雪は全て白く染める

■リプレイ

●憧れの雪景色
　川崎市に住む、８歳位の少年が見た、雪の夢。
　一面に広がる雪に目をキラキラさせて、雪だるまを作ったり、かまくらを作ったりするのは、雪の無い地域の子供達からすれば、普通にやりたくなる事の一つであろう。
（「……地域によっては、雪は、珍しい、もの、なの、ですね……」）
　と、神宮時・あお（最果テ幻想花・e04014）が心の中で呟くと、アンセルム・ビドー（人形を抱えた鹵獲術士・e34762）と村雨・柚月（黒髪藍眼・e09239）、日生・遥彼（日より生まれ出で遥か彼方まで・e03843）らも。
「雪といえば雪だるま。定番ですね。たしか北海道の方には、雪像のお祭りがありましたよね？　もう、すぐでしたっけ」
「そうだな。たしか、今週末だったか？　……まぁ、今回はそんな雪像に全く関係無いんだが。動く雪だるまってメルヘンっぽくて、子供受けしそうではあるね。近くにいると寒そうだが……」
「そうね。ふわふわの新雪で作った雪兎とか、可愛いわよね♪」
　と、その言葉に柔・宇佐子（ナインチェプラウス・e33881）が。
「ん、呼んだの！？」
　とぴょんっ、と姿を現わす宇佐子……パパのスキーゴーグルを着用したその姿は、もこもこふわふわな姿形に対し、なんだかサイバーなゴーグルを着用していて、いかついことこの上無い。
　……それにちょっと苦笑しながら、アンセルムが。
「まぁ、雪うさぎもいいよね。雪だるまと違ってその場で作れて何より手乗りサイズなのがグッド。雪だるまも手乗りは可能だけど、手乗りで愛でられてあれこれいじれるのは雪うさぎだし……」
　雪うさぎの魅力について語り続けるアンセルム。
　その言葉を聞き流しつつ、揚・藍月（青龍・e04638）、プロデュー・マス（は一応彼氏・e13730）の二人も。
「まぁ雪だるまか……雪はあまり得意ではないのだけどね、でも子供の夢を壊すドリームイーターを放っておく訳はいかないか」
「ああ。雪だるまから雪が生成されて体積が減らないとはな。ヒールでも使っているのかな？　まぁいいか。地獄の炎で溶かしてやるさ」
　というと、巴江・國景（墨染櫻・e22226）が。
「まぁ、何にせよ、この様な少年を傷付ける人達を許す訳にはいきませんね……確りと、対処しなければなりませんね」
　と言うと、柚月とあおが。が。
「そうだな。それにしてもこの時期の夜はさすがに寒い。日は徐々に長くなっているはずなんだが。寒さは今が一番厳しい気がするね……早めに終わらせたい所だ」
（「……ええ、ちいさな、夢でも、ドリームイーターが、利用して、いいものでは、ありません、ね……」）
　そして、ケルベロス達は、いざ……雪だるまドリームイーターの現れるという、川崎市の市街地へと急ぐのであった。

●驚きを現実に
　そしてケリュネイアの生み出した、ドリームイーターの徘徊する市街地を歩くケルベロス達。
　ドリームイーターの雪だるまは、市街地を歩いていればあちらの方からやって来る……と言うが。
「……驚かせたくてしょうがない、ということだったけれど……ふふ、どんな風に驚かせてくれるのかしらね？」
　とくすり笑う遥彼。
　ともあれ、雪だるまドリームイーターが現れない事には、仕事も出来ない……一応、出歩いている人が居ないかどうかの確認を、アンセルムや國景、柚月らが行う。
　出歩いている人に対しては、家に帰るか、この場から避難する様に誘導。
　……そして、あらかた人が居なくなった……その頃合いで。
「そろそろ……か？」
　とプロデューが呟いた、その瞬間。
　……逆側の方から、ぴょん、ぴょん……と跳ねながら、姿を現わす雪だるま。
　都心に現れた雪だるまという……何というかシュールな光景。
　そして雪だるまは、ケルベロス達の前までやってくると、顔をくるくるっと回したあと、頭をごとっ、と落としてみたり。
　……そんな雪だるまの一つ一つの動作に、眉一つ動かさない藍月、プロデュー。
「それが、どうした？」
「そうだな。何だ、それで驚かそうといっても、そうはいかないぞ？」
　そんな二人の言葉に、ぷぅぅう、と怒りの仕草。
　その仕草にも、全く驚かないケルベロス達……と、その瞬間、アンセルムが殺界形成を発動し、周囲からの一般人を断絶。
　そして、藍月、プロデューが。
「さて……一つ、やってみようか」
「そうだな。いこうか」
　と言うと共に、武器を構える。
　そんなケルベロス達の攻勢に、雪だるまは数歩離れてから……まずは、雪球を投げつけて攻撃を仕掛ける。
　まるで雪合戦の如く、雪球がポス、ポスッと命中……ちょっと痛い。
　でも、そんな雪だるまの攻撃に、宇佐子が。
「みんな、がんばるのよ！」
　とメディックポジションで、後方から紙兵散布を、攻撃を受けた仲間達に掛ける。
　そしてジャマーのあおが、仲間達の先陣で、旋刃脚でパラライズを付与する一方、アンセルムは自分へステルスリーフを掛ける。
　更に、クラッシャーとディフェンダーの前衛陣が続く……まずはプロデューが。
「この胸を焦がす熱こそが、世界に終わりを誓う光。神々よ、この光に黄昏よ！」
　と『Ｆ．Ｅｎ．Ｒｉ．Ｒ』の超熱プラズマ光を撃ち抜くと、柚月が戦術超鋼拳で続く。
　更に遥彼が。
「嗚呼、全白（ましろ）のその前進を、私のこの血で紅く染めてあ・げ・る」
　と病み気味に微笑むと、ペトリフィケイションで石化を放つ。
　そして、藍月と、そのボクスドラゴンの紅龍、そして國景は。
「さて……國景、行くとするか」
「ええ。遅れは取りません……参りましょう」
　と声を掛け合い、相互に死角を補う様に並ぶ配置を取り、紅龍のボクスブレスの火炎弾を吐くと、藍月が縛霊撃で敵を捕縛、國景がブレイズクラッシュを叩き込んで行く。
　そして、行動一巡し、次の刻。
　雪だるまは、ケルベロス達が強いのに気付いたようで、大きく息を吸い込むと、次の瞬間……その身から吹き荒れる、雪の嵐。
　極寒の寒さは、ケルベロス達に御襲いかかっていく……その寒さを、傍らの人形を抱きかかえるようにして、身を守るアンセルム。
　当然、視界を大雪が包み込んで、一瞬、視界はゼロになる……が、それぞれが用意していたゴーグル等により、大きな被害には至らない。
「寒い通り越して、痛い事この上ないね……」
　とアンセルムがぽつり呟く。
　……しかしすぐに、宇佐子が。
「ほらほら、みんな、がんばるのよ！！」
　と後ろから一層元気よく、紙兵散布の回復を張り切って実行。
　そして、あおがペトリフィケイションで攻撃すると、アンセルムがストラグルヴァイン。
　蔓が伸びて、雪だるまに巻き付くと。
「足元注意ですね」
　と、言い放つ。
　雪だるまは蔓から抜け出す様に暴れるが……中々切り抜けることは出来ない。
　そんな雪だるまに、更に病的な笑みで遥彼が。
「右手に絡ませた鎖、左手から纏わり付くスライムで、貴方の驚愕を、私色に染め上げましょう……大丈夫、優しくするわ？」
　と言いながらの猟犬縛鎖、そしてプロデューもスパイラルアームで続き、柚月はスターゲイザー。
　そして藍月、紅龍、國景の三人は、とても息の合った連携攻撃……國景のブレイズクラッシュに藍月と紅龍が。
「八卦炉招来！　急急如律令！　行くぞ紅龍！　今こそ俺達の力を見せる時だ！」
『ギャウ！』
　と息を合わせて、『神火八卦陣』と、ボクスタックル。
　炎が一層、雪だるまを包み、外側を僅かに溶かしていく。
　……その後も、雪だるまは雪球投げつけ攻撃をメインに、時折猛吹雪を吹き荒れさせる攻撃を繰り返していく。
　でも、その勢いを上回る、クラッシャー４人と一匹という攻撃的布陣で、雪だるまの体力をハイペースで削る。
　そして……戦闘開始から８ターン。
「さあ！　雪という驚愕のモザイクに炎と言う情熱の地獄をぶつけよう！　簡単に溶けてくれるなよ！！」
　と、プロデューの『Ｆ．Ｅｎ．Ｒｉ．Ｒ』が、雪だるまを何度目かの炎に包んだその瞬間。
　……雪だるまの片腕が、ぽとりと落下。
　そんな雪だるまの状況に、宇佐子が。
「そろそろ、終わりそうなの！　みんな、一気に仕掛けるの！」
　と声を上げて、『まほう』で攻撃すると、それに続くあおの旋刃脚、アンセルムのペトリフィケイション。
　藍月が雷刃突で一閃を叩き込み、紅龍のボクスブレスが火弾を撃ち抜き、國景のブレイズクラッシュを、その脳天へ叩き込む。
　そして……。
「貴方は唯々、私の愛を受け入れてくれるだけでいいの。簡単でしょう？　驚きと恋のどきどきは似たものだもの。だからきっと、貴方にもわかるはず。私が……こんなにも貴方を愛している事を、ね」
　と『断絶の祈り』が決まり……雪だるまの頭部は吹き飛ぶ。
　そして……柚月が。
「さあ、メルヘンの国に帰れ！」
　と、渾身の『刻詠夕緋』。
　雪だるまの体部が炎に包み込まれ……そのまま、雪だるまは、全て溶けて消えていくのであった。

●雪の涙に
　……そして、雪だるまを無事、倒したケルベロス達。
　既に影も形も燃え尽きた雪だるまの跡を見渡しながら。
「全白に染まりし夢見るままに待ちいたる、断絶の祈り……なんて、ね」
　と、遥彼はくすりと笑う。
　そして……ゴーグルを外しながら、空を見上げる柚月。
　空に煌めく星を見て。
「星が見えるな……なら、明日は天気が良さそうだな」
　と微笑みつつ、さぁ、と周りを見渡し。
「んじゃ、壊した所の修復と行くか」
「そうなのね！　ぱぱーっと回復していくのね！」
　宇佐子が元気よく手を上げて、壊した所をヒールグラビティで回復していく。
　……一通り回復した所で。
「動いたとはいえ寒いな……暖かい部屋に戻りたいものだ」
　とプロデューが言うと、藍月、國景が。
「そうだな……一応、少年を探して、確認をしておきたい所だな」
「ええ、そうですね……被害者の少年の所、一応聞いておきましたから、そちらに向かうとしましょう」
　と二人の言葉に、少年の元へと向かうケルベロス達。
　……その道すがら……あおは。
（「……雪が、全部、全部……真っ白に、染めて、くれれば、いいのに……」）
　と、朧気に見上げ、心の中で呟く。
　……そして、少年の元に到着したケルベロス達。
　少年は、安らかな寝息を立て居る。
　……そんな少年に、國景が。
「恐れを知らぬ人の子よ……特に貴方方子供は、元気過ぎる位で丁度良いのですよ……」
　と、軽く髪を梳く。
　……軽く身じろぐが、起きない少年。
　でも……軽く笑顔を浮かべる少年が。
『……ゆきぃ……ゆきぃ……たのしぃなぁ……』
　と寝言を呟く。
　そんな少年へ、藍月は。
「雪は楽しい物だ。特に子供は雪と遊ぶくらいはきっといい。だが……時に雪は怖い物だ。容易に死に繋がる事もある。覚えておくといい。尤も……それでも尚、楽しむ事は忘れないで欲しいけどね」
　と……國景に併せるように、その頭を撫でるのであった。

作者：幾夜緋琉	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2017年2月3日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 1／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 0
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