消えゆく数字

作者:千咲

●消えゆく数字
 ――休日の早朝。人里からほど遠い某山中。合宿所を併設したサッカーグラウンド。
 小さなクラブチームゆえ、環境の良い場所での練習などは夢の彼方。だが、関係者以外が誰もいない合宿所は、練習に集中できるベストプレイスとも言い換えられる。
 それに、30人ほどが参加した今回の合宿は、例年になく盛況といえる規模で、みな、活き活きとした表情でユニフォームに身を包み、練習を始めていた。
 そんな人里離れた辺境の地に、その銀色の長い髪の少女は降り立った。
 少女は怜悧な瞳を彼らに向けながら、インカムに短く言葉を放つ。
「数字を身に付けた一団を発見……」
 漆黒のフィルムスーツに、緋色の意匠を施した装備。季節柄、普通なら凍えそうなものだが、彼女は寒さなど微塵も感じていない様な声音と同時に、両肩に主砲、そして腰の横あたりにも少し径が細いだけの副砲が姿を見せた。
「……ただちに抹消する」
 四門の砲がバチバチと一斉に轟音を奏でる。高出力の電磁波が、爆ぜるような音と共に選手たちに降り注ぎ、一瞬んで灼き焦がしてゆく――まさに阿鼻叫喚の地獄絵図。
「た、助け……」
 被弾を免れた者たちが数名、現場から逃れるべく走って逃げる。アスリートゆえ脚にはそれなりの自負もあろう。
「襲ってきたのは1人だけだ。バラけて逃げるぞ!」
 中でも、司令塔らしき青年が冷静に仲間たちに指示を送る。
 が、すぐさま少女の踵に装着されたローラーが激しく回転。緋色の火花を散らし疾走し始める。
 そんな彼女の手には巨大な鉄塊剣。そして、逃げゆく司令塔の青年の前に超速で回り込むと、携えたそれでユニフォームの真ん中を一突き。凶刃が背中まで突き抜ける。
「ロストに例外は……無い」
 剣を振るい、貫いた青年の身体を投げ捨てると、別の少年の元へと疾走。今度は背中から刃を突き立てる。
 一方的な虐殺は、フィールド一帯に生存者の反応がなくなるまで続いた。
「ロスト完了。次を探す……」
 主砲と剣を瞬時に収納し、銀髪の少女は次なる地に向けて山を降りるべく、再びローラ―を駆動させ始めた。

 
●緋色の疾走
「みんな……大変なことが起きたの」
 ヘリポートに集まった面々に、赤井・陽乃鳥(オラトリオのヘリオライダー・en0110)が深刻な面持ちで告げた。
 指揮官型ダモクレスによる地球侵略が始まってしまった、と。
「そのうちの一体『ディザスター・キング』は、グラビティ・チェインの略奪を任務とする主力軍団を率いてて、各地に有力な配下を派遣して襲撃事件を起こしているの。中でも宮崎県に派遣されたのが、『ナンバーハンター』と呼ばれる個体……」
 と、実際に派遣された中の1体について特徴を語って聞かせた。
 曰く、漆黒のフィルムスーツにグローブとハイソックス風。随所に緋色――紅いラインが際立った意匠。脚部には疾走用のローラ―を装着、背部のアームドフォートは、両肩に主砲、腰部に副砲の計4つ、四ならぬ死門の電磁砲ね……と。
 さらに手には、鉄塊剣なみのブレードをいつでも展開できるらしく、可憐な女性らしい見目とは裏腹に、眉一つ動かすことなく大量虐殺を実行することも厭わない……。
「ディザスター・キングの指示を受けた、このダモクレスの襲撃を阻止する事は極めて困難で、既に被害が出てるの」
 と、事件の様子を語った。
「このダモクレスはすぐに次の襲撃に向けて山を降りるみたい。幸い、人里がない場所なので、降りきる前に捕捉できれば、迎撃も可能なはず。このまま街にでも出たら被害は際限なくなってしまうから、何処かで阻止しないと……」
 そう言うと、1枚の地図を画面に表示し、この敵の下山ルートを示した。
 
「敵は1体。その装備がアームドフォートと鉄塊剣なのは話した通りね。加えて、その卓越した機動力は分身を紡ぐこともできるみたいなの。そして、この敵はグラウンドや競技場のある場所を目指して、特定の対象を抹消するのが目的みたい」
 陽乃鳥は、そう告げると、特定の対象というのが、ユニフォームみたいに数字が大きく書かれた服みたいなのと語る。理由は『数』に異様な拘りを見せているようだから……と。
「この性質を利用すれば敵の足止めに苦労はない筈。だから何とか市街に入る前に阻止して欲しいの」
 一度戦い始めてしまえば、敵は逃走することもなく、殲滅するまで徹底的に戦い続けるはずだから……。
「あとは皆の力でこの敵を打ち破って! 起きた被害をなかったことには出来なくても、次の被害は防ぐことができる――無為に命が奪われるこの状況を見なかったことになんて出来ないよね!?」
 そう言って陽乃鳥は、ケルベロスら全員の瞳をまっすぐに見つめるのだった。


参加者
ティクリコティク・キロ(リトルガンメイジ・e00128)
ネル・アルトズィーベン(蒼鋼機兵・e00396)
五継・うつぎ(ブランクガール・e00485)
村雨・ベル(エルフの錬金術師・e00811)
小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080)
アニマリア・スノーフレーク(疑惑の十一歳児・e16108)
弓曳・天鵞絨(イミテイションオートマタ・e20370)
水鏡・奏(冷刃の演者・e34599)

■リプレイ

●数字狩り
「ロスト完了。次を探す……」
 短く告げてから、山を下りてゆくダモクレスの少女。
 少女は、銀色の長い髪をたなびかせながら、決して平坦ではない道を、ローラーで器用に疾走していた……。

 その行く手の彼方、少女に先んじて下山ルートで待ち受けるケルベロスたち。
 それなりの広さが確保できねば戦いは困難。ゆえに、狭い山道を避けるには麓近くが決戦の場となるのはやむを得ない。――それはつまり、後がないということ。
 なんとか迎え撃てそうな場所を見つけるまでの僅かな間、村雨・ベル(エルフの錬金術師・e00811)は、陽乃鳥から聞いた事件のあらましを思い返しつつ呟く。
「数字に反応するなんて、何ですかその変な子は!」
「反応している数字に何か意味でもあるんでしょうか!? ……と言っても分かる訳ありませんね。仕方ないので、ベルさんもこれを着てみてください」
 そう言って手にしたTシャツを、背伸びしながらスッポリと被せるアニマリア・スノーフレーク(疑惑の十一歳児・e16108)。
「こ、こらっ! って、変なダサTシャツ着せるなー!?」
「ほらほら、我が侭はいけませんよ」
 懸命に抵抗をみせるベルだったが、有無を言わせぬままに着衣完了。
(「おのーれー、隙あらば仕返ししてやるー」)
 勿論、そんな台詞はおろか態度すら見せられず、場所が決まるや、おとなしくエルフの嗜み(?)、殺界を紡ぐ。
「既に被害が出た後であるのが、なんともやるせないでございますが……」
 静まり返った山中に、弓曳・天鵞絨(イミテイションオートマタ・e20370)の声が切なげに響き、それに呼応するように五継・うつぎ(ブランクガール・e00485)も頷いた。
「予知のおかげですぐに対応できるとはいえ、犠牲が出てしまうと分かっているのは気分が良くないですね……」
 だが、そんな重い空気を打ち破ることができるのもケルベロスのみ。
 故にうつぎは、皆さん、頑張りましょう……と努めて明るく顔をあげて見せた。
 すると、すかさずその意を酌んだ水鏡・奏(冷刃の演者・e34599)が、息を呑み、強い口調で告げる。
「力なきものに、理不尽な暴力を叩きつける機械の獣――必ず、破壊しなくちゃ……」
「はい。これ以上の被害を出さぬ為にも、ここで退場願うでございます」
 改めて頷き返す天鵞絨。
 そんな会話の後に辺りを包んだ一瞬の静寂の後、山頂方面からローラーの滑走音が響く。
「来たか……」
 ティクリコティク・キロ(リトルガンメイジ・e00128)が、シルバースターで威嚇射撃。ここにいるぞ……と告げ、確実に敵を引き付けるために。
「新たな標的を確認……抹消する」
 姿を見せるや、感情らしきものすら見せぬまま、物騒な言葉を吐く少女。
 それに真っ先に対峙する、ティクリコティク。
「……ここで確実に潰す。お前も、お前の指揮官もボクは許さない。覚悟しろ、悪党!」
「ああ。貴様のこれ以上の行い、ここで終わらせる……立ち塞がるのならば、打ち倒すのみだ」
 やりとりの間に敵の姿を確かめた、ネル・アルトズィーベン(蒼鋼機兵・e00396)が一歩前に出る。その腕の刻印を目立つように見せつけながら、
「私たちを狩ってみるが良い。ナンバー『07』ネル。相手になろう」

●ナンバー
「再び、数字の一団を発見……抹消する」
 敵の、四門の電磁砲が駆動音を響かせる。
 『6』のビブスを着けたうつぎは、研ぎ澄まされてゆく感覚の前に敵味方の動きすら緩慢に感じつつ、指さしながら告げる。
「個人的な拘りかも知れませんが……同じ四門のアームドフォート使いとして負けられません。これ以上の殺戮は阻止します」
 すると、ベルも続いて、
「ディザスター・キングの配下はろくなのがいないなーもう! 殺戮をこれ以上させるわけにはいかない!!」
 と、着せられた『0721』Tシャツの裾を捲り上げつつ、ウィルスカプセルを投げつける。
 が、少女の腕に現れたブレード一閃……眼前で真っ二つになるも、空気中で爆発的に増殖した病原体がその躯を蝕んでゆく。
「さぁ、十分に吸い込んだかい。そこから先はボクの領域だ。通しはしない!」
 レプリカユニフォームを着込んだティクリコティクが上空に手をかざす。すると激しい風が吹き荒び、周囲の土を巻き上げ、局地的な砂嵐と化す。
 視認されにくくなった砂の中で、ドラゴニックハンマーを砲撃形態にして構えた天鵞絨は、スナイパーとしての直感に委ね竜砲弾を撃つ。
 ローラーダッシュで避けようとした少女の行く手を、奏の御業が全身を鷲掴みにして阻んだ。
「ありがとう。私の番だな……私も、まずは砲撃から……」
 敵のそれと同型のアームドフォートを構えたネルが、さして狙いを定めた風でもなく全弾を放つ。そしてその砲撃を追うようにダッシュ。
「続いて零距離から追撃……畳み掛ける」
 言葉通り、距離を詰めた勢いに乗せ、力の限りに鉄塊剣を叩き付けた。
「ぐぅ……っ」
 衝撃に、躯をくの字に折った少女だったが、それも一瞬。すぐさま体制を整え、駆動し終えた電磁砲を一閃。前衛の面々を的確に捉え撃ち抜く。一撃で戦局が向こうに傾いた。
「やりますね……ですがケルベロスとして、これ以上取らせる訳には参りません」
 と、再び戦局を引き戻すべく、『30』のTシャツを着けたアニマリアが、炎を纏ったシルバーラースで強力な一撃を喰らわせる。
 さらに、その傷痕を狙い、空の霊力を込めた太刀を振るう奏。
「……受けた傷の代償は、貴様から戴くとしよう」
 次いで瞬時に武器を持ち換えたネルも、虚の霊力を纏った簒奪者の鎌で、直接、敵の生命力を奪い取る。しかし……。
「奪い切れるか? その前に貴様の数字……抹消する」
 早変わりへの対抗からか、敵も一瞬でブレードを展開すると、そのままネルの肩口を狙って突きを放つ。反射的に避けようとするも、凄まじい回転がほんの僅か掠めただけで、噴き出すように血飛沫が舞った。
 静かな山中で始まった戦いは、まだ終焉を迎えられそうにはなかった……。

●それぞれの想い
(「……やはり、早いうちに足を止めるでございます」)
 天鵞絨の竜砲弾が炸裂。上手いこと敵を大きく後退させることに成功。
「今のうちだな……受け取れっ!」
 満月の如き光球を投げつけるティクリコティク。受け取ったネルは、癒えてゆく傷と共に力が湧きあがる感覚を覚えた。
 だが、そんな様子を黙って見逃す敵ではない。一気に距離を詰めようとローラーの回転が上がってゆくが、正面にピタリと張り付いたうつぎが、その行く手を阻む。
「これ以上の殺戮は、阻止します……と言ったはずよ」
 携えたゲシュタルトグレイブに激しい稲妻が宿る。バチバチッと弾けるような音と共に、神速の突きが一方の副砲を粉砕してのけた。
 そんな激しい戦いの最中にあっても、主の言いつけ通り、一心に祈りを捧げるイージーエイトさんに、引き続き前線を支えてね……と声をかけつつも、自らはアニマリアの周囲に魔法の木の葉を舞わせるベル。敵から視認されず攻撃を続けるために。
 ――だが逆にそれを敵が警戒。次はその木の葉の中から攻撃か……と身構えた瞬間、アニマリアは予想を覆して高々と跳躍。木の葉の壁を飛び越えて斧を振り下ろす。
 しかし、その一撃が少女の頭部に当たりそうな刹那、これまで以上の激しい音が響き、敵の姿がぼうっと薄らぐ。
「残像……!?」
 渾身の一撃は完全には決まらず、かすめる程度。
「逃がさへんよ~」
 その動きをしっかりと観察していた、小山内・真奈(おばちゃんドワーフ・e02080)が、敵の行く手にフルスイング。釘を生やしたエクスカリバールが激しく敵を傷つける。
「どうやらお前にとってはアンラッキーだったようだな……」
 スピードの落ちたところに声をかけたのはティクリコティク。自らのナンバー『777』を見せつける。
「知ってるかい? これはラッキーセブン、ってやつだよ。縁起がいい数字の一つさ」
 挑発しつつ、デウスエクスにとっての病原カプセルを投げつけた。
 それを寸前で躱そうとした敵の足下に、敢えて大振りなアクションから、天鵞絨が流星の如き跳び蹴り。それに気を取られ反応が一歩遅れた敵がウィルスを体内深くに吸い込んだ。
 そこで機を逃さず、ドラゴニックハンマーの超重の一撃を叩き込むアニマリア。力で敵の足下を凍り付かせてゆく。
「チャンスですね」
 一息に吹き飛ばすべく、全砲門を少女に向けて構えるうつぎ。そのまま間を置かず一気に斉射!
 しかし敵も残る砲門で応戦し、四分の二を華麗に相殺。逆にうつぎも一発被弾するところだったが、御業で鎧を紡いだ奏が身を挺して庇った。
「危ないところだった……今のを受けたのが、私でよかった」
 思った以上のダメージに見えたが、軽くさする程度で頷いて見せる――まだ、戦いは終わっていませんよ、と。
「当然だ……こいつはここで必ず倒す!」
 ネルは、鉄塊剣に炎を宿して敵に叩き付ける。決して感情的になっている訳ではなく、あくまで冷静に。
 しかしこのままではケルベロスたちの被害も相当なものになり兼ねない。ゆえにベルが天に向かって手を翳し、癒しの雨を降りしきらせた。
 その雨でこれまで仲間を覆っていた砂嵐が止み、ティクリコティクが改めて砂嵐を巻き起こしながら、「そろそろ終わりにしようじゃないか!?」と皆に告げる。
 その呼びかけに真っ先に応えたのは、斬霊刀に持ち換えた奏。
「私に間合いは関係ない……地がお前を喰らうのだから」
 地に突き立てた刃が、大地を介して少女を足元から貫く。
 しかし敵はそれよりも一瞬早く真奈の前に出ていた。甲高い音とともに、回転する刃がその小柄な身体を貫く。
 ――しかし、真奈は痛みをものともせず静かに詠唱を続けた。
「刃の錆は刃より出でて刃を腐らす……」
 喰らいし力を己が体内で増幅し、煉獄の炎と化して敵に返す。
「一気に片を付けましょう……『罪』を清算する時です。翼よ! 輝く刃と成れ!」
 自身の翼からあふれる光を、両手の武器、シルバーラースとシルバーペインへと収束。光を十字の斬撃に変えて少女に叩きつける。
「――Code:AuroraBeam、起動。灼き穿け」
 天鵞絨が翳した掌から、オーロラの如き魔法陣が生成。そこから放たれた超高熱の光の奔流が、仇なす敵を灼き尽くす。
 そうして皆が次々と力を開放する最中、ベルも自身を律していた拘束制御術式を解放。
「状況D『ワイズマン』発動の承認申請、『敵機の完全沈黙まで』の能力使用送信――限定使用受理を確認」
 身体中に現れし魔法陣。その1つ1つから大量の霊鎖が敵に喰らいついてゆく。そして……無数の鎖でつながった瞬間、激しい雷撃が鎖を疾って敵の機体を歪ませた。
 そこへ、追い討ちとなるネルの砲撃。微塵の猶予も与えることなく、完全なる殲滅を目的に徹底的に砲撃を叩き込む。そして、爆煙止まぬうちに同型機の少女との距離を詰め、再び渾身の力で鉄塊剣を叩き込む。
「終わりだ……消えるがいい」
「ぐっ……まだ終わりではな……その……」
 絶え絶えになりながらも、腕のナンバーへの執着を失わぬ敵。死の間際に垣間見えた『感情』に近い何かに、ある種の尊厳のようなものを感じつつ、うつぎが背後から抱擁。
「貴女が殺めたのは、何の力も持たない平凡な人達です。一体何故そこまで数字に執着するのですか。到底、ダモクレスとも思えぬ非合理さです。」
「……言ったところで…………」
「そうですね。でも、もう無慈悲な命令を聞く必要はありません。おやすみなさい」
 自損覚悟でありったけの弾を撃ち込んでゆく。そうまでせずとも、いずれ倒れていたろうけれど。
 その激しさの前には、手出し無用。ダモクレスの少女『ロストナンバー・ヌル』の凄惨たる最期……。

●これから……
「どうやら、弾は十分だったな……」
 空の薬きょうを捨てながら、ティクリコティクが告げる。数に拘った敵を皮肉るように。
「さ、改めて……お仕事完了です」
 ベルがきれいに幕を引こうと試みる。
「結局、聞けませんでしたが、数字付きを選り好みする理由、何だったんでしょう?」
 アニマリアは、聞きそびれたことを残念そうに告げるが、今さら知ることなど出来ようもない。
「仕方ない……鳥と似た手合い、と思っておきます」
 鳥……すなわち、ビルシャナのようなもの、と。
「それよりも……」
 天鵞絨には、敵の拘りよりも気になっていることがあった。それは、一般への被害が防ぎきれなかったという事実。
「これからこういったことが多くなるのでございましょうか……」
 敵の攻勢によるものとは言え、これが続くようでは、いずれケルベロスの優位も失われるやも知れぬ、と。しかし、その問いに答えられる者など居はしない。
 今、できるのは、この場の勝利に安堵することだけなのだから。

「同型機……か……」
 去り際――その場に残った宿敵の残骸、ロストナンバー・ヌルだった物の片鱗を見つめ、記憶のない自分の中に何かを探し求めながら、ネルは誰にともなく呟いていた……。

作者:千咲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年2月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。