愛いです……」)
「……ってあれ? 何だか悔しそう?」
 緑の熊の余りの可愛さにむっとする奏。
「……生チョコ、食べましょうか」
「はい……とても甘くて美味しいです。これは来月頑張ってお返ししませんと」
 それでも気を取り直した恋人を見守る朔太郎の幸福感は増すばかり。
「ホワイトデー、期待していて下さいね」

 宴は黒い菱菊模様の布地で黒猫を作る。
「うん、なかなか……ふふー、ぼくみたいでしょ?」
 目の釦が薄紫なのも敢えて彼に似せた為か。
「ぎゅっと抱いて寝るなり、腹を殴ってストレス解消したりしてお使い下さい」
 模様の説明もする宴から小檻は黒猫を受け取って、
「厄除け……ありがと、嬉しい」
 お返しに白い蛤ぐるみを贈る。薄蒼の釦が謎だ。
「ありがとう。大切にしますね……大好きですよ」
「……大好きよ、宴」
 これから宜しく、花菱さん。

 絶華は、カカオ1000%の高濃縮カカオで作ったチョコプリンへ、冬虫夏草を初めとした漢方薬を添える。
 見た目がブラック☆ぷりん・あら・もーどに似てるのは多分気のせい。
「之できっと凄いパワーが食した者に宿るだろう」
 悪気ゼロの笑顔を浮かべる絶華だが、まさに思考が狂気な上、味を一切考えていない。
「冬虫夏草……凄いパワー……」
 だが、何故か小檻がチョコプリンに興味を示し、絶華と不安そうなガイバーンが見守る中がつがつと食べ始めた。

「デウスエクスから解放された無人の地域! これは、我ら秘密結社オリュンポスの秘密基地を作る絶好の機会です!」
 都心にアジト増やすと家賃が高いですし、住宅街だと周辺住民の皆さんのご理解を得るのに苦労するんですよねー。
 いやに人の好さそうな悩みを吐露するのはアンドロメダ。
 先の誤射事件で幹部に降格した彼女は必死だ。
 手作りの某首魁ぬいぐるみを置いたり仏像に某仮面を被せたり。
「ふっふっふ。こうして京都支部を作れば、その功績で大幹部の座に返り咲ける筈っ!」

 ヒメが選ぶ端切れは白を基調とした物。
 ロップイヤーの如く垂らした耳の片方に青いリボンを飾り、赤い釦で目を縫い付ける。
 生地の折り目や縫い目、綿の量も工夫して座りが良いよう整えた。
 それらをすっかり周りが見えないまでの集中力を発揮し黙々と縫うヒナ。
(「渡した時にどんな反応か返るかちょっと想像出来ないけど」)
 それでもこのオルゴールを抱えた兎が相手の部屋に置かれた所を想像するだけで、くすぐったくも嬉しくなるから。
 気に入って貰えるように、喜んで貰えるように——と針を進めた。

「……いちばん、お世話になってるから……」
 めびるにぬいぐるみを贈る相手を耳打ちされ、目を見開く小檻。
「誰にも言わないでね……!!」
 懇願するめびるの顔は真っ赤だ。
「勿論。かけらも普段ご迷惑かけてるお詫びを……めびる殿、どんなのお作りに?」
「めびるの好きを詰めようと思うの」
 彼女の好きを詰め込んだ形は、花柄やピンクの端切れを継いだ花籠の如き鮮やかさに、撫子色が一際映える可愛いくまさんだった。
「おめめは……めびるの代わりに、見ててほしいから、めびるの目と同じ色のボタンを付けるの」
「まぁ、素敵なお考えですこと……わたくしも真似したいぐらい」

「顔の部分は紫のハギレで……ハサミはどうしよう?」
 レイを作った事はあれど裁縫は初めてと言うマヒナは、マギーぐるみ作りに四苦八苦。
「カーブのところは、細かめに縫い目を均等にすると仕上がりがよくなるよ」
「……できません、ピジョン先生……」
 ピジョンは彼女を見守りつつ、自分も針を運ぶ。
「さすが、上手いなぁ。なんか魔法みたい」
 感心するマヒナの傍ら、ピジョンのモデルのアロアロは緊張してフルフル震えていた。
「よかったら貰ってくれるかい?」
 ピジョン手製のアロアロぐるみは、鬣と顔がパッチワークになったクッション風。
「……ワタシにくれるの? じゃあこれ……」
 マヒナは勇気を振り絞り、マギーぬいぐるみと、チョロをイメージしたヤモリ型のチョコを差し出す。
「好きです、付き合ってください!」
 だが、頭を下げた前方には——マギー。
「……と主人に伝えてください……」
 間違えた事に呆然とするマヒナへ、ピジョンは丸聞こえだと苦笑して。
「こっちだよ。僕でよければ」
 そっと彼女の頭を撫でた。

「思うところのある人がいるみたいだから手助けができると良いな」
 イヴリンは心を込めて御堂のヒールしてから、
「いろんな文様があるのだな。ぬいぐるみにするにはもったいないぐらいだ」
 色とりどりのハギレから好みの布を探し、用意してきた型紙を合わせて構想を練った。
 猫や犬など色んな動物に混じって、羽根つきの人型も作るイヴリン。
 緑の布を髪に使い、花型の釦を縫いつけて。
「ほら、雲雀になった」
 いささか不恰好ではあるが、なんとなく面影があって可愛いぬいぐるみの完成。
「今日の記念にプレゼントする」
 ちょっと照れ臭そうに差し出すと、
「わぁ、可愛いです!」
 雲雀は嬉しそうに目を輝かせ、受け取った翡翠色のぬいぐるみを大切に抱き締める。
 お返しは、黒地に月みたいな淡い黄色の小花柄の布で出来た猫のぬいぐるみ。
 目に使われた緑のビーズが木漏れ日を思わせて綺麗だ。
 イヴリンさんのイメージの黒猫です——雲雀ははにかんで、
「交換こ、ですね」
 と彼女へ黒猫を差し出した。

「縫いぐるみ……早苗は何にするんだ?」
「ふーむ、そうじゃな、わしはグラックをモデルに作るか」
「人気だなぁ、お前」
 ルルドは、早苗の言葉へ驚いた風にグラックを見やる。
「よし、じゃあ俺は狐にするか。見ろよこの布、早苗の髪にゃ敵わないがかなり綺麗な黄色だぞ?」
「良い色じゃな。とっても鮮やかじゃ」
 早苗も賛成した端切れをルルドは器用に縫い進め、左耳にリボンを付けて月狐美人の完成。
「じゃあわしは……赤茶っぽいこれにするか」
 グラックぐるみは頭にリボンを飾った。
「なかなかうまく出来たと思うんじゃが……どうかの」
「グラックそっくりじゃねえか。早苗は器用だな。きっと良い嫁さんになってくれるな」
 グラックとぬいぐるみを並べて見比べる早苗を、本心から褒めるルルド。
 その後は早苗の提案で、互いのぬいぐるみを交換。
「どこに飾るか悩むが、ベッドに飾ったら目覚め良さそうだな」
 ルルドだけでなくグラックも嬉しそうだ。
「ありがとな、早苗。大事にするぜ」
「うむっ、わしも大事にするのじゃ!」

「あ、りかー、ちょっとそこで大人しくしてるんだよ?」
「響はいつも大人しいけど、一応大人しくモデルしててな?」
 和とリーズレットは、己のサーヴァントが相手のぬいぐるみ作りのモデルになるとあって、真面目に言い聞かせた。
 ちょこんとお澄ましモードのりかーを盾代わりに、和は作業を進める。
「響ちゃんのリボンどれがいいかな」
「相変わらず愛くるしい子だな……りかーちゃん」
 リーズレットは、さり気なく小さななごさん人形を作って、りかーちゃんぬいぐるみへ抱っこさせた。
「ほら、いつもと逆でおっきいりかーちゃんに小さいなごさん…良くないか!?」
 さも傑作と言わんばかりにドヤ顔すれば、
「ほんまや。いつもと逆やね」
 にっこり笑う和も2体のぬいぐるみを差し出して、リーズレットを驚かせる。
「なんだかんだで仲良しさんやもんね」
 和は和で響ぬいぐるみの頭の上に、ちょこんと抱きつくように乗るミニリズさん人形をこっそり作っていたのだ。
 嬉しい驚きと共に2人はぬいぐるみと手作りチョコをラッピング、楽しい交換となった。

「今日は誘ってくれてありがとです」
 濃い青の布地に金の歯車柄の着物が似合う真理は、自身のライドキャリバー、プライド・ワンのぬいぐるみを作ろうと奮闘。
 選んだ端切れは黒い布地に赤い花火の柄でスタイリッシュな雰囲気だ。
 ヘッドライトの赤いボタンが可愛らしい。
「……機械等なら慣れているのですが。こう、柔らかいものというのは……案外、難しい、ですね?」
 酉年なので鳥の形を、と決めたアルニは、慣れない裁縫に手間取るも、案外凝り性な性格を原動力に悪戦苦闘。
 カッコいい見た目を目指し、銀糸で彩られた端切れを縫い合わせていく。
「ふふふ、結構会心の出来なのです。カントさん良いの出来たですか?」
 真理はアルニが諦めずに仕上げた銀の鳥を横から覗き込んで、
「ん……流石なのですね。カントさんのぬいぐるみもかなり可愛いのです……」
 と大絶賛。
「あー、ハッピーバレンタイン、です」
 そんな彼女へ、折角なのでと銀鳥ぬいぐるみを進呈するアルニ。
「一応男が送るのも問題無いようなので。貴方に差し上げます。よろしければ、どうぞ」

「俺も細かい作業って苦手だけど、こうして少しずつ形になっていくのは楽しいな」
 郁は恋人の頑張りを眺め、微笑ましい思いで針を運ぶ。
(「隣の郁くんが楽しそうだから、我慢も苦じゃないのだ」)
 意気込むひなみくはもう何度目か、針を指に刺していた。
「変に我慢とかしなくて良いんだぞ? そんな風に一生懸命頑張る所が好きでもあるんだけどな」
 優しい言葉がひなみくを勇気づけて、
「出来たんだよ〜!」
 様々なピンクの端切れで形作った桃色猫を、完成へ漕ぎ着けた。
 金のリボンを巻き自ら包装した赤い包みを添えて、郁へ渡す。
「ありがとう! 俺の為に用意してくれたんだって思うとほんとにすごく嬉しい……」
 味わって手作りの生チョコを食べる郁。
「えっと……俺からの贈り物はこいつになるけど……良いかな?」
 彼が差し出すのは、臙脂に花柄の端切れへ金ボタンで目を縫いつけた、こはなわんこ。
「わあ~、なんだか郁くんみたいなんだよ!」
 すっごく可愛い! だいすき! とひなみくは大喜びだ。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年2月13日
難度:易しい
参加:33人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 1
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